
トラック業界"鍵人"訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第106回
株式会社 高野自動車用品製作所
代表取締役 菱田保之様、取締役 経営企画室室長 菱田圭一様
株式会社 高野自動車用品製作所
代表取締役 菱田保之様、取締役 経営企画室室長 菱田圭一様

トラック業界"鍵人"訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第106回
株式会社 高野自動車用品製作所
代表取締役 菱田保之様、取締役 経営企画室室長 菱田圭一様
株式会社 高野自動車用品製作所
代表取締役 菱田保之様、取締役 経営企画室室長 菱田圭一様
「太さ60φ(ファイ)、情熱は無限大!? 輸出パーツによる新領域のビジネスに挑戦します!」
日本のパーツを海外で販売するという、ヨシノ自動車が仕掛ける新たな挑戦。その舞台裏に老舗メーカー・株式会社 高野自動車用品製作所様の存在がありました。今回のトラックフェスで披露された60φ(ファイ)のハイバーとリップスポイラーは、両社の技術とデザインが交差して生まれた初のコラボ製品です。パイプを"曲げる"という、単純に見えて難易度が高く奥深い加工、メッキ文化からユーロスタイルへの潮流、そして日本発のカスタムパーツを世界へ届けたいという想いについて掘り下げました。代表取締役の菱田保之様、取締役の経営企画室室長の菱田圭一様にご登場いただき、前段の商品説明は設計室の大友悠希様にお願いしました。
編集・青木雄介
WEB・genre inc.
菱田保之(ひしだ やすゆき):
株式会社 高野自動車用品製作所 代表取締役
1952年 東京都練馬区生まれ。1990年に株式会社高野自動車用品製作所へ入社。1995年より代表取締役社長に就任し経営全般を統括。2019年
全国自動車用品工業会理事長に就任し自動車用品業界の活性化に尽力。現在は特別顧問としてアドバイスを行い、業界発展を支え、現在に至る。
菱田圭一(ひしだ けいいち):
株式会社 高野自動車用品製作所 取締役 経営企画室室長
1983年
東京都練馬区生まれ。2017年に株式会社高野自動車用品製作所へ入社。設計室にて製品開発、設計業務に従事。2020年より取締役経営企画室室長に就任。開発、購買、営業から人事、総務、経理まで経営実務全般を管理し、現在に至る。
ヨシノの構想と高野の技術が交わった瞬間、太さ60φ(ファイ)の新スタンダードが形になりました。その裏側を語ってもらいました。

ーーーこちらのリップスポイラーとハイバーについて教えてください。これは御社で作られたものですか?
大友(設計室主任):はい、そうです。まだ正式な商品化はしていませんが、今回のトラックフェスに合わせて試作として製作しました。今後の発売を前提に開発していて、製品自体はすでに完成しています。あとは量産体制さえ整えば、いつでも販売できる状況です。価格はまだ最終調整中ですが、欧州製の同種製品よりは、手に取りやすい価格帯にしたいと考えています。
ーーーこのパイプ、かなり太いですね。仕様について詳しく教えていただけますか?
大友:パイプ径は60φ(ファイ)で、正確には60.5φです。最近になって、60φクラスの太さでも安定して曲げ加工ができるようになったことで、新しいデザインの可能性が一気に広がりました。現在は、上部のハイバー、下側のローバー、サイドのサイドバーと、シリーズとしてのバリエーションも増やしているところです。ブラケットはステンレス製で、耐久性と質感を両立させています。今後はブラケット部分もブラックアウト(ブラック塗装)仕様にすることで、車両全体のデザインにより自然に溶け込む仕上がりを目指しているところです。
ーーー60φ(ファイ)の曲げ加工について、技術的な難しさはありましたか?
大友:かなり苦労しました。車種ごとにフロント形状が違いますので、単純な2次元の曲げでは対応できません。特に上部の曲げは3次元的に複雑なラインになりますから、アール(曲がり)の取り方をどうするかは試行錯誤の連続でした。製作上の課題もいくつもありましたが、協力工場と検証を重ねることで、量産を見据えた形状・構造に落とし込むことができました。


