株式会社ヨシノ自動車

トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第74回

本杢&カーボン加工専門 ハーツスタジオ 児玉 久美様

本杢&カーボン加工専門 ハーツスタジオ 児玉 久美様

「1度手にしたら離れられない。ボルボ・カスタムステアリングの世界へようこそ!」

いまファストエレファントのオリジナルパーツがどんどん充実してきています。今回は埼玉県越谷市にあるカスタム加工のハーツスタジオ様に伺い、FEオリジナルパーツの方向性を探りました。高級感と職人技を突きつめたオリジナルパーツはこれからボルボに組み込み、純正とは差をつけるアイテム。特にオリジナルステアリングは1度手にしたらもう絶対に戻れない完成度です。その高級素材の詳細を紹介し、ハーツスタジオ様でどのように仕上げられるのかをリポートします。ボルボトラックのみならず、自家用車のステアリングもお願いしたくなる手の込み方。運転中、ずっと触れているものだからこそこだわりたい、カスタムステアリングの世界へようこそ。

編集・青木雄介
WEB・genre inc.

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児玉 久美(こだま くみ)様
東京都出身。子供の頃から木に触れた環境で育ち、作ることの楽しさを覚えた。木、本革などの素材が大好きで、さらにバニングやデコトラの内装に衝撃を受け、カーインテリアに興味を持つ。カー量販店でのバイトを経て2003年に自動車内装専門店に入社。2017年にハーツスタジオを立ち上げ、現在に至る。

必殺アイテム、黒ポプラとは?

____ではファストエレファントとハーツスタジオによる特製ステアリングの話をしましょう。これまではオールウッドでしたが、今回はウッドと革巻きのコンビハンドルが登場しましたね。

アルフレッド:そうです。色々とチャレンジをしています。

児玉:乗用車だとこの形がオーソドックスです。上下ウッドで左右が革巻です。

アルフレッド:ボルボのカラーリングに合わせて作ることが可能です。エアバッグの色があるので、突飛な色だと合わなくなっちゃうんですね。

____こちらの木は何でしょうか。

児玉:これはポプラウッドです。ポプラを黒に着色しています。通常のポプラは黄色ですよね。もともと黄色しかなかったものを「黒に塗ったらかっこいいんじゃないか」と思って始めました。黄色のポプラはロールスロイスなどの超高級車で採用されています。この黒ポプラはどこにもないと思いますよ。

____越谷のアトリエまで来ないとお目にかかれないんですね。

児玉:そこはヨシノ自動車さんでもぜひ販売をお願いしたいです(笑)。

アルフレッド:そうですね。窓口は是非、ヨシノ自動車で(笑)。

____こちらのハンドルを製作するにあたって、詳細を教えていただけますか。

児玉:ステアリングの芯だけを残してベースを木で作ります。必要に応じて樹脂も使います。そのベースに突板(つきいた:薄くスライスした木)を貼っていきます。その木に着色してクリアを吹きます。ちなみにこちらの突板はウォールナット(くるみの木)ですね。

____ハンドルとグリップは木の種類を合わせることも可能なんですよね。

児玉:もちろんです。

____ちなみに人気の木製素材は何でしょうか。

児玉:やはり人気と言えばこの黒ポプラと、ウォールナットですね。ウォールナットもいろんな色が可能です。最近、造ったものといえばこれですね。濃い茶色でベントレーに採用されているウッドです。ファストエレファントでもこの組み合わせで一個造ってますよ。木は全部、着色できます。

____色の配合と着色はハーツさんでやられるんですね。ファストエレファントでの販売はこれだけ多様な色をお客さんに選んでもらうのですか?

アルフレッド:ネットでは何パターンか、おすすめの色を紹介しています。

児玉:木の素材もマホガニーとか選べますよね。

トラックのハンドルに“ガングリップ”をつけるのが新しい!

