株式会社ヨシノ自動車

トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第91回

株式会社キャリオン 代表取締役社長 應本 一樹様

株式会社キャリオン 代表取締役社長 應本 一樹様

「一番最初に相談される“ボルボディーラー”として、我々の成長は続く。」

今月の鍵人訪問記は、中国地方でボルボディーラーをされている株式会社キャリオン様です。出自から中古トラック販売業を営んできた会社の歴史があり、まさにヨシノ自動車とうりふたつの環境で事業を営まれてきました。そこで両社に共通する、「どう人材を育成していくのか」という課題、さらには高騰するボルボ・トラックをどう販売していくのか?はたまた中古トラックの販売へどうつなげていくのか?など多面的な内容で対談をしていただきました。

編集・青木雄介
WEB・genre inc.

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應本 一樹(おおもと いつき)様
ボルボ・トラック中国 株式会社キャリオン 代表取締役社長。1985年生まれ。2007年東京ふそう(現南関東ふそう)入社 2009年キャリオン入社 2018年代表取締役社長に就任。現在に至る。

ボルボディーラーをはじめたきっかけ

___まず株式会社キャリオンさんは中古トラックの販売から始まってボルボ・トラックのディーラーになるという、ヨシノ自動車さんとまったく同じ社歴をお持ちです。今回は業態が分かっている両社同士でしかありえないディーラーとして共通する点や差異を紐解いていきたいと思います。まずキャリオンさんがボルボディーラーを始めたのはいつからだったんでしょうか。

應本: 弊社は2000年に始まりました。

中西:ヨシノ自動車より1年後ぐらいだったんじゃないかな。ほぼ一緒ですね。

___それは当時の日本ボルボよりお誘いがあったような感じでしょうか。

應本: 私が会長から聞いている話ですと、名古屋で非常に濃いお付き合いをさせていただいているユーザーさんがいらっしゃいまして、当時名鉄整備がボルボのディーラーをしていました。そんな中、メーカーが中国地方でディーラーになってくれるところを探しているという話でした。そんな話が名古屋のラウンジから電話がかかってきて、たまたま会社にいた現会長がその電話を取って、「すぐ名刺を送ってくれ」と言う事から話が進んだと聞いています。

___それはやはり当時から整備工場を持っていたキャリオンさんにお声がけをしてきたということでしょうか。

應本:当時の弊社は整備工場がなくてダンプの架装や、中古車の二次架装を中心にしていました。当時はディーラーとして整備を請け負えるような状態ではなかったと聞いています。

___なるほど。ボルボのディーラーをきっかけとして整備工場を建設されたということですね。

應本:そうですね。ディーラーになるために、当時あった工場をすべて車検整備できる工場に変えていきました。人員も増やして、2年ぐらいかけて体制の変更を急ピッチに進めました。弊社の整備事業はまだ若干、20年程度なんです。

社員総出で荷物の積み替えをする

___そうでしたか。ではなぜ決して安くはない設備投資までして、キャリオンさんはボルボのディーラーを引き受けたのでしょうか。

應本:弊社はディーラーにすごくこだわりを持っていて、弊社の本社建物もそのこだわりによるデザインなんです。中古トラック屋さんのイメージというと広大な敷地にプレハブがあって、車を並べていたらいいというイメージが強いですよね。「その業界のイメージを変えたい」ということで、この本社建物を創立30周年の時に建てました。

___現在は築何年ぐらいなんですか。

應本:25年ぐらいですね。

___確かにこの建物は、いわゆるトラック屋さんのイメージとは違いますね。

應本:中古トラックを販売することからディーラーになることが、いかに難しいことか、当時お付き合いのあったディーラーの方々に訊いて、困難はあったとしてもディーラーの仕事に魅力を感じて契約をさせていただきました。

___お約束ですが、なってみたら大変だったわけですね (笑)。

應本:そうだったらしいですね (笑)。

___その辺の話は中西社長に聞いてみましょう(笑)。

中西:僕も会社に入ったのは2003年で、今年で21年目になりますが、ボルボが98年モデルからバージョン2が出るぐらいの時期だったので、現在のボルボから考えると明らかにボロかったですね(笑)。僕も異業種から来て、そもそも外車が好きで、イタリア車やフランス車を乗ってきていて「壊れるのは仕方ない」という感覚がありました。個人的には「みんなが大騒ぎするほどのものじゃないな」と高をくくっていたところもありました(笑)。あくまでもそれは中古車のイメージでしたが、ボルボのディーラーの仕事をしてみて、新車を扱うようになって登録前のボルボを陸送していたんですが、3回に1回は途中で止まりましたね。チェックランプが点いたり。そういう時代だったので、さすがの僕も「これ売るんだ……」と思っちゃいましたね(笑)。

