株式会社ヨシノ自動車

トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第75回

ヨシノ自動車・社長・FE店長・営業

ヨシノ自動車・社長・FE店長・営業

「ボルボFHの2023モデルはココがすごい!変わったところを全解剖します」

いよいよデリバリーが開始される2023年型のボルボFH。進化し続けるボルボトラックはどんな点が変わるのでしょうか。そして気になる値段は……。ボルボディーラーのヨシノ自動車のエキスパートたちが徹底解剖します。もちろん良いところも悪いところも、包み隠さずさらけだします! さらに現状のボルボトラックの販売動向や、人気の傾向などについても語ります。「あの装備は評判どうなの?」という気になる話も包み隠さず話します。

編集・青木雄介
WEB・genre inc.

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中西俊介
ヨシノ自動車社長。GWは家族で富士スピードウェイへ。話題のホテルにも宿泊した。

アルフレッド中渡瀬
FE店長にしてボルボトラックエンジニア。現在減量中。GW中は規制緩和に踏み切った。

ボルボ営業・金野
日本でボルボトラックをもっとも売る敏腕セールスマン。トラックも自分も安売りはしない。

2023年型は何をおいても「低燃費」で推す!

____なかなか好評な旅人訪問記のボルボFH紹介企画ですが、今回は2023年モデルの機能面の進化と販売計画などについてお伺いしたいと思っています。まず23年モデルはいつぐらいから導入されるんでしょうか。

中西:受注はもうすでに受け付けています。デリバリーも、ゴールデンウィーク明けぐらいには日本に入って来ます。

金野:夏前にはお客様のもとに届けられると思いますね。

____発表はつい先日でしたが、お客さんは特にその内容を理解しなくても発注をしているということなんでしょうか。

中西: 2021年モデルと2023年モデルで同時並行している部分があって、今のところ2021年モデルの販売がメインです。連休明けから、2023年モデルの受注を積極的に開始していきます。

____なるほど。ボルボ・ジャパンによる2023年型の発表会について、皆さんの感想をお訊かせください。

中西: 私の印象では年次変更モデルらしく、細かいところまで手を入れてきた印象があります。2021年モデルは顔が変わったので大きく変わった印象がありますが、今回に関しては馬力の性能面であったり、安全性能面をさらに引き上げた点が大きなところかなと思いますね。その分、見た目で分かる部分というのは少ない。昨今、問題になっているところの燃料費高騰だったり、安全機能面に関しても世の中の目はより一層、厳しくなっています。今回の改良は「時流にフォーカスされたモデル変更なのかな」と思います。

ボルボFH

すでにボルボトラックのEV車両は実用化済みで世界38カ国で4,300台以上を販売している。BEVとしては世界NO.1のシェア。

馬力は上るが値段も上がる!?

金野: 私の印象が強いのは「馬力が上がったこと」です。今まで460馬力と540馬力だったのですが、それが470馬力と551 馬力になりました。諸元上は馬力がアップしていますが、昨今の国産車は馬力を低くして燃料消費率を下げるエコ型になっています。例えばふそうはもう500馬力以上のトラクタの販売がない。そうなると実際に牽ける荷物が決まってきてしまうらしいんですね。「ボルボもそういう傾向になってしまうのだろうか」と思っていたのですが、さらに馬力を高くしていって牽ける荷物の幅を拡げてきました。

____なるほど。

金野:あとは安全装置ですがもともと本国仕様ではついているものを、日本に持ってくるにあたって追加してきました。今回の「人検知機能」ももともと本国では付いていた機能です。ただデメリットとしては見た目は変わらないのに値段は上がってくるので、その点をどうお客さんに説明していこうかというところですね。

____ おっと、やっぱり値段は上がってしまうんですね。

金野:だいぶ上がってしまいますね。

____円安も影響しているのでしょうか。

中西: そうですね。

____定価ベースでどれぐらい上がるのでしょうか。

金野: 定価ベースで言えば 270万円ぐらい上がりますね。お客さんには約300上がると伝えてあります。

____それはなかなかの値段の上げ幅ですね。

金野:今回は明確に顔が変わったとかがなくてセールスポイントが分かりにくいので、 お客さんの理解は得にくいかもしれません。

____第三者から見ると「この物価高に加えて円安では致し方ないな」としか思えません。

中西:一番大きな理由は欧米が日本よりもっとインフレしているのに加えて、円安なのが大きく影響していますね。


新型D13TCエンジンの説明動画。燃料を直噴したときのシリンダー形状に工夫があり、排気が最短ダイレクトにターボチャージャーを作動させ、エネルギー効率を高めている。