____なるほど。ファストエレファントおすすめの色や素材を紹介しているんですね。

アルフレッド:そうです。それ以外で、お客さんに「こういうの出来ない?」というリクエストがある場合は対応します。その場合はカスタムオーダーになりますね。

____確かに、そもそも雛形になる色や素材がないと分かりにくいですよね。イベントの時もこうやってディスプレイみたいにハンドルを飾れたら恰好いいですよね。

児玉:このステアリングのディスプレイは、本当はギター用のディスプレイなんですよ。「どうにか壁に飾れないかな」と思って探したのがこれだったんです。

____こうやってみせられるとその気になりますもんね。では現在、ファストエレファントでは色と材質を6パターンぐらいから選んで組み合わせてもらうイメージですね。

アルフレッド:はい。ネット上はそのような販売をしていて、随時カスタムオーダーを受け付けています。カスタムオーダーは色も選べますが、ガングリップの仕様に変更することもできます。

____ボルボの純正ハンドルに対してガングリップを付けることが出来るのでしょうか?

児玉:できます。今まさに製作中ですね。

アルフレッド:試作品をつけてみたところ、すごく運転がしやすかったんですよ。とても握りやすいし、ヒットする予感がしますね。

____大型トラックのハンドルをガングリップにするのも、児玉さんがもともと乗用車でやっていた技術の延長ということですよね。

児玉:そうです。乗用車とトラックのステアリングは形状が違うので、どうやるかすごく試行錯誤しました。

中西:確かに、トラックの場合、にぎりが寝ていますからね。

児玉:下の方にスポークがあるステアリングもあるので、「サムグリップやガングリップをどこにつけたらいいんだろう」って悩みましたね。「もっと握りを太くしたい」とかそういうリクエストも受けることができますので是非、理想のカスタムをしていただきたいですね。

____もしかしてこのカスタムステアリングは純正より少し太くなっていますか?

アルフレッド:太いですね。

ハイパーカーも高級車も軽自動車も値段は一緒

____そうですよね。国産はもう少しハンドルは細いですよね。でもマセラティのハンドルのように、すごく握りやすそうです。今回、製作するにあたって苦労された点等はありますか。

児玉:苦労は特になかったんですが、ボルボのステアリングは裏側カバーと一体型なので裏側も貼らなければいけません。その手間がかかりますね。繋ぎ方は、メルセデスベンツも同じ構造なので参考にしています。もちろん裏側カバーが外れるお車もあります。

____なるほど。そうなると糸地も色を変えたくなりますね。

児玉:もちろん変えられます。こんな糸見本があります。糸にこだわるお客様もいらっしゃいますので。

中西:あんまり見ないですよね。僕も今回初めて知りました。

____ちなみにハーツさんがこういったパーツの加工業を始めたのは、どういった経緯があったんでしょうか。

児玉:私はもともとパーツの加工屋さんにいました。ですからこの仕事はもう20年ぐらいやっています。でもその会社が加工屋さんを辞めてしまって、もともとのお客さんが自分たちの車は「どうなるんだろう」と宙に浮いてしまいました。それで「自分でやろうかな」とはじめました。最初はそのお客さん達だけだったんですが、ホームページを作ったら新しいお客さんが増えてきて、「ウッド、本革の見本が見たい」「内装を見てもらって相談したい」などリクエストが増えてきたので「お店を開いた方がいいかな」と思いました。

____この作業量をお一人でこなすのは大変じゃないですか?

児玉:私にはもともと仲間がいますので大丈夫です。みんな職人としてプロフェッショナルなんですが、営業が苦手です。ですから、そういう人たちから「仕事を取ってきて欲しい」と頼まれます。縫製のプロフェッショナルだったり、キャンピングカーの製作だったり、得意分野がいろいろあります。その中で唯一、我々ができないのはシートの張り替えだけなんです。シートの張り替えのお仕事は「ごめんなさい」とお断りしますね。シートはそれ自体が重いし、寸法を測るのも大変なんです。

