株式会社ヨシノ自動車

トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第43回

らくだマーケティング株式会社社長・松尾聡史様

らくだマーケティング株式会社社長・松尾聡史様

「トラックは金融資産!この道60年のプロが教えるバランス経営のススメ」

トラックは金融資産。最近、こんな言葉をよく聞きませんか? トラックは新車の値段こそどこも似たり寄ったりですが、使用して中古トラックになると価値が大きく変動します。積載重量や年式、走行距離、その仕様など価値を決める条件は様々です。そんなトラックに一般投資家を募り、ファンドとして運営していく団体も現れました。今回は「トラックは金融資産」というテーマを深堀りすべく、ヨシノ自動車に在籍10年の経験があり、現在は経営コンサルタントとして活躍する松尾聡史氏に登場いただきました。まずは「なぜトラックは金融資産なのか」。そこから話を伺っていきます。

写真・薄井一議
デザイン・大島宏之
編集・青木雄介

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松尾聡史
らくだマーケティング株式会社社長。ヨシノ自動車にも在籍10年。人材会社、ソフトウェア会社、ヨシノ自動車において営業、WEBマーケティング、商品開発として働く。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事を継続中。
http://brand-farmers.jp/blog/category/exit-matsuo/

トラックはお金を稼ぐ金融資産

____今回はトラックを金融資産として考えることをテーマに、いろいろお伺いさせていただければと思います。私自身、トラックを金融資産として考えるような考え方は経験がないので、是非一から教えていただければと思います。

中西:微妙なニュアンスがちゃんと伝わるといいですね(笑)。現状、トラックを金融資産として扱うビジネスを専業にされている会社さんもありますが、まだ定着したとは言い難いと思いますね。

____わかりました。まずはどんな考え方なのかを紐解いていきたいと思います。トラックはなぜ金融資産になるんでしょうか。

松尾:シンプルにトラックは「お金を稼ぐから」ですね。そこに価値があります。人と物と輸送機材の3つがあるとお金を稼げます。コストだけで考えると、トラックは高額商品に見えますよね?でも固定費として月単位でならせば、実はすごく安いんです。金融資産として考えると、一回での取引は高額なのですが、長い目で見てみるとそんなにお金がかからない資産なんです。なぜかというと、トラックには再販価値があるからです。それを僕は稼働価値だと思っています。

再販価値の高さが金融資産としての価値

____稼働価値ですか。

松尾:例をあげましょう。トラックを購入してローンを支払っているとします。消費財としてローンを支払っている中で、実は貯蓄性があって再販価値もあるのがトラックです。それも、その価値がなぜか残っているような消費財だと思うんです。中西社長はよく「商用不動産だ」と言っています。大家さんがいて店舗を貸して、その店舗がどうやって固定費を払うのか、家賃を払うのかと言うと、その場所で家賃以上の売上を上げているわけです。

____なるほど。

松尾:だからあるビルの中の、ある空間自体に価値がある。それは土地代ではありません。収益が上がるビジネスが、トラック一台で成り立つわけです。だから当然、動きさえすればトラックには価値があるんです。新車であれ中古車であれ、一定の金額をコストとして出しながら、いつのまにか再販価値を残している。それが「トラックが金融資産である」という理由です。コストを出しながらも、価値を残していく金融資産なんです。 

____ヨシノ自動車としても、中古トラック業において相当数の金融資産を持っている立場になりますね。

中西:そうですね。販売車両にしろ、レンタカーにしろ、全て金融資産ということになります。トラックは働くことによって、お金を稼ぐ道具ですからね。

松尾:稼ぐからこそ価値がある。その将来的な価値は実際のところ、あまり知られていないように思えるんですよね。トラックを使われているユーザーの方も、あまり分かってなかったりするんです。

トラックは7年で価値がなくなる!?

____その価値が定義されたり、体系化されていないということでしょうか。

松尾:その通りです。

中西:なんとなくイメージはあるかもしれませんね。

松尾:そこを詳しく知っているのは、トラック屋さんだけなんです。

____つまりヨシノ自動車ですね。

松尾:そうです。僕がヨシノ自動車でリースの仕事をしていた時に、「この世の中は法律で動いているんだな」と思い知らされました。それは実際のところ、どれだけ走行するか分からない減価償却期間で、金融機関の貸出金額が決まるからなんです。まず厳然と、そういうルールがありますよね。だから中古トラックは、リースのときに頭金が必要になります。それがなぜかというと、トラックが動かなくなる可能性もあるからなんです。そこで弊社のレンタルトラックなんかも調べると、世の中は7年間でトラックの価値がなくなる、と考えられているんです。これが常識化しているんですね。これ本当に7年なんです。