3%から4%の燃費改善がチリも積もれば

____今回、大きなトピックとしては改良された新型エンジンがあります。馬力もアップしたし燃費も良くなった。ピストンの形状が変わって、さらに燃焼効率が変わりました。

アルフレッド: ピストンの形状だけで言えば前もそんな感じでしたよ。

中西:うん。たぶん大きい機構は変わってないんですよ。細かいところまでは企業秘密なので言えないのですが、ピストンの形状も燃費効率を考えられた形状に少し変わっていたり、同時にIシフトのような制御系をより燃費効率を考えて最適化したり。そういう積み重ねが随所にあった上での総合的な改善なんです。

金野:メーカーの言葉を借りれば、3%から4%の燃費が改善されるそうです。

____なるほど。燃費改善は嬉しいですね。ちなみに金野さんがボルボを販売するにあたって、お客さんにボルボはどれぐらいの燃費で走る、と伝えているんでしょうか。

金野:それはどうしても牽く荷物の重さだったり、ドライバーさんの走り方によってまったく違ってくるので 僕は逆にお客さんに訊いています。燃費の良い人ではだいたい平均リッターあたり4kmから5kmぐらいで走るという人から3kmぐらいの人もいます。そこは 高速道路から地場まで、みんな荷物も走る道もまちまちなんですよ。ただ厳しめに見ても「悪くない」というのが大半の実感だと思います。

ボルボFH16 2018年モデル

Iシフトにオフロードモードが追加され、ドライブモードは4つになった(写真は2018年型モデル)

ついにボルボに“オフロードモード”がついた!

____分かりました。 それと共に今回は排気系のフィルターが変わってますよね。

アルフレッド:そうですね。今回、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)のフィルターが変わっています。EGR(排気再循環システム)とDPF と、尿素SCR(触媒)この3つの機能が強化されています。相対的にいって煤の燃焼温度が前のモデルより、ぐっと下がっています。燃焼温度が下がるということはそこまで燃料を使わなくて済んでいます。その分、尿素を吹いてNoxを下げますから、尿素は多く消費しちゃうかもしれないですね。

____燃費が良くなる分、尿素を多く使っちゃうということですね。

アルフレッド:そのせいか、アドブルータンクはより大きくなりましたね。

____ちなみにエンジニアの目から見て、今回の新型をどんなトラックだと思われました?

アルフレッド:僕にとって2021年モデルの衝撃というのは大きくて、そこから大きな変化は望めませんよね。乗り心地は毎回、毎回良くなっていきます。だから次の2023年モデルが「どう来るか?」というのはすごい楽しみなんです。こればかりは乗ってみないと分からないですよ。その2021年モデルも、実際にお客さんに訊けば「(それ以前とは)全然違う」という声を聞きます。トランスミッションだって、大きく何かが変わったわけではなくて、要はプログラミングが変わっている。さらに乗用車に近くなっていくでしょう。トラックって、ちょっとの差が後々大きく変わってくるんですよね。

____分かります。今回Iシフトも進化したという話ですが、これは新型エンジンに対して最適化されたという意味なんでしょうか。

金野:Iシフトで言えば今回、オフロードモードがついたことが大きいと思います。

____その通りですね。シフトモードに4つ目のドライブモードがつきました。それが オフロードモードです。

金野:今回6×4の単車(リジッド)が出るのでそのためなのかも知れません。

____他社はどうなんでしょう。スカニアはオフロードモードがついているんでしょうか?

アルフレッド:スカニアには付いていますよ。

金野:スカニアは重量物を運ぶにあたって、それなりの装備はもうついています。スカニアの良いところは、本国からそのまま持ってくることができる。ボルボはその点、日本国内に入るときに一度 UD を仲介するので、日本の法規制に合わせたローカライズの幅が大きいんですよね。そこに時間もかかってしまう。

アルフレッド:スカニアはほぼ並行輸入車だからね。

超重量級もボルボにお任せあれ

____何にせよ、ボルボにも必要なドライブモードが備わりましたね。これから2デフやリジッドのダンプなんかでは活躍しそうですけど、ボルボの2デフの販売は好調でしょうか?

金野:おかげさまで好調ですね。直近では「スカニアから入れ替える」というお客さんからお話をもらっています。僕はどうしてもシングルの販売が多いのですが、今回は6×4の 第5輪荷重が25トンのトラックです。