ーーーこちらはUDトラックスのクオンですが、どのような車種に対応しているのでしょうか?
大友:弊社では、ひと回り細い50φ(ファイ)のシリーズでは、すでに国産4車種に対応したラインナップを展開しています。今回の60φシリーズは、ヨシノ自動車さんとのコラボレーション製品として新たに開発したものです。特に上部のハイバーについては、汎用性を意識しています。ブラケットの加工や取り付け位置の調整は必要になりますが、今後はクオン以外の車種でも使用できるよう、設計の汎用化を進めていく予定です。


ーーー新型スーパーグレートの純正オプションにもハイバーがありますよね?
大友:そうですね。新型スーパーグレートにも純正オプションとしてハイバーが設定されています。実は純正オプションのハイバーもOEMで供給しており、弊社製品です。ですので、純正オプションのハイバーも今回の製品と同じ60φ(ファイ)の製品です。基本的な設計コンセプトは共通していますが、今回のクオン用ハイバーでは異なったテイストのデザインに挑戦し、「より迫力ある一体感」を目指して造り込んでいます。


ーーー中西社長に伺います。なぜ日野ではなくUDクオンをベース車に選ばれたのでしょうか?
中西:もともとボルボとのご縁があり、その流れでUDトラックスさんとの関係も長く続いているんです。日野さんももちろん良いのですが、新車の仕入れから販売、登録に至るプロセスで、UDさんが非常に安定して協力してくださる。そこは事業として大きなポイントでした。それにクオンはご存じの通りボルボの技術が投入されていて、整備面でもメリットがあります。自社でアフターメンテナンスがしやすいというのは、ユーザーさんにとっても大きな安心材料になりますし、我々としてもビジネス上の優位性につながると考えています。

ここからは、自動車用アフターパーツの製造・企画・販売を手がけ、純正オプションのOEMからオリジナルブランドまで幅広く展開する老舗メーカー・株式会社高野自動車用品製作所の菱田代表と菱田室長、そしてヨシノ自動車の中西社長による対談です。

ーーー高野自動車用品製作所さんはどういった流れで商材を企画販売しているのでしょうか?
菱田代表:開発から製造の段取り、そして最終的な供給まで、パーツに関わる一連のプロセスは基本的にすべて弊社で取りまとめています。その上で、完成した製品を約150社ほどのメーカーさんや販売会社さんにOEMという形で納めているというのが、今の事業の主なスタイルですね。
ーーーそうした事業形態になったのは、いつ頃からでしょうか。
菱田代表:ざっくり言うと、もう30年から40年くらい前でしょうか。その頃からOEMや受託製造の比率が増えていき、現在のような形に落ち着いてきたという感覚です。
ーーークライアントから「こういうものを作ってほしい」という要望があった場合に、高野自動車さん側で最適な生産体制を組んで対応される、というスタイルでしょうか。
菱田代表:そうですね。それが基本の流れです。ただ、それだけではなく、こちらから「こんな商品を作ってみませんか?」と提案するケースも多いんです。「こういうものがあるんですけど、御社のラインアップにいかがでしょうか?」という形ですね。
菱田室長:逆に言うと、当社は「この1品目だけに特化する」という会社ではありません。今回のようなパイプ系の製品もあれば、樹脂製のパーツ、LED関連の電装パーツなど、本当に多種多様なアイテムを扱っています。それらをワンストップで企画から生産、納品までまとめて対応できるというのを、当社の大きな強みとして打ち出しています。

ーーー扱っているパーツは、やはりトラック向けが中心でしょうか?
菱田代表:そうですね、トラックパーツが中心です。ただ、もともとは長く三菱さんが大きなお客様でして、乗用車用の用品・パーツも納めていました。ですから「トラックだけ」というわけではなく、商用車から乗用車まで、幅広い車種領域で実績があります。
ーーーラリーアート関連のお仕事もされていたのでしょうか。
菱田代表:ええ、ラリーアートの仕事もやらせていただきました。最近またラリーアートブランドが復活しそうな流れもありますが、今のところ弊社にはまだお声がかかっていないですね(笑)。
菱田室長:会社全体の特色で言うと、自動車メーカーの純正オプションの企画・製作を多く手がけている点が挙げられます。売上全体のざっくり6割はOEM案件が占めているイメージですね。
ーーー具体的には、どういった純正オプションが多いのでしょうか。
菱田代表:弊社で一番ボリュームが多いのはホイールキャップです。現在もアルミホイール向けのセンターキャップなどを含め、様々な形で供給しています。
ーーーOEM製品の製造は、海外への発注が多いのでしょうか。
菱田代表:基本的には国内の製造が中心です。ただ、取引先の判断で、完成品や部材を海外へ出すケースはありますね。「こちらで付加価値をつけて海外市場へ」というような流れも一部ではあります。


