自走する組織について ~2018年の終わりによせて | トラック業界“鍵人”訪問記 第23回 ヨシノ自動車

トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第23回

自走する組織について ~2018年の終わりによせて

自走する組織について ~2018年の終わりによせて

自走する組織について ~2018年の終わりによせて

2018年もいよいよクライマックスをむかえました。今回で23回を重ねた「トラック業界“鍵人”訪問記」もダイジェスト版を制作し、より幅広い読者獲得に向けて広告展開も行いました。そこであらためて2018年の終わりによせて、ヨシノ自動車の「共走」という考え方や企業における「人づくり」について、社長である中西俊介の講演をご覧ください。本講演はヒアリング形式のもと、2018年12月に横浜のグランドインターコンチネンタルホテルで行われた「KANAGAWA EXPO2018」にて収録。あらためて「自走する組織」を中心にダイジェストの編集を行いました。内容は中西俊介のパーソナリティはもとより、企業体であるヨシノ自動車の方向性を打ち出すものとなっています。ヨシノ自動車の考える「人づくり」とは何か? 聞き手は第十興産株式会社 営業推進室/自動車事業者コンベンション事務局 大木 崇様です。

写真・薄井一議
デザイン・大島宏之
編集・青木雄介

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人も会社も毎年1割ぐらい成長したい

____今回のテーマは人づくりということで、詳しく訊いていきたいと思います。ヨシノ自動車の売上高は現在100億円ということですね。ここまで年あたり5%から10%ぐらいの成長戦略を描いていらっしゃるということなのですが、その点について教えていただけますか。

中西:売上目標とは、あくまでもわかりやすい指数の一つでしかないと思っています。弊社でも「売上の増減には興味がない」と言いながらも、ちゃんと設定はしています。ただ企業が成長するためには人の成長がないと、企業の成長も望めないですよね。個々人の人間力の成長も、組織の発展力とともに「毎年1割ぐらい伸びていけばいいな」と考えています。

____個人的にヨシノ自動車に感じているのは、営業も業務も整備もみんな意識が高いんですよね。その意識の高さというのは、社員に権限委譲をすることによって、「可愛い子には旅をさせろ」ではないですが、社員の成長ありきの数字設定であったり目標設定だったりをされている印象があります。そういった中で、ヨシノ自動車さんは社会貢献事業に積極的ですよね。なぜされているのか教えていただけますか。

「共走」の理念から始まった

中西:企業というのは、社会にどのような存在価値があるかが大事だと思います。ですから必然的に社会貢献活動もやるべきことだと思っているからです。それを募金だったり、清掃活動だったりと、これまでアイデアを社内で募って行ってきました。

____企業として大事なことですよね。社会貢献活動から、会社の姿勢が伝わっていく訳ですから、本来やることは必然と言えるでしょう。ヨシノ自動車の理念に、「共に走る」と書いて共走という言葉がありますね。この「共走」とは何を指しているのでしょうか。

中西:簡単に言うと、共存共栄のことです。

____争うわけではなくて、共に育んでいくということですね。

中西:そうです。共に走る。その言葉を組み合わせて共走という言葉ですね。

____この活動に至った経緯を教えていただけますでしょうか。

中西:もともと私は平成15年に入社しているのですが、ちょうどその頃から東京都の排ガス規制が始まりました。この時期は特需景気にわいていました。年間の売上高が30億から、いきなり50億ぐらいになって、それが4年ぐらい続きました。その期間は儲かっていました。ただそれはお客さんが市場環境が良くて買い換えるわけではなく、仕方なしに車両を代替せざるを得なかった理由によるものです。その景気は、お客様にとって負荷がかかることでした。本音をいえば「買いたくないけど、買わざるを得ない」というような状況だったと思います。その代替コストで、経営に行き詰まる運送会社さんも非常に多かったんです。

「何か出来ないだろうか」からはじまる姿勢

____その中で共走を通じて、会社の理念だったり、ヨシノ自動車そのものをお客様に覚えてもらいたいというような考え方だったんでしょうか。

中西:もちろんそれもありますが、お客様の経営状態が良くならなければ我々も良くなりませんから「何かしなければ」という思いでしたね。

____これは社長が立ち上げたプロジェクトだったんですか。

中西:一番、最初はそうですね。 お客様とのコミュニケーションでいうと「トラックの値段を下げてくれよ」と実利的な話になりがちですよね。でも、そこで譲歩をすると我々が苦しくなりますから、商売ではなくなってしまう。私は、商売はあくまでも対等なものであると考えています。だからそれ以外で「なにかお客様を応援したり、支援したりすることができないだろうか」と考えたのが最初でした。その姿勢を示したい。「何かできないかな」というのが共走でした。一番、最初は写真を入れられるタンブラーを、無料でプレゼントするという活動でした。我々は運送会社さんとのお付き合いが多いので、50人の運送会社さんがいたとしたらだいたい40人はドライバーさんで構成されています。そこで「ドライバーさんにターゲットを絞ったサービスを行いたい」と考えました。

