株式会社ヨシノ自動車

必要なマーケットに必要な製品を届ける

___そう自分自身に見せたくないというところも社長にはあるんですね?

ありますね。実際にトラックはなくならないものだと思うから会社を継いだし、30年やれるだろうという見こみのもとにやってきていますから。漠然と考えるとキャパは小さくなる一方で、よりいっそう頭を使ってアイデアを発想しない限りは、飛躍的に成長することは難しいですよね。それが僕にとっては経営者としてのモチベーションになるけど、従業員たちに押し付けるのは難しい。やっぱりもっと分かりやすいものがあった方が良い。単純に5年後は売上100億にしますとか、そういう誰もが観ても分かりやすい成長の表現をしてあげることが必要かなと思っています。とはいえ、国内だけでその目標を現実にするのは難しい。海外でやってみてこの3年間、特にアフリカは政情不安や貧困など問題点はいくらでもあるんですが、まず単純にクルマを持っていない人が多い。それでいて人口も増えていってる。長期的に見ればですが、経済的にも裕福になりつつある。マーケットは着実に拡がっていきますよね。誰が観ても。だから5年後、10年後に規模を5倍、10倍と大きくしていける可能性があると思っています。

_____それは必要な場所に必要な製品を届けている、という感覚もあるんでしょうか。

はい。会社の年一回の決起大会とか経営計画発表会のときに、売上でこれぐらい、経常利益でこれぐらいという発表はしているのですが、私自身はそこにこだわってはいないんですよ。ただ、あくまでも事業を創造して開拓して、そこに対して何を提供していくか、世の中にないサービスを生み出すことで、他の同業他社にはないものをヨシノ自動車が提供していく。結果、それが売上につながるのが理想だと思っています。例えばいま中古トラックを売ってます。売上高一億円ですがこれを一億五千万円にしたい。だとしたら、クルマをもっと買ってきて、それを売り歩ければ良いのかというと、そこは両方必要なんです。私自身は、お客さんが求めるものを提供しない限りは、例え在庫を抱えていても売上は絶対上がらないと思っています。結局は押し売りになってしまう。もちろん現実的には月末売上見こみに合わせて販売するとか、同業者同士のバーターとかもあります。でもそれはあくまで手段として捉えていて、本業ではない。だから数字を追いかけてしまうと、どうしてもそういう虚業化してしまう、という懸念が僕にはあるんです。今年入った新人から何十年といるベテランまで全社員が同じ意思統一できる、同じ認識が出来るという意味では売上は大事なのかも知れないですけれど。
 そういう理想をもって経営をしてきて、リーマンショック以降、売上高は160%増なんです。僕が入社した当時からいえば200%、ほぼ倍の売上高に到達しました。でも、それは具体的に目標にして到達した数字ではないんです。売上は後からついてくるというのが現状です。