ーーーなるほど。今回のこのスペシャルパーツは、どのような経緯で制作されることになったのでしょうか。
菱田室長:もともと弊社でも、パイプ関係の商材はいくつか手がけていました。ただ、やはりファストエレファントさんはこの分野の第一人者で、デザインが本当にかっこいいですよね。以前からかなり惚れ込んでいたんです。
ーーーそうだったんですね。
菱田室長:実は3年くらい前から、「どうしたら中西社長やファストエレファントさんにアタックできるかな」とずっと考えていまして(笑)。
ーーー有能でいらっしゃいますね(笑)。
菱田室長:それで昨年、北海道でお会いする機会がありまして、そのときにご挨拶させていただいたんです。そこから「せっかくだからコラボで何かやりましょうよ」という話になり、今回こうして機会をいただきました。ヨシノ自動車さんとしても、「太いパイプのパーツをやりたい」という強い思いをお持ちだったので、「それならぜひ、うちに任せてもらえませんか」と手を挙げさせていただいた形です。
ーーーなるほど。そういう経緯だったんですね。オリジナルパーツについては、中西社長も「自社ブランドで作りたい」と以前からおっしゃっていました。今後、FE(ファストエレファント)の冠でパーツを展開していくイメージなのでしょうか。
中西:ぜひそうしていきたいと考えています。やはり将来的にヨーロッパ市場にも進出したいという気持ちがありますし、そのためにはオリジナルパーツをどれだけ多く、そしてどれだけ魅力的に作れるかがカギになってきますからね。
ーーーそのあたりの将来像については、すでに共有されていたのでしょうか。
菱田室長:はい。アルさんから少しだけお話は伺っていました。
ーーーヨシノ自動車としてはボルボ、スカニア向けの汎用パーツを、日本から世界に出していきたいという野望をお持ちなんですよね。その中で、アルフレッドさんが「日本の工場で60φ(ファイ)を曲げられる」という点に非常に感動していました。
菱田室長:僕らとしては、いろいろ付き合いのある工場の中から「できそうなところ」を探していった結果、対応できる工場があったというだけの話なんですけどね(笑)。
ーーーそうなんですか(笑)。
菱田室長:アルさんからご相談いただいたときに、「それでしたら、うちならこういう形で対応できます。一緒にデザインも考えましょう」とお伝えして、今回のプロジェクトが動き始めました。
菱田代表:おかげさまで弊社は歴史だけは長いものですから、こういうパイプを曲げる設備やノウハウを持っている工場を数多く知っているんです。マフラーを得意としているメーカーさんなどは、パイプ曲げの技術も非常に高い。そういうところに声をかけて、「こんなもの造れますか?」「じゃあトライしてみましょうか」というやり取りを重ねて、形にしていきました。

