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新型ボルボFH(2021年モデル)

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最速!試乗記 “変わったところを徹底解説” 新型ボルボFH(2021年モデル)

最速!試乗記 “変わったところを徹底解説” 新型ボルボFH(2021年モデル)

2021年11月に待望の日本モデル発表を果たした新型ボルボFH。2018年のモデル変更は安全快適装備を充実させ、出力アップ、ボルボ・ダイナミックステアリングを導入したほぼモデルチェンジといえる内容のマイナーチェンジでした。今回はさらにエクステリアや内装を変更し、大幅な進化を果たしています。

V字型ヘッドライトを導入し、ミラー形状は本国仕様(ユーロミラー)に。運転モニターは液晶化され、サイドディスプレイはタッチ型のインフォティメントパネルとして使用でき、各種の出力調整および死角防止のパッセンジャーコーナーカメラへのアクセスを可能にしています。この記事では一段と進化したボルボFHの全貌を明かすのと同時に、なぜこれだけ短期スパンでの進化が可能なのかを探っていきます。

文&写真:青木雄介

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洗練のV字型ヘッドライト、より個性を出しやすくなったグリル

新型ボルボFH(2021年モデル)

まず正面のV字型ヘッドライトです。ほとんどコーナーシグナルのようなヘッドライトですが、昼間もデイライトとして常時点灯します。今回、ヘッドライト形状の変更に加えて「アダプティブ・ハイビーム・ヘッドライト」が導入され、夜間の視認性が向上しました。

日野のプロフィアでも採用されている「基本的に上向きのライト」で前の車や対向車を感知した場合、そこは照らさないようにするシステムです。コーナーシグナルがドア脇に移動したことで、正面からのヴィジュアルもよりすっきりと洗練されて見えます。正面のアイアンマークは大きくなり、フロントグリルのグリル地もボディと同色になったことで、いちだんと個性が出しやすくなりました。

新型ボルボFH(2021年モデル)

また本国仕様のドアミラーが標準となり(通称:ユーロミラー)、サイバーで近未来的トラックの様相をていしてきました。左ドアミラーの下には超小型のパッセンジャーコーナーカメラが内蔵されていて、左折時には左下のコーナー死角をカバーします。

より上質になったインテリア

新型ボルボFH(2021年モデル)

さてキャビンに上がってみましょう。ステップはプラスチックと金属製のアンチスリップ(滑り止め)を組み合わせた新デザインです。雨や雪の日でも滑らなさそうになったのに加えて、踏み心地の柔らかさ、視点を足元に誘導する巧みなデザインです。

キャビンに上ってみるとグローブトロッター仕様の天窓の光がまぶしくて、「ボルボの車内」という安心感が生まれます。シートのシート地はシンプルなファブリックが採用され、シートベルトはシート一体型です。乗り込んでからスターターを回すまでのランニングを非常にスムースにしています。

情報量は豊富に、見やすくなったドライバーディスプレイ

新型ボルボFH(2021年モデル)

イグニッションを回すと新導入された12インチの高解像度インストルメントディスプレイが起動します。非常に見やすくなり情報量は豊富です。例えば残燃料から可能走行距離を出してくれたり、燃費情報を見ることが可能です。

中央はスピードメーターですが、走行速度近くを強調してくれるので非常に見やすいです。今回ISO基準の道路標識を認識し、制限速度を表示し、ドライバーに注意を促す機能を導入しました。今回の試乗では確認をする事が出来ませんでしたが、プロドライバーにはことさら有難い機能と言えるでしょう。

ちなみにエンジン回転数の表示優先度がだいぶ下げられています。ベテランドライバーならシフトの切り替えタイミングを見るのに回転計は重要なアイテムなのですが、これには理由があります。ボルボは自分で操作できるマニュアルモードがあるものの、I-シフトに任せることを推奨しています。低回転でもっとも負荷をかけず、ストレスのない走行をするためにプログラムされているので「お任せ」が基本なのです。必然的に自分で操作する頻度が多くなると故障も多くなる、とのこと。この点は最新型のトラックならではと言えるでしょう。

スポーツカーのデュアルクラッチにも似て、エンジンにもっとも最適化されたシフトを選ぶI-シフトなので「ドライバーの好み」は「ドライブモード」で選択すべきということなのでしょう。

