トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第16回

MS&ADインターリスク総研株式会社 新領域開発室マネジャー上席コンサルタント 
蒲池康浩様

MS&ADインターリスク総研株式会社 新領域開発室マネジャー上席コンサルタント
蒲池康浩様

「そこのところどうなの!? トラックの自動運転と隊列走行の“現在”」

この5月に横浜で「ジャパントラックショー2018」が行われました。ヨシノ自動車も出展し、のべ3日間の来場者数は5万1000人を越えました。そのショーで実施された講演の中で、ひときわ注目をあつめていたのがMS&ADインターリスク総研株式会社 新領域開発室マネジャー上席コンサルタントである蒲池 康浩様による、「トラックの自動運転、隊列走行がもたらす将来とは」でした。自動運転化によって業態が大きく変わるだろうトラック業界ですが、その認識はいまひとつ浸透していません。けれども関心の高さは、立ち見も出た来場者の数にもあらわれていました。そこで第16回はトラック業界にこれから来るだろう、新しい波であるEV化と自動運転、隊列走行の未来について蒲池氏と対談を行ってきました。

写真・薄井一議
デザイン・大島宏之
編集・青木雄介

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避けられないEV化?

____自動運転と隊列走行に関して、今回は商用車および物流に与えるインパクトを中心にお話しをいただきたいと思います。まず最初に、おそらく前提となるだろうEV(電気自動車)の今後についてお聞かせいただけますでしょうか。やはり今後の主流はEVという点で、間違いないのでしょうか。

蒲池:あくまでも個人的な見解になりますが、海外での動向を踏まえるとEV化の流れは止められないように思います。少なくとも現時点では。それにはいくつか理由があるんです。よく言われるのは環境対策ですが、それ以外の理由として、例えば車載器等の搭載スペースの問題もあります。自動運転というのは多くのセンサーやコンピューターを積まなければいけないのですが、現代の車だともうそれを積むスペースがないんですね。まずスペースを空けないと、走るための装置はもちろん、走行記録を取るための装置なども搭載が難しい。EV化すると部品点数は減ると言われていますので、スペースに余裕ができる。自動運転化に必要な装置はそこに載せることができると、あるメーカーの方が言っておられました(笑)。ただ日本の自動車メーカーは、ピラミッド型で下請けの工場もたくさん抱えていますから、かなり悩んでおられるようです。

そもそも論がスピードを遅くさせる!?

____それは乗用車の議論でもありますね。即 EV 化 という考えをすべきではない。現状からだとまだまだガソリンもディーゼルも、水素や燃料電池車といった選択肢も考えていくべきだというような。個人的にもまだ時間は残されている気がするのですが。

蒲池:環境的にいえば、他の選択肢ももちろんあるでしょう。ただ自動運転の実現を考えた場合、 EV 化は有力な選択肢ということになるかと思います。

中西:最近発表された日野自動車のフォルクスワーゲンとの提携なんかは 、そういう新しい時代に向けての第一歩なんでしょうね。

蒲池:私も最近知ったのですが、海外と日本ではEVに対して見方がやや異なる部分があります。例えば日本では「バッテリーが劣化した時にどうするの?」という課題を重視していますが、例えば世界有数のEV推進都市であるサンフランシスコを視察した際にインタビューしたところ、それほどバッテリーの劣化については問題視されていませんでした。「その時は車を買い変えればいいでしょう」 とシンプルな回答が多かったです。メーカーとしては当然、お客さまへのサービスや品質を重視していますので悩まざるを得ない。結果として研究開発スピードの遅さに繋がってしまうというジレンマに陥っているのかもしれませんね。

日本でEV化のサイクルが回らないのはなぜか?