___その辺はキャリオンさんの会長もよくご存知でしょうけど、苦労されたんでしょうね。

應本:「苦労した」と言ってますし、地元で営業活動していたこともあって、展示会をやったり良いスタートを切ったらしいんです。ところが付き合いで「1台入れてあげるよ」という感じで、ご厚意で買っていただいた車が軒並みトラブりました。荷物を積んだ状態でレッカーで運ばれてきて、弊社の工場に入ったところで、営業を含めて全員で荷物の移し替えを行ったり、といったこともあったらしいですね。だいぶギアトロニック搭載車種の時に苦労したみたいです。そこで諦めずに、ディーラーにこだわりを持っていましたので、そのマインドをずっと持ち続けて踏ん張って現在がある感じですよね。

Iシフトの前身であるギアトロニックとは?

___確かに、ギアトロニックという言葉は悲しい思い出と共に語られることが多いですね(笑)。

アルフレッド:この世からなくなって欲しい車ですね(笑)。本当に最初のオートマですよね。

中西: Hパターンのシフトだけれども、クラッチがないタイプですね。

アルフレッド:それが、やっぱり壊れたんですよ。構造は素晴らしいものだと思いましたけどね。改良しなきゃならないところは「色々あるだろうな」と整備している僕たちも分かっていました。すぐにでもなくなって欲しいです。

中西:まぁ、けれどもそれは結果論なんですよ。あのギアトロニックがあったからこそ、今のIシフトが生まれているんです。

アルフレッド:その通りです。

___壮大な市場実験があって現在があるわけですね。

アルフレッド:ボルボってマニュアルだと、それはそれですごく重くなるんですよ。両手でやらないとバックに入らなかったり。だからギアトロニックが出てきた時は「すごいな」という話になったんですが、喜びもつかの間みたいな(笑)。これだけトラブるなら、マニュアルでいいんじゃないかと。

___ 分かりました。ディーラーが始まると同時に味わったトラブル地獄は並大抵のものではなさそうですね。そんな両社はもともと中古トラックから始まっています。前々から不思議に思っていたのですが、中古トラックのお客さんをボルボの新車に導いたのでしょうか。

應本:僕も会社に入って営業をやってきました。その経験でいうと中古車のお客さんが新車を買ってみよう、せっかくだからボルボを買ってみようというパターンもありますし、最初からボルボを買われるお客さんでいえば、他の車とかぶりたくない、国産は乗りたくないという方が多かったですね。2014年以降はお客さんの層が変わってきて、一般の運送事業者の方たちがボルボの評価が高くなってきたこともあって、人を集めたいとか、プレミアム感のあるトラックを持ちたいとか、ボルボならではのニーズが高まって、だんだんと中古販売でお付き合いのなかったお客さんからも、お声がけをいただくようになりました。そういう流れはありますね。弊社は創業56年目の会社になりますが、そこからずっと付き合っていただいているお客様からも支持をいただきつつ、新たな購買層も増えてきました。

首都圏には排ガス規制の影響があった

___なるほど。ヨシノ自動車さんと似ていますね。

中西:スタートは一緒ですね。ただ地域性の違いがあったかもしれないです。ちょうど僕が入社した2003年は排ガス規制が始まった年だったので、中古トラックをそれまで買っていたお客さんたちが将来、どうなるかわからないということがあって新車を求め始めました。その時点でボルボのディーラーを始めて23年経っていたので、新車ニーズの波に乗って、弊社だけしか取り扱えない大型車であるボルボを積極的に販売していきました。ですから新車を持ちたいお客さんと接点を持つために、ボルボのお客さんが増えていきました。中古トラックのお客さんとはまた別の層ですね。そこは排ガス規制のアリナシという地域性があると思いますね。

___ そこは大きいですよね。今日、岡山駅で新幹線を降りて国道2号線を使って御社に向かっている時に、一番左をデコトラが走っていたんですね。まず東京では見ないですよ。すごく嬉しくなったのですが、やはり排ガス規制という地域性が関わっていますよね。もはや、それによって文化が違ってきている感さえあります。

