株式会社ヨシノ自動車

トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第87回

ジャパントラックショー2024 レポート

ジャパントラックショー2024 レポート

「世界に1台しかないボルボFH!もはや追いつけないファストエレファント出展車両を徹底解剖」

2024年5月、パシフィコ横浜でジャパントラックショー2024が行われました。我らがファストエレファントも計3台のトラックを出品しました。ファストエレファントとしても3回目のトラックショー。回を増すごとにアイデアや架装の技術が高められていますが、今回の3台はユーロカスタムをベースにしつつも、突き抜けたコンセプトとワンアンドオンリーな独自性が非常に強いトラックです。さぁ今年のファストエレファントはどうだったのでしょうか? 徹底解剖します。

編集・青木雄介
WEB・genre inc.

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KUNIO

一台目は長崎の三晃自動車工業とのコラボである「KUNIO」。レッカーサービスとともに架装も行う三晃自動車の社長の名前が車の名前になりました。キャンディレッドのド派手なカラーリングにボールドでセクシーなバニーの絵柄が躍ります。見どころはキャビン裏に仕込まれた巨大な工具箱。レッカー業に限らず、より多くの道具を持ち運びたい荷種の皆さまには必見の架装となりました。

アルフレッド:コンセプトはもともと忍者だったんですが、三晃さんらしくレッカー屋さんらしさを出してもらいたかった。レッカー屋さんはたくさんの工具を使うので忍者になぞらえて、工具箱からいろんな道具を出せるようなトラックを造って欲しかったんです。ジャッキとか馬とかチェーンブロックとかを手軽に出せるような工具箱が仕込まれている。遊び心で手裏剣を入れたりしたら「面白いんじゃないか」と思っていたんですが、それで行くともともと国雄さんの持っていたイメージが違っていたらしくて、結局コンセプトを「国雄さんそのものにしよう」ということになりました。じゃあ「国雄さんはどんな人なのか」というと国雄さんでのカラーで行くと、この赤なんですよ。キャンディレッドですね。特別に調合したオリジナルカラーです。横のリボンのカラーも国雄さんが好きな柄というか、カプラーのヒョウ柄も国雄さんの好きな柄です。

____このバニーちゃんの絵は誰の絵なんですか。

アルフレッド:これはもともと三晃さんのキャラクターです。基本的なカスタムのベースは実用性を目標のひとつとしています。何が実用性があるかというと工具箱がシャッターになっていたり、より取り出しやすい工夫を凝らしています。基本的には荷物を積む車なんですが、そんなに荷物は必要なのかと重機を運んでるお客さんだったり、海コンじゃないお客さんというのはいろいろ道具を積んでいるんですよね。

____この銀色のボトルはなんでしょう?

アルフレッド:ウォータータンクです。まぁ見た目、番長ですね(笑)。1タンクで12L入るんですよ。手を洗ったりするにはちょうどいいでしょう。これは見栄えの問題です。恰好いいでしょう。リア周りはボルボ純正だったり、ワンオフで組んでもらってるので、商品にはしてません。基本的には国雄さんのワンオフで踊り場の仮装だったり、工具箱の仮装だったり、パーツは基本的にジャンボですね。ホイールはブラックウルフでマーカーはストランズも使っています。室内はオリジナルのシートカバーを使っています。

____フルエアサスで車高はベタベタですね。ローバーの下にさらにエアロがついてます。

アルフレッド:新しいでしょ。これは国雄さんのセンスですね。「ちょっと違うだろ」と思ったんですが(笑)、付けてみると「面白いな」と思いました。そういうセンスが欲しかったんですよね。忍者の時はそういう思いつきが全然なくて、めちゃめちゃ悩んでいた国雄さんが「好きなようにやってください」とお願いしたらこんな風になりました。それがめちゃくちゃ良かったですね。今回のボルボは2台ともフルエアサスでベタベタに下げることができます。