____ホームページを見させていただいたんですが高級車からスポーツカー、ヴィンテージカーまで本当に色々手がけられていますよね。ハイパーカーのパガーニ・ゾンダもやってるし。

児玉:ゾンダもパーツを外して、お店に持って来て頂いて加工しました。 もちろんハイパーカーですから超高級車なんですが、うちは加工料金は全部一緒なんですよ。

____ええ!そうなんですか?

児玉:ロールスロイスもゾンダも軽自動車もみんな同じ値段です。お車からの脱着をウチではしていないので。

____なんか絶対、今回の記事でお客さんが増えるような気がします(笑)。

中西:増えて欲しいですね。

児玉:でもヨシノ自動車さんとお付き合いを始めたのは去年なんですよ。去年の2月のノスタルジックのイベントでヨシノ自動車さんにお会いしたんです。

アルフレッド:そうそう。「内張りできる人、誰か紹介してくれない?」って知人に聞いたら児玉さんを紹介していただきました。「ちょっと違うけど」って(笑)。でも作品を見させてもらって「これじゃん!」ってなりました。むしろ「これしかない」って感じです。「トラックもお願いできますか?」と頼んだら「やってます」と。

予想以上のトラック業界の反応とは?

____ホームページの作例にはデコトラもありましたよね。ああいった作品はファストエレファント以前からされていたということですよね。

児玉:トラックは年に1回か、多くて2回ぐらいだったんですよ。やってはいたんですがトラックの需要があまりなかったんです。デコトラにお乗りの方は個人の方が多いですよね。ヨシノ自動車さんのように大きい会社様とお仕事をさせていただくのは初めてなんです。昨年5月のトラックショーに出展させて頂いて、それでホームページに作例をいろいろ載せたところ反響がありました。今では乗用車とトラックの受注が半分半分ぐらいです。

一同:おーーーー!

児玉:これまで年に1回か2回ぐらいしかなかったんですよ。今は逆にトラックがいっぱいあるのに乗用車のステアリングが一本とか(笑)。問い合わせも「トラックで日野なんですけど」とか、「ふそうなんですけど」とトラックの問い合わせが増えています。最近はトラックの問い合わせが乗用車よりも多いです。

____トラックのカスタムですけど、こういうカスタムは中西社長も好きですよね。

中西:好きですね。ステアリングってくたびれちゃいますし、目立つパーツですしね。そもそもこういうカスタムを知らない人が多いんじゃないでしょうか。

児玉:そうだと思います。

中西:乗用車だとすぐ社外品に取り替えたりしますよね。

____確かにそうですね。すぐ取り替えちゃいますよね。例えば乗用車のステアリングをカーボンステアリングに変えたりすると、料金はどれぐらいでしょうか。

児玉:オーソドックスな形は10万円ほどですが、スイッチ周りのパネルもカーボン加工したり、ガングリップを付けたり、下側のフラット加工をしたりすると20万円ぐらいですね。

____ちなみにファストエレファントの加工はどれぐらいでしたっけ。

アルフレッド:仕様次第なんですが、安いものだと13万から16万ぐらいですかね。

____なるほど。必ずしも「大きいから高い」というわけではなさそうですね。

児玉: 大きさも値段に関係ありますが、加工内容次第ですね。例えばガングリップにしたり、下の形状をフラットにした変形ハンドルにすると高くなっていきますね。

アルフレッド:この革もありますよね。革の加工より木の方が高いんですよ。最初の僕のイメージではオールウッドでした。トラックにオールウッドはないですからね。

____アメリカのトラックみたいですよね。ではその「評判も良い」というわけですね。

アルフレッド:評判はとてもいいですよ。明らかにステアリング加工は流行の兆候がありますね。

用意したいのは代わりのハンドル1本

____ ステアリングホイールを半分を木にして、もう半分は革に出来ると聞いたんですが。

児玉:できますよ。新商品としていま製作中です。

アルフレッド:商品としてはそのハーフと、一体型と、変形型を同時に「展示できればよいな」と思っています。

____これって発注を受けてから、どれぐらいで納品できるのでしょうか。

児玉:現在は3ヶ月ぐらいかかってます。以前は1か月半で製作していたんですが、今すごく受注が多くて間に合わないんです。本当にすみません。

アルフレッド:ファストエレファントの車もハンドル待ちが多いんですよ(笑)。

____カスタムをするためにステアリングを渡しちゃうわけだから、その間は乗れませんよね。

アルフレッド:そうなんですよね。だから新車の時にやってもらうか、ボルボにはリーズナブルなハンドルがあるんですよ。スタンダードグレードのハンドルだったらそれほど高くはありません。最初に見つけたとき、「結構安いな」と思っちゃいました。

