株式会社ヨシノ自動車

トラック業界"鍵人"訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第116回

IAA TRANSPORTATION 2026 出展レポート

IAA TRANSPORTATION 2026
出展レポート

「ハノーファーで試した“ジャパンオリジナル”」

2026年9月15日から20日まで、ドイツ・ハノーファー国際見本市会場で、世界最大級の商用車見本市「IAA TRANSPORTATION 2026」が開催されました。出展社は約1,700社。欧州メーカー各社が航続距離を延ばした大型電動トラックを競い合い、その周りを、欧州市場への本格参入を掲げる中国メーカーが取り囲む。今年のハノーファーは、そんな構図がはっきりと見えるショーでした。その一角、ジャパンパビリオンに、ヨシノ自動車とファストエレファントは、欧州パーツの輸入元であるKWDと共同でブースを構えました。持ち込んだのは、日本の職人の手による特別仕様のステアリングと、デコトラ文化を支えてきた金華山の生地。そしてバーカウンターに並べた日本のウイスキーです。2年越しの出展は、何を手応えとして持ち帰ったのか。会期を通してブースに立ち続けた中西俊介とアルフレッドの二人に、出展の経緯から会場で見た最新トレンドまで、振り返っていただきました。

取材・文/青木雄介
WEB/genre inc.

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2年越しの出展

―――そもそも今回、IAAに出展された経緯から教えてください。

中西:もともとは2024年のIAAに、弊社が日本で販売代理店をしているドイツのパーツメーカー、ジャンボさんと共同出展する予定だったんです。ただ当時は、ヨシノ自動車の本業で在庫過多を抱えていたり、人材の問題で準備が足りなかったり。中途半端にやるなら出さないほうがいいと判断して、見送ることにしました。

―――なるほど。

中西:それでもジャンボさんはすごく素敵なことをしてくれて、当時のデザイナーだった増山の錦鯉のデザインを、自分たちのブースに飾ってくれたんです。これは2年前にもお話ししたと思いますけど。

2024年のIAA。ジャンボのブースに飾られた、増山デザインの錦鯉

―――これは知りませんでした。増山さんのデザイン、やっぱりいいですね。

アルフレッド:ジャンボさんは、うちでいう「ヨシノタイムズ」みたいな冊子も作っていて、毎年のボルボ用パーツのカタログにもなっているんです。僕が訪問したときのことも、あのあとすぐに載せてくれたんですよ。

ジャンボの冊子。アルフレッドの訪問記事も掲載された

―――本当だ、アルフレッドさんが載ってる。この車は売れたんですか。

アルフレッド:売れました。お客さんの車で、いまは向こうで走っています。

―――それで、2024年は見送ったけど、次こそは出そうと。

中西:そうなんですけど、そこから2年経ってもメイドインジャパンのオリジナル商品を思うように増やせなかった。そんなときに、横浜でジャパントラックショーを主催している国際物流総合研究所さんから、IAAのジャパンブースの一部として出ませんか、とお話をいただいたんです。

―――それならハードルが下がりますね。

中西:出展費用も抑えられる。じゃあそれで出ましょう、と決まったのが今回です。さらに1社だけで出るより、普段ヨーロッパのパーツを全部輸入してもらっている商社であり、インポーター代理店でもあるKWDさんと共同出展することでスケールアップできる。

―――ジャンボの日本の代理店もKWDさんですもんね。座組としてはKWDとヨシノ自動車の共同出展に、ジャンボが協力する形ですか。

中西:そうです。ジャンボは自分たちのブースを出していたので、協力くらいの位置づけですね。

「結局、中国製でしょ」とは言われたくなかった

―――では、アルフレッドさんにも伺います。2年越しの出展でしたが、何を持っていくかはどう考えたんですか。

アルフレッド:今回は手探りでした。弊社で扱っているのは中国製のパーツも多いので、メイドインジャパンと言いながら「結局は中国製でしょ」とは言われたくなかった。そもそも、ヨーロッパのパーツを仕入れている側ですから、「じゃあ向こうで何を見せるんだ」と、すごく悩みました。

―――たしかに、本場に持っていくわけですからね。

アルフレッド:それで、普段お付き合いしている雅さんとHz STUDIO(ハーツスタジオ)さんが日本的で特殊なことをやっているので、木のハンドルと金華山を持っていきました。前回、前々回のIAAで「これは出ていないな」と思っていたので。意外なことに、メイドインジャパンの職人芸がすごいとあれだけ言われているのに、こういう場に出ているものは少ないんだな、と。ちょっと寂しかったんですね。

