自走する組織について ~2018年の終わりによせて | トラック業界“鍵人”訪問記 第25回 ヨシノ自動車

トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第25回

パネラー

右前:中西俊介
1975年生まれ。ヨシノ自動車代表!軽から大型特殊まで自動車全般が大好き!いつか自家用車をボルボトラックにしようと計画中。

左前:大木崇
1972年生まれ。第十興産 法人営業部兼、営業推進室 室長。スーパーGTやモータースポーツ界に深いパイプを持つ必殺仕掛人。https://www.your-pit.com/

右後:中渡瀬アルフレッド
1985年生まれ。ボルボカスタムライン、ファストエレファントのディレクター。体重もセンスも、ひとまわりスケールの大きいカスタムが得意。

左後:青木雄介
1971年生まれ。編集プロダクション・レベルドライブ主宰。元大型トレーラー運転手で大のカスタムカー好き。

緊急企画!トラックを人気モノにしたい!カスタムからライフスタイルまで熱く語る座談会

今回の鍵人訪問記のテーマはずばり「トラックを人気モノにしたい!」です。もっとトラックを好きになってもらって、トラックの文化を拡げつつ、面白くしていきたい。そんな“オールトラック”のヨシノ自動車ならではのテーマとなります。今回は対談形式ではなく、4人のパネラーでテーマを考える座談会です。話題はイベント、モータースポーツ、デコトラに最新スタイルのカスタムなど多岐にわたりました。面々はヨシノ自動車の中西代表にファストエレファントのアルフレッド、神奈川県下でガソリンスタンドから大型整備まで手がけるカナセキユニオングループ/第十興産の大木崇氏。大木氏はスーパーGTをはじめとした、モータースポーツとの関わりも非常に深いバックグラウンドをお持ちの方です。そして元トラック運転手にして編集者の青木もまた、司会兼パネラーとして参加しました。もっとトラックを魅力的に、より身近に感じてもらうにはどうすれば良いのでしょうか?

写真・関根虎洸
デザイン・大島宏之
編集・青木雄介

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人気が高まるカスタムカーシーン

青木:まず大木さんとヨシノ自動車との関係性について教えてください。

大木:これまでヨシノ自動車さんとはパーツ販売でのお付き合いと、弊社が代理店をしているモータースポーツにもご協賛いただいて、非常に良好な関係を築かせていただいてます。 弊グループはガソリンスタンドから大型整備業まで幅広く社業を手がけていますので、社長の中西さんとは歳も近いこともあり、普段から情報交換などお付き合いをさせて頂いています。ビジネス上のお付き合いはもちろんなんですが、モノよりコトのお付き合いが多いかもしれないですね。

青木:有難うございます。今回は私も司会兼パネラーとして議論に参加したいと思っています。今回のテーマは「トラックを人気者にしたい!」という内容で、皆さんのご意見をお伺いしたいと思います。もともと私は大型トレーラーの運転手で、現在では編集プロダクションをしつつ、クルマの仕事が多いです。そんなクルマも好き、トラックも好きという視点から入ると「もっとトラックも、クルマの人気あるコンテンツのような盛り上げ方ができないだろうか?」と考えるわけです。最近のクルマの人気はいわゆる東京モーターショーのような、コンセプトカーや新型車を展示するイベントよりは、東京オートサロンのような、ド派手なカスタムカーのイベントの方が盛り上がっていますよね。

カスタムカーイベントに、日野自動車が出展する意味

中西:この間、大阪のオートメッセを初めて見に行きました。国産のメーカーさんも多く出店しつつ、フェラーリなんかの高級スポーツカーもたくさん展示されていました。その中で東京オートサロンもそうですが、大阪のオートメッセにも、日野自動車さんが参加されていたんです。それがわりと純正に近いカスタムなんですよね。ちょっと「新しいな」と思ったのはメッキを一切入れないで、色と雰囲気だけでカスタムしていました。いまどきだとトラックは全部、メッキパーツで固めちゃいますよね。

