株式会社ヨシノ自動車

トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第72回

EUトレーラーズ 販売企画本部 本部長 前沢武様

EUトレーラーズ 販売企画本部 本部長 前沢武様

「圧倒的に仕事が早くて効率が良い!ユーロトラックに乗るなら台車も欧州仕様でいきましょう」

昨年、欧州製トレーラーを輸入販売するEUトレーラーズが設立されました。ケスボーラー、ロルフォ、ファンエックといった欧州ボディメーカーの日本向け独自仕様のトレーラーが販売されています。もちろん社長は白のスカニアで有名なトランスポーター、トランスウェブの前沢武様です。すでにヨシノ自動車でも販売されている、EUトレーラーズのトレーラーを紹介しつつ、運送会社の課題を合理的に解決するためのヒントを伺いました。シェアを拡げるボルボ、スカニアに最適であり、2024年問題を解決する布石として大きなポイントになる同社の欧州製トレーラーについて語ります。

写真・関根虎洸
編集・青木雄介
WEB・genre inc.

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前沢武(まえさわ たけし)様:
1971年生まれ。1992年アートコーポレーション株式会社に入社。1999年某運送会社に転職後、2001年株式会社トランスウェブを設立。2022年EUトレーラーズを発足。

欧州製トレーラーの「リース」という選択肢

____EUトレーラーズは欧州製トレーラー(台車)の販売はするとして、リースという方向はないのでしょうか。

前沢:ヨーロッパで TIP という会社があるんですが、何千台というトレーラーを運送会社にリースしています(TIP:1968年にトレーラーレンタル会社として発足した世界規模のグループ)。例えば玉ねぎを運んでいる会社があるとして、シーズンオフはそのトレーラーは必要ありませんよね。だから一時的にトレーラーをレンタルしつつ、普段は海上コンテナや冷凍コンテナを生業にする。コンテックさん(株式会社コンテック:コンテナレンタルが中心のリース会社)もそんな会社ですよね。

中西:そうですね。コンテックさんは鹿児島の会社なんですが、市場的には北海道を押さえています。北海道が忙しいのは夏の時期から秋の時期ですよね。その間にどれだけ稼げるかなので、それこそじゃがいもから玉ねぎまで何でも運びます。そのトレーラー車両をリースで貸して、ドライバーが苫小牧や釧路に持って行くんですよね。北海道のオフシーズンは車両を西日本で活用する。コンテックさんは両方のマーケットのバランスを上手くとっているから、稼働率は年間を通して確保されているはずです。

前沢:そうですよね。「ビジネスが上手だな」と思っていました。我々もケスボーラーのトレーラーを利用してボルボやスカニアのユーザーさんに販売もしつつ、「リースをしていく方向性も良いのではないか」と考えています。ディーラー契約して頂いた会社に在庫車両を自社登録してリースしていくのも「アリなのかな」と考えてるんですよね。

中西:良いアイデアだと思いますね。我々もレンタカーはすでに30年ぐらいやっているのですが、その発想からきています。そもそも排ガス規制が始まった頃から都市部での代替えサイクルは飛躍的に早まっています。もともと10年ぐらい乗られていたトラックが7年で代替えされるようになり、そこに現金が追いつかないのでリースが当たり前になりました。 中小企業の運送会社オーナーさんも所有するという感覚から、車両をリースするという感覚が強くなっていっていると感じます。

前沢:ダンプのトレーラーはもちろん PTO が付いてないとダメなんですが、「需要は必ずある」と思っているんですよね。

中西:需要はあると思います。ただダンプだけでいえば通常の物流より運賃が高いのと、お客様自身がトラックに付加価値があることをよく理解しているので、「ちゃんと所有したい」という感覚が強いんですよね。我々がリース契約をしているダンプの運送会社さんもオープンエンド(リースする際に車の残価が契約者にも公開される契約方法)がほとんどで、クローズドで契約しているお客さんは1割程度です。

大型ウイングの代用ができるトレーラー

____なるほど。ダンプの運送屋さんは過渡期でまさに単車からトレーラー輸送へ移行が進んでいる分野だと思います。そういう意味でトライアル的に「ケスボーラーの外国製トレーラーを使用してみたい」というニーズはありそうな気もしますね。

中西:日本のマーケット的に常に新しいものに対しては、どうしても構えてしまうところがありますからね。とっかかりとしては良いのではないでしょうか。

前沢:2024年問題で、これからマーケットが大きく変わっていきますよね。我々としてはそれがチャンスだと捉えていて、「ケスボーラーのトレーラーなら単車3台分が一回で積載できます」というような提案ができる。「じゃあ2回戦行かなくてもいいな」と思ってもらえれば良い。今後はそのための体制づくりをしていきたいんです。それと大型トラックの寸法の概念もまだまだ根強いですよね。「いやトレーラーじゃ入らないからさ」って荷主さんに言われちゃうケースもまだまだあります。