中西:そうなんだ。

アルフレッド:もともと何個か手元にないとお客さんがトラックを使えなくなっちゃうんですよね。いまのところ造ってる間に貸出していたハンドルを、また造り直して商品として売る方式をとっています。

____それで回しているんですね。いっそ最初にレンタルした方がいいかもしれないですね。

アルフレッド:何個か買っておくということですね。

中西:ハンドルをサブスクにするのも「あり」ですね。

児玉:同じステアリングで回せるのは専門店だからこそできますよね。

____確かにそうです。乗用車のお客さんや他のお客さんはどうされているんでしょうか。

児玉:やはり自分でもう一本、別に購入されます。事故でステアリングが歪んだりしてなければ、ボロボロだって全部造り変えることができるので、どんなに古くても大丈夫なんです。乗用車を改造し慣れている方だと、解体屋さんから探して持ってきたりもしますね。

ベテランを癒すウォールナットの木肌

____面白いですね。児玉さんの職人スキルというのは全部、前の会社で習得したのでしょうか。

児玉:そうですね。メインはショールームでお客さんの対応をしていました。ハーツを始めてからの方がいろんなことに挑戦しています。

____その会社にいた職人の方々はどうされたんですか。

児玉:やめてしまった人もいますし、いま私と一緒に仕事をされている方もいます。その技術を埋もれさせるのは本当にもったいないんです。逆に前は会社だったので、できることも限られていました。今の方が自由にトライできる環境だと思いますね。

____それというのは……。

児玉:会社だと、いろんなことに手が出せなかったんです。例えばハンドルにファストエレファントのロゴを入れるような仕事も、もし失敗して責任を負ってしまったら……と受け身にならざるを得ないので仕事が受けられないんです。

____なるほど。

アルフレッド:ぜひ見て欲しいのですが、このロゴだってステッカーではないですからね。

児玉:ちゃんとインレタ(インスタントレタリング:転写するレタリングフィルムのこと)しています。木を貼ったらクリアを吹いて、インレタでロゴを貼ってさらにクリアを吹いています。中にちゃんと文字が埋め込まれているんです。

____だから表面に文字の手触りがないんですね。それと木製ステアリングはデコトラの高級感とも合うとおもいました。金華山の内装にもよく合いますよね。

児玉:インテリアが金華山のお客さんは、ウォールナットと合わせるパターンが多いですね。

アルフレッド:確かに年齢が高いベテランのドライバーさんは。やっぱりウォールナットを選びますよね。

____いわゆる高級車が使う素材ですからね。落ち着いていてシブいです。

児玉:メルセデスベンツ、BMW、 ジャガー等、茶色いウッドでどの車にも使われてます。

____ベテランドライバーを癒す木肌なのかもしれないですね(笑)。

児玉:でも今は20代の若い方でもウォールナットを選ばれる方がいらっしゃるんですよ。

____意外ですね。若い人なら黒ポプラとかに行きそうな気がしていました。

児玉:黒ポプラはまだホームページに載せてないので、みんな知らないかもしれないですね。

もっとも最高級のカスタムは意外な特別仕様だった……!?

____なるほど。それとごくたまにカスタムカーでレッドカーボンなんかも見るんですけれど、実際はこんなにいろんな色のカーボンが作れるんですね。

児玉:作れますね。結局は着色しているのでどんな色でも作れます。黄色いカーボンのベースはシルバーカーボンなんですよ。シルバーカーボンはガラス繊維で見た目が似ているけど炭素繊維ではないので、カーボンと呼べるのはこのブラックカーボンだけなんです。その中でも最高級なのはフォージドカーボンです。よくあるフォージドは柄がもっと大きいのですが、私はもっと細かくデザインするんです。ブラックカーボンを細かく切るんですよ。同じ面積を作るにしてもブラックカーボンを通常の3倍ぐらい使います。フォージドカーボンはランボルギーニで使われているカーボンとして有名ですよね。

____なるほど。最高級のフォージドカーボンを使った加工も可能なんですね。

アルフレッド:高級といえば、ほらほらこれをちょっと見てください。

____ああっ!これはキングスカスタムペイントの星さんの手によるものですね。

児玉:星さんはこちらのお店にもいらっしゃいましたよ。コラボをお願いしてグリップに螺鈿を埋め込んでレオンにも入れていた柄を3D塗装してもらいました。本杢(ウッド)×螺鈿(シェル)×3Dペイント×カーボンの初コラボです。最高級ステアリングですね。