中西:それは現在においても多少はあると思います。それこそ僕の子供の頃も含めてトラックは新車で買ったら10年以上使うのが当たり前でした。昔の代替えサイクルは12~3年だったと思います。今では7年ぐらいになっちゃっていますよね。その要因はなぜかと言ったら排ガス規制です。買い方も昔はローンを組んで、最初のローンを払っている間はプラス・マイナス・ゼロにして払い終わってから利益を出す。そんな昔ながらの発想もありました。今はリースだったり、金融商材としての運用と多岐にわたってきたので、スタート時から月次で利益が出るようなトラックの持ち方に変わってきました。そっちが当たり前になってきたので、必然的に「個人所有で大事に使う」というような環境ではなくなってきたんですよね。あくまでも設備財として使う。排ガス規制のかかる土地で運送業をされているお客さんほど、その傾向は強いなと思いますね。

___そうだとすると、中国地方のお客さんはトラックを所有して耐久消費財として使う感覚がまだまだ残っているのでしょうか。

應本:その辺が現在、境目ぐらいにあると言えるのではないでしょうか。僕らが車を販売させてもらっているやり方は、3年で車を買い替えてもらって残価は弊社で保証します。僕らも中古トラックとしてボルボが必要で、自分たちでメンテナンスしている中古トラックを置くことで、僕らが地域のプライスリーダーになれる狙いもありました。ですから積極的に「ボルボの中古トラックを置いていこう」と。ただしその商材を作らなければならないので仕切値で、最初はいすゞさんと競合していました。

ボルボの販売方法の変遷について

___そうなんですね。

應本:確実に2~300万円は差があったんですよ。ちなみにリースでも月次で1~2万円の差が出てきてしまいます。そこで我々としては残価をぐっと上げて、3年で代替えをしていただく販売方法を取りました。もっとくだけた話をすると「3年だったら壊れないだろう」と(笑)。 保証期間にもはまっているし 、地域柄、お客さん同士のつながりで壊れるという評判が立つのも嫌だったので、安心かつコストパフォーマンスの高さで「ボルボが乗れる」提案をさせていただきました。

___なるほど。

應本:その評判が意外と良くて、どんどん代替えを促進するような販売方法に変わってきました。そうなると自ずと中古車も市場に出てくるので、弊社でボルボブルーをつけた中古車をネットに出して、中古トラックとしてもビジネスとして成り立つようになりました。 ただそれはあくまでもボルボの商品力が上がってきたので、「そういう販売方法もとれるようになった」という感覚ですね。価格が上がってくるので、地方独特の買い方というか、買って償却を取り終えてから儲けだと考えている方もまだまだたくさんいらっしゃいます。

___そうでしょうね。

應本:ただ経営者の皆さまも代替わりでどんどん若返っているので、運賃に対して原価がどうかということを考えるお客さんも多くなってきました。「1台いくらです」ではなく、「1ヶ月いくらです」という出し方をする方が、経営者側からすると目に見えた数字になります。「この仕事だと利益はいくらだね」と可視化できるようになります。現在はそういった販売の仕方を「もっとしていこう」と考えています。ただこういったことを僕1人が旗を振っていても仕方がないのです。

___應本社長もセールスをかけられるのですね。

應本:だいぶ減らしました(笑)。社長業の片手間では「もう無理だ」と思いましてね。僕じゃないスタッフが知識を持って販売できれば、ということで、今日も上の階で 月1回のファイナンス・トレーニングを行っています。決算書の読み方から、どんな風にお客さんに提案するかとか、お客さんの現在の経営状況の見方だったり、社会問題のことだったり、要はコンサルティングがしっかりできるようにしたいんです。昔の売った買ったに終わらないところで、お客さんの懐に入り込まないとなかなか車1台を売るのも難しいだろうと思います。そういう時代になってきましたね。

なぜ研修という社員教育が必要なのか

___ その辺はヨシノ自動車も力を入れているところですよね。中西社長に前々から聞きたかったのですが、その社員教育の熱心さというのはどういった動機があるのでしょうか。土日の研修があったり合宿までされています。

中西:1回の研修ではなかなか急に変わることはなくて、研修と一言で言っても、ありとあらゆる研修をしているので、「本当にためになっているのかな?」と思う研修もいっぱいありますよ(笑)。10年ぐらいやっているとそんなもんです。ただアルフレッドでもメカの仕組みだったりメンテナンスだったり、整備の実務は当然、我々より経験値が高いわけです。でもポジションが上がっていくとファストエレファントを、どう事業展開していくかとか、普段のお客さんの接点の持ち方だったり、勉強していかないことは沢山あるんです。それを「ひとりでやれ」と言っても難しいので、研修でサポートしていきたいと考えています。とにかく「ずっと続けること」が大事だと思っています。