中西:ちょっと話が違うかもしれませんが、 今回のジャパントラックショー2018で出店されているイタリアのイベコさんが CNG(天然ガス車)と LPG(液化天然ガス) の燃料を兼用できるトラック(ストラリスNP)を出品されました。満タンだと航続1500 km走るそうです。 CNG や LPG はすでに都内なんかでは使われていますよね。ゴミ収集車や、タクシーなんかに使われています。とはいえ、それはあくまでも行政の「これだけの事業体であればこの台数入れてください」という行政主導による結果です。ではなぜ普及しないかというと、7年後のリセールバリューがほぼゼロになってしまうからなんですよ。弊社は中古トラックを販売しているので分かるのですが、例えばディーゼルだと100万つけられる車体であれば、CNG だと20万しかつけられません。それはなぜかというと中古市場に需要がないからなんです。

蒲池:なるほど。例えば海外だと、劣化したバッテリーはエネルギー関連の会社が買い取るケースがあるようです。彼らは風力電力や波力電力など、自然エネルギーに移行する中で、電力の需要供給の波に備え、蓄電しておかなければいけないという課題があり、それを解決するために、大量の中古のバッテリーを使用することを計画している。そうなってくると、売り先はもちろん価格の付け方も違ってくるんですよね。海外ではEV化に向けたサイクルが回り始めてると言えるでしょう。

中西:よく分かります。今のところの日本はそこまで到達できていませんよね。

避けられない、メーカーを直撃する雇用問題

____新しいエネルギーが普及するためには、社会にそれを受け入れる準備や基盤が必要になってくるということですね。

蒲池:そうだと思います。受け入れるための基盤にメドが立ち始めたら普及は加速すると予測する専門家もおられます。先ほどもお話しましたが、その場合、自動車メーカーは下請けの工場がありますから、EVに移行するという話になると既存の多くの企業が影響を受けてしまうと言われています。

中西:そうなると、全世界で何十万人以上もの雇用がある大手メーカーはどうなってしまうのか。その関連や下請け企業も巻き込むとなると、大変なことになりますよね。

____それは自動運転でトラック運転手の仕事がなくなってしまう以前に直面する、大問題ですね。

蒲池:そうですね。日本はドラスティックな変化を好まないとよく言われますが、その変化をチャンスと捉えて、成功をつかみなさいとするのが海外ですよね。商用車でのEV化についても、公になっている情報だけを見れば、海外のほうが研究や普及が進んでいるように見えます。本当は日本も相当技術開発は進んでいるのですが、あまり公表されていません。そのため、仮に国内でEV化したトラックのニーズがあるのであれば、海外から調達した方が早いという意見が出てくるかもしれませんね。

最初の流れは海外製のEV車両からか

____トラックのEV化が普及するのは、どれぐらい先になるんでしょうか。

蒲池:例えば、アメリカだと平準な道も多いのであまり問題にならないかもしれませんが、日本は坂が多く、商用車に必要なトルクを引き出そうとすると多くの電力を消費します。そう考えるとバッテリー性能の向上だけでなく、充電ステーションを増やすなど、インフラも整備しないと受け入れがたいでしょうから、普及には時間がかかるかもしれません。ただ逆にいうと課題は見えているので、その課題が解決されれば普及は加速するとも言えます。世界的にバッテリーや急速充電技術はどんどん進化していますよね。この分野は世界的にベンチャー企業が元気なので、まずは海外のEV車両を輸入して実証を積み重ね、ノウハウを蓄積し、最初に実用化を可能にした企業が勝つ、というストーリーもあるかもしれません。

自動運転化に対するリスクへの考え方

____当然、自動運転技術の取り入れというところでも日本メーカーは慎重にならざるを得ない訳ですね。

蒲池:例えば私の専門のリスクマネジメントでお話ししますと、リスクの受け入れ方が日本と海外でやや異なります。日本はよりゼロリスクを求める傾向にあると言われます。何かあればメーカー責任ではないのか、と。一方、海外は自己責任文化の傾向にあると言われます。リスクを理解した上で買って自己責任で使用する。だから市場に出るタイミングも、日本より早い傾向にある。