日野プロフィア(東京オートサロン、大阪オートメッセ出品車両) ©日野自動車

青木:そうですね。レース場やコンサート会場に出入りする機材車みたいですね。クルマのカスタムカーの祭典に日野自動車が出店する理由を探りたいですね。クルマのカスタム好きにトラックをアピールする。もしくはトラック好き、トラック運転手でカスタムカー好きにあらためて日野のトラックをアピールするという事になるとは思うのですが。

中西:はい。そもそもクルマ好きはドライバーさんには多いですよね。でもドライバーさんは仕事柄、トラックに乗る時間の方が断然多くなるはずですし、例えば予算で10万円あるとしたら自分のトラックにかけちゃうなんてことは多いと思いますね。

青木:そうなんですよ。トラックとクルマが両方好きという人は多いですよね。会社のトラックなのに自腹でカスタムもしちゃう。とはいえ、トラック好きとクルマ好きには大きな違いがあって、そもそも入口が違っている気がするんです。私がレーシングドライバーやタクシー運転手ではなく、「トラック運転手になろう」と考えたのは、子どもの頃、家の引っ越しの時にきた第一貨物の大型トラックに衝撃を受けたからです。私の家の前の狭い路地に、大型トラックが入ってきたのに衝撃を受けて、「自分も乗りたい」と考えたんですよね。アルフレッドさんは、なぜ大型の整備をしようと考えたのですか?

トラック好きは「ピン」とくる!?

アルフレッド:確かにそう考えると、乗用車の整備は僕の選択の中にはなかったですね。最初から「大型トラックの整備をしたい」と考えていました。私の通っていた整備学校に一台、トラックがあったんですよ。それが2トン車だったのですが、パーツを触った瞬間、「これは俺に合ってるな」と直感したんです。あの大きさとサイズでしょうかね。「あ、俺はトラックだ」と思ったんです。やっぱりインパクトにやられたんですよ(笑)。

青木:それよくわかります。「これだ」とピンとくる感じ。その話でいけば、ファン層拡大にはまず直接見て、触れて体験してみるということでしょうね。

大木:逆にその大きさが仇になって、「集合しよう」となった時にトラックはなかなか集まりにくいということもあるかも知れないですね。海外では物理的な広さもあるから、トラックが大集合してモータースポーツやイベントをすることもできますよね。その辺は大らかな感覚があるし、ファンの母数も大きい。でも日本でトラックのイベントをしようとすると、なかなか気軽にはできないですよね。だからコンテンツも生まれにくい。日野自動車さんがオートサロンなんかに出店するのは、「裾野を広げたい」とシンプルに考えているのでしょうね。日常だと、そもそも大型トラックに触れる機会がない。トラックとは商用で、自家用で乗るには敷居が高い。実際、トラックを買うとなると、家を買うレベルの話になっちゃいますよね。それが仕事になるというところは、大きな魅力ではあると思うんですが。

リターントラッカーを取り込む!?

青木:そうなんですよ。自家用でトラックを買って仕事で使うとなると、もうそれは生き方なんですよね。趣味を越えた生き方。カスタムにこだわれば、何千万とお金がかかる世界です。

大木:私や中西社長は昔、バイクに乗っていたから分かるのですが、そろそろ子供も手がかからなくなってきたことだし、「ハーレーを買ってバイクに乗ろう」というような元バイカーが最近、増えているんですよ。ですから以前、トラックに乗っていた人に、改めてトラックに乗れる機会を作るのも良いかも知れないと思います。リターントラッカー的なムーブメントもあっていいのかなと思うんです。そんなリターントラッカーたちで、新しい文脈でトラック好きの層を掘り起こすことはできそうな気がするんですよね。費用もかかりますし、「それって意味があるの?」という突っ込みも免れない。でも運転手不足に危機感を覚えている行政を動かして、免許がなくても乗れるような場所を提供するとか、そこで触れてもらって「意外に乗りやすいんだね」というような体験をしてもらうことも大事だと思うんです。

青木:リターントラッカー、面白いですね。トラックは降りても、また乗りたいと考える層はいますし、私もそうです。かつて乗っていた人も、はじめて乗ってみたい人も気軽に大型トラックを運転できる場所があったら最高です。結局、我々としてはトラック好きも増やしたいし、トラックドライバーも増やしたい。その意味で去年、ヨシノ自動車も参加したジャパン・トラックショーのようなイベントは、すごく意味があると思います。あそこに来ているお客さんの印象に残ったブースや、人気のあったグッズなんかは、今の時代に何がマッチしているのか、よく分かるリトマス紙のようなものだったと思うんです。

ドライバーに人気のある外国車種で人気回復!?