―――Hz STUDIOさんのステアリングなんて、ジャパンメイドな感じがしますもんね。

中西:この写真がスペシャル仕様のステアリングです。オリジナルのステアリングもカスタムできますよ、という見本で、純正を切ってウッドを貼り、3Dの彫りを入れています。

アルフレッド:そのウッドハンドルに、キングカスタムの星さんが3Dペイントを施した一点物です。日本の技術を見せる、という形にしました。

―――造形がHz STUDIOさんで、彫ったような3Dペイントがキングスの星さん。もろにジャパンメイドですね。

HEARTSTUDIOのウッドステアリングに、キングカスタム・星氏が3Dペイントを施した特別仕様

中西:それに、普段よく売れている通常のステアリング。もう一つが金華山で、いろいろなパターンの生地と、金華山で作ったぬいぐるみを並べました。

―――このぬいぐるみは、どこで作ったんですか。

中西:生地の出元の雅さんです。もともと作っていたんですよ。

―――こういうのも作れるんですね。

中西:シートの真ん中だけ金華山を使ったボルボ用のシートを、丸ごと2席分持っていったんですが、ジャンボさんのブースに置いてきちゃって。生地はこういう使い方ができますよ、という見本です。だから展示の柱は、このステアリングと金華山ですね。

金華山の生地サンプルと、金華山のブルドッグぬいぐるみ

バーカウンターという入口

―――KWDからは何か出したんですか。

中西:何も出していません。お酒だけです(笑)。

―――そうですか(笑)。

中西:KWDの本業はヨーロッパのパーツを日本に持ってくることですから、向こうで売るものはない。それよりも、いろいろな人との接点を持つことを重視して、バー形式にしたんです。

―――日本の輸入業者ですよ、と知ってもらうために。

中西:そう。日本のウイスキーや、僕が持っていったお菓子を出して、「これと抹茶のチョコは合うよ」なんて言いながら、まず座ってもらう。「どんな仕事をしてるの?」「どこから来たの?」と話すうちに、実はKWDはヨーロッパのいろいろなパーツブランドを日本で輸入しているんです、日本のマーケットに興味があるならうちを使ってください、と。

―――そのための入口としてのバーだったわけですね。

アルフレッド:これが効きましたね。「酒を売ってるじゃないか」と入ってきた人に「いや、酒じゃないんですよ」と返すと、「じゃあ何を売ってるんだ?」と話が弾んでいく。朝からモーニングウイスキー、みたいな感じで。

―――会期中ずっと飲みっぱなしだったらしいですけれども。

アルフレッド:肝臓が心配です(笑)。それと、ブースで英語を話せるのは中西社長、テイ君、カケさんで、僕はベリーリトルなんです。

―――ベリーリトル(笑)。

アルフレッド:最初はちょっと怖気づいていたんですけど、実は僕はスペイン語ができて、テイ君は韓国語ができる。逆に言うと、日本語、英語、スペイン語、韓国語と、現地で4カ国語が話せたんです。

―――おお、それは強い。

アルフレッド:ヨーロッパなので、スペイン系やイタリア系の人は僕が話しても通じるし、南米の人も来ている。韓国の人たちも、一つの団体でたくさん来ていました。

―――今回のIAAは、現地で「展示車両の7割が中国製」とも報じられたほどでした。ブースの場所はどうでしたか。

アルフレッド:大きなホールの中の、端っこと言えば端っこのほうで、周りは中国のブースだらけ。その中のジャパンパビリオンでした。そのわりには、すごく人が集まった、という感触があります。

ジャパンパビリオン内のKWD/ヨシノ自動車ブース。バーカウンターで日本のウイスキーを振る舞った

金華山に集まった視線

―――評判はどうでしたか。

中西:こういう細工もののステアリングには、もちろんすごく興味を持ってもらえました。会期は実質5日間で、土日は日本と同じでドライバーさんや家族連れが多く、平日は業者さん中心。意外だったのは、その平日にステアリングより金華山の生地に興味を持つ人が多かったことです。

―――金華山の生地が注目を集めたんですね。

中西:ドイツはもちろん、周辺のポーランドやトルコ、それこそドバイの架装業者さんが、生地を見て「1平方メートルいくら?」と聞いてくる。5日間で、案件になりそうな話もいくつかありました。金華山にこんなに興味を持ってくれるんだ、というのは個人的にも面白かったですね。それで、日本ではデコトラで昔から内装に――

―――シャンデリアを付けて。

中西:そう(笑)。内張りを全部この生地で作るトラックもあるんですよ、と写真を見せると、すごく反応してくれました。

―――ドライバーというより、架装業者が食いついたと。

中西:平日はそうですね。もちろんドライバーさんもいましたけど。

―――アルフレッドさんから見て、来場者の印象はどうでした?