____そういう議論は自動運転だけではなく、現在あらゆる場面でされていますよね。日本はあらゆるリスクを先に検討しておかないと気が済まないけれども、海外はトライアンドエラーで物事を進めていく。

蒲池:リスクの検討の仕方にそれほど差があるとは思えません。先ほども言いましたが、どちらかというと、どこまでのリスクを受け入れられるかのラインが異なっているように思えます。海外の考え方を羨む方もおられますが、個人的には日本的な考え方も好きです。私たちは日本の考え方で多くの恩恵を得ていますし、安心して生活しているのも事実ですから。

中西:僕もそれはすごくわかります(笑)。個人的には完全に海外指向なのですが、生真面目な「 ザ・日本人」 に弊社が支えられているのも事実ですからね。実際の運用になるとゼロリスク文化に助けられる訳です。

海外メーカーが直面する、先進の機能の認可が下りない問題

蒲池:ちなみに私は、ボルボトラックのような海外メーカーを扱ってらっしゃるヨシノ自動車さんは、有利な立場におられると思っています。自動運転や先進技術はこれまで以上に海外から入ってくると思うんです。そういう技術を扱えるエンジニアがいらっしゃる会社は、非常に有利な立場にあると考えています。

____私もそう思いますし、おっしゃる通りボルボは先進の自動車メーカーですが、いざ日本に入れようとすると肝心の先進の機能が使えなかったりしますよね。どうしても国土交通省の認可が下りなかったり。例えば社外からのリモコンによるエンジン始動機能などは海外では実用化されているのに、日本では機能出来ない。

中西:はい。面白いですよね。先ほど話したイベコさんのCNG 車は、まだ国土交通省許認可は下りていないそうです。でもこの日本の展示会には出しちゃうわけです(笑)。感覚が違いますよね。

日本における自動運転のロードマップとは

____ちなみに保険の面では、欧州ではもうすでに自動運転を見越したドラスティックな制度のようなものが始まっているのでしょうか。

蒲池:そうでもないですね。現行制度の解釈を拡大していく流れです。最初は新しい制度をつくるという話もありましたが、複雑すぎて一旦諦めたという国もあります(笑)。基本は現行制度をベースにした拡大解釈であり、日本も基本的に同じ考えです。

____現状、日本での自動運転化の流れをあらためてお教えいただけますでしょうか。

蒲池:一般車の場合は、大雑把にいうと、レベル2(ハンドルを握った状態での自動追尾や車線維持など)を2020年までに高速道路において実現する。そして2020年代前半までにレベル3(ハンドルを握らない状態での走行)を実現するとされています。商用車の場合はやや曖昧でレベル2以上を実現しつつ、2025年までにはその先に行きたいというイメージです。

中西:レベル2はあくまでも補助ですよね。ハンドルから手を離さずに、追尾と車線内走行は車がしてくれる。 これでも非常に便利ですけどね。

蒲池:はい。ただ、レベル3以降を想定したジュネーブ条約(ジュネーブ道路交通条約)改正の議論が思うように進まないという情報もあります。 条約には「車両には運転者がいなければならない、運転者は適切かつ慎重な方法で運転しなければならない」ことが明記されているので、批准国は公道を走れません。そのため各国が独自解釈して実証などを行っている状況ですね。先進国の思いとしては、レベル3が実用化されるまでには、ジュネーブ条約を改定したい。ただジュネーブ条約の改定に熱心なのは(自動車生産国である)5、6カ国ぐらいと言われています。それ以外の国は、まだまだどうでもよかったりするんですよね(笑)。技術としてはすでにレベル3に到達しつつあるのですが。

なぜトラック業界は自動運転化の議論が遅れるのか!?