ジャパン・トラックショー2018のヨシノ自動車ブース ©Yoshino Motor

大木:草の根活動でいえば例えばヨシノ自動車だと、あのジャパン・トラックショーで出品したボルボのカスタムトラック、カインやアベルを社員に無料で貸し出して街を走ってもらうとかも裾野を拡げるためには良いかもしれません。これから先、20年後は自動運転が普及して「トラック運転手をしたい」という人はいなくなってしまうかもしれませんよね。でもそんな先を見据えて、トラックにワクワクさせられるような文化を作りたい。現在、トラックが好きな人たちが、未来に繋げていけるようなイベントがあるといいですよね。トラックに触れることが少ない私でも、あのジャパン・トラックショーは楽しかったですよ。

青木:大木さんにとっても楽しかったんですね?

大木:楽しかったです。ヨシノ自動車のカインとアベルは際立ってましたね。弊社グループの中には相鉄グループの路線バスの整備を扱ったり、スカニア特約店としての神奈川県での整備を担当していたりします。やはり整備士に訊くと「この会社はスカニアを取り扱っているから楽しい」といった理由を聞いたりするんですね。ヨシノさんのボルボもそうですけど、トラックをボルボで統一するとか、スカニアで統一するとか、ドライバーに人気のある車種で個性を出せるような、そういう会社がもっと増えればいいですよね。実際に国産よりは高いようですが、ドライバーを採用する広告費や募集訓練費だと考えれば、つじつまは合うと思うんです。トラックは商用車の世界ですが、どんな会社でも10%ぐらいはそういう遊びがあっていい。そこはヨシノさんの企業風土と相通ずる部分もあると思いますが(笑)。

トラックでモータースポーツはありえるか!?


2400馬力。世界最速のトラック、ボルボ“アイアンナイト”

青木:了解しました。そういう会社が増える時流はあるように思えますね。次はトラックで「モータースポーツはありえるか」という話をしましょう。社長はどう考えられますか。

中西:うん。やってみたい気はしますね。アメリカでもトレーラーで超重量物を牽いてゼロヨンのようなことをしていたりしますよね。ボルボにもアイアンナイトという競技用のレーストラックがあります。 日本では唯一、日野自動車さんがパリダカに出ているぐらいですよね。そうはいっても、そもそも日本は海外ほどモータースポーツが定着してるわけではないですよね。そんな中、ヨシノ自動車でも、スーパーGTに参戦しているロニー選手(ロニー・クインタレッリ)のスポンサーをやっているという経緯もあって、前シーズンはスーパーGTを6戦ぐらい観戦させてもらいました。それを見て思ったのですが、競技の格式でいえば、モータースポーツの頂点としてF 1があって、その次にフォーミュラニッポン、F 3000、その後にスーパーGTだと思うんです。でも実際、お客さんはダントツでスーパーGTが多い。各自動車メーカーさんが戦いを繰り広げていて、一般の人たちにとっても身近なモータースポーツだからと思うんです。市販されているGT-R にカスタムを施して競い合っている、その距離感の近さが「人気の秘訣なのかもしれない」と思ったんですよ。

一般誌のイベントにカスタムトラックを持ちこんだらウケた

青木:見慣れた車種が走るという、距離感の近さはスーパーGTならではですね。トラックメーカーが各社、アイアンナイトのようなレーストラックを作ったら最高なんですけどね。

大木:スーパーGTはプロモーションも上手なんですよ。例えばオートサロンなんかのイベントでは、必ずチャンピオンカーを展示するとか、ドライバーもスポンサーも、ファンとの交流に積極的でSNSでの露出も大きい。僕もその代理店をしているので、ファンとドライバーの距離が近いのはすごく嬉しかったりするんですよね。スーパーGTは成功していますが、ああいったクローズドコースのモータースポーツを現状、トラックに当てはめるのは難しいかもしれないですね。やはり、まずはトラックショーのような実施形態で、裾野を広げていくのがベストだと考えています。

中西:確かに、去年のジャパン・トラックショーは良かったですよね。業界団体やプレスは平日に集めて、土日は完全に一般客やファミリー向けに解放していました。

青木:そういった身近にトラックを感じられるというところで、月刊ライトニングの主催イベント「稲妻フェスティバル」にアベルを出品した時は、どんな反応がありましたか?

