株式会社ヨシノ自動車

トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第100回

クラリオンライフサイクルソリューションズ株式会社 R&D シニアマネージャー 高林 靖 様

クラリオンライフサイクルソリューションズ株式会社 R&D シニアマネージャー 高林 靖 様

「走り続けるクラリオン。トラック業界に挑む、新時代のソリューションとは!?」

「安全性」と「快適性」、そして「スマート化」が求められる現代の商用車業界。そんな中で着実に存在感を高めているのがクラリオン様です。カーナビゲーションやオーディオの分野で名をはせた同社が、いまその領域を超え、トラック業界に特化したクラウド型の運行管理ソリューションや安全支援システムの開発・提供へと舵を切っています。 今回の「鍵人訪問記」では、ファストエレファントにデモカーをご用命いただいたことをきっかけにしつつ、業界の未来を見すえた技術開発の現場や、日本的な商習慣とグローバル戦略との狭間での葛藤、さらには“走り続ける”という信念について和気あいあいと語っていただきました。クラリオン様が描く、これからのトラック社会の姿とは、どんな姿なのでしょうか。

編集・青木雄介
WEB・genre inc.

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高林 靖(たかばやし やすし)様
クラリオンライフサイクルソリューションズ株式会社 R&D シニアマネージャー。1981年 千葉県柏市生まれ。2004年にクラリオン株式会社へ入社。ナビゲーション機器や車載向けクラウドサービスの国内・海外向け商品企画に従事。2012年からのヨーロッパ駐在を経て、2019年の仏Faurecia社によるクラリオン買収後は、全世界の自動車メーカー向けメガサプライヤーとしてのグローバル営業戦略に従事。2022年より国内商用車向けアフターマーケット領域を担当するビジネス部門のクラリオンライフサイクルソリューションズへ異動し、商品企画と先行開発の責任者を務め現在に至る。

それ以前のデモカーが……

ーーー今回は記念すべき100回目ということで、ビジネスパートナーにあたるクラリオンさんに伺いました。ファストエレファントへの最初のご依頼は、「とにかくかっこいいトラックを造ってほしい」という内容だったと聞いています。

高林:そうなんです。「最大積載量は10キロでいいから」なんて冗談も言いました(笑)。なぜこのトラックを作ることになったかといいますと、私は2004年に大学を卒業してクラリオンに入社し、それ以来ずっと商品企画の仕事に従事してきました。最初はナビから始まり、iPhone 3Gsが登場する頃から、車関連のクラウドサービスが立ち上がってきました。そのハードウェアとクラウドのソフトウェアの商品企画を手がけてきたんです。欧州に駐在していたこともあります。そんな中、2019年にクラリオンは親会社だった日立製作所から、フランスのフォルシアという会社に買収されました。

ーーー現在の社名の先頭についている企業ですね。

高林:はい。その際に、事業領域ごとに分社化されました。大きく分けて、①乗用車のOEM向けナビ・オーディオ関連商品、②自動駐車用カメラなどの機器群、③ユーザーの好みで取り付けるアフターパーツ市場、の3つです。私は2022年にそのアフターパーツの部門に異動しました。そこで商品企画の責任者を務めることになり、同時にトラック業界を深く知る必要があると感じました。そして訴求力のあるアイキャッチが必要で「かっこいい」ものでなければならない、と。それがデモカーという手段に至った理由です。

ーーーなるほど。

高林:実は、それ以前にあったデモカーは「かっこいい」と呼べるようなものではなかったんです。

ーーー拝見しましたが、現在のデモカーと比べると手のかけられ方もさることながら、時代の差に驚きました。

高林:そうなんです。だからこそ、かっこいいトラックを作って、弊社の商品を載せて全国を回り、SNSも活用してアピールしたいと思いました。そんな2022年に、奥伊吹で「みんなのトラックフェス」があったんです。

ーーーあの時が最初だったんですね。

高林:それ以前からトラックフェスには足を運んでいたんですが、勇気を出して「デモカーを造りたい」とお声がけしたのが、奥伊吹だったんです。そこでアルさんにご挨拶し、我々としてもデモカーを造るための予算や準備が必要になり、「実際に造りましょう」という話をしたのが、2023年の6月頃でした。現在のデモカーは既に2回ほどアップデートしていますが、「カスタムに終わりはない」と思っています(笑)。

なぜファストエレファントだったのか?