____ありますね。

前沢:そこでいま私が考えているのは、連結全長12 M のトレーラーです。トラクタは一般的なトラクタで問題ありません。肩(ピンから前方のオーバーハング)は目一杯出ちゃうけど、そうすると内長が9100mmぐらい取れるんですよ。 そうすると1×1のパレットが16枚乗ります。一般的な大型ウイングと同じ物量が載るんですよね。それでリアが1軸だとすれば12トンから13トンの積載が可能です。3軸だったら30トン積載できるはずなんですよね。トラクタとの連結ベースで通常16.5 M として、実際は4 M 短いトレーラーとなります。

____「トレーラーは入らない」と荷主も言えなくなりますね。大型ウイングのトレーラー版ということですね。

中西:トラクタだけ持っていれば汎用性が効くということですよね。日本で大型ウイングの主流は4軸低床ですよね。9600mm×高さが2620mmとか。あの延長線上にあるのがスワップボディなんですよね。現在、試験的に運用されてます。どこまで浸透していくかは分からないけれど、あれよりは「トレーラーの方が可能性がある」と考えています。トレーラーに対する抵抗感がなければ、ですけど。

敷居が高かったロルフォ導入の経緯

____そうですね。積載量の問題と入口の敷居の低さということで、やはりトレーラー化が今後のトレンドになってくると思うんですけど、お話を聞いてるとそのトレンドにEU トレーラーズの欧州製トレーラーもあって、今後話題の中心になりえる気がします。そこでですが EU トレーラーズで輸入されるケスボーラー、ロルフォ、ファンエックの3社について教えてください。

前沢:そもそも入れたきっかけですが、販売する気はなかったんです。キャリアカーをボディメーカーに発注すれば2年待ちだ、3年待ちだという話になってしまいます。これから大型受注に備えなければいけないという時に、中古トレーラーをきれいにお化粧直しして使うといっても仕様がまるで合わなかったりするわけです。悩んでいた時に海外に行って IAA(ドイツ・ハノーファーで開催されるモーターショー)で話を聞いてくれたのがロルフォだったんです。

____そうでしたか。

前沢:ロルフォの担当者は最初、すごく不審そうな顔をしているんです。「本当に買うのだろうか」と。その場に非常に好意的なイタリア人がいて、「我々がイタリア製スポーツカーを運んでいる」という話をしたら「それなら他人じゃないなと」(笑)。

____敷居が高かったんですね。

前沢:高かったですね。そこからキャリアカーを入れる話になったのですが、そもそも幅を2550mmから2500mmにしなければいけない。高さを4 M から3.8 M に変えなければいけない。さらにキングピンの位置を変えたり、全長を変えなければいけないとかイタリア側からからすれば「めんどくさいな」と思うはずなんです(笑)。当然、それは1台では造ってくれないわけですよ。そこはスカニアで牽くことを前提に4台オーダーしました。

日本専用に設計されたセミトレーラー用キャリアカーのブリザードJ1。100%亜鉛メッキ加工で耐久性は抜群。自動ロックバルブシステム付きの油圧シリンダーで作動し、積載の安全性と効率性を高めます。上段を支える柱が少ないのでスピーディな積載を可能にし、美しいフォルムが「Made in Italy」を主張しています。
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中西:カープールにあったスカニアに連結されたキャリアカーがそうなんですね。

前沢:そうです。弊社で現在扱っているセミトレーラーの J 1とかはまた後の話なんです。カタログのラインナップに当然、セミトレーラーがあるんですが「ブリザード」と書いてあります。「なぜこれはブリザードと書いてあるのか」と訊いたところ、北欧のスカンジナビア半島はトレーラーの連結全長のレギュレーションが違うらしくて、20 M ぐらいまで行けるらしいんです。

中西:すごいですね。

市場が拡がれば購入コストも下がる

前沢:だからキャリアカーなら上に4台、下に4台、積載できます。ヨーロッパのフルトレーラーは上に4台、下に4台なのでセミトレーラーで同じ台数が積載できるんです。要するに、北欧ではフルトレーラーで動きの複雑なトラックを造らなくとも、セミトレーラーで十分らしいんですね。それがブリザードという北欧仕様のセミトレーラーなんです。そこまで長いのは日本では走れないですから、「これを6台積みにして短くすることは可能だろうか」と訊きました。「後ろは2軸になるよ」と言われたんですが、例えば我々が運送しているイタリア製スポーツカーは1台あたり2トンあるのもあるので、6台積めば12トンにもなってしまうんですね。