稲妻フェスティバル2018に展示したカスタムトラック、アベル ©Yoshino Motor

中西:そうそう。あのイベントにトラック運転手の方が何人かいらっしゃったんですよ。

アルフレッド:運転手の方もいたし、トラックを知らない人もついつい見てくれていました。異様にアベルが目立つから、みんなの待ち合わせ場所に使われてたり(笑)。「みんなボルボに集合ね」と。「そういう使われ方もあるんだ」って驚きました。それが嬉しい誤算で、それによってヨシノ自動車を十分にアピールすることができました。グッズはそれほど売れませんでしたが、チラシを渡すことができました。来場者に相当のインパクトを残せた、とは思うんですよね。

トラック好きにするためのトリガーをどこで引くか

大木:僕も終わり間際に行ったのですが、興味がわいた人たちに熱量を持ったスタッフがその場にいて、積極的に声をかける。それも経営者が率先してやるというのではなくて、自然にそうなる。そういうのは意外と難しいですよね。僕は大型免許も持ってないし、トラックにはあまり興味はなかったのですが最近、タンクローリーなんかを見ると「かっこいいな」と思うようになってきたんですよね。

青木:素晴らしいですね(笑)。トラックに惹かれる、心のトリガーというのは誰しもが持ってるような気がするんですよね。だからこそ、クルマのイベントなんかでそのトリガーを引いてもらえると最高ですよね。さてトラックのカスタムでいうと、世界それぞれのカスタムがありますよね。日本にはデコトラのような独自のカスタム文化がある。ただやり過ぎちゃうと「仕事に使うことができない」ということが、大きな障壁だと思うんです。では次は、その日本のカスタムトラックの現状について話を移しましょう。

日本のカスタム文化に立ちはだかる2つの障壁

中西:まず一般貨物自動車運送事業は許可制で、法人格は緑の営業ナンバーでなければいけないということがありますよね。緑ナンバーでなければ、仕事を受注するのがそもそも難しい。オーナードライバーで自家用の白ナンバーだと、仕事が見つけにくいんですよね。もうひとつの理由は、国土交通省の定める道路交通法です。がんじがらめの規制で、フォグランプが一個多くついてるだけで車検が通らない、ということが往々にしてあります。そこがまず欧米やアメリカとは根本的に違うことですよね。日本のカスタム文化というのは、この二つの環境において大分、狭められてしまっています。

アルフレッド:まずは法律をクリアしなければいけない。それが大前提で、壁なんですよね。 いわゆるガチガチに飾ったデコトラを車検に通そうとしても、やはり通りません。海外では、個人の感覚で自由にカスタムができるからというのもあるし、オーナードライバーの比率も大きい。それが最高にモチベーションを上げてくれる、と思うんです。自分の好きなカスタムをして、それが仕事に使えるわけですから。日本の多くの運転手さんは、トラックは会社の車だけれど会社の許可を得てカスタムをしているわけです。ただ傾向的に、最近はちょっと違うんですよ。ある程度、会社の経費でカスタムして、自分の車を好きに飾れる。そういう会社が増えているから、ドライバーに選ばれることによって、ボルボの売り上げも伸びているんです。

中西:それはまず、運送会社の人材不足が背景にあって、そこで人材を確保するために生まれてきた経営のアイデアだと思うんです。そこは最近、大きく変わってきたところでしょうね。

そもそも日本はトラックを見せたがらない!?

大木:確かに最近は40代ぐらいの経営者の方がすごく多くなってきていて、非常に柔軟な考え方をされているような実感がありますね。そもそもボルボはどこかにカンガルーバーを装着したカスタム・ボルボが飾られているような、ショールームがあったりするんですか?