ーーーなるほど。なぜファストエレファントに依頼されたのでしょうか。

高林:まず、すぐ顔を合わせることが出来る、弊社に近い関東圏の会社に依頼したいと考えていました。また、トラックショーなどを見る限り、現在のユーロトラックシーンを牽引しているのは「東のファストエレファント」「西のセノプロさん」という印象が我々にはありました(あくまで勝手なイメージですが)。その老舗にお願いしないわけにはいかないと考え、門を叩かせていただきました。

ーーーカスタムの方向性としては、デコトラではなかったんですね?

高林:後ほど話しますが、HELLA(ヘラ)のライトも付けたかったですし、デコトラ路線ではありませんでした。

ーーー分かりました。ではその出会いについて、アルフレッドさんにも聞いてみましょう。

アルフレッド:最初は営業の中林から「クラリオンさんがトラックを買ってカスタムしたいそうです」と紹介されたのですが、その時、少し冷たい態度を取ってしまったかもしれません。

高林:いえいえ、あの時の対応は決して“塩対応”なんてものじゃありませんよ(笑)。

アルフレッド:こういう話って多いんですよ。本当にやる気があるのか、疑ってしまうんです(笑)。

高林:当初は、トラックの箱の中に移動用の応接室のような部屋を作るアイデアを温めていました。その話をしたことで、「本当にやるのか?」と思われたのかもしれませんね。

アルフレッド:その時、8つくらいアイデアがありました。それぞれに見積もりを取ってみると、アイデア次第ではありえない金額になるんですよ(笑)。でも、そのうちの1つが通ってGOが出て、カラーリングされたあたりで「これは本気だ」と思い、テンションが上がりました。

高林:それは良かったです(笑)。

アルフレッド:その後、グループLINEを作ってやり取りしながら進めていき、我々の売上にも貢献していただけて、やっぱり「てへ」って顔になりますよね(笑)。

国産カスタムになぜ「ファストエレファント」がつけられたか

ーーー国産ラインは「フライングエレファント」という名前になっていましたが、今回は初めて国産にも「ファストエレファント」の名前を冠したわけですね。

中西:そうですね。これは唯一のケースになると思います。

アルフレッド:カスタムが第1部と第2部に分かれたのですが、第1部の時点で「すごいことになったな」と感じました。「これで終わりかな」と思ったところで、第2部のさらに踏み込んだカスタムに進んで、ミラーを海外製に変えたり、電源を配線したり、相当な金額をかけていただきました。もはや、これは完全にファストエレファントの商品だと感じています。何度でも言いたいですが、ベースはボルボではない。それにもかかわらず、これだけ熱の入ったカスタムがされている立派なカスタムカーだと思います。

高林:僕らは、もともと“お客さん”として架装メーカーさんとつながりがあります。そこでボルボに行ってしまうと、国産メーカーさんからすると商品のイメージが湧きにくくなってしまうんです。ですから、やはり「国産メーカーでなければいけない」という思いがありました。その中で社内検討を重ねた結果、「やっぱり日野レンジャーがかっこいいよね」となりまして。

ーーーなるほど。

高林:ただ、ヨシノ自動車さんの本社に伺うと、かっこいいボルボがずらっと並んでいるじゃないですか(笑)。それから、アルフレッドさんともお話しする中で、我々としても2024年問題に象徴されるような物流業界の課題に対し、我々の商品やソリューションで「何かしら貢献したい」という思いがありました。そうしたなかで、「トレーラー化」というのは大きな解決策になり得ると考えています。我々としても、今後はトレーラーヘッドに目を向けていきたい。そして将来的には、ボルボのトレーラーヘッドでもう一台デモカーを造りたい、という構想を抱いています。現在は、そうした思いを胸に取り組んでいるところです。