____微妙なラインですね。長いといえば長いし、短いといえば短い。

松尾:このグラフのような流れで、トラックはやがて価値を失ってしまうと世の中では考えられているんです。つまりトラックとは7年でだいたい入れ替わるものとされている。それが世の中の仕組みなんですね。その残価設定が決まっているということは、「車両費は毎月**万円」と決まりますよね。トラックにかかる毎月のコストって決まっているんですよ。運送会社もそれを固定費として組み入れていますし、商売する時にも固定費として決まった金額として取引されるんですね。でも実はここに経年劣化などを合わせるとこの間に、一番差額がでるところが出てくるんですね。

貯蓄型ではなく掛け捨て型で考えよう

____ここが肝なんですね。

松尾:そうなんです。 この再販価格というのはトラック屋さんしか知らないんです。銀行も知らないしリース会社も知りません。だからこそ7年と決めているんですね。だから残価設定の上限も車両本体価格の2/7までしかつかないんですね。ここに気付きましたが、再販価格は極秘です。たとえ同じ会社の営業マンに訊いても、実際の再販価格というのを教えてもらえません(笑)。もちろんだいたいのところは教えてもらえますが。じゃあ、そこに保証をつけたりすればもっと高く見積もってもらえるかもしれない。そう考えたんですね。

____なるほど。

松尾:毎月の支払コストは当然、大手だと台数があるぶん多少は安くなりますが、新車にかかるコストはどこもほとんど変わりがありません。車両価格が100万、200万安くても高くても長期リースでならせば、毎月の支払いコストはそんなに変わらない。でも一番変わるのは買取価格なんですね。トラックの商品価値がある時点で売れば、利益を出すことができる。そこの価値を左右する走行距離と経年劣化は調べてみると大体、このグラフのようになるんですね。

松尾:メーカーによって多少は違いますが、 ダンプやクレーンなど走行距離が走らない車は、こういったグラフの線(青線の部分)になります。つまり銀行が考えているより価値が下がらないんですよ。このからくりはトラック販売業者だけが知っていることになります。つまり走行距離があまり伸びないとあらかじめ分かっているトラックに関しては、価格も据え置きすることができるのではないかということなんです。そんなことにヨシノリースで働いている時に気づいたんです(笑)。

____ヨシノ自動車で学んだことなんですね!

松尾:そうなんです。生命保険で言えば貯蓄型ではなくて、掛け捨て型にすることによって、「コストを限界まで下げることをお手伝いできるのではないかな」と思うんですね。仮にダンプが1千万円だとしますよね。走行距離が伸びない場合、5年後でも普通に800万円、900万円は当たり前なんです。トラック販売業者だとそれが分かっているから、あらかじめ800万円で買い取る約束をすることは可能なわけです。

____その再販価格を抑えておくことが大事ということですね。

中西:ただ全般的に言えるのが、運送会社は中小、零細企業が多いですよね。その中では毎月、厳密な利益数値をあげられるようなコスト管理ができている会社は少ないと思っているんです。蓋を開けてみると、その差額だけを見ている場合が多々ありますね。本当のことをいうと、この含み益を考えずに、毎月の利益を上げていく方が経営は健全になるのではないかということなんですよね。

リース明けの車両は稼ぎ頭にはならない!?

松尾:その差額を貯金だと考えてしまいがちなんです。だから普通に金利5%でトラックを買ってしまうんです。この低金利時代に5%って相当な金利だと思いますよ。

中西:我々が「トラックは金融資産です」という目線で何かを話すとすれば、常に再販価格の最大価値を明確にすることによって、月次のコストを大きく下げていきませんか? その方が営業利益が出ますよ、ということを言いたいんです。

中西:たとえば新車を買う機会といえば「新しい仕事を獲りました」というパターンが多いですよね。それであれば「1ヶ月目から営業利益の最大化を図りましょう」ということなんです。これを提案したいんですよね。そこが他のトラック販売店とは違うかもしれませんね。この令和の時代に至っても、リース期間の5年は借金返済と考えていて、6年目からやっと利益が出るという考え方をされている運送会社さんが大多数なんです。6年目から「やっと稼げるぞ」と考えがちなんですよ。