中西:ないんですよ。スウェーデン本国に行くとボルボが推奨する大きな工場があるんですよね。そうすると、必ず外に展示車が何台か飾ってあるんです。あれを弊社でもやりたいんですよね。ボルボのスポットみたいな。そういう土地が、そもそもないんですけれどね。

アルフレッド:ガラス貼りになってるショーケースですね。

中西:ボルボの高さに合わせた背丈のショールームを作って、スポットライトで展示する。

アルフレッド:旬の車をカスタムして、常にドライバーさんに見てもらえる場所があるといいですよね。

大木:そういう場所があると、ものすごく問い合わせがあるというわけではないでしょうけど、誰もが知っている場所にはなるでしょうね。

アルフレッド:それが大通りの角なんかにあったら、ドライバーさんも「あのボルボが飾ってある場所」と認識してくれるはずですよね。

青木:確かに。本来なら国産メーカー、日野でもふそうでも、いすゞでも UD でも国道沿いに「トラックを見せるショールームを作ったらいいのに」って思いますよね。せっかく国道沿いに大きな工場があっても、あるのは大きな看板だけですものね。

トラックステーションでもある〝ヨシノランド〟とは!?

中西:実際、それをする現実的なハードルが高いのは分かるんですよ。でも弊社、厚木営業所のボルボの看板だけでも、お客さんからの問い合わせはあるんですよね。だからなるべく実車を見せる努力はした方が良いと思うんです。

アルフレッド:私はヨシノ自動車の社員として思うんですが、ボルボショールームの話は「いつかやりそうだ」と思っています(笑)。

青木:それならもういっそ、トラックステーションを作りませんか(笑)。ぜひドライバーが憩える場にしてもらいたいです。ボルボを観ながら。実際、日本はトラックステーションが少なすぎますから。

中西:今から8年前ぐらいに、会社内でコンテンツを自分たちで作ろうと企画を出しあったことがあるんです。 元々それはご存知の共走プロジェクトから始まったので、社会貢献活動をどうするかという意味あいのコンテストでした。テーマはフリーにしたので皆で好きに発想しました。その時、僕らが考えたのは広大な土地に、展示場、整備工場、トラックのパーツを販売するオートバックス的なパーツショップ、それとフードコートではないですけどカフェ、そんなトラックステーションを作るという発想でした。弊社が運営する 1大トラックスポットのような、「ヨシノランド」みたいなものを作りたいと考えたのです(笑)。

青木:それ、めちゃくちゃ良いですね!

デコトラは有形文化財に指定!?

デコトラが出演するグッチのイメージビデオ(Gucci Fall Winter 2016 campaign | Director's Cut)

中西:ただ私も以前、「トラックパーツのショップを持ちたい」と考えたことはあるのですが、やはり車検を通らないパーツを売るわけにはいかないんですよね。

青木:法律がダメだといってるのだから、これはもう仕方のないことですよね。個人的にデコトラ文化が非常に好きなので、残念なところなのですが。ただデコトラというのは、海外のトラックファンにも、ものすごく人気が高いし、例えばグッチのようなハイブランドがエッジの立った日本のカルチャーとしてイメージビデオに登場させたり、より一層その人気は先鋭化していると思いますね。クールジャパンとして、旧い車両はいっそ有形文化財として保護すべきではないかとも思います(笑)。デコトラに、そういうステージがあると良いんですけど。

中西:海外の人から見れば日本が感じられて、大きな意味でアジアを感じてくれるのかもしれないですね。タイやフィリピンのデコトラもすごく派手じゃないですか。

青木:はい。デコトラって飾っていくと神輿や山車の延長なんですよね。祝祭であり、祭りがある。その点はアジアも相当、近いと思います。

実用性とアウトドア志向の南米カスタム事情

アルフレッド:逆に南米だとトラックを飾るという習慣がないのです。ノーマルか、もしくは実用性の高さにこだわります。キャンピングカーの延長に近ければ近いほど良いとされるんですよね。「ド・ノーマルがいい」という考え方なんですよ。

一同:おお。

アルフレッド:全部、純正ベースなんです。個性は必要ないけれど、生活感はあるし、より実用的なものが良いとされます。前も言いましたが、後ろにバーベキューグリルや机を収納して、どこでもキャンプができるような、そんなスタイルが良しとされています。そもそも南米ではトラック運転手の社会的地位が高いんですよ。買えることが前提だから、自分の車を買って、それを大事に乗る。それがたとえ会社の車であっても、意識は高いんですよね。それもあってトラックのキャンピングコラボというのは、僕の中でアイデアとしてあるんですよ。

大木:いまグランピングも流行ってるし、それは良いかも知れないですね。

青木:例えばボルボのヘッドの後ろに箱をつくって、ベッドやキッチンみたいなものって作れませんか?