___追求していくんですね。もはや 20~30年前のトラック販売の営業とやっていることが違ってきているんですよね。営業といえば、昔は声がでかくてやたら明るくてみたいな印象がありました。

應本:20~30年前の営業って セカンドバッグを持って、みたいなイメージですよね(笑)。

___お客さんへのきめ細やかなお中元やお歳暮、顔出しも欠かさないというような(笑)。

中西:それも大事なんですよ(笑)。弊社の営業の社員教育はどうしているかと言うと、能力の底上げや財務の知識は並行して学んでいくけれども、それだけではなく、先ずは元気が一番(笑)。挨拶は大事。とにかく「これだけで良い」と言ってます。弊社には営業ノートというノートがあるんですよ。最初のプロローグを僕が書いているのですが、初めてのお客さんのところに行って、社長である僕でさえもそうですが、いきなり商品説明やプレゼンから入ったとして誰も聞いてません。社長の僕ですらそうなんだから、新人の皆さんはなおさらそんなことはできません。じゃあ聞いてくれるのはどういう人かというと、仲良くなると聞いてくれるんです。そんな風にすごく単純に言っていますよ。とはいえ、すぐ仲良くなるのも難しいから、まずは好印象を持ってもらえることが一番大事です。

___「元気に挨拶をしっかりしろ」ということですね。ちゃんと菓子折も持って行くとか。

中西:それが1年目です。3年目までは「それが必要かな」と思います。

應本:そうですね。営業の根っこはまったく変わらないと思いますよ。

中西:あとはとにかくレスポンスを早くすること。普通はそれが仕事の5Sと言いますが、 弊社は7S1Hなんです。「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」、「スピード」「シンプル」「ハウマッチ?」。これはどちらかというと営業目線が入ることなんですが、整理整頓なんかは現場だったらどこも変わらないことですよね。3年目以降からが本番だし、元気がないとそもそも営業には向いてないという話なのかもしれません。昔は運送事業も儲かっていたんです。だからどんぶり勘定でも通用したし、「現金1回でドーンと払うわ」っていうお客さんも多かったです。現在はその点から行くと、すごくシビアになってきたので、スタート時点から月次で利益が出せるような、運賃交渉をするとか、トラックの購入の仕方をしましょうと。

これから求められていく、コンサルティングとファイナンスの知識

___お客さんにアドバイスできなきゃいけないんですね。

中西:それがコンサルタントという仕事とマッチしてますよね。昔ながらの人とのつながりというベースはありながらも、次のステップは何かと言ったら、ファイナンスの知識だったり、そのための研修だったりが必要になってきます。トラックの馬力がいくつあってギア比がどうで燃費がどうだ、とかそういう情報も大事ですが、それ以上にファイナンスの知識の方があった方がいいです。それはお客さんがそういう情報を求めるからです。トラックの性能はネットを見れば書いてあります。YouTubeを見れば、 スカニアとボルボの違いなんかはいくらでも発信している YouTuber の方がいらっしゃいます。ただ実際のところ、会社の金融事情だったりお財布事情について社長は話さないんです。

___あってもいいのにと思います。中西社長が YouTuber となって解説するのはどうでしょう。

中西:(笑)。私の知っているところでは、その情報を得られるのは有料のセミナーだけなんです。

___そのセミナーの内容というのはトラックの残価の設定の仕方だったり、リースを使った場合の損益分岐点の見方だったり、とかそういうことでしょうか。

中西:そういう話もしますよね。ヨシノ自動車も全然それができてないですが、こういう話をするためには地頭の良さも必要になってきます。勉強それ自体のトレーニングができていないと頑張れない。逆に言うと勉強することが楽しいと感じられた経験のある人は、年齢を重ねても苦にならないどころか楽しいんですよ。弊社もそうですが、同業他社も含めてそういう人材はなかなかいないんですよ。「そこを求めたい」という気持ちはありますよね。弊社営業の最終的な目標は、本当にコンサルティングです。運送事業に特化した経営コンサルタントになることです。