デモカーが演出する企業と製品セールスの在り方

ーーーその夢の“ベース”となる今回のデモカー、評判はいかがですか? まずは社内での反応から教えてください。

高林:まず社内からは「よく造ったね!」という声が多く聞かれました。以前から、社内には“かっこいいデモカー”の必要性が潜在的に存在していたんです。それが今回、ようやく形になったという実感があります。結果として、単に弊社の商品がトラックに搭載されているというだけでなく、見た目としても映える、かっこいいと誰もが認識できるデモカーになりました。営業現場でも「あのトラックで来てほしい」と言われることがしばしばありますし、社内外問わずさまざまなところから依頼が来ています。

ーーーこれは嬉しいですね。中西社長、まさにファストエレファントが目指していた姿が実現しているのではないですか?

中西:その通りですね。我々のファストエレファントの仕事が社内や社会から認められ、必要とされていると感じられるのは、本当に嬉しいことです。

ーーートラックのカスタムというのは、本来の機能面以外で“のりしろ”を超え、人の心に訴えるものですよね。今回のクラリオンさんのデモカーは、その役割をしっかり果たしているのだと思います。

高林:まさにその通りなんです。少し自画自賛になってしまいますが、これまで続いてきたクラリオンのホームページを、今年の3月に全面刷新したんですね。そのトップページの大きな背景画像に、今回のデモカーを採用しています。刷新のタイミングで「この車を出さないわけにはいかない」という社内の機運が高まっていたんです。まだカスタムの途中だったので、いずれ完成形の写真に差し替える予定ですが、それくらい反響も大きかったです。

クラリオンはなぜフランスメーカー傘下になったのか?

ーーー素晴らしいですね。ではここで一度、クラリオンさんの現在の状況を整理したいのですが、まず日本でHELLA(ヘラ)を扱い始めたのはいつ頃でしょうか?

高林:2022年ですね。

ーーー親会社であるフォルシアという会社について教えてください。どのような会社なのでしょうか?

高林:もともとは、プジョーとシトロエンのエンジニアたちが立ち上げた会社で、最初は車のダッシュボードやシートといった内装部品を専門的に作っていました。そこから徐々に事業を拡大していったんです。今の車のダッシュボードは、ディスプレイなどが一体化しているものが増えていますよね。当然、ディスプレイの裏には映像を表示させるためのICチップが必要になりますし、ナビも含めて、そうした領域に手を出さないとダッシュボードという“空間”自体のビジネスが成り立たなくなってきているんです。そういった流れの中で、クラリオンを買収する動きが出てきたという経緯があります。

クラリオン×FEで商品開発する!?

ーーーなるほど。ちなみにヨシノ自動車との取引が始まったのはいつ頃ですか?

高林:おそらく2020年前後だったと思います。現在ご購入いただいているのは、トラック関連で言えばカメラのシステム系が中心ですね。単車よりもトレーラー向けが多いかと思います。私の個人的な思いとしては、先ほどもお話ししたトレーラーの話もありますし、トラックのカスタムに対してこれほど情熱を持っている企業さんが近くにいて、直接話ができるというのは、私の経験上でもとても貴重で、いま非常に価値のある関係性が築けていると感じています。もちろん、我々の商品をもっと買っていただきたいという思いはありますが、「それはあなたたち次第ですよ」と言われていると受け止めています。「我々が買いたくなるような商品を出してよ」と、アルフレッドさんならそう思われるでしょうし、そう言葉にもされるだろうな、と(笑)。その期待に応えられるような環境を、「しっかり整えていきたい」と思っています。

ーーーつまり、商品企画や開発の領域まで一緒に踏み込んでいきたいということですね。

高林:そうです。「こういうアイデアがあるんですけど、実際に使い物になりますか?」とか、「トレーラーで使うなら、ここはこうしたほうがいいですよね」といったご要望を、正面から受け止めていきたいんです。もちろん、すべてに応えられるわけではありませんが、率直にご意見を伺って、真摯に受け止める。そうした関係性を大事にしたいと思っています。

ーーー例えばその際、HELLA(ヘラ)のような海外のライトメーカーに対し、日本独自仕様のローカライズを依頼することは可能ですか?