南米やアフリカではトラックを改造したキャンプツアーが人気。 出典:facebook DRAGOMANより

アルフレッド:できるけど、めちゃくちゃお金がかかりますよ。

青木:うん。お金はかかると思うけど、お金がかかってもやりたい人はいると思うんです。トラックのカスタムの幅だって、まだまだどこも手をつけてないジャンルがありますよね。今回、この企画で私がずっと胸に温めてきたアイデアを出すと、やりたいのはトラックのレストモッドなんです。レストモッドとは古い車のレストアとモディファイを掛け合わせた造語で、旧車のボディに中は最新のトラックの安全性能と快適性能を積み込む。トラックはキャビンだけ載せ替えちゃえばいいので、「改造は可能かな」と思っているんですよね。本来のレストモッドは旧車のヤレた感じをそのまま残すのですが、そこはちゃんと新車並みに復刻したいですよね。

新しいカスタムの潮流となるか!? トラックのレストモッド

大木:いつの時代も、ちょっとレトロチックな車って人気ですよね。

青木:はい。乗用車でも昔のハコスカやケンメリなんか、旧車の世界はすごく元気ですよね。個体の値段もどんどん上がっています。ところがトラックは、さすがに30年以上も前のトラックを走らせるのは厳しい。ちゃんとバリバリ仕事で使いたいし、向こう10年ぐらいは走らせたいじゃないですか。だから5年落ちぐらいのシャーシとエンジンに、30年前ぐらいのスーパードルフィンなんかのキャビンを載せて、内装もしっかり手をかければ「絶対に乗りたい」というお客さんは、いると思うんですよね。

中西:本当にいますかね(笑)?

一同:笑い

青木:絶対いますよ。ただしそのキャビンが残ってるか、どうかは微妙なんですよ。でもキャビンだけ載せ替えて、ピカピカの蜂の巣グリルや初代スーパードルフィンなんかが、元気に40フィートのシャーシを引っ張ってたりしたら、それだけで「最高だ」と思うんですよね。出来れば、載せるキャビンは、50年前のボンネットトラックまで遡りたいですけど。

アルフレッド:うん。そのニーズはあると思いますよ。現在のボルボより「昔の角目のボルボが好き」というお客さんもいますから。わざわざ「それを探してほしい」とお願いされるお客さんもいます。

大木:弊社では光岡自動車の代理店もしてるのですが、往年のアメリカ車をイメージしたロックスターという車は、販売後すぐに200台が完売してしまいました。きっとそういうことですよね。

レストモッドは「どうしても乗りたい」を叶えるカスタム

シボレーC10のエンジンとシャーシに52年式COEトラックのキャブを載せたレストモッド。オーディオ、エアコン、パワーウインドーなど快適装備はフルセット。シートはロールスロイス。
引用:facebook TheGothamGarage より

青木:そうです。そうです。やはりカスタム的には難しいんでしょうか?

アルフレッド:もちろん難しいとは思いますが、出来ると思いますよ。ただ値段は張ると思います。その労力を考えると、テレビで見せるぐらいの一大プロジェクトにしないともったいないですよ(笑)。ついに「やっちまったぜ」みたいな(笑)。

青木:いいですね! 私は次のトラックショーの目玉はレストモッドを強く推したいと思います(笑)。Netflix の車改造番組「カーマスターズ」では、まさに50年代のトラックをレストモッドするんですが、その理由は、「トラックがカーショップの技術力の高さを宣伝してくれる」からなんです。私は「全くその通り」って思ったんですよね。