____なるほど。

前沢:余裕のある積載で運ぶことを考えたら「やはり2軸の方がいいのかな」と判断しました。結局、積載は17トンも取れました。今度はそれを8台導入しました。いま北海道で4本ぐらい使っています。北海道は高速をほとんど使わないから後ろが2軸でもいいんですよね(後ろが2軸になると特大料金になる)。後は長距離便のトレーラーで関東エリアから船で北海道や九州エリアに送っています。そんなわけで、まず仕様の決まったトレーラーを「自分ならこう使う」と頭を使って使用してきたんです。それで他の運送会社と差別化をはかり、他の運送会社が運べないような車も、我々は運べるようになって独自性を強めて仕事を獲得してきました。

____トランスウェブさんらしさですね。

前沢:「すごいね」って言ってくれる運送会社さんもあれば、やっかむ運送会社さんもいます。我々のトレーラーに共感してくれる仲間の運送会社さんの中には、「弊社でも導入したい」と申し出てくれる運送会社さんもありました。我々としてシェアしたくないのは高級スポーツカーの輸送ですが、キャリアカーに関しては「世界で使われているものだから隠していても仕方がないな」と。逆に市場が広がり、購入コストが下がるのであれば我々にもメリットがあります。そうやって仲間に販売するようになったのが、キャリアカーの始まりなんです。

漢気のある会社

____トランスウェブさんのニーズに合わせて導入が始まったんですね。

前沢:そうです。それとケスボーラーとファンエックの話なんですが、まずファンエックに関しては航空貨物をやっているお客様から要望を受けました。積載するのはジュラルミンの航空貨物運搬用の箱です。あの飛行機の腹下用の箱というのはちゃんと規格が決まっていて、162cmなんですよ。それを大型トラックに乗せて走っていたらしいんです。低床で運ぶと上が1 M ぐらい空いてしまいます。それだとやはり積載効率が悪いので、「なんとかできないものだろうか」と国内のボディメーカーにも相談しました。そうしたらベローズ(エアサスのゴム製パーツ)がついてるから、それ以上は低くできないらしい。それで造ると全高が4 Mぐらいになってしまうから「無理だ」と言われてしまいました。

____今度は全高との戦いなんですね。

前沢:その時に気になっていたのがファンエックというボディメーカーで、スーパーマーケットで使うようなカーゴを荷室の上と下で運べるようなトレーラーを造っていました。「これはモータースポーツで使えそうだな」と気になってはいたんです。それでスカニアジャパンに紹介してもらって、オランダに会いに行きました。「いけるな」と思ったのは車軸がトライデックという車軸で、タイヤの上にエアサスのベローズが付いていました。ベローズが腹下についているわけではないから「もっと床を低くできるな」と確信しました。結局は上下が1700mmと1700mmの寸法が取れることが分かりました。ということは1620mmの箱はいける。それで造ってもらったのがきっかけです。

____前沢さんの行動力がすごいですね。

前沢:結局、向こうのトレーラーというのは、外側は決まっていても内側は自由にレイアウトできるのが強みなんです。先方の経営者とは年齢も近いこともあって親密な間柄になりました。年間で6、7本オーダーしていましたから、彼らにとっても我々は上顧客だったはずです。ただファンエックという会社はオランダという先進国で、しっかりとした製品を造るがゆえに高コスト体質でした。それが仇になったのかもしれません。倒産してしまったんですよ。

____それは痛いですね……。

前沢:5年前ぐらいですが、我々は17本のトレーラーを発注していて手付金も20%ほど払っていました。そのファンエックを救済したのがケスボーラーの親会社で、トルコのティルサンという会社でした。私はオランダに行ってティルサンの担当者に言いました。「我々は17台をオーダーしていて、その手付金も払っている」と。彼らは「分かった」と言いました。手付金として払った20%は値引いた形で、新たに「我々で17本を造る」と言うんです。つまり1台、2000万のトレーラーであれば1600万で造ってくれるということです。その代わりに「20%は泣いてくれ」と言われました。その時、私は「なかなか漢気のある会社だな」と思いました。

中西:そうですね。

日本の海コン用シャーシを見て絶句した

前沢:これなら「今後もうまくやっていけるだろう」と。そのティルサンという会社には2つ子会社があって、タルソンと言う航空貨物を運ぶシャーシを造るボディメーカーとケスボーラーの2つをすでに持っていました。そこでまたファンエックとケスボーラーが兄弟会社になったんですよ。シュミッツとか、クローネとか、ケーヒルとかドイツには大手のボディメーカーがいっぱいあるんです。このクラスの会社に日本仕様に「トレーラーを造って下さい」と頼むと200台以上は造らないとオーダーできません。ファンエックとケスボーラーは兄弟会社になったし、親会社はトルコだから親日なんです。「今後、日本の市場も開拓していきたい」と言ってくれました。