____それで写真を入れられるタンブラーなんですね。よく考えられていますね。

中西:ドライバーさんは、家族の写真や子どもの写真を車内に飾ってますよね。弊社の工場にトラックを入れられる時なんかも、キャブの中を見ると子供の写真が飾られていたりします。その人にとって大事な家族だったり、ペットだったり、好きなものの写真を飾っています。ですから弊社としては、ドライバーさんの入れたい写真を送ってもらって、それをプリントした上で、タンブラーに入れてプレゼントをすることにしました。

アイデアを社内でコンテストする

____非常に良いお話だなと思いました。人づくりの話を考える上で、社長は社内でコンテストを開こうと考えられたんですね。第1弾は社長自身がスタートアップさせ、第2弾は社員にそれを考えてもらっている。共走のあり方を「もう一度、考え直した」と社長はおっしゃっていましたね。

中西:共走では「こういう活動をしていきましょう」と提示してみた。それは特に新しい価値ではなくて、今までやってきた事を一つの形にしてみたということなんです。それが第1弾でした。第2弾はそれをみんなで考えて、実行していこうというところから始めました。一番いいやり方は「コンテストかな」と思って、社内コンテストを開いてみました。弊社は当時、40人近くいましたので8チームぐらいにランダムに分けて、「第2弾に何ができるか」を社内公募しました。

____整備から2人、業務から1人、レンタカーから2人というような、違う部署同士でチーム編成されたんですよね。

中西:はい。同じ部署に固まらないようにはしました。

____ここにもヨシノ自動車の人づくりのヒントがあると、僕は思うんです。普段、業務上コミュニケーションをとらないような部署同士でも、一つのコンテストを通じて同じ目的意識を持つところが、この共走らしさなのかなと思います。社長がトップダウンで物事を決めるのは難しいことではないですが、今回の講演のテーマである「自走する組織」にある通り、ヨシノ自動車は自律的かつ、より柔軟性をもった組織づくりに取り組まれているんですね。そして2011年におこった東日本大震災を経て、社員からアイデアとして上がってきたのが、「ドライバーによる緊急救命」だったということですね。

東日本大震災を経て見直される物流と人の命の大切さ

中西:そうですね。当時、東日本大震災があって、皆さんも経験されたと思いますが、ガソリンスタンドで給油ができなかったり、コンビニに行っても何もなかったり、そういう時に改めて一般的に、物流の大切さというものが身にしみて分かりましたよね。そこで、不意におこる天変地異や事故を起こしてしまったり、または事故に遭遇したときに救命処置がすぐにとれるようにと「ロードライフガード」という取り組みを行いました。この「ロードライフガード」ではドライバーの皆さんに救命講習を行わせていただいたり、一次救命の手引きを無料配布したりしました。このアイデアは社員によるものですね。

____素晴らしいですね。これは中西社長の言葉で印象に残った言葉なのですが、「人は簡単に成長できない。時間と愛情をかけなければいけない」という言葉がありました。当たり前のようなんですが、本当に愛情が込められていないと注意だって、単なる中傷になりかねませんよね。そこを踏まえて、人それぞれに評価をしていく。同時に評価する側にも努力が必要である、と。評価する側も見識を広めながら、説得力のある言葉で話さなければいけない。個人的には、そこに「人間力が問われているのだ」と感じました。ヨシノ自動車は人事評価に関しても、独特の評価制度を実施していて、半年に一度、人事に関する話し合いをされるんですよね。

中西:そうです。まだまだトライ・アンド・エラーを繰り返している最中ではありますが。

人間力と職能を対等に評価する人事

____そこを掘り下げていきたいと思います。ヨシノ自動車の人事の評価制度で、コンピテンシーレベル(高業績者にみられる行動特性のこと。コミュニケーション能力や問題認識能力など)とジョブスキルとありますね。

中西:今回、自走する組織というテーマでお話をさせて頂いていますが、手前味噌ですが、ここが弊社は一番オリジナリティがあると思っています。四年前に弊社は人事評価制度を変えていまして、つい最近も改定しました。コンピテンシーレベルとジョブスキルという2軸で評価をしています。つまり人間的スキルと実務的スキルの二つに分けています。

____例えばコンピテンシーレベルとは、 レベルが高くなってくると「能力開発として部署のマネージメント知識を積極的に習得する」とあります。コンピテンシーレベルはこういった見えにくい人間力のレベルの部分ですね、ジョブスキルとは数字に直結してくる部分で、営業で電話対応ができるといったところから、損益表まで管理して収益における経営判断まで行う、というレベルまであります。これが経理、業務、レンタカー、営業とそれぞれの部門に独自にあります。そして、これが非常に詳細なレベルまで突きつめられているんですね。

