トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第60回
ファストエレファント ディレクター 中渡瀬アルフレッド
ファストエレファント ディレクター 中渡瀬アルフレッド
トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第60回
ファストエレファント ディレクター 中渡瀬アルフレッド
ファストエレファント ディレクター 中渡瀬アルフレッド
「リビングも充実!? ボルボ新型FHのカスタムはどんな方向になるのか?」
2022年はボルボトラックのカスタムラインであるファストエレファントにとって、非常に重要な1年になるでしょう。本格的に販売される2021年モデルの新型FH、さらに8年ぶりとなるリジットが導入されること。ファストエレファントによるオリジナルパーツの製作販売など構想は目白押しです。そんな試金石として、2台のデモカーを展示する5月に開催される予定のジャパントラックショーがあります。この出品車両はどんなトラックになりそうでしょうか? ファストエレファントの2022年を占ってみました。
編集・青木雄介
WEB・genre inc.
____今回は新型 FH をファストエレファントで「どうカスタムしていくのか」を探っていきたいと思います。まずベースとなるフルノーマルの新型 FH にはどんな提案を盛り込みますか。
アルフレッド:まず今回から標準装備となるエアディフレクターやサイドエアロの他に、サイドバンパー、ダートディフレクター、そしてこのフロントグリルを最初につけていきたいですね。この3点セットは追加になってしまうのですが、最初からベースとなるカスタムにしたい。FEオリジナルとして拡げていきたいです。
____まさにこの新型FHが、そのままファストエレファントの標準装備になるんですね。このフロントグリル、すごく新型に似合っていますが何のグリルでしょうか。
アルフレッド: FH 16仕様のフロントグリルです。これを海外サイトで調べて日本に輸入できるようにしました。現在、在庫はこの一台ぶんですが、注文すれば2週間ぐらいで手元に到着します。
____このフロントグリルは現行のFHにも取り付け可能なのでしょうか。
アルフレッド:試してはいないのですが、おそらく装着できます。現行のFHに取り付ける場合、グリルの上のフロントパネルごと交換しなければいけません。そこだけネックですね。
____なるほど。中西社長はどんな感想を持たれましたか。
中西:これを見ちゃうと新型FHのノーマルのグリルがどんな形状だったか忘れちゃいますね(笑)。
アルフレッド:これが標準だと思っちゃったんですね。
中西:そうそう。この縦ラインのグリルで変わっている感が出ていますよね。僕自身もネットで本国のプロモーション動画を見ていて「FH 16のグリルいいな」と思っていたんですよ。外見でいうと今回の V 字型のヘッドライトが一番注目されていますが、V字型のヘッドライトにはFH 16のグリルが一番似合っているように思えます。
____本当によく似合っていますね。明らかに顔が変わった新型感が生まれますからね。
アルフレッド:実際に現行から新型への変更というのは、それほど大きいものではないんですよ。新型のパーツが現行に取り付けられるかという問い合わせを非常に多く頂いているのですが、逆もほとんど大丈夫でリップスポイラーもそのまま使えますし、ダートディフレクターも前のパーツが使えます。確かにライト周りとグリルが変わったといえば、変わりましたがベースは前と一緒なんですよね。
____ということは、現行から乗り換えられる方は付いている現行のパーツがそのまま新型にも使えるということですね。
アルフレッド:その通りです。あんまりいないですけどね。部品屋さんも前のパーツが付けられるのだろうかって、在庫に戦々恐々としちゃっているのですが大丈夫です。「使えるパーツは多いぞ」という印象です。
____了解です。さて新型 FH のカスタムはファストエレファントとして、どんな方向性にするのでしょうか。
アルフレッド:いまちょうど5月のジャパントラックショーに出すボルボを造っているところです。それが一番、最新のプロダクトなんです。一台は20代による20代が乗りたいトラックです。あくまでも現代風のトラックにこだわっています。もう一台は逆にグッと大人の架装をしたいと思っています。40代、50代のベテラントラッカーのためのトラックでクールだけど、機能性は抜群に良い。かつ高級感にこだわったものにしたいと思っています。 だからこそ今回は今までのような、パイプで飾る方向性にはいかないだろうと思います。
____パイプを付けるのが、飽きちゃいましたか?
アルフレッド:付ける方はもう……。いや、冗談ですよ(笑)。パイプのニーズは相変わらず高いんですが、やはり他のお客さんと一緒になるのは、みんな嫌がるんですよね。「新しいものを新しいものを」とみんなが探しますから。だからこそファストエレファントとしても、次の手を打たなければいけないですね。我々としてはひとつの方向性としてプリントや、ペイントにこだわっていきたいなと思っています。例えば外装にFRP パーツを使うとか。
____型から造ってオリジナルモデルを作っちゃうんですね。すごい。
アルフレッド:どうしても毎回、外観がメインになっちゃうので今回は室内にもこだわりたいと思っています。ファストエレファントはキャンピングカーの実績もありますから(笑)、もう少しコンパクトに実用的にした方向性を考えたいと思います。コンパクトに、さらにドライバーさんの居住性を良くしていきたい。デモカーは居住性を極力あげた二段ベッド仕様にします。さらに助手席を取り外して、完全なおひとりさま空間を作ります。