ーーーその「曲げ」の部分には、やはり職人的な技が発揮されるわけですね。
菱田室長:そうですね。溶接を入れると熱でパイプがグッと曲がるんですが、冷えるとまた戻る。その変形をどれくらい見込んでおくかが大きなミソなんです。僕らも工場側とじっくり話し合いながら、「どの程度の精度で仕上げるか」「設計寸法をどう追い込むか」を詰めていきました。
菱田代表:過去にも4WD向けのパイプ類を、海外の会社にお願いしたことがあるんです。「できます、できます」と言うので任せてみたら、結果としてはまったく狙い通りにできなかった。そういう経験もあって、やはりパイプ曲げはノウハウと経験がものを言う世界だなと痛感しましたね。
ーーー今、ユーロパーツの話が出ましたが、高野自動車さんといえば、もともとデコトラ向けの太いマフラーなどのイメージもあります。最近、潮目が変わってきたような実感はありますか?
菱田室長:ありますね。肌感覚として、メッキ製品は昔に比べて明らかに売れにくくなってきていると感じます。ユーロスタイルが広がってきたことで、ボディ同色やブラックなど、塗装で魅せるカスタムの方が主流になりつつあるんです。当社としては、もともとメッキパーツのようなカスタムパーツが事業の立ち上がりでした。だからこそ、「その代わりになる新しいカッコいいものは何か」と考えたときに、こうしたユーロスタイル系のパイプパーツの存在を知って、「ぜひ自分たちもそこに関わりたい」と思ったわけです。
菱田代表:それに、トラックメーカー自体がだんだんヨーロッパ系のデザインに寄ってきていますからね。
ーーー確かに、トラックそのものの"顔つき"がヨーロッパ系になりつつありますよね。ただ、アルフレッドさんも「日本のパーツメーカーさんがユーロスタイルのものをどんどん作り始めているから、今後がすごく楽しみだ」とは言ってました。
菱田室長:僕としては、デコトラが「時代遅れだからダメ」と言いたいわけではまったくないんです。デコトラはデコトラで日本の文化ですし、海外から見る"DEKOTORA"はひとつのブランドになっています。だからこそ、それはそれでちゃんと生かしていきたいと考えています。
菱田代表:菅原文太は命ですから。
ーーー(笑)。やっぱり「一番星」は魂に刻み込まれてますよね。
菱田代表:弊社も、トラック野郎シリーズの頃にぐっと伸びたんですよ。ホイールキャップから何から、かなりの種類のパーツを作らせていただきました。
ーーーバスマーク(行灯)なんかも作られていたんですか?
菱田代表:造ってましたよ、ええ。テールランプなんかも含めて、当時は自社工場でいろいろやっていましたね。現在の本社は大田区にありますが、以前はそこに工場が併設されていたんです。ただ、もともとあった赤坂の本社が手狭になったこともあって、「いったん工場は全部外に出そう」という判断になりました。
ーーーなるほど。
菱田代表:社名に「製作所」とついてはいますが、今の形としては、ある意味で商社的な機能を持つメーカーに近い存在だと思っています。設計・企画のノウハウと、国内外の協力工場ネットワークを活かしてモノづくりをしている、というイメージですね。


ーーートラック好きな人材を確保するのはなかなか難しいのではないですか。
菱田代表:おっしゃる通りです。ただ、こうしてトラックの世界に携わる中で、「ああ、この業界って意外と面白いな」と感じてくれる若い人も確実にいますね。「こんな世界があるんだ」と気づいてもらえること自体が、入口としては大事だと思っています。
ーーーその点は、ヨシノ自動車さんも同じですよね。
中西:そうですね。うちもここ数年で採用の仕方をかなり変えました。5年前くらいまでは、「車が好き」「トラックが好き」という学生さんをターゲットに集めていたんですが、そもそも車好き・トラック好きの若い人自体が減っているという現実がある。

ーーー確かに。
中西:そこで、たとえばバスケットボールチームのスポンサーをやったり、別の入口からアプローチするようになりました。バスケが好きな学生さんが試合を見に行ったときに、「あれ、川崎にこんな会社があるんだ」とヨシノ自動車の名前を知ってもらう。そこから調べてくれたり、インターンに来てくれたりして、「この業界、思っていたより面白いかも」と感じてもらえる。
ーーー多様な接点のひとつとして機能しているわけですね。
中西:そうです。自分自身もそうでしたが、将来つきたい仕事を最初からピンポイントで決めている人って、実はそんなに多くないと思うんです。何をしようかなと考えながら、いろんな出会いの中で仕事を見つけていくじゃないですか。
ーーー最初から「トラック業界に入りたい」と思っていなくても良いわけですね。
中西:ええ。「なんか面白そうだな」とか、「会社の雰囲気がいいな」とか、「こういうイベントができる会社なら、自分も関わってみたい」とか。そういった感覚的な入口から入ってきてくれる人が、今はむしろ増えている印象です。
高野自動車さんとは、北海道のイベントで営業をいただいたことがきっかけでつながりました。バー文化は本来ユーロのものですが、国産車でも太さを変えるだけで印象が大きく変わる。50φ(ファイ)より60の方が絶対に良いとアドバイスし、ラインに合わせたカクカクした曲げも一緒に詰めていきました。太径パイプの曲げは技術的に難しいものですが、最近は対応できる工場も増えています。純正の細いバーを見ると物足りないので、今回の仕上がりはかなり洗練されたと思います。海外向けのバーはレッドオーシャンですが、日本の技術をユーロ規格に合わせた"見た目ユーロのMade in Japan"を作る余地はまだあります。まずはハンドルのような小物から、少しずつ攻めていきたいですね。
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