____その重量物をスカニアじゃなくて「ボルボが運べる」というのは大きいですね。そうなるとオフロードモードもボルボのセールスポイントになっていきますね。

アルフレッド:実際にオフロードを走ってみないと、違いが分からないでしょうね。トラクションコントロールをオフにしても、よく分からなかったですから(笑)。

____ちなみに 2021年モデルから入っている、装輪フルエアサス車の評判はどうなんでしょうか。やはり総輪エアサスを求めるお客さんは増えているでしょうか。

金野:求められていますね。乗り心地とかも含めてリアエアサスで十分なんですが、でもさらに上の乗り心地を求められるというところでオーダーいただいて、我々が入荷した分はほぼ売れてしまいました。それまでリアエアサスだった人たちが「フルエアサスをどうしても乗ってみたい」とおっしゃっていますね。

ボルボの総輪フルエアサスは好評だった

____実際に乗り心地はどうなんでしょうか。

金野:私はトラクタでしか乗っていないんですが、言われると「おっ!」と思いますね。 「可愛いよ」と言われると可愛く見えちゃうみたいなものです(笑)。やっぱりちょっと気になっちゃうというか。

アルフレッド:首都高のカーブとかだと、リーフサスだとちゃんと踏ん張ってくれるんですよね。それがフルエアサスだとちょっとだけ横揺れが出ますね。

金野:フルエアサスの人は本当にフルエアサスにこだわりますね。絶対に「フルエアサスにしてくれ」って言います。

____現状、リジッドは全部フルエアサスですよね? その辺の評判はどうでしょう。

アルフレッド:リジッドだとシャーシベースも長いし、車体が分散されるから分かりにくいかもしれないですね。トラクタのお客さんは軒並み「良い」って言っていますよ。

金野:ボルボはリジッドだとフルエアサスが標準仕様です。ボルボはもともと車高が高いから、どっちみちフルエアサスの方がお客さんとしては都合がいいでしょうね。リアエアサスというよりはフルエアサスで全体的に下げられる仕様が好まれると思います。

____ちょっと中間報告的になっちゃいますけど、リジッドの売れ行きはどうでしょう?

中西:弊社はリジッドの積極的な営業活動をしてこなかった期間が長かったので、まだ実績は数台ほどですね。市場的にはまだまだ未開拓の分野なので、それは今季の目標でもあるんです。リジッドでボルボのシェアを広げていきたいです。

金野:結果、増えるとは思いますね。話も来ています。「冷凍車を造りたい」とか「箱車を造りたい」とか。それまでボルボに乗ったことのないお客さんでやっぱり宣伝効果だったり、ドライバーさんが乗りたいとか、注目を浴びたいというのが大きな理由だと思います。 やっぱり宣伝効果が一番大きいですかね。

____思ったほど重さも問題にならないみたいですね。

金野:やっぱり重量は取れないですけど、そこまで問題にはならないですね。

雪道でも前輪のトラクションを失わない「スタビリティアシスト」

雪道でも前輪のトラクションを失わない「スタビリティアシスト」。

前輪がパンクしてもボルボなら安全な場所まで移動できる

____分かりました。ではまた新型の話に戻りたいんですが、今回ボルボダイナミック ステアリングに、パンクやタイヤの横滑りを検知する「スタビリティアシスト」という機能が付いています。アルフレッドさん、この機能は今までの機能とは、どんなところが違うのでしょうか。

アルフレッド:うーん。それに近いのは2018年モデルからついてますけどね。

金野:今回のは「制御不能ではなくなる」ということなんですよね。パンクや雪道の時に。

____あー、なるほど。雪道で前にチェーン巻いてないとすると滑ったりしますよね。 あれがなくなるってことですか。

アルフレッド:そういうことでしょうね。実際にこういう機能は乗っていてもよく分からないんですよね。そうそう悪路があるわけでもないし。2021年モデルからアクティブステアリングのコントロール調整がモニターで全部できるようになりましたよね。正直、乗ったら 乗り心地が良すぎて分からないです。これ以上どれだけの悪路を走れば、そんな制御不能になるのかちょっと理解ができない(笑)。もともとこの辺のステアリングの性能はめちゃくちゃ良いこともある。

____(笑)。たしかにパンクの機会や雪道で前輪を滑らすこともめったにある機会じゃないから、しっかりトラクションを確保して前進しつつ、安全な場所まで退避できるということなんでしょう。では安全装備の充実に関して話を進めましょう。今回、新しく入った機能としてはどんなものがあるでしょうか。

金野:人検知機能が付きましたね。

____どんなものでしょう? 側方衝突警報機能のことでしょうか。

金野:前のモデルから比べるとぽっこりとしたセンサーがついているのが分かりますね。通称は「人検知機能」と言われています。今後この機能は必ずつけなきゃいけない機能になるはずです。