____EUトレーラーズの礎(いしずえ)が出来ましたね。

前沢:それがケスボーラーと弊社がタッグを組むきっかけとなりました。それでティルサンの担当者であるトルコ人を日本に招待したんです。ドイツの担当者と一緒に、日本の市場を視察しに来てもらいました。1週間ぐらい滞在していて、私がハイエースに乗って彼らを案内しました。その時、大井埠頭で見た海コンの骨シャーシを見てすごく驚いていました。「日本は先進国のはずなのにこんな一昔前のシャーシのようなものを使っているのか」と。

____それは耳が痛いですね。使い倒していますからね。

前沢:千葉の市原に行ってタンクのトレーラーを見たり、ウイングのトレーラーを見たり、彼らの感想としては「もう30年ぐらい時代がずれている気がする」というんですよね。「我々の前の世代が造ったトレーラーがまだ健在だ」と。それって良いのか、悪いのかわからないですよね(笑)。

____物を大事にしているといえば大事にしていますが……。

前沢:彼らもそれを見て「これはビジネスとして勝算がある」と考えたようです。まずスタートは「海上コンテナのシャーシからやっていこう」と決めました。それで始まったんですよ。まずは20フィートと40フィートで伸び縮みのするタイプ。自分としては「ちょっと失敗したな」と思っている点がありまして、20、40で止めておけばよかったんです。それであれば前回りを、ギリギリ前に持って行く必要はなかったんです。それだったら、今までのヘッドだったら何でも引っ張れたはずなんです。

____45フィートも引っ張れるようにしたのが仇になってしまったんですね。

前沢:これから「45フィートの需要が増える」と思ったんです。

中西:確かにちょっと早かったかもしれないですね。

海コンドライバーも自分のシャーシを持つ時代が来た

前沢:前回りをギリギリまで持ってきてしまっているから、キャビンの後ろに工具箱を付けているようなトラクタだと当たっちゃうから牽けないんですよ。ボルボやスカニアなら問題ありません。カプラー位置をちょっと下げなければいけないし、国産の運送会社さんには二の足を踏んでいる状態ですね。それはそれとしてもう仕様は決めてしまったので、今年は「40フィート専用のシャーシを導入したい」と考えています。それなら前周りを絞ったのでトラクタなら何でも牽けます。ヨーロッパでは20フィートと40フィートを伸縮させるのが主流なので原価が安いんです。我々が販売している価格も700万円ですし、ほとんど利益を得られていないのでお客さんからしたら「お買い得かな」と考えています。

____現在の相場から言って40フィートの専用シャーシはどれぐらいの値段がするんでしょうか。

前沢:エアサスなければ300万円ちょっとぐらいじゃないでしょうか。

中西:エアサスがついて3軸にリフトアクスルもつけば500万円半ばぐらいじゃないでしょうか。

____それぐらいだと EU トレーラーズのトレーラーシャーシとそんなに値段は変わらないですね。

前沢:ダブルタイヤだと640万円で販売しているので、ほとんど変わらないです。どうしても日本の市場だとトラクタとトレーラーのタイヤを一緒にローテーションさせたいので、ダブルタイヤにならざるを得ない。ダブルタイヤにすると、フレームを細くしなければいけないらしいんです。毎日、午後4時ぐらいになるとヨーロッパとのそういうやり取りが始まるので、細かい仕様の打ち合わせや通関手続の予約、輸送の予約など長い時間が始まるんですよ(笑)。

20フィートから40フィートへの伸長に所要時間はたったの5分間。ロックを外し、ボタン操作だけで自動的に伸長します。20フィート、40フィート、45フィートに対応し、欧州製トラクタとの相性は抜群です。
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____ なるほど。やはりどうにも伸縮するトレーラーが画期的でもう少しお話が聞きたいです(笑)。まず利点としては20フィートと40フィートを両方行けるので、保有台数が減らせますよね。シャーシを繋ぎ変えるためにプールへ行く時間を考えると、ターミナルで積み待ちしているときに伸ばしたり縮めたりできるのは最高ですね。さらに海コンはオーナードライバーが多いので、シャーシも「自分で用意したい」と考えるドライバーは多いのではないでしょうか。

前沢:スカニアやボルボに乗っているお客さんは「特にそうだ」と思うんです。ケスボーラーはリア周りにマッドフラップがついていて、欧州らしいトレーラーシャーシです。やっぱり恰好いいんですよね。特に水戸や前橋などの近郊から来ている海コン会社は、気軽にトレーラーシャシーを切り替えられないので、平和島辺りに駐車場を借りなければいけないわけです。それがなくなるから、ランニングコストは抑えられるし、メリットは大きいと思うんですよね。