____値段が2690万円になってますが、さらに架装費が上乗せされるんですよね。

アルフレッド:これは架装費を抜いて部品代だけが入っています。だからトータル3500万ぐらいになると思います。

KUNIOの装備品詳細はこちらより


Adam

今回のトラックショーでさりげなく気をはいていたのがアダムです。前回に引き続き、ピンストライパー Ken The Flattop氏による実演も込みで終演まで完成型を見ることは出来ません。象をモチーフにした手書きのトライバル柄が躍動していて力強さを表現。巨大な煙突マフラーと相まって、よりハードコアへ向かう2024年のFEトレンドが凝縮されています。基本に忠実に、かつ世界に1台しかないカスタムトラックとして大きく飛躍した1台といえるでしょう。

アルフレッド:アダムはファストエレファント・オリジナルです。基本的には弊社のパーツを優先的につけています。素直に「このまま乗って欲しい」という気持ちを表現していると思います。アダムの名の通り、今後は「ファストエレファントのベースになっていくのかな」と思いますね。

____アルフレッドさん的にはそんなに飾らなくても恰好いいんだ、と表現したいのでしょうか。

アルフレッド:そうですね。最低限これだけがついてれば、ファストエレファントの車だというのが分かるようになっていると思います。セノプロさんだったら、ふそうでグラインダータトゥーとかが入ってればセノプロさんだって分かりますよね。同じように、これはファストエレファントだと分かるようにしたいんですね。

____なるほど。それでアダムですね。

アルフレッド:基本的にジャンボのパーツを売りにしています。弊社オリジナルのサイドバンパーもついています。 サイドバンパーとエアディフレクター、ジャンボのバーがついたらどうにもファストエレファントですよね(笑)。ライトはすべてジャンボです。弊社が取り扱っているパーツをふんだんに使っています。もともとマーカーがついているバーはストランズです。このトライバル柄はもう塗装する段階で入れてもらっています。そして会場でピンストライプの縁取りをしてもらって仕上げですね。

____煙突が太いですね。

アルフレッド:煙突は210πあります。煙突は太ければ太いほど恰好いいと思っています。 蕪島さんのトラックを造った時に「太いもの勝ちでしょう」と気づきを得ました。キャビン裏の赤のプラスチックの入れ物は消火器入れです。自分の車が火事になった時のためのものではありません。他の車が火事になった時に消してあげるためのものです(笑)。

____このリアランプの上についてるバーは、ここにつけるものなんですか。

アルフレッド:ここにつけるためのものです。あれは恰好良く上につけてるんです。どこにでもつけられるパーツなんですけどね。この辺のワンオフの架装は岡山熔接さんです。架装はすべて岡山熔接さんでやってもらっています。踊り場とかマフラーとか、「こういうデザインで」という案はこちらで出しています。値段はKUNIOくんと同じく3500万ぐらいですね。

KENさんより一言

「トライバル柄も手がけるときはたまにはあります。今回はアルちゃんがハワイのタトゥーのデザインをやりたいというから、ファストエレファントなので象さんをそれとなくデザインに入れてみました。トライバル柄だからといって、特にいつものピンストライプと変わることはないです。思い描いていた絵柄が「トラックにハマるかな」という点だけが心配だったのですが、意外と上手くいったので「悪くないな」と。最初にこの黒の柄に筆を入れた時点で良い感じだったんです」

Adamの装備詳細はこちらから!


鴉(カラス)

前回に引き続き、愛宕自動車とのカスタムUDが出展されました。その名も鴉(カラス)。ファストエレファントの国産車ライン、フライングエレファントの名を冠し、今回は大暴れしています。鴉の名の通り、真っ黒のボディにキャブ裏に電柱を模した煙突が立ち、本物の電線が取り囲んでいます。よく見るとガードレールまで取り付けられていて、どこか懐かしい日本の路地裏を想像させます。ディテールに注目して欲しいのですが、とにかく圧倒的な完成度で、コンセプトアートとしても一級の価値をもつ作品に仕上がっています。

____パーツは UD 用にジャンボに特注したということですか。

アルフレッド:そうです。すべて UD に合わせて造りました。ワンオフなんですよ。ライトはジャンボです。ほぼスカニアと同じ形なので、取り付けのためのブラケット関連が特注ということになるんです。架装は大分の愛宕自動車さんでやってもらっていて、コンセプトの通り、カラスです。煙突もパイプじゃなくて電柱です。サイドバンパーには本物の電線を使っています。

____電柱はステンレスですか?

アルフレッド:ステンレスですね。 そしてさりげなくガードレールも入っています。分かりますか?