中西:アウディがジャックという名前のレベル3自動運転実験車で公道を使った実験をしましたよね。 アウトバーンのある一定の区間は自動運転走行を認められていて、ドライバーはハンドルから手を離した状態で、追い越したり車線変更もする。

蒲池:はい。そういったある一定の区間だけでも可能であれば、また新しい知見が得られるわけですから、メーカーとしては限定的であってもメリットがあるんです。そういう意味では自動運転のロードマップにはメーカー、国、消費者など多くの立場や業界などが関係してきます。そのため、何が起こるかわからないし、きっかけがあれば一気に進む状況と言えるでしょう。私も乗用車、商用車、消費者、メーカー、技術、法整備、保険などそれぞれの分野に関して最低限の状況は理解しているつもりですが、それらの中でもトラック業界というのは自動運転化の話が一番、遅れている分野だと思っています。理由は色々あるのですが、一番大きな理由は「誰もが遠い先の話だ」と思っていることなんです。

____トラック業界に従事している人たちの肌感覚として、まだ先に感じられるのでしょうか。

蒲池:はい。トラックを運転するという、繊細で専門的な技術が機械で実現できるわけがないと感じているんだと思います。

オートマ化さえ受け入れがたい日本の市場環境

中西:分かります。ちょっと話が違いますが去年、2ペダルで発売された新型スーパーグレートが、最近3ペダルのマニュアルモデルも販売することになりました。その話を聞いた時に「これが日本なんだ」と思いましたね。今後の自動運転化の流れだったり、ドライバーの疲労軽減のためだったり、世界的に2ペダルの流れなのに、日本のマーケットでは相変わらず3ペダルが人気なんです。それは繊細で専門的な技術をこなす上で、3ペダルが最も信頼されているからなんですね。

蒲池:ドライバーにはベテランの方もいらっしゃれば、乗り慣れない初心者の方もいらっしゃるはずです。そこを使い分ければ、いろいろうまくいくように思うんですが、同じ会社に二つの形式の車があると管理コストがかさむなどの 問題が出てくる。そうなると、やはりベテランの方の声は無視できないということになるのかもしれませんね。なるほど。そういうことが実際に起きているんですね。

中西:ふそうさんは、親会社がダイムラーだから是が非でもトラックのオートマ化を進めたかった。それで新型で全車オートマチックの仕様にしたときには「思い切ってやってきたな」と思っていましたが、日本特有の事情が許さなかったということなんでしょう。

____3ペダルになってしまうと、せっかく日本の商用車で初めて実用化された自動発進自動停止の機能も使えなくなってしまいます。ある意味、レベル2を放棄していますよね。その感覚からすると、隊列走行なんか先の先に感じられてしまいますね。商用車の場合、まず自動運転化の話は隊列走行ありきだったりしますよね。

蒲池:はい。日本は人材不足の解消だけでなく輸送コストの削減も重視していますので、自動運転よりも隊列走行の方が結果が出やすいと判断されたのかもしれません。ただ現時点で2020年前半には自動運転を始めるロードマップがしかれているのは間違いありません(政府による国家戦略「官民ITS構想・ロードマップ2017」による)。しかし、仮に技術が確立したとしても、多くの現場に普及させるためには、強い意志を持って「我が社で導入するんだ」というような会社が現れない限り、難しいかもしれませんね。

中西:そうですね。技術があっても、民間会社が強い意志と、継続的な意思を持たない限り、なかなか進まないと思います。

隊列走行の技術的な難題とは?

____なるほど。ちなみに隊列走行に関しても実証実験が始まっていますよね。

蒲池:はい。ただ実際のところ、隊列走行はまだ課題が多いと言われています。 緩やかな車間距離で走るぶんにはよいのですが、例えば間に割り込みがあった場合はどうするのか、合流ポイントではどうするのか、車線変更したい一般車両をどうするのかなどです。仮に車間距離を縮めようとすると、今度は技術的なハードルが上がります。海外で話を聞くと、隊列走行の技術より自動運転レベル2や、レベル3の技術を導入する方が現実的で早いと言われる方もいました。

中西:それで腑に落ちました。車間距離という意味で、個人的には隊列走行の実現は難しいと感じていたところだったんです。

全長緩和された25mトレーラーが当面は大活躍か?