____なるほど。

前沢:それとフレームも電着塗装をしているので、スカニア、ボルボと同じ塗装の仕方をしている。オーナーならご存知だと思うんですが、欧州製トラクタはサビにとにかく強いですよね。EUトレーラーズとしては「実用性のあるトラックを輸入したい」と考えていて、まず第1弾は海上コンテナ、第2弾はダンプ、第3弾はローベッドと言われている重機回送用のトレーラーを輸入販売します。どれも国産だと納期のかかるトレーラーばかりですが、すべて同じヘッドで牽ける汎用性の高さもメリットです。スカニアやボルボのヘッドで PTO さえあればダンプも牽けます。それで「経営環境のサポートもできれば」と考えているんです。例えば重機回送を主な仕事にしながら、仕事の薄い時は海上コンテナを牽いたり、適時仕事をすることができるのが「トラクタの良いところだな」と思っているんですよね。

欧州の物流スタンダードを日本のスタンダードへ

____確かに積荷に幅があって用途が広いのがトラクタのいいところですよね。

前沢:失敗もあるんです。カーテンレールのついたトレーラーも過去に10台ぐらい輸入していたのですが、自分たちで使うだけで「おしまいかな」と思っています。やはりなかなか理解してもらえなかったですね。雨漏りするわけないんだけれど(布地に穴が開いて)「一滴でも水滴がついて荷物が濡れたらどうするの?」と心配されたり。これまで運送屋さんが荷主さんの言う通りにしてきて「説得できなかったんだな」というのがよく分かるんですよね。

____なるほど。

前沢:ともかく今後としては海コン40フィートで伸び縮みしないシャーシを導入します。ダンプに関しては産業廃棄物を運搬できる 32立米の深ダンプを導入します。ローベッドは3軸だったものを4軸にして横幅が伸び縮みするタイプを導入したいと考えています。アスファルトフィニッシャーや掘削機のような大型重機を運搬できるトレーラーです。4台ぐらい造って試験的に導入してみて、弊社で使用することはないのですが「欲しい」というお客さんには販売したいと考えています。ケスボーラーの考え方としてもお客さんのニーズの90%は満たすことができる。でも「残り10%は使用する側で解決して欲しい」という考え方なんです。完全なオーダーメイドではないけれど、ロットでまとめて生産しているから値段は安い。アパレルで言えば H & M や ZARA のような考え方なんですね。

油圧ステアリングを備え、横幅を伸長させ最大幅3100mmまで対応する重機運搬用トレーラー。亜鉛とアルミニウムによる電着塗装で耐久性もピカイチ。
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____オーダーメイドじゃなくて既製服ですね。

前沢:そうです。「幅が2990mmじゃなければ駄目だ」と言うのであれば、専用のオーダーメイドを買えばいいわけです。2990mmの幅の重機を運ぶのは10回に1回だとして、他もすべて2990mmの幅で道を走るとはおもえない。EUトレーラーズとしては合理的な考え方やマインドをもっと広めていきたいんです。

中西:1番のキーはそこかもしれないですね。運送事業によって違いますけれど例えば海コンであれば歴史が何十年とあるわけです。新規参入という意味で、お客さんは新規参入しているかもしれないけれどルールは固定化され変わりようがない。「こういうものだ」という固定観念に縛られています。これだけ先進国と言われながらも、物流の仕組みは変わることなく 20フィートと40フィートのシャーシを両方持っている。

____その通りですね。

中西:現場では20フィートと40フィートを切り替える手間や時間のコストを「めんどくさいな」と思いながらも、その場で20フィートと40フィートを切り替えるシャーシを持つという考え方にはいかない。結局のところ、20フィートと40フィートの両方を持って、そのシャーシのコストを徹底的に下げることによって「採算が合うね」というデフレ傾向の考え方をしているんですよね。

「慣習」が労働生産性を上げさせない

____デフレだし、同じ作業着を「まだ着られる」といって20年間、くったくたになるまで着倒すみたいな話ですよ。

中西:でも特にこの数十年はこの傾向で来てしまったんです。だから新しい発想が生まれなかったんですよね。ここにいらっしゃる前沢さんもそうだし、セノプロさんもキャリオンさんも、「トラック業界自体を盛り上げていこう」という抽象的な表現ですが、労働環境を良くしていったり、運賃を上げていったり、ドライバーの給料を上げていったり、いろんなことを解決することが目的です。でも最終的には運送会社さん自体が労働生産性をあげる努力を当事者として、していかないと我々が「いくら盛り上げよう」と言っても、どうしても頭打ちになってしまうんです。本質はとにかく「実務の労働生産性をいかに上げるか」ということ。そこに本気に取り組んでくれないと、我々が良いトラックを手に入れやすい環境を整えたとしても「根本的なサポートにはならない」と考えるんですよね。