___トラックを売ることはあくまでも手段なんですね。

中西:そうです。手段の1つです。目的ではなくて手段です。あくまでも物流の運送会社の経営課題は必ずあって、それをヒアリングします。それに対して、どう改善するかを、アドバイスする。その手段の中に、買うなり売るなり貸すなり直すなりという手段があるんですよ。そこに事業があるだけです。ここが1つの理想ですね。

お客さんを「勝ち組」に導きたい

應本:現在、実施しているファイナンスのセミナーも、お金の話だけではないんです。運送業者は物を運ぶだけと思われがちですが、工場を建ててピッキングも含めて全部やるような総合的なところまで請け負うことが出来ます。そうやって包括的に扱うことで荷主も手放せない協力会社となる。ただそこに対して「すごい設備投資が必要になってくるけれども、どうでしょうか?」という選択を経営者に聞けて、例えば工場の内部で何をするのかとか、それに対して「我々にできることは何があるのか」というところまで聞いてきて欲しい。「そのヒントをもらって来なさい」と。

___お客さんの内情を理解することで、お手伝いすることを探すんですね。

應本:はい。つまり現在、お付き合いをさせていただいているお客さんたちを「勝ち組」に導けるようなお手伝いができるようになるために、勉強しているんです。もちろん今日1日ですべてが頭に入るわけではないし、彼らは明日また営業に出て行きますが、今日勉強をしたことが「ちょっと聞けました」とか、「踏み込んだ話ができた」という報告を、最近日報から受けることが増えてきたんです。実行しようとはしていて、それが結果になりつつある。 本人たちにとっては非常に大きいかなと思います。

中西:それは「いいな」と思いますね。

___なるほど。

應本:知識ばかりあっても、嫌われたら意味がないんですよね。弊社の経営理念に「感謝」「感性」「感動」「感心」「共感」で『五感』という精神があって、どんな時代でも人が持っている心の部分を大切にしようという精神です。相手の考えていることに共感したり、感謝したり、入り口として、そこがないとどれだけ知識を持っていたとしても意味がないんです。

___たしかに。

應本:あくまでも対人間の仕事ですからね。弊社としてはこの地元を飛び越えて、どんどん全国展開したいというような気持ちは、僕自身あまり持っていないんです。いかにこの地元で根づいて、弊社の営業や社員が人間としてどれだけ付加価値をつけて、お客さんに気に入ってもらえるか。協力会社さんにも引き続き、お取引していただけるか。そういうところを大切にしていかなければいけない。ただその反面でトラックの価格は年々上がっていくので、普通の売り方だと買ってはもらえないですよね。

お客さんの≪枠≫を知ること

中西:本当にそうですね。現実は簡単じゃなくて、僕が入社した20年前ぐらいは付き合いだけでトラックが売れた時代だったんですよ。排ガス規制の間は、右肩上がりでトラックが売れ続けました。その理由は中古トラックを扱いながらも、新車も扱っていたんですよね。そして新車に対してリースをつけたというのが、業界でもかなり早い方だったんですよ。当時、銀行から出向してきた人が先にお客さんから決算書をもらってきたり、枠(融資枠)を先に作っちゃうんですね。

___それが出来るのは大きいですね。

中西:その方はすでに10年以上前からやっていました。3000万とか4000万とか枠がわかるから、どの程度までトラックが買えるかが分かってしまう。もともと銀行でも法人営業をやっていた方だったので、客先に行ってもトラックの話より財務の話から入るんですよね。「僕は長年そういう仕事をしてきたので見れますよ」と、その場で決算書を見ちゃう。 そうやって実績をつけていって、大型免許も持ってないし、トラックの知識もないのに、当時一番トラックを売ってました。

___いやー、それは売れちゃいますよ。ロールプレイングゲームで言えば、戦士なのに回復魔法が使えるみたいな特殊属性ですよ。

應本:今だと、すぐリース会社さんに相談しちゃうんです。どこどこのユーザーさんに来てるんだけど枠が取れるでしょうか、と。その枠を聞いてからお客さんに話を聞きに行かないと、中古トラックは1点ものなので「じゃあ買おう」となった時に手元にない時もあるんです。本当に最近は 営業に行くとお客さんから「 枠ある?」と聞かれるケースが増えてきました。その時点で「大丈夫ですよ」と言えなきゃいけない。