____ああっ!本当だ。

アルフレッド:なんにせよ愛宕さんの良さが出てますね。これを造れるのは愛宕さんしかないし、どこをとって見ても素晴らしい完成度だと思います。発案も愛宕社長です。その意味では、今回のカラスはだいぶ愛宕自動車が主導して造ったトラックですね。付けるパーツだけFEで抑えてますけど。個人的にはもう少し、それ以前に出した雅(ミヤビ)や刀シリーズを「もうちょっと極めるのかなぁ」って思ってました。今回のカラスはショーなので遊び心と奇抜さを優先し「技術を見せつけた」ということですよね。

____ホイールも決まってますね。

アルフレッド:ホイールはブラックエレファントでFEオリジナル商品です。色を塗り替えています。愛宕さんのアドリブですね。サイドの模様もカラスにしました。ミラーは日野のユーロバージョンをつけています。 海外向け日野の4 トン車用ですね。


中西社長より

____ファストエレファントも基はといえばトラックショーから始まりました。あらためて成長の実感などありますか。

中西:そうですね。2018年からですね。それ以前のトラックショーは2年に1回のイベントとしては特別なものではなく、当たり前のように参加してきましたが、FEが出来てからは向き合い方が変わったかと思います。今回も100社以上が参加している中で、「目立つためにはどうするか」と言ったら、見てもらえるブース作りが一番大事です。そのために我々はボルボのカスタムをやっているので、「恰好いいボルボを飾りましょう」と力を入れるようになりました。

____なるほど。

中西:その戦略は「今回も成功しているかな」と思いますね。毎回、少しずつステップアップしていますが、今回は KWDさんだったり、電装パーツ系をちゃんと展示して、車だけじゃない商品も販売しています。弊社の営業も各所に配置していますので、本業である国産の販売だったり、リースやレンタルカー事業、その他ありとあらゆるトラックにまつわる仕事をしている、ということをブースでお客さんを惹きつけつつ「本業にも還元していきたい」と考えています。今回は特にそこを意識していますね。正直、2年前まではまだまだ認知度と知名度を上げたかった。そこが大義名分でしたが、ここからさらに深掘りしていって実際にビジネスパートナーとしてつないでいきたいということですね。

____では認知度や知名度はある程度「もう取れた」というご認識なんですね。

中西:そうですね。今回の3台は各々、コンセプトが違っていて結果的にはとても良かったと思います。クオリティ的にも高くて、3台とも前回以上にクオリティが上がっていると思います。良くも悪くも最初のコンセプトからはずれてきてるんですよ(笑)。もともとKUNIOくんは忍者でしたし、カラスは武将の家紋に使っているカラスから来ていました。戦国時代の歴史から来ていたんですよね。戦国時代のカスタムコンセプトをベースにしていたはずなのに、カラスは昭和になっちゃいました、と(笑)。でも、「とても良い方向にぶれた」と思っていますよ。忍者も隠し扉なんかからインスピレーションを受けていたはずなんですが、トラックとしてはより実用性に振った内容になりました。スタイルは大事ながらも実用性で使いやすい。「結果的に良かったな」と思っていますよ。

____今回、見て思ったのは「絶対、普通のカスタムはしないぞ」という意志を感じました。「誰にも似てないぞ」というところが、トラックのカスタム魂的にはすごく大事なのかなと思いました。その点でいくと今回の3台はワンアンドオンリーな思いがほとばしっていて、実に「良いな」と思いました。

中西:今回に限って言うと、ショーが終わるたびに「次回はこういったコンセプトで造りたいね」ってアルと話しているんですよ。それが今回に関しては去年の夏まで「どうしようか」と悩んでいました。アイデアが出なくて、そこを乗り越えて、この3台が造れたので、ひとまずは安心しています。ちゃんと実売につなげなければいけませんけどね。3000万円超えちゃってますけど(笑)。今までで初めてじゃないですかね。出品車両で3000万超えは。それもシングルヘッドですからね。

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