____すごくいい話ですね。その労働生産性を妨げる一番の要因とは何でしょうか?

中西:私は「慣習だ」と思っています。ただこれはトラック業界に限った話ではないですけどね。我々も危機感を持っていて、弊社のレンタカー部門にまったくの異業種から人材を募りました。「我々のシステムだけでは人は育たない」ということを知らされてしまったので、違う価値観を持った人材を入れて「体質を根底から変えていかなければいけない」と思っているところです。やっぱり慣習に縛られているんですよね。先輩がこうしていたから、前からこうやっているからと、そこに疑問を持たないから会社は変わらないんです。

____確かに。

中西:運送業界というのは10社中9社は「儲からない儲からない」と言います(笑)。それでもリーマンショックの時も、コロナ禍の時も、他の業界ほど大きな打撃を受けることはありませんでした。目線を変えてみると、運送業界のボトムというのは比較的余力があるのかもしれませんね。

____なんか分かります。「社会のインフラ」と言われて「物流業界はなくならない」というような、根拠のない自信に支えられているのかも知れません。

前沢:我々も運送会社を20年間やってきていますが、起業当時はいろんなものにお金がかかります。洗車するのに水はどこから引くか、とか考えているのに、数年経つとそこに洗車機が導入されていきますよね。そんな風にモノが揃ってくるのに10年です。たとえばタイヤが分かりやすいです。使い古したタイヤも「まだ使えるだろう」と使えば使うほど出費は控えられます。そのうち「タイヤチェンジャーを買えば自分の所でタイヤ交換もできる」と設備投資をする。整備も自社で始めて、3検ぐらいなら自社で出来るようになる。つまり成長するにつれて、外に出て行っていたお金がどんどん出て行かなくなるんですよ。そうなると運送業というのは簡単に倒れなくなる気がします。

簡単には倒れないから、手遅れに気づけない

____面白いですね。1度形が決まってくると簡単には倒れない構造になってくるんですね。

前沢:そうだと思います。当然、車が増えて来れば月賦の終わった車が増えていきます。 そうなるとお金がかからなくなる分だけ利益も出てくるから、より長期的な経営が可能になってくるんだと思います。

中西:そこで会社として利益が出ているから、さっきの海コンシャーシの話ではないですが、疑問を持たなくとも経営としては成り立ってしまう。

前沢:だけどそういう経営体質だからこそ、経営者が「あ」と気付いた時には手遅れになるケースが多いんです。そう簡単に軌道修正できる体制ではなくなっていますからね。資産であるトラックを売って換金すると言っても二束三文ですからね。

中西:運送業界に限らず、手遅れに気づけない経営者は生き残っていくのは難しいと思います。その意味で時間軸を長く見ながら適時、手を打った会社は物流業界では安定していると思いますね。

____その経営の効率化というところで、ちょっと気になっていたのですが、 今後はトラクタでなんでも牽けるトレーラー輸送に特化した会社が成長していくような気がするのですがいかがでしょうか。

中西:それはあくまでも最終型だとおもいます。どの業界もそうですが物流業界も M & A が進んでいます。その点は運送会社さんの方が進んでいます。逆に我々のような中古トラックの目利きというのは、その人にしかできない属人性が強いからM & Aはあまり例がない。物流業界というのは先ほどの話のように環境さえ整えば回っていくし、だからこそ M & A も割とスピーディーに進むのだと思います。その先にはトレーラー輸送に特化した会社というものが出てくる可能性はあるかなとは思いますね。

____なるほど。

中西:トヨタのKINTOのようにトレーラーのサブスクのような会社も現れるかもしれません。運送会社はトラクタだけを持っていて、トレーラーはサブスクの会社に借りるという事業形態もありうるでしょう。もちろんキャリアカーのような専門性の高いトレーラーは難しいかもしれませんけどね。ただ経営効率性だけで言うと、トラクタに特化した会社というのは今後伸びる気がしますね。

トレーラー輸送で24年問題を解決するには

____そうなんですよ。深ダンプがどんどん3軸のダンプトレーラーに変わっていく潮流を見るにつけ、トラクタだけを保有したトレーラー輸送専門の会社というのはすごくあり得る気がします。

前沢:今までの単車のダンプがケスボーラーのトレーラーになった途端、単車の3倍積めます。3往復しなければいけないところを1回で終わらすことができる。効率は上がりますよね。機材を変えて効率を上げることによって売上を上げて、ドライバーの給料を上げる。これこそが我々の狙いだし、2024年までに準備しなければいけないところだと思います。後は長距離ですね。この間、鹿児島の運送会社の方とお会いしまして、鹿児島からの農作物を20時間以上もかけて東京の大田市場まで運ぶらしいんです。途中で休んでいたら、作物がダメになっちゃう。魚もそうだし「これからどうしたらいいんだろう」と頭を抱えていました。