進化した安全性能は一長一短アリ

アルフレッド:もうちょっと形を考えて欲しかったです。ポコッと出ちゃってるんですよ……。それも結構でかいんですよ。

中西:そうなんだよ。だいぶ出てるんだよな……。

金野:このセンサーをいれると左右幅が2500mmを超えちゃうんですよね。

中西:幅は2600mm以内に収まればいいんだそうです。実際は5cmずつなら飛び出てもいいんですよね。

金野:左右幅からミラーは飛び出ますよね。そういう感覚ですね。

中西:ミラーからは出ないんだけど 、+10cm 以内だったら許容範囲と国土交通省で決まっているらしいんです。

____今後この機能は必ず付けなきゃならないんですね。

中西:そうですね。

金野:あと新しい機能としてはミラーの警告表示がつきました。バックカメラも大型車はつけなければいけないので標準装備になりました。

ミラー警告表示の例。写真はボルボFMによるもの。人の存在を判断してドライバーに注意を促している。

ミラー警告表示の例。写真はボルボFMによるもの。人の存在を判断してドライバーに注意を促している。

____なるほど。

金野:位置がナンバー横についちゃうんですよね……。トラクタはまったく意味ないと思いますけどね(本当は荷台に接続するカプラを見るためにつけたい)。もともとカメラはキャブ側には付いていたんですよ。それが半導体の不足の影響で、先に車体を販売して随時、後付けで付けるような形だったんです。それが法改正のせいでバックカメラになりました。

____うーん。トラクタはいわゆるバックアイより、ピン位置を見たいですよね。あとはちょっとエアロダイナミズムが変わるんですよね。

金野:シーラーを追加して、ちょっと空気抵抗を良くしました。そしてミラーのカバーが変わりました。空気抵抗を考えたようですが見た目はまったく分からないですね(笑)。

中西: 本当に分からなかった(笑)。

なぜスリーパーコントロールを廃止しちゃったの!?

____新型エンジンになって馬力が増えて、燃費も良くなるとすれば正常なマイナーチェンジですね。それでもこのダウンサイズの世の中で 13リッターエンジンを使っているわけですから、そっちの方が驚きですよね。

中西:13リッターエンジンで、厳しい欧州の排ガス規制も燃費規制も騒音規制もクリアしてきたというのは驚きですよね。すごいことですよ。

____燃焼技術だけで、どうにかやってきたってことですからね。日野も13リッター(E13C)だけど、やっぱりそれがクリアできないから不正した訳です。ボルボはまだまだ13リッターエンジンを進化させていくんでしょうね。あとカタログを見て思っていたんですが、ボルボ FH のベッドマットが跳ね上がるというのは今回が初めてなのでしょうか。

金野:これまでもリクライニングはグレードでいうと「ラグジュアリー」にはついている機能です。今回も全車標準にはならないですね。やっぱりラグジュアリーだけの機能だと思います。

____それは残念ですね。

金野:ちなみにボルボにはスリーパーコントロールという、寝ながら室内灯やエアコンを調整できるパネルがあったんですが、あれが廃止になってしまいます。現行モデルにも、実はもう付いてないんですよ。「部品が来なくて使えない」ってなっちゃってます。2021年モデルに関してはバックオーダー分には後日つけていくということになっています。今回の2023年モデルに関しては廃止になりますけど、スリーパーコントロールは本当に必要だと思います。

____便利ですもんね。ベッドにいながらにしていろいろ調整できる。確かに必要ですね。

アルフレッド:そうかな?

金野:お客さんに言われるよ。「あれなくなっちゃうの?」って。ラジオの音量も上げられるし、サンルーフも開けられるし。そもそもはラグジュアリーだけのオプションなんです。 スタンダードはいくつかの機能に限っているんですが、ラグジュアリーはほとんどすべて コントロールできるようになっています。寝ながらだったり、リクライニングしながら操作できるのが人気でした。