____それが普通だと思っていました……。毎月のリース料も払い終えて、晴れてトラックが自分のモノになるのですから。 

中西:6年目以降のトラックは故障リスクが高くなるのと同時に、急激にトラックの再販価値が下がっていくのです。私の感覚からいうと、走行距離や経年劣化で価値が落ちまくったトラックでも、それなりに価値があると考えていたのも、ここ最近までの話です。それまでは中古トラックの輸出市場も好調で、どんなトラックでも価値があると考えられていました。ヨシノ自動車に入社した平成15年から最初の10年ぐらいは、私もそう考えていました。積載2トン以上のディーゼルエンジンを積んだトラックなら、最大30年落ちのトラックでも価値があると考えていたんです。極端な話ですが「エンジンさえかかればゼロにはならない」と考えていました。ただ、ここ数年はその状況が変わってきたと言えると思います。

もっともトラックの価値が残っているラインとは

____値段がつくはずだったものが、つかなくなってきているということですね。

松尾:やはり中小零細の運送会社さんの社長さんはその感覚があるんですね。このトラックは「いくらで売れる?」という成功体験があったりするので、それをもって「どんなトラックにでも値段はつく」と信じている部分がある。でもビジネスって続いていくんですよね。毎回、自分が売りたいときに売りに出して、その相場に左右されていたら結果的に損をしているケースの方が多いんです。相場を追いかける人ほどその傾向は強いんです。なぜかというと、トラックに関しても今は相場が安いから売らないとか、まだローンが残っているから売らないという判断をしてしまいがちです。

____トラックの再販価値に気をとられているとそうなりますよね。

松尾:僕は長い目でビジネスをやるんだとすれば、相場の相対的な上下はあるにせよ、「高い価値がある時にトラックを売るべきだ」と考えているんです。入れ替えるべきときに、入れ替えましょう。需給のバランスで、あるラインを超えると安くなることは分かっているんだから、高い価値でトラックを売れることが分かっていれば、全体のコストは下がりますよね。そうやって安定的に利益を得ることが、最終的に強い会社を作ることになるんだと思います。

トラックは年式よりも走行距離が重視される

____それが「小型で8万キロ、中型で28万キロ、大型で43万キロ」という目安ですね。その前に「売買しましょう」ということですか。そこまではある程度、利益確定と言うか利益が出ることが分かっているからですね。そこは走行距離と年式の両方で見ていくということですね。

松尾:そうです。 

中西:どちらを重視するかというと、走行距離だと思いますね。

松尾:その傾向はありますね。なぜかというと、トラックの寿命はもう伸びているんです。これは金融機関が勝手に決めているのですが、実際のところ、10年落ちでもトラックは走りますよね。この間、非常に驚いたんですが7年落ちの冷凍車で走行距離30万キロ弱のトラックが、普通に420万ぐらいで売れていました。もちろん仕様が色々あるから、値段が変わるのは分かります。でもデータを見ている私からすると「こんなに高値がつくんだ」とびっくりするんですね。 僕の見立てだと7年落ちでも、「十分にトラックとしては使えるから高値がついたんだ」と感じたんですね。それはつまり「トラックの寿命が延びているからだ」と思います。中西社長がおっしゃったように、重要なポイントが走行距離だという傾向もそれで分かりますよね。 

年々、トラックの故障リスクが高まっている!?

____耐用年数が伸びているのは分かるのですが、故障リスクもまた高まりますよね。

中西:そこにはメーカーや仕様によって、ずれが出てくるんですが、現場目線でいうと、昔に比べて「今のトラックの方が壊れるリスクが高い」と思っているんですね。

____それは驚きです。

中西:やはり排ガス規制だったり、燃費規制など様々な環境基準に合わせたトラックを作らなければいけないので、そのひずみがどうしても大きくなってしまっているんですね。構造的な話をすると排ガス規制や燃費基準をクリアするために、エンジンに負荷をかけているんですよ。エンジンブロックだったり基本構造が変わっていないのに、乗り越えなければいけないハードルがどんどん高くなっているような状態なんです。昔は大排気量のV8エンジンやV10エンジンのディーゼルエンジンを作っていたのが、どのメーカーもダウンサイズで直列6気筒インタークーラーターボのエンジンがほとんどですよね。結局、基本構造が変わらないのに補機類をつける事によって、なんとか規制の基準をクリアしている。だからどこのメーカーさんもエンジンだったり、補機類が壊れてしまうリスクが昔より高まっているんだと思います。今後、5年間のデータを取り直してこの表を作ったとしたら、最初の落ち幅がもっと大きいと思いますね。

____なるほど。もともとエンジンブローなんかは走行距離のいきすぎですよね。最近の修理の傾向でいうと確かに、オートマチックの故障や、補機類の故障が多いのは分かります。これらもやはり走行距離でリスクを判断できる、ということですね。

中西:そうですね。さらに最近は見方が少し変わってきていて、DPR (排出ガス浄化装置)の使用状況などで、エンジンの稼働している時間を見るようになってきているんです。例えば車種をあげると海上コンテナで使っているトラクタヘッドは、待機時間が長かったりするのでアイドル時間が長い。走行距離は短くても、アイドリングが長い場合もあるわけです。そうなると走行距離に比較して、故障リスクはより高まっていることになります。

常にリスクをとる企業は続かない!?