見やすいユーロミラーとサイドディスプレイの役割

新型ボルボFH(2021年モデル)

左側には9インチのサイドディスプレイが導入されています。タッチ式で各種インフォティメントが表示され、パーソナル設定が可能となったボルボ・ダイナミックステアリングの調整や、増設可能なデジタルカメラのモニターとして使用できます。左折時には自動的に車体の左端部分を映し出し、安全運行をサポートします。

ドライバーシートから見る、標準装備になったユーロミラーは文字通りの死角なしです。左右にアンダーミラーがつき、左側には死角を補うパッセンジャーコーナーカメラがついています。ボルボのドライバーならもうすでにアフターパーツで導入している方も多いと思いますが、一度慣れてしまうと従来の折り畳み式ミラーには戻れないはずです。

乗降時の折り畳みはもちろん、狭い現場や込み合ったパーキングエリアなどステーを畳んで障害物をやり過ごさなければならなかったシーンは幾度となくあったはず。あのストレスから解放されるのは大きいですね。

よりシフトショックが少なくなったI-シフト

新型ボルボFH(2021年モデル)

エンジンをかけると13リッター直列6気筒エンジンが目覚めます。明らかに静かになった先代の2018年モデルに比べると静粛性はわずかに上がったか、ほぼ同程度。人間工学に基づき小型化され新デザインになったシフトレバーは非常によく手になじみます。

シフトレバーのデザインはほぼ10年以上にわたって変更がなかったので、嬉しい変更ですね。以前のシフトレバーは着替えるためなどフロア内を行き来するのに邪魔になる場合もあったのですが、これならほぼストレスはありません。

肝心のI-シフトは相変わらず絶品で13リッターエンジンをよく手なづけています。地力のあるエンジンに低速でよく効くトルクがターボと相乗することで、ボルボFHならではの自信に満ちた力強い走りにつながります。

2018年型でI-シフトの進化によりさらに速くなったシフトレスポンスですが、最新型ではさらにシフトショックの軽減も図られています。どん欲なまでの上質さの追求は乗るたびに感動し、最大の賛辞を贈りたい走りでした。流行のきざしがあるハウジングトラックなども、走りにこだわるならシャシーはボルボFHが正解ではないでしょうか。

余裕の13リッターでも低燃費の直列6気筒エンジン

新型ボルボFH(2021年モデル)

ドライブモードは「エコノミー」が基本のポジションです。低速からしっかりターボを効かせて、アクセルを抜くとニュートラル状態を使いこなすボルボらしい走りで、13リッターと巨大なエンジンでも抜群の低燃費を誇ります。

「ノーマル」「パフォーマンス」モードはターボに加えて、13リッター直列6気筒エンジンの地力の恩恵を感じるでしょう。カタログ値では1000回転付近から1500回転付近がトルクピークですが、低い回転数で最大のけん引力を出しつつ、1200回転付近から2000回転まで出力帯域にバトンタッチし、気持ち良く走ります。

これは野球で言うとバットを振るのに振り出しからボールに当たる瞬間に最大トルクで当て、そのままバットを気持ち良く振り切る動作(出力)に似ています。

この気持ち良く振り切れるポテンシャルが、エンジンの地力と言えるかも知れません。昨今のダウンサイジングエンジンでだいたいがっかりさせられるのは、振り切りで失速させてしまう「当てるだけ」のバッティングに似ているからです。

その違いは、積載重量が大きくなるほど差となってあらわれます。余計に回転数を上げれば燃費も悪くなります。燃費に効くはずのダウンサイジングエンジンが期待したほど効果が出ないというのも、出力をかせぐために高い回転数を維持したくなるドライバーならではのマインドによるところが大きいですね。

自分好みに調整できる新しいボルボ・ダイナミックステアリング

新型ボルボFH(2021年モデル)

今回は前車追従機能であるアダプティブクルーズコントロールが0km停車および発進まで対応したのと、下り坂での速度超過を防ぐダウンヒルクルーズコントロールを搭載しました。長距離走行では重宝しそうなのと、クルーズコントロール状態では低燃費走行に徹するので積極的に使用していきたい新機能です。

また2018年型より非常に軽快なハンドリングに変わったボルボ・ダイナミックステアリングですが、今回はハンドルの重さ応答速度を4つの項目で自分好みに調整することが可能になりました。「軽すぎる」というプロドライバーならではのこだわりに、さっそく対応した手腕には驚かされました。