アルフレッド:今年は日本人がめちゃくちゃ多かったです。前々回、前回と来ていますけど、今回は「日本人がめちゃくちゃいるな」と。

―――どういう人でしょう? トラッカーでしょうか? それともビジネスマン?

アルフレッド:本当に幅広いですよ。部品商社で開発をやっている人、運送会社の業界団体で来ているお客さん側の人、我々のような架装や整備の同業者。トラックの架装・板金の全国団体の流れで、ボルボディーラーの鹿島旭さんや大阪の丸茂自動車さんも来ていました。

―――潜在的なお客さんになり得る人たちも多かったと。

アルフレッド:そうですね。ファストエレファントとしても、接点はいくらでもありそうです。

「今すぐ売ってくれ」――ステアリングの値付けと、ブルドッグの完売

―――とはいえ、本命はやっぱりステアリングのような丁寧な仕事でしょうね。

中西:一番はそうです。壁に飾っていた通常のステアリングまで「今すぐ売ってくれるのか」「どうやって取り替えるんだ」と聞かれました。ドイツならジャンボさんを通して、購入から取り付けまでできます。

―――まるっとやれるかもしれない。

中西:それはやれると思います。値段も、こういう特別仕様で15万円くらい、お客さんのステアリングをベースにオリジナルに仕立てるなら10万円くらいでもできると話すと、「安いね」という反応でした。

―――ここまでやるのに、この値段ですからね。

中西:そうそう。向こうのドライバーさんの感覚からすると、ですね。

―――実際に販売につながったものは?

アルフレッド:メールで見積もりを送ってくれ、という話があって、いま作っているところです。広がったら、今度はその国に行かなきゃいけないのかな、と(笑)。

―――代理店がついたら忙しくなりますよ。

アルフレッド:なので、少しずつ拡げていきたいですね。あと意外だったのが、金華山のブルドッグのぬいぐるみ。現地で10体ぐらい売れたんです。生地のどこを使うかで模様が一体ずつ違うので、「唯一の一体ですよ」と話すと「かっこいいね」と買っていく。

―――それはいい売り文句ですね。

アルフレッド:しかも、ヨーロッパに持っていった分は、日本人のお客さんが「全部欲しい」と言って買っていっちゃったんです。

―――日本人が買っていくんだ(笑)。

アルフレッド:そう(笑)。なので補充しなきゃいけない。このあとのトラックフェスに間に合うように30体ぐらい追加注文して、半分はトラックフェスに持っていきます。そんな状況になるとは思っていなかったので、意外と売れるんだな、と。金華山、商材として決して悪くなかったですね。

「出したい日本」と「受ける日本」

―――社長から見て、今回の課題は何でしたか。

中西:欲を言えばいくらでもあります。ファストエレファントはボルボのカスタムラインとして日本で8年ぐらいやってきましたが、基本はあくまでヨーロッパのパーツを扱ってきた。日本では浸透していないからオリジナリティになるけど、それを向こうに持っていっても「うちはもともとやってますよ」というマーケットなんです。

―――本場ですからね。

中西:だから日本オリジナルのものをどう作り上げるか。今回はステアリングと金華山になったけど、受けそうで、なおかつジャパンオリジナルなものを、あと4つ、5つ出せればよかった。この2年で、そこまでの商品を作り込めなかった準備不足は大きな反省点です。

―――では点数をつけるなら?