____より厳密に、車両の故障リスクを図る指標が増えているんですね。補機類の故障リスクは走行距離だけではなくて、エンジンが稼働しているだけで高まりますものね。

松尾:再販価格を設定して月次の利益を高める。または年式と距離で考えた時に、ここで確実に販売利益を出す、というような戦略を一つのサイクルとしてお客さんに提供する。そうすることでお客さんの設備投資の一部門をヨシノ自動車が担うことができると思います。今はリース契約という形かもしれませんが、金融商品としてトラックを見ているからこそご提案できるメリットもある。一番簡単なのは弊社のレンタアップが1年か2年ぐらいで販売に上がってくるので、 それを買い取っていただくのが一番理想的ではあります。ただ弊社のレンタアップは高い金額で販売されているのも実情です。相場より高いのは、整備がしっかりされているためです。たとえば走行距離の出ないダンプやクレーンは 5年落ちを買って、3年使えば、コストパフォーマンスだけでいえば一番、優れているんです。故障もなく、運よく働いてくれさえすれば、結果的に車両代金を払わなくてもいいぐらいだったりするんですよ。 

____おお。これは逆の見方もできますよね。例えば自前の整備工場を持っているような運送会社が、100万キロ越えの価値の下がったトラックを大量に買って回す。運送料は変わらないわけだから故障リスクを考えても利益は出るし、従業員にも高い給料を払えるかもしれません。排ガスが厳しいこのご時世に、ちょっと厳しいビジネスモデルかもしれませんが(笑)。

松尾:おっしゃる通りで、もっと言うとトラック販売業はそれで稼いでいたんですよね。とにかく安い値段で買って高い値段で売る。でもそのビジネスモデルは、実際は通用しなくなってきました。なぜかというと、インターネットで情報が出てしまうからです。考え方としては一緒ですよね。安く買って、それをフル活用するということです。ただやはり台数の多い会社だったり、社会的な規律を守り、成長していく会社にはそぐわない考え方ですよね。 そういうリスクをとる会社は長くは続かないし、大きくならないと思うんです。

トラックを生命保険として捉える

____なるほど。確かにその通りです。現在、そんなビジネスモデルで営業している運送会社は見たことがありません。

松尾:そうだとしたら、故障リスクのないトラックでコストもそれなりにかけながら、そのコストを最小限に抑えていく会社が長続きする会社だと思うんです。「そうしましょうよ」というのがヨシノ自動車のスタンスです。ヨシノ自動車の考え方としては、ただトラックを販売するだけではなくて「運送会社のためになる」という考え方が大前提にあるわけです。そうするとインターネットを見ればわかる販売価格を安く買い叩くというのではなしに、適正な価格で販売してお客様に安定的な経営を図ってもらいたい、というのが我々の目指すところなんです。

____なるほど。

松尾:「トラックは生命保険」と考えても良いです。もともと生命保険は掛け捨てで全て計算されていたのに、節税の法律のおかげで貯蓄型の生命保険が登場しました。それで長期の契約を握らせるわけですね。でも生命保険は貯蓄ではないのだから「長期の契約は意味がないんじゃないか」ということで、再び掛け捨てに変わってきたわけです。それと同じだと思っているんですね。これだけ資産として将来的に変動することが分かっているのに、「なぜ貯蓄するんだろう?」ということですね。貯蓄は貯蓄として切り分けて考えた方が、効率が良いんですよ。

節税商品としてのトラックとは

____なるほど。分かりました。ここまでは運送会社にとっての金融資産として考えてきましたが、これを一般投資家に当てはめると、どういったメリットがあるのでしょうか。

松尾:一言でいうと「所有と使用」の分離ですね。それをもう専門にやっている会社もあって、 トラックを貸す会社に所有者が直接に面談に行って、レンタル契約書に判子を押すという作業が必要になります。あくまでも節税商品として、投資家はトラックを買うんですね。トラックは節税効果が高いんです。原価償却率が高いので利益の繰り延べができます。これは余談ですが、契約は3~4年としても、その後にトラックには出口があって、またリース契約やレンタル契約など現金に換えられる方法も、投資家自身が選べたりするんですね。そこで売らなければ、利益を確定させる必要もなかったりするんです。将来的にも融通が利く金融資産なんです。