____たしかに。ハンドメイドの希少性がたまらないですね。

アルフレッド:いまファストエレファントでも、ハーツさんの造ったステアリングに星さんに3Dペイントしてもらう企画が進行中です。

____すごいですね。ファストエレファントのとにかく上を目指す高級志向がまぶしいです(笑)。

児玉:最近の流行だとレクサスに白ウッドがあるんです。「これにしたい」という人が多いですね。木肌自体はバールという木なんですけど、さすがにあそこまで白くは私には出来ないんですよ。どうしても色が入って行かないんです。どうしても黄色っぽかったり茶色っぽかったりするんですよね……。一番高級なウッドはバーズアイですね。他につや消しウッドも人気があります。

車のインテリアを自分の城にしたい

____なるほど。これだけいろんな車のカスタムをしている児玉さんはどんなカスタム車が好きなんですか?

児玉:私は元々デコトラとバニングが大好きなんです。

____なんと!レディースでカークラブとか作ってたりするんでしょうか。

児玉:してません(笑)。初めてバニングを見た時に、あのスタイルと内装に感動しました。車がお家みたいですよね。あれに感動して車のインテリアに興味を持ったのがスタートなんです。デコトラもお城っていうか宮殿ですよね。

____特にトラッカーにとってはキャビンが自分の家なので、好きなものに囲まれるにはうってつけですよね。

児玉:もともと加工屋だったので普通に「ウッドを貼ってくれ」と言われるぐらいのシンプルな仕事しかなかったんです。それが最近は凝ったカスタムをお願いされるケースが多くて、「ガングリップにしたい」とかトラックでも「ハンドルの下をDシェイプにしたい」とかこだわりをもってるお客さんが多いですね。トラックはそもそもがっつりウッドを使っているデザインとかはないですよね。でもステアリングは1日触れている場所ですからね。乗用車のお客様も納品すると「嬉しくて1日ドライブしてました」というメールを頂きます。

職人の技術を世の中に広めていくのも重要な仕事

____とても良い話ですね。さて中西社長にお伺いしたいのですがヨシノ自動車としてはハーツさんの技術を「どうやって世の中に出していきたい」と思われていますか。

中西:日本の技をもっと海外で表現できたら良いですよね。職人さんがそれだけいたのに会社の都合でなくなって、技術が埋もれてしまったのが惜しいですよね。

____やっぱり経営者としてそこを考えるんですね。

中西:つくづく思うんですが、職人さんは何でそんなに「営業が苦手なんだろう」と思っちゃうんですよね。私はこれまで営業を主体にしてきた生き方をしてきたからこそ、なおさらそう思うんです。営業的な思考からすれば職人的な、こんな手作業の仕事を一つ一つこなしていくことの方が難しくて大変なことです。これも努力で「なんとかなるものでもない」と思ってるんですよね。

児玉:職人として作業ばかりがメインになってしまうと、外にも出れないしホームページさえも作る余裕がない。だから自分でアピールすることもできなくなってしまいますね。私でさえ、ほぼこもりきりの時があります。作業が溜まってしまって、例えばこの一か月間をほぼ家から出てません。まだ仕事が溜まっているんですが……。

中西:そういう意味では我々は母体が販売会社ですし、今後はイベントプロモーションも積極的にやっていきます。弊社がその辺の営業的な「お手伝いをできたら」と思うんですよね。

____ヨシノ自動車が日本の職人芸のパイプになるということですね。

中西:そうです。国内はもちろんですが、ヨーロッパのカスタムショーだったり持って行けたらいいですね。

児玉:本当に私たちは小さな会社で営業もほとんどできていません。人の紹介でしか仕事ができてなかったりするので、ファストエレファントでお仕事ができたりすると「有難いな」と思います。去年の5月のトラックショーに出させて頂いて、あの場で存在を知ってくれたお客さんがいたり、改めて「この会社、知ってる」と思い出してくれた方もいたり、 本当に状況があのイベントで変わりました。

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