____分かりやすい例ですね。長距離の特急便はどうしたらいいんでしょうか。

前沢:この問題は弊社でも課題になっていて、我々も全国に納品している以上、長距離運行もあります。西向けに走って行くと愛知の豊橋に営業所があって、大阪にあって九州にあって計3拠点あります。加えて今度、神奈川にも営業所を作ります。場所は大井松田ですが、本社のある富里から夜中だと2時間、昼だと3時間ぐらいかかります。都内で積んで神奈川の営業所まで戻って降ろして富里に帰ってきて一日終わり。夜中だと富里、大井松田間は2往復行けますね。名古屋営業所だとそこから4時間、大阪営業所へはさらに4時間です。ということは4時間走って、4時間かけて戻って帰れるんですよね。8時間の場合は1回、お休みしてそこで寝てくださいとする。

____なるほど。8時間労働が保てますね。

前沢:2の倍数のところに営業拠点やドッキング拠点があると 2往復行けたり1往復で済んだりシフトが組みやすい。自分としては4時間なんですよ。なぜかと言うと8時間だとお互いが走って、単線の電車みたいに駅で台車を交換して運転手がそこで乗り換えたとしても帰ってこれない。これだと毎日、帰れないんです。4時間だと自分が行って、帰れますよね。忙しくなればお互い、そのまま走ればいいんですよ。そこで先ほどあがったトレーラーの専門会社の話ですが、私は「牽き屋さん」という職腫があるといいなと思うんですよね。そうすれば鹿児島から我々の九州の営業所までアライアンスを組んだ牽き屋さんが、荷物を積んだトレーラーを牽いてきてくれる。我々は九州から大阪、名古屋と自社のトラクタで配送する。

運送費は必ずあがっていく

____トレーラーの駅伝マラソンですね。

前沢:それを可能にするのはスカニア、ボルボのトラクタなんですよ。スライドカプラーがついていて、エアサスで高さも調節できる。キャリアカーから冷凍車まで牽くトレーラーの汎用性が高いのは、スカニアとボルボなんですよね。

____なるほど。

前沢:ドライバーが変われば、休憩時間なしでトレーラーを東京まで届けることができます。上りは冷凍車、下りはキャリアカーという風に。

____ものすごく合理的ですね。急ぎ便でなければフェリーで送ればいいわけですから、やはりそこでもトレーラーは欠かせませんね。

中西:現にこの10年でトレーラーをフェリーで運ぶのは定着してきています。現場でも一気に増えたと聞いています。

____物流の合理化によって低コストも実現できるわけです。ニトリのような家具メーカーも、徹底的に物流の合理化を図ったからあれだけ大きな企業になったわけですし。

前沢:IKEAもほとんどロジスティックの会社と言って過言ではないですからね。だからこそあの値段であの品質の物が買える。でもそれを運送会社にしわ寄せして、自分たちの利益にしようとしても需要と供給のバランスが逆転しているので、運送会社が断る時代になってきました。ようやくですね。今後、運送費はどんどん上がっていきますよ。

____そうですね。合理化はしなければいけない。でも一方的に負担をおしつける会社の仕事はやれないですよ。

前沢:課題としてはまだまだドライバーを志す人材が少ないことです。でも中西さんやセノプロさんたちと「みんなのトラックフェス」のようなイベントをすることによって、かつてのトラック野郎のイメージは薄れつつあるのかなと思います。これは非常に良い傾向だと思っていて、もちろん我々もトラック野郎に憧れた世代ですし否定はしないんですが、まだまだマナーの悪いドライバーがいることも事実です。イメージも含めて今後変えていきたいところです。

2024年問題をチャンスに変える

____2024年問題は「問題問題」と言われますが、業界全体で労働環境をよくできる良い機会なのかもしれませんね。

前沢:そうなんですよ。ピンチはまさしくチャンスだと思います。この先、物流業界は日本人だけでは回せなくなる時代が来ます。そうすると海外のドライバーを雇入れなければいけない時代になると思います。でも日本語ができないと「世田谷の何番地に持っていって」というようなことは難しいですよね。そういう日本語が出来なければ出来ない領域というのはあるにしろ、さっき僕が言っていた幹線のマラソン輸送は外国人でもできると思うんですよ。

中西:ヨーロッパなんかは全部が陸続きになっていて、各国のドライバーが運んでいるんですが、一方でトルコやパキスタンといった移民のドライバーも多いですよね。例えばドバイでもアラブ人のドライバーは見ないです。