____現状の市場規模は、どれぐらいあるんでしょうか。

中西:僕もそこは全然、分からないんですよね。資本を集めるという意味で、ファンドがトレンドなのは分かっているんですけどね。もともと不動産のデベロッパーから来ている考え方なんですよね。 ひとつのマンションに対して、複数の投資家を募るようなビジネスモデルに似ていますね。 

松尾:節税のニーズはすごく高いと思います。ファンドはまず現金でトラックを買っちゃうんです。ヨシノ自動車のレンタアップと同じ考え方ですけど、それをどんどんどんどん入れ替えていく作業をやれば、一番節税的にもいいし、一番差額の大きいところで販売することができますよね。 ファンドといえば、アマゾンなんてまさにそうですよね。荷物はあるので、足りないのは人とトラック。その流れをファンドの投資のように設計していますよね。実際のところ、中古トラックも「ファンドのように運用できたら良いんじゃないか」と私も考えています。後は中古トラックの出口を「どこに持ってくるか」を考えることですね。やはりそこで価値が変わってくるので。 

中西:中古トラックの価値は過去5年で変わってきているし、この先、2年3年でさらに大きく変わるでしょう。そのときに出口としていくつ回答を持てるかが、我々のビジネスモデルが今後成長できるか否かの展開点のような気がします。これはむしろ値段がつかなかったときの、リスク分散をどれだけできるかという点が課題になっていると思いますね。

再販価格はデータで共有される!?

____リスク分散ですか。

松尾:例えばその一つがトラックを作り変えることですよね。架装を変えて付加価値をつけて、販売するやり方ですね。

中西:先ほどもダンプやクレーンの話が出ましたが、特装系の車はまだその融通が効きますね。ウイングやカーゴ型は、そもそも走行距離を走ってしまうので、今後はどんどん価格として厳しくなっていくかな。僕たちが予想している以上に、今後は価値が落ちるのではないかと感じているんです。それはやはり海外の輸出規制がこの先、さらに厳しくなっていくことが予想されるからです。

松尾:レンタル会社に聞くと7年落ちのトラックでも値段がつかなくなってしまっていて、架装を変えて「上物を載せ替えるしかない」という話も聞きます。たとえば働いていないトラックを散水車に変えてしまうらしいんです。散水車は寿命が長くて、何年でも使えるらしい。とはいえ需要はそんなに多くはないので、全てそこで吸収はできないと思いますが。

____それはそうですね。

松尾:これから再販価格もデータで取れるようになる時代が来るかもしれません。ヨシノ自動車だけではデータになりませんが、オークション価格なども反映していけば、それに合わせて金融資産としての、正確で相場にあったコストも算出できるようになると思います。これは誰かがすると思いますね。価格という意味ではそっちに行くしかないんですよね。 

金融資産をただしく運用しよう

____さてこの話の肝としては、将来の中古トラック市場や金融資産としての価値を理解していないと、今後の物流環境を生き抜けないという話ですね。

松尾:だからこそ「ご相談下さい」ということですね。トラックを買うときに、売る時の想定をしながら運用していきましょう。それが上手なトラックの運用方法ですよということですね。ヨシノ自動車は社歴60年以上なので、もちろんその資産価値をよく知っています。本当にちょっとした差なんですよ。たった1年で同じ価値のトラックが100万円から200万円、値段が変わってしまうのです。 

中西:例えば「独立をしたい」と考えた時に、我々はお役にたてると思うんです。そもそも運送業を開業するというのは初期投資が必要なものではありますが、トラックについては、最初から確実に利益を生み出すようなスキームを考え出すことができます。その際は「本業で月次からちゃんと利益をあげましょう」ということを提案したい。ただこの内容というのは、私だけが知識を持っていても仕方がないんです。お客様にもある程度の知識があって、初めて分かり合えるような話なんですね。一番大事なのは企業を長く続けるために、運用があるということを分かって欲しいんです。これは私の持論なんですが、本当にバランスの良い経営者が成長するんですよ。攻めどきと退きどきを分かっていて、不確かな相場を当てにしない。まず長続きする組織をつくる経営者です。

松尾:確かにそうですね。そういう方というのは運送費を固定費として考えていて、その大きさ通りに経営していくんですね。

中西:運送業をやっていくにあたって「どんなコスト意識を持っているか」だけだと思うんですよね。仕事を獲る上で本業である運送事業の営業活動として台あたりの原価コストを、どう考えるか。それによって打つ手を変える。やっぱり結局はバランスなんです。

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