蒲池:車間距離をせばめようとすると法律も変えなければいけませんが、一番の課題は双方向通信を行うために常に安定した通信手段を確保することだと思います。通信速度はやはり一定ではありませんから。

中西:その意味で言うと、全長緩和されたフルトレーラーが現状、ベストということになるかもしれないですね。しばらくは1台で2台分運べる。 その間に世の中が自動運転レベル2からレベル3へと上がっていけば、ドライバー不足や労働環境の改善という、当面の課題は解決されるでしょう。時間的にも帳尻が合うんじゃないかな。

蒲池:それだけでも業界的には現状の様々な課題が解決できる、インパクトある方向と言えるかもしれないですね。

中西:単純に現在の中小、零細運送業者さんのドライバー不足というのはそれぐらいの規制緩和で十分対応できると思います。 レベル2、レベル3となるにつれ労働環境は劇的に改善するので、雇用もまた安定する。安易かもしれませんが(笑)、僕はそういう考え方でいます。そもそも日本の人口1億3千万人が遠からず1億人になると言われていますよね。今後、3000万人分の物量も減るわけですよ。さらに1度に運べる量が増えれば物流業界としては、その辺で当面は納まるんじゃないかと思います。

「今まで通りで良い」のがトラック業界だが…

____リアルな実感ですね(笑)。やはりますます、その流れで行くと隊列走行の実現はまだ少し時間がかかりそうですし、無人走行なんて一体いつになるやらですね。中西社長は、そういった隊列走行や自動運転がどういうタイミングで広がると考えていますか。

中西:自動運転化されたトラックは、これまでの新型車が出るような話とはもう次元が全く違いますよね。リアルな話をしますね。三菱のキャンターが今のモデルになったのは5年前ぐらいです。その時にメーカーは尿素とオートマという仕様で出して、これを標準装備としようとしました。弊社はレンタカー部分ですぐに採用したのですが、一般のお客さんにはほとんど売れませんでした。

____トラック業界自体が「これまで通りで良い」という感覚が主流を占めているからなんでしょうかね。

中西:トラックを買う層というのは、乗用車とは全く違っていて保守的なんだと思います。壊れてしまえば仕事にならないし、新機能を使うことに不安を感じるぐらいだったら、今まで通りで良いという傾向はありますね。仕事にならない。それを一番恐れますよね。

蒲池:現在の日本というのは、法体系から技術やインフラがシステマチックに完成している状態なんだと思います。そこに自動運転や、隊列走行のような根本的に異なるシステムが入ってこようとすると、何から何まで見直しをしていかなければなりません。それは相当な時間がかかりますよね。あえて「そこにチャレンジをしよう」という事業者さんはなかなかいないと思います。ですから例えば国が業界や名乗りを上げた運輸会社さんと協調、支援してどんどんノウハウを公開していくことが普及の近道なのかもしれません。

中西:そんな流れが一番しっくりきますね(笑)。

皆が皆、同じ運転をすれば事故は起きない!?

____蒲池さんの講演でも触れられていましたが、トラックの運転技術が専門的で荷物が繊細だからとか考え出すと切りがないですね。実際、現状のレベル2の自動追尾で走行している車両に乗っていると、車酔いしたりしますからね。

蒲池:偏った持論かもしれませんが、自動運転に個々が望む運転性向を求めると技術要求レベルがあがる。それらのニーズをどこかで割り切れれば、ずいぶん楽になるのではないかと。実際、タクシーだと自分の運転ではなくドライバーさんの運転技量に全てお任せになってしまうわけじゃないですか。多少「自分とブレーキタイミングが違うな」と感じても我慢はできるものです。次回も乗りたいと思うかは別ですが(笑)。