中西:ただ、仮に商品がもっとあったとしても、1週間の会期で全部を紹介し切れたかというと難しい。共同出展のコストと、その最小限の中でできたパフォーマンスを考えれば、個人的には100点中50点くらいかな。

―――ともかく出展することに意味があった、と。

中西:そうですね。何より、直接の反応を見たかったんです。特に金華山は、僕は個人的にはそんなに好きではないので(笑)。

―――そこなんですよね。社長はデコトラ文化を否定しないけど……。

中西:好きでもない(笑)。そういう気持ちで行って、これだけ反応してくれる人がいた。そこに驚きましたね。

―――こちらが出したい日本と、向こうで受ける日本は違うのかも。アニメのカッティングシートのほうが売れたりして。

中西:ピカチュウとか、日本で痛車と言われているようなのをシートカバーにポンとプリントしたほうが、良かったかも。

―――そっちは鉄板ですね。

中西:ポケモンですよね。

―――あとはナルトとか。海外で人気のサスケの写輪眼とか(笑)。ちゃんとIPとって向こうのトラック用だといえば宣伝で著作権の許諾もおりやすい気がします。

中西:そういう反応を見られたという意味でも、すごくよかったです。

―――では将来的には、もう少し種類を増やして、さらに販売していきたいと。

中西:そうですね。もうちょっと増やしていきたいです。

次の2年後へ――金華山内装のトラックを持ち込みたい!

―――アルフレッドさんは、ディレクター的な視点で、次回はどうしたいですか。次は2年後ですね。

アルフレッド:あの狭いブースでこれだけ人が来てくれたので、車を持っていければもっと呼び込めると思います。ただ、IAAはカスタムショーじゃない。カスタム車を持っていっても「カスタム屋が来てどうするんだ」となるので、商品を決めて、それをとことん付けた車を持っていく。

―――やっぱり車自体を持ち込みたいんですね。でも、「これでいくら」というものがないとダメだと。

アルフレッド:たとえば内装を全部金華山にした一台。外は僕らが思うかっこいいカスタムで見せつつ、「でも中身が重要なんです」と、中に乗って体感してもらう。何万人と来るイベントなので、コンセプトさえあればお客さんはついてきます。

会場で見たもの――「ほぼ全メーカーがEV」、ボルボとテスラ

―――さて話は変わってショー全体で、面白かったものは何だったでしょうか?

中西:車両を出しているトラックメーカーは、ほぼ100%、全メーカーがEVを出していました。

―――なるほど。EVの席巻率が上がって、もう後戻りはしないと。

中西:ボルボのブースも、もう「Electric」ですからね。一昨年スウェーデンのボルボ本社に行ったときに、このクラスで、すでに世界で5,000台を受注して売っていると聞きました。あの時点で販売開始からまだ1年とかでしたから、いまはもっと伸びているでしょうね。

―――今回ボルボは航続700km、総容量780kWhの「FH Aero Electric」の量産開始を発表して、「International Truck of the Year 2027」も受賞しました。充電はどうなんですか。たっぷり1時間かけて500km、みたいな感じ?

中西:そうですね、500kmという感覚です。

―――受け入れは何kWなんですかね。800kWとか入るのかな。

中西:それで言うと、テスラが今回ヘッドを出していたんですよ。

―――出してたんですか。

中西:試乗会もやっていて、乗ったら全然パワーがない。

―――ないんですか(笑)。

中西:この車です。

―――セミですね。欧州仕様は40トン満載で航続550km、800kWなら30分で約60%回復。3モーターで1,000馬力超えのはずですけど。

中西:カタログの数字はいいんですけどね。いろいろな車に乗っている知り合いのドライバーさんも乗って、「ダメだ、あれは」と。その人はボルボにも、日本で走っていない車にもいろいろ乗ったうえで、ですから。

―――プロドライバーが言うならダメですね(笑)。トルクがないのは意外だな。ちなみに、一人乗りでしょうか?

中西:席はあるんだけど、運転席が真ん中に、キュッと肩よせあってる感じです。

テスラ・セミ欧州仕様。運転席はキャビン中央に置かれる

会場で見たもの――中国FAWのコンセプトと、ボルボの全方位戦略

―――この車は何ですか。

中西:「FAW TRUCKS」と書いてありますね。中国の第一汽車です。

―――なるほど。

中西:一応デモ車というか、コンセプトカーみたいな感じです。これがそのまま出るということは、なかなかないでしょうけど。

―――FAWは今回から欧州への本格参入を打ち出して、あとから電動に載せ替えられるモジュール式キャブの「2036」コンセプトを世界初公開していました。どうですか、これ。

中西:外装は悪くないんですよ。昔の中国メーカーはどこかの丸パクリが多かったけど、今は3つか4つぐらいのアイデアを掛け合わせます。

―――複合的に掛け合わせると。

中西:ただ内装は、大きなモニターを付けて今どきではあるけど、パネルなんかの作り込みがすごくちゃちい。ベッドも入るんですよ、これ。

―――うーん。ここでは寝たくないな(笑)。

アルフレッド:どうしてですか?コンセプトカーだから(笑)。

中西:マットもビニール感がね。やっぱりセンスがない。

―――でも、安いんですよね?

