
トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第102回
いすゞ自動車株式会社 ソリューション営業開発部
いすゞ自動車株式会社 ソリューション営業開発部

トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第102回
いすゞ自動車株式会社 ソリューション営業開発部
いすゞ自動車株式会社 ソリューション営業開発部
「導入の壁を取り払う“現場目線”の挑戦者!いすゞが描く未来の物流地図とは」
商用車の電動化が叫ばれる中、いすゞ自動車は「EVision」というEVトラックを中心とした総合ソリューションプログラムを展開しています。今回の鍵人訪問記では、前回に引き続き「NEW環境展」での取材を敢行。いすゞ自動車のEV事業を推進してきた担当者へ、EVトラックの導入における課題と解決策、特に都市型トラックの電動化の可能性について詳しく伺ってきました。実際のところ、「仕事にEVは使えるだろうか?」そんな疑問に応え、充電インフラの整備からバッテリー管理、運行データの活用まで、EVトラック導入を検討する事業者にとって重要な情報をひとまとめにしてみました。
編集・青木雄介
WEB・genre inc.

ーーーまず、いすゞ自動車さんのEVトラックに関するトータルソリューションプログラムは、メーカーとして業界に先駆けた取り組みですよね。どのようにお考えですか。
いすゞ:EVの量産・販売に先立って、まず本当に商用トラックとして使えるのかという実証からスタートしました。現在は「EVision」として形になっていますが、もともとは2019年に「EVモニター」というプログラムを立ち上げ、通常のディーゼルトラックをEVに改造して大手のお客様に実際に使っていただき、2〜3年かけて実証を重ねました。
ーーーなるほど。
いすゞ:結果として、車両としては距離の制限はあるものの、日常業務に十分耐えうる性能であることは分かりました。ただ、実際に導入しようとすると「運行に使えるのか」「コストはどうか」など、分からないことが多く、お客様の判断材料が不足していたのです。そこで私たちは、モニターで得たデータや知見を活かし、導入検討の支援から始めるという考え方でスタートしました。

ーーー具体的には、どのような課題があったのでしょうか。
いすゞ:最大の課題は充電環境です。日本国内に公共充電器は多数ありますが、ほとんどが乗用車用で、サービスエリアなども商用車には対応していません。そのため、多くの場合、お客様のセンターや車庫に専用の充電器を設置する必要があります。とはいえ、「どの業者に頼むのか」「どのタイプの充電器を選ぶべきか」といったところから、多くの方が手探りの状態でした。
ーーーなるほど。
いすゞ:このような課題を受けて、いすゞではこれまでの知見をもとに、充電インフラの設計・設置から、運行支援、エネルギーマネジメントまでを網羅したトータルソリューションプログラム「EVision」を立ち上げました。
ーーーその「EVision」の具体的なサービス内容を教えてください。
いすゞ:充電器の設置支援に加えて、将来的に公共充電器が必要になった場合のサポートや、運行管理システムの提供、さらに再生可能エネルギーへの切り替え支援も行っています。運行管理者の方が、社内のパソコンからバッテリー残量や走行可能距離を把握できるようなシステムも用意しています。
ーーーそれが出来ると実用的ですね。
いすゞ:はい。また、EVは単にCO2を排出しないというだけでなく、使用する電力のクリーン性も重要です。ですから、実質的な排出削減効果を高めるためのクリーン電力の選定や導入サポートも行っています。


ーーーリース契約の仕組みについてもお聞かせください。
いすゞ:EVの場合、特にお客様が気にされるのはバッテリーの劣化です。スマートフォンと同じで、使っているうちに性能が落ちていくのではないかと不安を抱かれる方が多い。そこで、EVisionでは走行距離に基づいたバッテリー劣化予測を行い、「年間2,000キロなら何年後にどの程度劣化するか」を提示できます。たとえば長距離を走るお客様には「この時点で更新を」といったアドバイスも可能です。また、通常のディーゼルトラックと同じように長く使いたいというニーズにも応え、最大10年の長期リースを用意しています。リース満了時には車両の状態を診断し、問題なければ継続利用も可能です。
ーーーリースに含まれるサービスについても具体的に教えてください。
いすゞ:車両本体はもちろん、登録費用や定期整備、バッテリー修理なども含まれています。万一故障があった場合もリース内で対応しますので、予算が組みやすく、不安を感じずに導入いただけるのが特徴です。さらに、コネクテッドデータを活用した整備支援や、補助金の申請代行、サポート窓口による使用方法の相談にも対応しています。
ーーー中西社長、ユーザーとして、さらに望むことなどはありますか?
中西:いや、今の時点で非常に完成度が高いと思いますよ。正直、これだけ包括的なパッケージを用意しているメーカーは見たことがありません。