中西:一般的な人事評価制度としては、営業だったら営業目標に何パーセント以上近づいたとか、メカニックも具体的に、どこまでの作業ができれば一人前というような具体的な評価はありますよね。弊社はそれにコンピテンシーという2軸の評価制度を行っています。弊社には中途採用社員もいますので、年功序列ではなく、人事評価を公正に行うためですね。メカニックでいえば、技術はほぼ完璧な部類に入るが、なかなか挨拶をしないとかだと、評価は落ちてしまうんです。片方で新人だと、なかなか技術は習得するのには時間がかかりかかりますが、人間力だったりコミュニケーション能力で高い評価を得られていたりすれば相対的に評価はあがります。それぞれ人によって成長の仕方はまちまちなので、その成長に見合った評価を行いたいと考えているんです。コンピテンシーレベルと ジョブスキルは対等の評価なので、それぞれの軸の重なり合いで評価を決定します。

社員が自分の現在と課題を明確化できる

____基本給や、ボーナスもこれで評価されるんですね。

中西:そうです。

____これは常に見直しが行われていて、社員のモチベーションを下げるものではないんですね。

中西:そうです。もともと評価項目もすべて現場の社員が作ったものです。私が要求しているものではないんです。

____まとめると、この2つの軸によって社員は自分の位置を可視化できるわけですね。自分自身で課題を明確にして、目標を設定できる。自分がどこまでできたら、待遇がどこまで変わるのかというところまで、常にグラフ化しているわけですね。組織作り、チーム作り、人づくりの点でも見逃せませんね。社長は非常に柔らかい方なのですが、芯が通った方でもあって、「経営者は社員を正しい道に導かなければいけない。同じベクトルを向かないといくらトルクがあっても空回りして前に進まなくなってしまう」というお話をされていて、私の中でも非常に印象に残りました。そういった自走する組織を目指すヨシノ自動車にとって、興味深いのが PJ と言われる組織です。これはプロジェクトの略です。部署内から1、2名ずつ選出して社内の行事を企画するんですね。

中西:もともと共走プロジェクトを運営するチームとして発足しました。共走プロジェクトではタンブラーの企画をやったり、ロードライフセーバーの企画をやったりしていたのですが、ここから先のアイデアがなかなか出ずに、つまずいてしまっていました。共走という概念自体が、どうしても頭でっかちになっちゃっているんですね。「何が社会貢献か」と考え出すと、テーマが大きすぎて、実行に移せないものばかりになってしまっていました。

会社の原動力となっているPJメンバーとは?

____それでヨシノ自動車が掲げるビジネスパーソンの理念の部分だったり、人間力とチーム力の強化だったりを考え、社をあげてコミュニケーションと意識の共有を図っていくことになるんですね。大きな企業になると、「あの部門の数字が下がった」とか、「あの部門で事故が起こった」とか、そういった他部署の出来ごとにも無関心になりがちですよね。そこを無くしたいということですね。そして会社の目的と意識の共有を図る。ここで今年、そんな PJ メンバーが大活躍をしたトラックショーの話をしていきたいと思います。今年5月にパシフィコ横浜で行われたトラックショーのヨシノブースは大変に盛り上がっていました。DJや外国人コンパニオンが立っていたりして華やかなものでした。そのプロモーションビデオに出演しているアルフレッドさんはヨシノ自動車のベテラン整備士ですね。この辺も PJ メンバーが中心になって作られているんですよね。

中西:そうですね。トラックショーのためにムービーを作りました。

目的はビジネスパーソンを作ること

____こういった企画から予算、集客、広報業務と雑務をになう。ここはPJ メンバーがになって、社長は決済だけと聞いています。もちろん全社をあげてのお祭りなので、お金も相当かかったと思うのですが、出品されたトラックのモデファイからコンセプトまで際立って、トラックショーでも目立っていましたよね。そこに中西社長の良さと言うか、「やっちゃえ」という感覚が際立っていたように思います。若い子たちの力によって上がってきた企画を、社長が実行させる。PJメンバーが各自、責任をもってチームとして機能させる。そんなひとつのチーム事例として「このトラックショーは面白いな」と思いました。 さて改めてヨシノ自動車の経営理念ですが、「全てに感謝されるビジネスパーソンを作る」ということですね。全てとは顧客、取引先、上司部下、地域社会、家族、全てです。ビジネスパーソンとは自ら経営者の思考を持ち、新しい産業事業に興味を持ち、市場開拓をし、自ら作り上げていく人を指すとされています。

中西:はい。とにかく弊社では「ビジネスパーソンを作る」ということを大きな目的にしています。一番大事なことは、自ら何かを作り上げていく人。そういう人を作りたいなと考えています。もう、目的はこの一点に集中するかな、と考えていますね。

____了解です。いまヨシノ自動車は60周年を迎えています。これは先の話ですが、100周年に向けて社長とお話ししたときに「経営が交代していても、ヨシノ自動車らしくチームで成長していってほしい」とおっしゃられていました。100周年の時も、このヨシノ自動車のアイデンティティを育んでいってほしい、と。今日はありがとうございました。

中西:ありがとうございました。

中西俊介(なかにし しゅんすけ)
1975年4月生まれ。1999年 玉川大学 工学部 電子工学科卒、同年 日本電計(株)入社、2003年 (株)ヨシノ自動車 入社、2008年 代表取締役社長に就任、現在に至る。

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