____確かに。そこは諦めていますよね。

蒲池:そうすると荷物だって梱包を頑丈にしたり、崩れないような工夫ができていれば、多少の加減速などには耐えられる輸送形式となるはずなんです。しかし、今までと変わらないようにという考え方に固執すると、これらの考えは受け入れられないかもしれないですよね。これは私の持論なのですが、ドライバーごとに運転性向が異なるから事故は起きると思っています。誰もが皆、同じ運転性向で運転していれば事故は限りなく少なくなるのではないかと。ただ、そういう話をすると、「わかるけどそれじゃ売れないんだよね」と言われてしまうんですね(笑)。こんな偏った発想をするのは私がリスクマネジメントの仕事をしているからだと思います。事故の原因、それがドライバーの個性や性格に起因する場合がありますから。

自動運転化にともなう責任の所在について

____確かにそうですね。みんながみんな同じ運転をしていれば事故は起きないし、渋滞だって発生しにくくなるはずです。ちなみに保険領域の話ですが現状のレベル2で事故が起こった場合、これはやはりドライバーの責任になるんでしょうか。

蒲池:はい。レベル4(ドライバーがデスクワークをしたり、映画を楽しむような自動運転状態)までは現状の保険の考え方で処理をする方向で、国土交通省から指針が発表されています。何かしらの形でドライバーや所有者の責任というのは免れません。これから徐々に機能が進化していくごとに、その都度、見直しが行われていくと思いますが、まだまだこれからの分野だと思います。実際、法律家や弁護士の方を入れて模擬裁判のようなことも現在、行われています。自動運転化の際はEDR(走行自動記録装置)もほぼほぼ装着義務付けという方向で決まってきています。ただ、問題は何のデータをどこまで取るのかというところにあります。それによって人が運転していたのか、システムなのか、どんな運転でどんな場面を運転したのか。それを警察の他に誰が見れるかなど、そこはそこで議論が必要なところですね。

____現在、自動ブレーキ装着が流行ですが実際のところ、性能に差があるように思います、そういう時、保険はどうしていくのでしょうか。

蒲池:いちおう評価制度はあるんですよ。第三者機関で客観的にその性能を評価しているところはあります。ただ、現時点で保険料の割引に差はありません。しかし、ゆくゆくは変わっていく可能性はあるかもしれません。なぜなら現在はドライバーの運転の仕方や事故の有無等で、等級や割引が違ってきますよね。それがメーカーではなく、装着される装備で評価するという方向に変わっていく可能性はあるかと。 ちなみに自動運転車に関して、ヨーロッパでは登録制度が検討されています。国が自動運転車として認めれば、法律や保険もそれに応じたものが適用される。国も一定関与するということですね。

中西:最後の最後は国が責任を負うということになれば、日本でも広がるんでしょうね。

蒲池:個人的にはその考え方に賛同しかねる部分もありますが、いろんな方がそれをおっしゃいますね。最終的には政府が保証する、それなら安心していける、と。自動運転の技術はまだまだ走り始めたばかりの技術ですし、今までは主にハード同士の組み合わせだったものが、レベル3に移行するとシステムやプログラム要素が強くなりますので、今まで以上にバグやセキュリティリスクについて考えていかなければならない。最近、サイバー攻撃を起因として事故が起こった場合は政府保障事業として国の特別会計から被害者の損害を補填する方針が打ち出されました。これは大きな前進です。メーカーはサイバー攻撃を非常に気にしていましたから。だから今後は安心して開発を進めることができるようになりました。このように、自動運転社会は一歩一歩進んではいると思います。

蒲池 康浩(かまち やすひろ)
1972年11月3日生れ。1996年 NTTシステムサービス株式会社入社、2007年 株式会社インターリスク総研(現:MS&ADインターリスク総研株式会社)入社、医療・福祉チーム、サプライチェーン・RM(リスクマネジメント)室、交通リスクマネジメント部、新領域開発室(旧:市場創生チーム) マネジャー上席コンサルタント。現在に至る。

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