____二段ベッドがある時点でおひとりさまじゃないのでは?
アルフレッド:おひとりさまです。二段ベッドの上だけなんですよ、使うのは。
____そうなんだ。それは面白い!
アルフレッド:フロアを完全なリビングにしちゃいます。二段ベッドは本来なら XL 仕様に取り付けられるものなのですが、 XL 仕様でなくても取り付けることができました。その上についてる棚も外したかったのですが、棚を外さなくても十分普通の人なら寝れるスペースが確保できるんです。
____なるほど。今回は新型 FH の居住性の良さをいろんなパターンにわたって見せたいということですね。
アルフレッド:そうです。今回のテーマは内装が重要ですね。
____中西社長の印象はどうでしょうか。
中西:詳細は聞いていなかったのですが、ベッドを上に持って行くことで実用性はすごくあがると思います。ファストエレファントを立ち上げて3年が経つ中でエクステリアはひと通りやってきた感覚があるんですよね。その意味では内装に手をつけたいと思っていたんですよ。ボルボのお客さんは誰もが自分にとって過ごしやすい環境を作ります。それを一つ進化させてパッケージにしてみたい。そのパッケージをファストエレファントのスタイルにしたいんですね。
____新型 FH のイメージと居住性の向上を合わせていきたいわけですね。
中西:ボルボのイメージはこれまで通り、そんなに変わらないと思うのですが、他との差別化という意味で「居住性の良さ」をもっと強く押し出していきたい。もともと良かったものをさらに進化させて良くしていきたい。今回はビッグマイナーチェンジみたいなものですよね。ドライバーパネルも液晶化されたし、死角カメラもモニターもついて最先端のトラックなイメージです。ドライバビリティだけではなく、止まっている時の居住性も大いにアピールしていきたい。その意味ではコンセプトは一致していると思いますね。もう一台の方もデザインの作りこみを急いでいます。今回は大まかに言って二つの世代の対比になると思います。
____ちなみにファストエレファントの野望としてはオリジナルパーツの製作もありますね。その辺は新型 FH に合わせていくイメージでしょうか。
アルフレッド:ボルボは最新型も基本的に2014年モデルとベースは変わっていません。とにかく前のモデルのパーツが付けられなくなるのが、心配だったんです。仮に「去年、作っていたパーツが新型では付けられなくなりました」となると痛いですから。現在、品質が良くてもっと簡単に取り付けられるファストエレファントのオリジナル・アンダーバーを製作中です。意外に設計と製作は時間がかかるものなんです。今はすごくその苦労を実感していますね。
____中西社長はその辺どうでしょう。
中西:本来だったら本国に合わせて2020年に、このモデルは出ているべきだったんですよ。コロナでそれがのびのびになっていた面もあるし、実際に現車が来ないと使えるもの使えないものが分からなかったので今こうやって現車が手に入ったのはすごく有難い。ここからがスタートです。これまで構想にあったオリジナルパーツを商品化していって市場に出していく、そのフェーズに入りたいですね。今のところはコンセプトを固めにいってるわけではないので、我々が良いものとおもうもの、スタイルをどんどん世の中に出していきたいですね。それこそ乱れ打ちのように出していきたいです(笑)。
アルフレッド:今年はファストエレファントの中身をより充実したものに変えていきたいんです。宣伝ばかりで去年は正直、忙しかったです。今年はもっとオリジナルパーツを造って、しっかりコンセプトカーを造ってファストエレファントの中身を充実させたいです。
____今年はリジット(単車)の発売もありますからね。トレーラーの架装も増えてきたんですよね。
アルフレッド:実際に「トレーラーにも架装したい」というお客さん増えていて、FE のカスタムの流れでトレーラーも架装したいと考えています。ただヨシノ自動車の川崎工場はスペース的にも限られているので、他の工場でも取り付けられるようにパーツを提供しています。最近はピンストライパーのケン・ザ・フラットトップさんに描いてもらう仕事も増えてきたので、「もっとそういう仕事が増えたらいいな」と思っています。ケンさんファンが多いんですよ。
____リジットはカンバスが大きいのでペイントも迫力が出そうですね。
中西:この6年間でやっていないのが、やはりリジットなんですよね。これからウイングとか冷凍車が出てくるわけです。もうすでにこの春先からリジットの架装も始められると思います。
アルフレッド:リジットになると本当に造り応えがありますね。それこそ架装が個別対応になります。大きなキャンバスになるわけですし。
____リジットの架装はやはりヘッドに比べるとコストも大きくなってくるんですよね。
アルフレッド:下手すると倍になりますね。塗装も倍以上ですから。リジットだとサイドバンパーをボルボのヘッドのように「フルエアロにしたい」という要望も出てくるわけです。ただそのまま向こうのパーツが転用できるかというと難しそうです。
中西:リジットの場合、最初からこういうコンプリートモデルが作れるというよりは、一軒一軒案件ごとにお客さんと打ち合わせしながら作るイメージになるでしょう。最初はどうしてもワンオフ製作が主軸になっていくと思いますから。
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