高林:はい、可能です。我々が扱っている商品群としては、HELLA(ヘラ)のようなライト系のほかにも、カメラ系やドラレコ、デジタコといった映像・記録系も含まれています。いずれにしても、ファストエレファントさんやヨシノ自動車さんの売上につながるような商品を開発していくことはできると考えています。もっと広く言えば、日本のトラック業界全体を盛り上げていけるような商材を作って、業界に深く関わっていきたいと考えています。

評価の高いクラリオンの国内市場向け製品

ーーーそのあたり、現場のアルフレッドさんにも伺いましょう。現在、ファストエレファントで取り扱っているクラリオンさんの商品群について、どのような印象をお持ちですか?

アルフレッド:良いと思います。基本的に我々はお客様の指定を最優先にしていますが、実際のところ、トレーラーにクラリオンのカメラが付いていると、それに合わせてヘッドにもクラリオンのモニターを、という流れになることが圧倒的に多いんです。もちろん、もともと付いていたカメラが古かったり壊れていたりすれば、「クラリオンの新しい製品に変えませんか?」とご提案することもあります。

ーーーなるほど。確かに、40フィートのトレーラーは以前からクラリオンのカメラが付いている印象はあります。シェアはどれくらいなのでしょうか?

高林:トレーラー分野でのシェアとしては、3~4割くらいだと思います。

ーーーライバルとなる企業はどこになりますか?

中西:市光さんですね。クラリオンと市光さんが、この分野では“二大巨頭”といった感じでしょうか。トレーラーの認証指定メーカーとしては、この2社が代表的です。

アルフレッド:我々としても、まずその2社に対応することが大前提なんです。もちろん、そこにたまに新しいメーカーが飛び込んでくることもありますが、クラリオンは製品のクオリティが高いんですよ。画質もいいし、現在開発中の大型モニターも早く市場に導入されてほしいと思っています。今は基本的に7インチのモニターが主流なんですが、正直それだと小さくて見づらいんです。

ーーーその大型モニターのサイズはどれくらいなんですか?

高林:12.3インチですね。

アルフレッド:あれ、見た目もかっこいいじゃないですか。あのサイズで複数の映像が同時に表示できるんですよ。左バックの入射角が見えつつ、後方もしっかり映せる。そういうのが一つのモニターに集約されている方が、やっぱりスマートですよね。モニターがあちこちにバラバラに付いているよりは、できれば1台にまとめたい。そういう商品をいち早く出してくるのがクラリオンさんなんですよね。ほんと、かっこいいなって思いますよ。

高林:ありがとうございます。

アルフレッド:あとは、弊社で取り扱っている製品だとドライブレコーダーもあります。ドラレコについては、特に「ここがいい!」というよりは、メーカーがたくさんある中で、クラリオンさんとお付き合いがあるので使っている、という感じですね(笑)。もちろん製品は良いんですよ。ただ、ランプ類に関しては流行り廃りが激しくて、最近だとストランズが人気です。新しいブランドで、シーケンシャルに光るタイプも出ています。HELLA(ヘラ)は以前、大ブームになった時期もありましたし、また新しい商品が出れば、再びHELLAブームが来るかもしれません。ファストエレファントとしての取り扱いはそこまで大きくないですが、問題は代理店が複数あって流通が少し複雑になっているところですよね。

かつてのクラリオンのイメージ

ーーーたしかに。クラリオンを扱う代理店がたくさんあるんですよね。そのあたり、難しいところですね。

高林:日本の商習慣として、人と人とのつながり、いわば「義理人情」での取引が根強く残っていますからね。欧米のようにドライに一本化するのはなかなか難しい。我々としても、そういった文化を理解しながら、時には受け入れ、時には跳ね返しながらやっている感じです。