中西:安いです。これが普段売っている通常のFAWですね。

―――欧州向け主力の「Cortron CS」ですね。800Vの電動版とディーゼル版を並べていました。でも結局、安い。日本が勝てないのはそういうところですよ。

FAW TRUCKS。外観は洗練されたが、内装の作り込みには課題も

中西:ボルボに話を戻すと、カメラもみんなCMSです。日本には来年ぐらいに入ってくるかなと。この顔で、エアロで。

―――向こうはもう完全にエアロなんですね。

中西:ほぼほぼ。それと、これはLNG。

―――LNGって、未来はあるんでしょうか。

中西:あくまでもボルボは、パワートレインを全方位で開発している、ということです。

―――バイオガス対応の新ガスエンジン「G13」、HVO対応の新型ディーゼル「D13」、2030年までに出す水素エンジン車のプロトタイプまで並べていましたね。燃料電池もいいですよね。この間、発電用エンジンを搭載した新型エルグランドに乗ったら、びっくりしました。

中西:構造で考えたら一番いいと思います。チャージ時間も短いし、パワートレインとしても遜色ないし、超クリーン。あとは水素でやるなら水素インフラですね。

―――圧倒的に低燃費で、走りもEVですしね。なんでこっちに行かないんだろうと思いました。

中西:インフラでしょうね。

会場で見たもの――「転がる力で充電する」トレーラーと、日本の重量の壁

―――アルフレッドさんは、ブース以外で気になったものは?

アルフレッド:うちのブース以外で、ですか。実際、誰かが抜けるとブースが本当に回らないので、僕はほとんど出られなかったんです。ちょろっと見た限りでは、技術的には2年前とそんなに変わらない。電気か水素か、というところで止まっている印象でした。

―――爆発的な変化は感じなかったと。

アルフレッド:前回はカーボンニュートラルのハイブリッドが出てきて「すげえ」と思ったんですけどね。

―――世界的にはEVがぐいぐい来ているのに、まだ足踏みしていると。

アルフレッド:そんな感じです。僕が面白いと思ったのは、トレーラーが転がる力を電気に変えて、トレーラー側で充電する仕組み。トレーラーって3軸あるじゃないですか。その軸に充電するモーターを付ければ、オルタネーターみたいなものなので、フル充電とはいかなくても60%ぐらいは賄える。そうしたら全然走れるじゃないですか。

―――回生電力をガンガン回して使う、と。

アルフレッド:ただ、めちゃめちゃ重い。普段なら冷蔵庫や冷凍庫のエンジンが付いているところに、バッテリーがぎっしり積まれている感じで。2年前も、いろいろなところが出していました。これはサーモキングのトレーラーですね。そんなに難しいものじゃないけど、考えた人はよくひらめいたもんだなと。

―――サーモキングの「AxlePower」ですね。BPWの発電アクスルで走行や減速のエネルギーを電気に変えて、電動の冷凍機を動かす。冷凍車のサブエンジンをなくす発想です。欧州では、トレーラー側の電動アクスルで牽引そのものをアシストする「eトレーラー」の開発も進んでいます。

サーモキングの「AxlePower」搭載冷凍トレーラー。走行中の回生で冷凍機用のバッテリーを充電する

アルフレッド:ただ、電気的には行けるんだけど、日本で走らせるとなると、インフラも重量もちょっと難しいかな。

―――重いですからね。

アルフレッド:だから帰りのタクシーで社長と話していたのは、最終的には原子力だね、と(笑)。ガンダムを動かすみたいな、小さいやつ。

―――マイクロ原子力ね。核融合です(笑)。

アルフレッド:ただ、水素もそうですけど、爆発が怖いので。

中西:環境だけで見れば、原子力は制御できる技術レベルにあるんです。福島の事故からも15年経っている。ただ日本は、国同士の争いという地政学的なリスクの狭間にいるから、おいそれとは入れられない。

―――なかなか一本化とはいかないと。

中西:それに日本は総重量の問題もある。40トンまではいけるかもしれないけど、50トン、60トンは到底無理でしょう。

―――夢のまた夢ですね。当面、お菓子しか運べませんね(笑)。

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