前沢:ヨーロッパも主流は移民です。イタリアの運送会社と話をした時にトルコやパキスタンといった国々の他にも、ベネズエラやブラジルといった南米の国からも出稼ぎに来てるという話でした。ドイツではメルセデスのスプリンターというバンに乗って、20人ぐらいのハンガリー人がドライバーとしてきていましたね。代わりに故郷に帰るハンガリー人が20人ぐらいまた乗っていくという(笑)。日本もいずれそうなりますよ。そのヒントがヨーロッパにはいっぱいありますね。

____ 確かにその通りだと思います。労働力の確保のために、むしろ言葉の違いが障壁にならないような業務へ改善していく世の中になるのかも知れません。

前沢:実務をいかに効率的に変えていくかというところで、その引き出しが日本人は少なすぎるという印象なんです。もっともっと世界に目を向けるべきだと思いますね。

中西:やっぱり島国なんでしょうね。

前沢:そう思います。

____好き嫌いは別として、4軸低床という独自規格が主流の国ですからね。

中西:そうやって外国のメーカーが入れない仕様にしてガラパゴスにしてきたんですよ。結局、国内メーカーが2024年問題に対応できるようなトラックを作っていこうと考えていても、自分たちのルールで作り上げた市場なのでそもそも自由市場じゃないんですよね。だからこそヨーロッパのような自由競争の中で、効率性や安全性を優先するために、ものづくりをしてきた人たちから見れば基準がかけ離れて見えるんですよね。

ユーロシーンを牽引する両社の今後について

____了解しました。今後 EU トレーラーズとヨシノ自動車はどういった商流が考えられるでしょうか。

前沢:もちろんぜひ販売をお願いしたいところです(笑)。

中西:弊社としても(EUトレーラーズのトレーラーを扱うにあたって)非常に良いタイミングです。昨年、国産メーカーの新車不足という事態に見舞われましたが、幸いにしてボルボは供給がしっかりしていて販売も対前年比130%を超えました。それに加えて、今回の話のテーマであるトレーラーニーズは年々高まってきています。それを象徴するのがトレーラーダンプの増加だと思うんです。5年前ぐらいにリニアの工事で「単車のダンプではなくトレーラーを使用する」というところから始まったブームだと思うのですが、それがきっかけになって今後もどんどん伸びていく車体だと思います。安定供給されるボルボと高まっていくトレーラーニーズ、それに加えて年内予定の木更津工場もスタートします。我々はボルボディーラーなのでアフターサービスをしっかりやりたい。ですから今後トレーラー販売の全体シェアを上げていく、いいタイミングだと考えています。

前沢:木更津工場では販売もされるんですか。

中西:基本的に川崎が本社なので木更津をサービス拠点と位置付けています。千葉マーケットを開拓しようとは思っていませんが、サービスをするにつれ勝手にそういう話は来るだろうと考えています(笑)。先方の事情で来る分を対応したいとは思いますが、あくまでも川崎工場のキャパ不足を補う拠点です。引き続き国産トラックも扱いますが、今後はよりボルボトラックを柱としたサービスを拡大していきたいと考えています。その柱のひとつはトレーラーですね。そこに弊社の事業の伸びしろがあると考えています。

前沢:今度、ボルボのロングホイールベースが出るんですよね。

中西:発売されますね。今年の4月以降に導入されます。ステップEというタイプで長さはG尺と言われているタイプですね。ホイールベースは3.8mでキャリアカーに使用できます。

前沢:カプラー位置は低くできるのでしょうか。

中西:多分できると思います。

前沢:そのロングホイールベースのボルボは、ロルフォのキャリアカーと「セットでいいな」と思っていたんですよね。それだけホイールベースが長いとカプラーをもっと前に出せるから積載ももっと取れるはずなんです。

____キャリアカーは重量にこだわるんですね。

前沢:後ろが1軸ですからね。高速は大型料金で、目一杯長さをとって台数を載せたいんです。国産なんかでもカプラー位置を目一杯、後ろまで持ってきて対応していますよね。あとはボルボにはダンプトレーラーがおすすめですね。弊社としてはインポーターに特化したいんです。輸入して予備検まではこっちでやるんだけれど、そこから先のアフターは販売店さんでお願いしたいんです。例えば横浜のお客さんが「ロルフォを欲しいんだけど」といえば「ヨシノ自動車さんでお願いします」というように。

____販売もディーラーと同じで地域制なんですね。

前沢:それがみんなで仲良くやれる秘訣なんです(笑)。

中西:一番当たりさわりがないんですよ(笑)。

前沢武(まえさわ たけし)様:
1971年生まれ。1992年アートコーポレーション株式会社に入社。1999年某運送会社に転職後、2001年株式会社トランスウェブを設立。2022年EUトレーラーズを発足。

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