___無駄がないですね。

應本:弊社はまず事故物件がないんですよ。リース会社さんからすると仕入れ元が弊社だと、ルーティンでの安心感と信用力があるから「キャリオンだったらどうにかしてくれるだろう」と思っていただけている。まかり間違って事故があったとしても、営業や会社に迷惑をかけないフォローはしてくれるだろう、と。 そこでひとつ踏み込んでお仕事をさせていただいているのと、お客さんからファーストコールで弊社に電話をいただくことが出来ます。そこが弊社の強みなんですよね。

「ファーストコールカンパニー」になるために

___なるほど。

應本:お客さんのためにどれだけ汗をかいているか、どれだけの数のリース会社に当たるか。リース会社は最終的に1社だけ通ればいいんですけど、相見積もりを取るのでお客さんにより条件のいいところを選んでいただきたい。「そこでこっちの方がいいですよ」とご提案させていただきつつ、我々が汗をかいているのをお客さんも知っているので提案を信頼していただける。我々は、このファーストコールが欲しいんです。セカンドコール、サードコールだとどうしても出遅れてしまいます。 だからこそ「ファーストコールカンパニー」になりたいんです。

___なるほど。いいキャッチフレーズですね。営業も踏み込んでいくとファイナンスの話は大事ですね。ただあまりその財務面が強調されだすと、ちょっとトラックが不動産屋の物件っぽくなってきちゃうんですよね。

應本:そうやって胡散くさく見えちゃうのは嫌なんですよね。

中西:トラックはある面で金融商品になっちゃってるから、あまりその色が強すぎちゃうのも良くないなと僕も思うんですよ。

應本:トラックの強みとしては 、中古トラックとしても再販できて販売力があるというのが、ヨシノ自動車さんも我々にとっても「強みになるのかな」と思っています。金融商品としてだけ扱うこともいくらでもできるんですが、出口をどこに持ってくるのか分かっていないとか、できなくて困っている会社さんとかも沢山ありますよね。

中西:あらためて整備もそうですけど、自分たちで直せること。そこで価値を上げることが出来るんですよ。このことは、これまでずっとやってきた会社の歴史ですが、そこをなおざりにはできないですよね。

中古ボルボで地域差が出てくる!?

___実業の部分ですよね。さてここからはボルボディーラーとして共通の悩みであるかもしれない「中古ボルボが売れない問題」です。キャリオンさんはどうでしょう?

應本:(笑)。弊社は逆に中古ボルボが売れているんです。

中西:弊社も最近は売れていますよ。売れないのは10年前のモデルとかですね。

應本:10年前のボルボになったら、僕らは買わないし触らないようにしています。

アルフレッド:中古ボルボを売りたくない問題じゃないでしょうか? そして売られたくない問題かな(笑)。

應本:(笑)。オークションで中古のボルボを買ってしまうと、相場より200万ぐらい安く買えるんだけれども、持って帰ってちゃんと整備して走れるような状態にして市場に出そうとすると、やっぱり200万ぐらいかかるんです。ですから自社でしっかりメンテナンスした車で、そんなに年式の古くない車を扱う方がお客さんも安心して乗れるだろうと思うし、アルフレッドさんの言うように「売って欲しくはない」とは言わないでしょう。出す方としても出す前にしっかり整備するし、ディーラーじゃないとできないことですよね。

___たしかに。

應本:同業者さんがただネットで売り買いしているだけだと、それができないので、やっぱり僕らの強みですよね。どんな風に車を使っていたか、という情報もデータとして残っています。そこがディーラーの中古車という付加価値になるかと思います。それで売れないということはあまりないんですよね。

___逆に中国地方だと、中古ボルボは売れやすいんですかね。

中西:市場もあるかもしれないけれど、2018年以降のモデルの中古ボルボは弊社でも大人気なんですよ。2018年以降だと5年ぐらい経つから、リース終了したモデルが出てくるんです。2014年から顔は変わっていないんですが、2018年からマイナーチェンジの影響があって明らかに壊れなくなりました。2014年からも壊れにくくはなったんですが、さらに2018年は壊れにくくなった。再販した後もトラブルがないですし、むしろ「欲しい」というお客さんも多いです。我々はもともとネットに力を入れているから、「新車高いよな」でも「いい中古があるんだったらそっちでもいいや」というようなニーズはすごく多いんです。

中古ボルボの信頼度は2014年と2018年に大きく変わる

___なるほど。

中西:だから今、リースアップで5年目を迎えるお客さんは、1年前から準備したり、満期を迎える前に新しい車に引き継げれば、こちらとしても色々対処の方法が広がってくるんです。その車がより再販しやすくなるんです。そんな事情もあって去年、一昨年ぐらいからニーズが出てきました。2014年から壊れにくくなったものの、2014~15年ぐらいは個体差があって酷いのになると大きな損害を出しました 。