大木:それを聞いて、確かにヨシノ自動車っぽいかもしれないと思ってしまいました(笑)。

青木: 誰もやらないことをやる。それがカスタムの王道であり、獣道なんですよ(笑)。

中西:ボルボでも実際、日本に上陸した当時のボルボは格好良かったですもんね。あれを復刻したら、格好良いかもしれない。

アルフレッド:あれもちょっと前まで1台だけ走ってたんですよね。乗っていた人は「どうしてもこれがいいんだ」と言っていました。だからその人に新しいボルボに、「当時の古いキャビンを乗せ換えますよ」と言ったら買ってもらえるかもしれないですね。

青木:大型トラックは横幅が一緒だから、いける気がしますね。

カスタムはチームが必要!?

アルフレッド:その辺は溶接で何とかなるんですよ。後は配線を組み直してプラスチックを加工できるチームを作らないと駄目ですね。それと大事なのは、部品をイチから作れる業者を探さなければいけないですよね。3 D プリンターだったり、レーザーでパーツを切り出せるような業者ですね。そうなるとチーム単位の仕事になるんですよね。

中西:本当にガスモンキー・ガレージ(ディスカバリーチャンネルの車改造番組)みたいだ(笑)。専門のチームが必要そうですね。

青木:誰かが最初の一台を作っちゃえば、あっという間に人気が出ると思っています。ただその最初の一台は相応の熱量がないと作れなさそうですね。

大木:私は社外の人間ですが、ヨシノ自動車はいつも面白いことをしてくれそうな気がしてワクワクしていますよ。この社内風土を大事にしていて欲しいですね。このワクワク感は見ていて楽しいですよ。経営者でアヴァンギャルドな面白い人はいっぱいいるのですが、なかなか現場が連動している会社はないですから。

トラッカーのライフスタイルを見せるメディアが欲しい

青木:私も社外の人間ですが、本当にそう思います。きっとレストモッドを、業界に先駆けてやってくれると期待しています(笑)。さて最後にトラックメディアの話をしたいと思います。現在のトラックメディア、いわゆる専門誌ですが、「トラック好きを増やす」といった観点の場合、どんなメディアが求められていると思いますか?

中西:乗用車もそうなんですが、車両単体のカスタムを取り上げる雑誌って多いですよね。でもトラックで、トラッカーのライフスタイルに迫るような雑誌ってなかなかないですよね。そういうのが「もっとあってもいいかな」とは思います。ボルボはカタログもそうですが「ボルボのある生活」をイメージして、ネイティブアメリカン風の部屋にしたり、ロック風の部屋にしたり、すごくライフスタイルを重視してるんですよね。日本にもドライバーさんのライフスタイルが透けてみえるような雑誌があっていいような気がするんですよね。

大木:例えばファッション誌 LEON のような街角スナップ集のような感じで、さりげなくトラッカーたちのポートレート集のようなものがあれば、僕は買いたいですね。

青木: なるほど。ドライバー名鑑のような形にして、一冊の本にすると個性とライフスタイルが際立って面白いかもしれないですね。

中西:良くも悪くも デコトラの雑誌しか売れてなかったりするので、もっと海外のスタイルを発信できるようなメディアがあっていいと思うんですよね。例えば雑誌ENGINEのようなファッションもある、カルチャーのネタもある、それがトラッカーのライフスタイルにリンクしてるようなメディアは欲しいですね。

パネラー

右前:中西俊介
1975年生まれ。ヨシノ自動車代表!軽から大型特殊まで自動車全般が大好き!いつか自家用車をボルボトラックにしようと計画中。

左前:大木崇
1972年生まれ。第十興産 法人営業部兼、営業推進室 室長。スーパーGTやモータースポーツ界に深いパイプを持つ必殺仕掛人。https://www.your-pit.com/

右後:中渡瀬アルフレッド
1985年生まれ。ボルボカスタムライン、ファストエレファントのディレクター。体重もセンスも、ひとまわりスケールの大きいカスタムが得意。

左後:青木雄介
1971年生まれ。編集プロダクション・レベルドライブ主宰。元大型トレーラー運転手で大のカスタムカー好き。

< 対談一覧に戻る

  • このエントリーをはてなブックマークに追加