ーーーたしかにそうですね。このサービスはすでに実稼働しているのですか?
いすゞ:はい。基本的にEVisionはリース契約とセットになっており、すでに複数のお客様で運用が始まっています。充電器の設置については、私たちがこれまで取り組んだことのない分野でしたが、パートナー企業と協力しながら、現地での調査・施工・設置位置の調整など、トータルで支援しています。
ーーー公共の充電ステーションとの連携はどのようになっていますか?
いすゞ:ENEOS様と提携し、商用車でも対応可能な充電ステーションを一部で利用可能にしています。カードを通すだけで充電でき、現地での現金決済などは不要な仕組みです。
ーーーいいですね。CO2削減の「見える化」についての取り組みを教えてください。
いすゞ:EVは車両価格が高い分、その投資効果を示す必要があります。そこで、EV導入によって、どれだけCO2排出が削減されたかを示すレポートをお客様に提供し、荷主などステークホルダーに対して「EVで運ぶ価値」を訴求しやすくしています。
ーーー分かりました。業界全体として、EV化に対する関心はいかがでしょうか。
いすゞ:正直なところ、関心の度合いにはばらつきがあります。とくに国内の荷主企業では、物流領域、いわゆるスコープ3※の排出に対する意識が欧州ほど高くないのが現状です。ただし、海外に取引先を持つ運送会社様からは、欧州ブランドの方針に沿って「EVで運んでほしい」という要望も出てきています。そうしたお客様に対して、EVで運ぶ価値を見えるかたちで提供することが、EV導入の後押しになると考えています。
※スコープ3とは、企業の事業活動に関連する他社の温室効果ガス排出量のことを指します。自社が直接排出するスコープ1、自社が購入した電気などのエネルギー使用に伴う間接排出のスコープ2に続く、サプライチェーン全体での間接排出を包括的に捉えたものです。
ーーー今回展示されている都市型トラックとして、資源回収車の導入については、どのような手応えがありますか?
いすゞ:街中で走行する資源回収車は、1日の走行距離が50〜60km程度と短く、EVとの親和性が高いです。現状では長距離輸送はまだ難しい部分もありますが、まずは「変えられるところから変えていく」アプローチが重要だと考えています。
ーーー騒音の面でも効果がありますよね。
いすゞ:はい。EVは非常に静かなので、早朝や深夜の運行にも適しています。都市部での使用におけるもうひとつの大きなメリットだと思います。
ーーー実証運行についてもすでに始まっているのですね。
いすゞ:展示中の資源回収車は量産初号車で、これからデモカーとして自治体での試験運行に使用されます。理屈では分かっていても、実際に使って初めて「これはいける」と実感されるお客様が多いので、導入前の試乗機会は非常に重要です。


ーーーすでに注文も入っているのですか?
いすゞ:はい。すでにいくつかの自治体・企業様からご注文をいただいております。
ーーーまずは自治体を中心に導入が進むのでしょうか?
いすゞ:そうですね。ただ、実際に車両を所有するのは委託を受けた廃棄物処理業者さんですので、まずは自治体側でEVを導入してもらうことで、民間事業者への波及を期待しています。
ーーーその際のランニングコストについて教えてもらえますか?
いすゞ:機種によって異なりますが、一般的に燃料代と電気代を比較すると電気代の方が安く、5年ほど使うとトータルではディーゼル車と同等か、むしろ安価になるケースもあります。東京都や神奈川県など、補助金の手厚い地域ではより導入しやすい環境が整っています。
ーーーヨシノ自動車さんでは、EVに対するお客様の反応はいかがですか?
中西:現時点では問い合わせはまだ少ないですが、以前にレンタカーで別メーカーの小型EVを検討したことがあります。そのときは航続距離が短すぎて断念しましたが、今回の資源回収車のように航続100km程度であれば、実用性はかなり高まっていると感じます。レンタカー事業としても試験的に導入しやすくなるでしょう。
ーーーレンタカー活用の可能性もありますか?
中西:はい。まずは1週間、あるいは1ヶ月といった短期で試してもらえるので、お客様にとっても導入のハードルは下がります。
ーーー実際の使用において、電力消費のばらつきもありますよね?
いすゞ:おっしゃる通りです。たとえば都心でビルを回る車両と、大型イベント施設で一気に回収する車両では、圧縮機の使用時間が異なります。走行距離だけでなく、PTO(圧縮機や冷凍機など)の使用状況も含めて電力消費を予測する必要があります。そのため、いすゞでは既存のコネクテッドディーゼルトラックのデータを分析し、EVに置き換えた場合の航続距離をシミュレーションする「EVision・コンシェルジュ」サービスを展開しています。このサービスによりお客様ごとに最適な導入提案が可能になっています。

エルフEV塵芥車(参考出品車両)
いすゞ初の量産バッテリーEV(BEV)「エルフEV」の特装シャシを利用した塵芥車。航続距離に配慮し、高電圧バッテリーを最大限の容量(60kWh)で搭載。ボディは極東開発工業のプレス式・排出板押出式「プレスパック」のエルフEV専用モデル。回転板式も用意する。また、新明和工業、モリタエコノスのプレス式/回転板式も選択可能とのこと。

「エルフミオEV」の資源回収車
車両総重量3.5トン未満でAT限定普通免許に対応するエルフミオのEVモデル「エルフミオEV」をベースとする資源回収車。積み荷が軽いため、積載量が高くなく、普通免許しか持っていないドライバーでも運転できるのが特徴。走行距離も少なく、EVとの親和性が高い。最高出力122PS、最大トルク37.3kgm。バッテリー容量は44kWhで航続距離は115km(国土交通省届出値)である。
車両の性能や価格だけでは語れないのが、トラックのEV化です。インフラ、業務フロー、バッテリー寿命、ランニングコスト、環境価値——すべてを可視化し、統合的に支援する「EVision」は、まさに「EV化のコンシェルジュ」だと思います。 いすゞ自動車は単にトラックを作るのではなく、社会と現場の間に橋をかけようとしています。現場に根差した知見と、脱炭素社会への展望が交差するこの取り組みは、今後の物流業界において重要な指針となるでしょう。