アルフレッド: 2014年と2018年にモデルが変わって、エンジンの中身も変わってるんですよ。面白いのは 2014年で多かった故障が2018年には一切ないんです。ちゃんと対策されてるんです。だからこそ人気も出ます。ターボとかも全然、壊れないんですよ。

___ちなみに 2014年モデルの欠陥はどんな感じだったんですか。

アルフレッド:まずインジェクター、 ターボ、 尿素、 水漏れ、 あとウォーターポンプかな。外見が変わり、中身はしっかり対策されているので大丈夫なんですが、また新しいエンジンになるとちょっと怖いですね(笑)。

___應本社長が「手をつけません」とおっしゃったのは何年モデルぐらいなんですか。

應本:2014年以前のモデルですね。

___買っていただいたお客さんが持ってきたらどうするんでしょうか。

應本:それは買いますけど、我々としてもちゃんと働けない可能性のある中途半端な車をお客さんに渡したくはないんです。やっぱり信頼関係を一番大事にしたい。極力、そうじゃないものを選びながら、売ったその後が心配というトラックはむしろオークションで売っちゃおうかとか、部品取りして再利用の道を選ぶとかになりますね。

中西:故障が出る中古ボルボも直しているんですよ。最低100万円ぐらいかけて直しています。それにも関わらず、半年ぐらいで故障が出てきちゃう。個体差がどうしても出てきちゃう。2014年から18年までのモデルの中古ボルボを買い取って販売しましたけど、あまりにも故障がひどい個体があって、乗り付けてきて置いていったお客さんもいました。

___「いらねえ。こんなの」ってことですね(笑)。

中西:そう。いらねぇって。笑えないですよ(笑)。

アルフレッド:そういうときは、ちゃんと 鍵をつけていってくれないと(笑)。

高騰するボルボをいかに販売するか?

應本: ボルボの新車はこれから価格が下がることは絶対にないので、新車は難しいけど「試しに乗ってみたい」というお客さんの中には「中古を試したい」というお客さんもいらっしゃいます。2024年問題もあって、新車でいきなりトレーラーを入れるのはハードルが高いから、「一度中古で入れてみたい」と考えると、せっかくだから「ボルボを」という話も出てきます。これからさらに中古ボルボはフォーカスされてくるんじゃないかと思います。もっと(ニーズが)きて欲しいな、と思っています。

中西:特にこの2024年から来年、再来年と、5年以内の高年式中古ボルボは、もっともっと価値が上がると思います。今後は欧米諸国の物価高が、日本のボルボの価格にも反映されるはずなんです。日本もデフレ脱却と物価指数が2%を超えてきましたが、実力で物価が上がってきたわけじゃないんですよね。不可抗力で上がってきちゃってるだけなんですよ。やっぱり欧米のインフレには追いつけていない。

___なるほど。そこ是非お伺いしたいのですが、商品であるボルボの価格が上がると売りづらくなりますね。ボルボディーラーであるお二方の今後の対策をお伺いしたいです。

中西:去年、一昨年ぐらいまでの価格の高騰は現状のやり方でも対応できていました。まずリースを5年だったのを、6年とか7年に見直します。ただボルボブルー(5年間保証)の問題があるので、それをどうにか6〜7年にして欲しいとボルボ・ジャパンに要請しているところです。それができると「対応できるかな」と思いますね。ボルボブルーが3年しかない時代にヨシノ自動車はリースと合わせて、追加で2年間、ヨシノブルーという保証をつけてリースを組んでいました。そうすることで月額リース料が現状とそんなに変わらなくなってきます。

___なるほど。

中西:あくまでも希望的観測ですが、新車がこれだけ値段が上がっている以上、中古トラックの価格も上がってきています。僕からすればもともとが安すぎたから、「やっと正常に戻ってきた」という印象なんですよ。その傾向が強まることが、分かっている以上もうすでにボルボのリース料の残価は上がってきています。ですから今できることとしては、新車のリース期間を伸ばすことと、ここ数年で残価設定は上がってきていましたが、さらに高くしていくことです。それによってお客さんの月額の負担料は、それほど変わらないようにしていきたいですね。

残価を高く設定し、“腹をくくる”