試乗時にサイドディスプレイが使用できなかったため、調整はできなかったのですが、走り出しから軽すぎることはなく適度な重さに調整されていました。個人的にはそもそも軽すぎるデメリットは感じなかったのですが、相変わらずアライメント調整したてのクルマのようにビシっと真っすぐ走るボルボ・ダイナミックステアリングの恩恵は大きいです。

多少の段差でもハンドルへの影響は一切ありません。多少、速度に乗ってくると、真っすぐ走るにしても適度な抵抗があった方が運転はしやすいです。これもトライ&エラーで必ず修正点を見つけるボルボのモデルチェンジの醍醐味かも知れないですね。

揺らさず自然に止める。進化した連動するサスペンション

新型ボルボFH(2021年モデル)

また乗り心地もさらに良くなった印象です。2018年型のモデル変更からパーツは何ひとつ変わっていません。それでも段差などの大きな入力に対して車体を揺らすことなくしっかり受け止めます。大風の日はヘッドが揺れるという腰の高いボルボならではの悩みも、おそらくですが解消しているのではないかと思います。

これは路面入力に対して、足回りのサスペンションからキャブサスペンション、最後にはシートサスペンションが連動してドライバーに負荷をかけないようにするのですが、最新型はパーツを換えることなく減衰率の調整のみで最適解を探し当てています。揺らさず、静かに止まる感覚はむしろ自然にとめる止め方にこだわったもの。

サッカーでよく言われる「ボールを足元で止める技術(トラップ)」にも通じています。来たボールを自分の思い通りの場所に置くためには足でボールの衝撃を吸収し、確実に受け止めなければいけません。この止め方が、揺らさず路面入力を受けとめる走りの上質さにつうじる訳です。パーツを換えずにより良くなる現象は時間をかけて試行錯誤し、調整を重ねた熟成の結果に他なりません。

試乗後のまとめ

新型ボルボFH(2021年モデル)

今回のフルモデルチェンジでは、世界で2位のシェアを誇るボルボ・トラックならではの進化でした。モデルスパンが10年以上と長いトラックの歴史において3~4年で大型のモデル変更が入る意義は非常に大きいです。特にリースを利用し、3~5年で乗り換えていくドライバーや企業などにはうってつけです。

乗り慣れたモデルの新車ではなく、進化を体感できる最新モデルに乗れるわけですからドライバーのロイヤリティも高まるでしょう。今回のモデル変更はまさに、ボルボをよく知っているドライバーが一番驚きを覚えるだろうモデル変更です。あらゆる面で進化し、たとえば調整が可能になったボルボ・ダイナミックステアリングなどは「そこまでやるか」と、開いた口がふさがらないドライバー本位の追求ぶりです。

同じモデルが14年続く日産GT-Rを例にとれば、車型を変えずとも毎年、年次変更を入れることで「よりよいスポーツカー」の進化を続けることが出来ます。これこそが熟成で、ボルボFHの進化もトライ&エラーの賜物。すなわち熟成なのです。

新型ボルボFH(2021年モデル)

先進的かつ、よりスピーディなボルボFHの進化は世界第2位のシェアをもつ開発力と、必要とされる商品のポテンシャルが世界レベルで高いことに他なりません。この2021年モデルで「他メーカーとの差はより大きくなった」と感じました。定評のある燃費性能、進化したボルボ・ダイナミックステアリング、I-シフト、乗り心地に居住性、静粛性などドライバービリティーを向上、あらゆる面で選ばない理由が見当たらない先進的なトラックです。

そしてそれ以上に、選ぶ理由以外の魅力が高いのも特徴的です。それはドライバーとして日々の運行で理解できることですが、乗りやすく居住空間としても優れたトラックになるための知恵が満載されていて、乗れば乗るほどその魅力が理解できるトラックだからなのです。

新型ボルボFH(2021年モデル)ボディと同色のノーマルグリル

新型ボルボFH(2021年モデル)ユーロミラーの視認性は抜群ですね。

新型ボルボFH(2021年モデル)ウインカーはドアのサイドに取り付けられ、他車からの視認性が高まりました。

新型ボルボFH(2021年モデル)アドブルータンクはふたたび燃料タンク横に配置しなおされました。

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