中西:わかりますよ、その繰り返しですよね。

ーーーある意味、「人気ゆえの難しさ」ですね。

中西:そうなんですよ。そもそも人気がなければ、誰も代理店をやりたがらないですからね(笑)。

ーーー面白いですね。人気アイドルにマネージメントオフィスが3つある、みたいな(笑)。

アルフレッド:そうそう(笑)。でもHELLA(ヘラ)に関して言えば、商品としてのクレームは本当に少ない。物がしっかりしているんです。日本で最初にフォグランプを出した海外メーカーで、しかも流行ったのがHELLAだったんですよ。樽型のハロゲンランプですね。その後、LEDになってもやっぱりHELLAが最初でした。だから日本国内での信頼度が高い。そういう基盤の上に、今のストランズなどのブランドが登場してきているわけです。それに、デザインも優れているんですよね。

ーーーそうなんですね。最近だとランクルとか四駆につけるトレンドもありますよね。市場バランス的に、乗用車向けはどうなんでしょう?

高林:我々も乗用車向けに取り組んではいますが、正直に言うと、そこはクラリオンの弱みになってしまっている部分です。コンシューマー向けのビジネス、たとえばオートバックスさん経由の販売などは、ほとんど撤退してしまいました。その結果として、乗用車向けの販売チャネルが非常に限定されてしまっているんです。

ーーーあらら……。

高林:フォルシアに買収されたタイミングで、社内オペレーションが大きく変わったんです。かつては乗用車向けにも対応できていたのですが、今では専用の商品も供給できていませんし、営業的な関係性もほとんどなくなってしまいました。力を入れたいという思いはあるんですが、実際のところ、体制が追いついていないというのが現状です。

ーーーつまり、今はお付き合いできていないと。

高林:そうなんです。それに、各自動車メーカー系のディーラーさんにも、以前はディーラーオプションとして多く採用されていましたが、そこも薄くなってきています。今はディーラーオプションそのものが縮小傾向にあって、ディーラーさんも売上確保のためにアウトドア向け特装車のキャンペーンなどを展開したりしていますが、話題にはなっても、台数ベースではそこまで出ない。ですから、数を重視する欧米の経営判断では、「そこに注力する必要はない」となってしまうんですね。

現在は商用車が主戦場になったクラリオン

ーーーだとすれば、今後の御社の主力事業というのは、どのあたりになっていくのでしょうか。

高林:そういった意味ですと、今後は“市場に約700万台ある”と言われているトラック業界にフォーカスし、その業界が抱える課題を解決できるようなソリューションや商材を軸にビジネスを展開していきたいと考えています。つまり、いまはその「母数」に目を向けるようになってきているんです。これからは、完全に乗用車ではなく商用車が主戦場になるという意識ですね。

ーーーなるほど、よく分かります。

高林:具体的には、カメラやドライブレコーダーを活用したサービスですね。最近のドライブレコーダーはクラウドと連携しており、動態管理や、録画された映像をAIで解析してドライバーの挙動を分析することも可能です。「今後こういう運転傾向が見られるから気をつけましょう」といった、予防的なアラートを提供する仕組みも入っていて、ひとつのサービスとして成り立っています。これらは基本的にサブスクリプションモデルで提供しており、それに付随するハードウェアの販売も行っています。この“サービス×ハード”のコンビネーションに、私たちは注力しています。実は、この取り組みはすでに2015年からスタートしているんですよ。

ーーーそうだったんですね。私の勉強不足で恐縮ですが、そのサービスはクラリオンさんのどのプロダクトになるのでしょうか。

高林:「SAFE DR(セーフ・ディーアール)」という、法人向けのクラウド型車両管理サービスです。スマートフォンやクラウド技術を車両向けに展開しているサービスで、「スマートアクセス・フォー・エンタープライズ」の頭文字と、“安全”の「SAFE」をかけたネーミングになっています。「DR」はドライブレコーダーの略ですね。見た目に分かりやすいハードウェアとしては、ドライブレコーダーやデジタコなどがあります。

「SAFE DR(セーフ・ディーアール)」紹介動画

ーーーもともとクラリオンさんはナビゲーションでも有名でしたよね。ナビと連携できれば、さらに良いサービスになる気がしますが……。

高林:実はナビゲーションの世界は、ほとんどスマートフォンに取って代わられてしまいました。

ーーーそうなんですね。商用車向けでいうと、「ナビタイム」などは非常に頑張っていますよね。そうした現在主流のサービスと連携できれば、もっと可能性が広がると思うのですが、それは難しいのでしょうか?