___元が高いから残価が高くなるのは道理ですよね。勇気のいる決断だと思います。

中西:それと、来年以降は日本の実質的な賃金の向上と、もうちょっと景気が上がってくれたら、というところにも期待をするしかないんですよね。運送業界としては単純にもっと運賃が上がることです。そこは希望的観測でしかないんですが。

應本:残価の部分は僕らが「どれだけ腹をくくるか」ということにかかっていると思うんです。ボルボは高い車です。ボルボを入れたことによって事業が傾いたとか、評判が悪くなったとかでは我々のためにはならないんです。ボルボを入れたことによって、人が集まった、仕事が入った、儲かったという形に持って行きたいです。

___確かにそうですね。

應本:お客さんとはただ1回の商売で売った買ったのお付き合いではないので、今後もずっと続いていく関係と考えた時に、中西社長がおっしゃったように、月額のベースが変わらないように、お互いに調整しながらやっていく他ないですね。出口のところは、僕らもプロなので残価を高く設定して販売していきます。そこをしっかり考えていけば、価格が高くなったとしてもボルボのビジネスは今後もうまくいくのかなと思います。お客さんにメリットを感じてもらえる形にできると思います。

中西:我々、ディーラーからするとどんな状況でも上手い出口はあるはずなので、新車を売るための手法としてはいま言ったようなことをやるんだけれど、来年以降はさらに厳しくなる可能性があります。その時の日本全体の市場環境もありますからね。物流自体はリーマンもコロナもそうでしたが、そこに人が生活している以上、ある一定の物量というのは必ず発生するので、需要は絶対あるわけです。

中古ボルボを架装する文化を創っていきたい

應本:中古トラックをファストエレファントで架装したことはあるのでしょうか?

アルフレッド:中古トラックはないですね。ただファストエレファント・プロデュースで2014年モデルを架装する話はいただいているので、実現すればそれが最初になるかもしれないです。その会社さんは2014年モデルをたくさん持っているので、架装してイベントに出したいみたいですよ。

應本:これからはその傾向も強くなってくるんじゃないでしょうか。

___確かに。

アルフレッド:そこは地域差があるかなと思います。

中西:結局、我々が売った車だと架装した車が中古となって戻ってくるのであまり手の施しようがないんですよね(笑)。

應本:逆に我々は新車の販売はノーマルばかりなんですよ。架装していない状態なので、中古トラックの架装は今後、ニーズが出てきそうですね。

アルフレッド:我々も2014年モデルからカスタムを始めているんです。それで戻ってきた車をカスタムしちゃうとカスタム&カスタムになっちゃいますね(笑)。

___ そこは最新のパーツでまたカスタムし直せますよ。應本社長のお話にはヒントがあって、中古ボルボに新たな付加価値をつけるという意味で、カスタムをして販売する、というアイデアはすごく良いですね。

アルフレッド:そうですね。ドアミラーをユーロミラーに変えたり、サイドバンパーだったりエアロもどんどん良くなってるんで、新しく変えて行くのは良いですね。

中西:かつてはファストエレファントのカスタムといえば、一台あたり2〜300万ぐらいが相場でした。現在は5〜600万ぐらいなので「カスタムがなければ新車を買えないということはないんだよな」と(笑)。

___たしかに。

中西:マイナスの方向で考えれば、今後はファストエレファントで扱っている架装のボリュームがちょっと減る傾向にはなると思うんですが、ボルボの特徴というのはドライバーファーストであり、カスタムをして他とは違う車両にしたいというニーズに応える車だと思うので、もしかしたら中古トラックの架装が来年以降、主流になってくるかもしれないですね。

アルフレッド:その時はキャリオンさんからド・ノーマルの中古ボルボを買いましょう(笑)。ここはキャリオンさんとの秘密協定ということで。

___いいですね。紳士協定ですね(笑)。

應本:そこに可能性はありそうですね。我々のお客さんは1台持ちじゃないユーザーさんが多いんです。1台架装してしまうと、すべての車を架装しなければいけなくなってしまう。そういうプレッシャーがあるんです。ですから、もう最初から架装はしないという会社さんが多い。それと架装をしなくたって国産じゃなくて、ボルボに乗れるというところでドライバーさんも満足していただけているようなんです。車を巡ってドライバー同士の仲が悪くなるのも良くないですよね。

中西:弊社のボルボのお客さんは持ち込みのドライバーさんが原点ですからね。個人事業主さんがほとんどだったから、現時点でも会社全体で購入されるお客さんは比率的に大きくはないんですよ。

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