アルフレッド:スタンダードはライトとラジオの音量ぐらいしか調整できなかったはず。それも今回の2023年型モデルからなくなっちゃうんだ。

金野:今回からはスタンダードもラグジュアリーも全部廃止らしいです。

____つくづく残念なお知らせですね。

金野:国産にはない機能ですからね。

好評だった「スリーパーコントロール」の廃止により旧来のファンはがっかりか……。

好評だった「スリーパーコントロール」の廃止により旧来のファンはがっかりか……。

国産メーカーの値上げに比べると理にかなってはいるボルボの値上げ

____新型モデルはネガティブな部分も含めて、ほぼこれで網羅できましたね。

中西:今回は値段は上がるにせよ、その次の2024年モデルがさらに値段が上がることを考えると「買うなら今」という売り方になるかも知れない。でも今回、改善された燃費の良さというのは 100kmあたり0.5 L 違ったら、年間あたりにすると何十万円という節約効果になるんですよ。それをワンオーナーワンクール目安の5年間で計算すれば、距離次第で数100万変わってくるケースもあるでしょう。国産メーカーも軒並み、また値段が上がってきている中で、前年モデルと比べれば高くなるかもしれないけれど、燃費性能で経費削減しつつ、安全性能、快適性能を含めて値上げ分は十分カバーできていると思います。ただこれってあくまでも間接的な数字比較なので、販売としてメリットを分かりやすく表現していくのが難しいところではあるのですが。

____なるほど。参考までに訊きたいのですが国産メーカーの値上げ率はどんな感じでしょうか。

中西: 例としてはボルボと車種は違いますが、中型のウィングとかで 2年前のモデルよりも軒並み300万円近く、4軸の完成車でも300万近く上がっています。これは定価じゃなくて、仕切り値(値引きのはいった価格)ですからね。ある意味でボルボより高くなっちゃっているんですよ。ボルボはあくまでも標準希望価格ベースで 270万ですから(笑)。ちょっと具体的な数字は言えないにせよ、国産もこのコロナ禍の数年間で1200万円の車体が1500万円ぐらいになって20%から25%ぐらいは上がっています。そこと比較しちゃうと「決して驚くべき数字ではないです」っていうことですよね。

____本当にそうですよね。事業者からするとトラックは必要経費なので上がったから「買わない」というわけにはいかないのも辛いですよね。

中西:たとえばUDやスーパーグレートだと値上がり分というのはそのまま安全装置が増えたから、という理由なんですよね。お客さんとしては「どうしても必要な機能」というわけではない。経費削減やコスト削減のための値上げではないわけです。ボルボは空力特性にしてもIシフトのプログラミングを変えるのも低燃費につながるので、経費削減のための性能アップとは言えるんですよね。私としては「ボルボの方が理にかなった値上げの仕方だな」と思っています。原材料が上がっているので値段が上がるのは当然というスタンスで考えるのであれば、理にかなった改善といえますよね。正直な話、今回のリニューアルはちょっと地味だと思いますよ(笑)。

好評なモデルチェンジには内容がともなう

____確かに顔が変わったわけではないですからね(笑)。

金野:2014年モデルから2018年モデルに変わった時、あの時も顔が変わらなくて、ただダイナミックステアリングとかがついてきましたよね。値上げして結構、お客さんには言われました。でもお客さんからすると、2014年モデルを乗っていたお客さんは特に「その値上げの理由はわかる」と納得してくれたんですね。ハンドリングが変わることはドライバーにとってとても大きい改善ですから「顔は変わらなくても」と値上げでもかなり好意的でした。

中西:2021年モデルの実態というのは、実質1年ぐらいしか売ってなくて弊社でも50数台です。そこで 23年モデルと比較対象される車って売った分しかないわけですよ。実際は それ以外の多くのお客さんが2023年モデルを必要としているわけで、販売的には「あまり影響がないんじゃないか」と思っているんですよね。この2023年モデルを買う人たちというのは、2021年モデルよりも前のモデルに乗っているお客さんがほとんどなので、顔も前の型を乗っているわけです。その人たちが今回、代替えだったり増車したりする訳ですから、その意味では販売に影響するとはあまり思っていません。もちろん金野のような営業担当者からすると大変でしょうけどね。

金野:2009年モデルから2014モデルから、2018モデル、 2021モデルと買い替えてきたお客さんも多いので、そういう人たちからするとやっぱり「さらに上がるのか」って言われちゃうんですよね。紹介されてきた新規のお客さんなんかは、車は良いし、目立つし、宣伝効果はあるし、とすすんで褒めていただいたりするんです。そういう人たちからすると逆に値段も「そんなもんか」と納得されたりもするんですけどね。

____分かります(笑)。

中西:世の中はインフレになっていますし、欧米のように物価上昇に見合ったいろんなものが相対的に上がっていれば影響ないんですけど、もともとの日本の円安状況とどこかデフレから脱却できていないマインドでこのコロナ禍に入って、欧米との差がさらに広がりました。今回の値上げのショックというのは、その副産物ですよね。

____確かに。でも値上げの理由は明快です。繰り返しますけど、国産メーカーの値上げ幅を聞いちゃうとボルボの値上げは「可愛いものだ」とすら思ってしまいますね(笑)。

ボルボFHの素晴らしさに触れてみませんか?

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