高林:まさにその“難しさ”に挑戦したいと思っています。たとえば、大型ディスプレイを使えば表示領域が広く、ナビの経路情報も見やすくなります。長距離輸送ではドライバー同士が移動体同士で待ち合わせることもありますが、その際に「相手がいつ到着するのか」や「どちらかが休憩を取らなければならない」などの情報を踏まえて、最適な判断をする必要があります。そうしたときに、お互いの位置情報を把握し、センター側の管理者が中継地点を調整したりするソリューションを提供していきたいのです。クラウドサービスも、そういった方向に進化させていきたいと考えています。そして、最終的にはドライバーの方々、運行会社、さらにはトラックを販売してくださっているヨシノ自動車さんのためになるような商品やサービスをお届けしていきたい。そのための開発に、今も全力で取り組んでいます。将来的には、衛星を活用した領域にも進出していきたいと思っています。

尖ったアイデアで尖ったプロダクトを実現していきたい

ーーー―――衛星ですか。

中西:私は専門家ではありませんが、日本というのは衛星ビジネスにおいて強みを持っている国なんですよ。もちろん、日本政府の支援がないと難しい部分はありますが、国が本気で後押ししてくれれば、日本が世界でも最も手軽に衛星を打ち上げられるようなビジネスを確立できる可能性があると思っています。最近では、日本でも中小企業が衛星を打ち上げられるよう、補助金制度も整ってきましたし、技術の進歩も目覚ましいものがあります。NASAやJAXAでなくても、5年後、10年後には独自のクラウドサービスを宇宙から提供できる時代が来るかもしれません。そうなると、ヨシノ自動車が自社の顧客向けに衛星を打ち上げて、独自のクラウドサービスを始めるということも、現実味を帯びてくるわけです。私は、今後の日本の有望な分野のひとつは“衛星”だと思っています。

高林:まさに宇宙ビジネスですね。

中西:クラリオンさんが、今後Googleのように圧倒的なシェアを獲得するようになれば、取り扱う情報の精度も格段に高まっていきます。それは、メーカーでなければ実現できない領域ですし、私としても非常に興味深いですね。

高林:自分たちの強みを見極め、それを活かして新しいことに挑戦する。その一方で、必ずどこかに“足りない部分”が出てきます。でも、世の中にはその“足りないところ”を補ってくれるスペシャリストが必ずいるはずなんです。私は、そうした“尖った”人たち同士が手を組むことで、新たな価値観が生まれてくると信じています。以前、中西社長がこの「鍵人訪問記」で「餅は餅屋という考え方をしています」とおっしゃっていましたが、私もまったく同感です。スペシャリストはスペシャリストとして“尖って”いなければ、誰からも必要とされなくなってしまう。だからこそ、尖った者同士が集まって、新しい社会をつくっていけたらと思っています。

ーーーその言葉が世界的メーカーと協働するクラリオンさんから出てくるというのが、とても素晴らしいですね。

高林:ありがとうございます。私自身、いまやクラリオンの生え抜き社員としては少数派になりましたが、入社当時に先輩から教わった言葉が、今も心に残っているんです。その先輩はバイク好きだったんですが、こう言ってました。「バイクは止まったら倒れる。仕事も同じだ。止まったら、お前の成長も、会社の成長もそこで終わりだぞ。どれだけ低速でもいい、走り続けろ。止まることだけはするな」と。この言葉が、いまも私を前に進ませる原動力になっています。

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