トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第93回
「“みんなのトラックフェス2024 in北海道”でイケてるユーロスタイルを厳選してみた!」
「“みんなのトラックフェス2024 in北海道”でイケてるユーロスタイルを厳選してみた!」
トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第93回
「“みんなのトラックフェス2024 in北海道”でイケてるユーロスタイルを厳選してみた!」
「“みんなのトラックフェス2024 in北海道”でイケてるユーロスタイルを厳選してみた!」
「“みんなのトラックフェス2024 in北海道”でイケてるユーロスタイルを厳選してみた!」
今月の鍵人訪問記は、北海道千歳市で行われた「みんなのトラックフェス2024 in北海道 」の模様をお送りいたします。すでに恒例になりつつあるユーロトラックの祭典ですが、今回はヨシノ自動車社長の中西とファストエレファント・ディレクター、アルフレッドによる厳選ラインナップを紹介していきます。お客さん目線とは違う、プロファッショナル目線でカスタムを選ぶと、どんな車が選ばれるのでしょうか? おもわず派手な見た目とは裏腹の、シブい架装に目がいきます。
編集・青木雄介
WEB・genre inc.
まず中西が選ぶ1台。オープニングを飾るのはファストエレファントの「KUNIO」です。手前みそで申し訳ありませんなFE案件ですが、ここまでカスタムと実用性を突きつめた1台は他にありません。機能がそのままカスタム要素になることで、トラックらしいハイエンド性が突きつめられています。
中西:今年のトラックショー向けに造ったファストエレファント渾身の作品です。三晃自動車の 国男さんとは2年前のトラックショーでお会いしました。当時、我々が出展していたトラックに対して「恰好いいけど嫉妬した」と言われた出会いから始まって(笑)、「次回はファストエレファントと組んで1台造りたい」という約束の通り、造りあげました。弊社としてはデザイン重視で、その時に我々が一番恰好いいと思うデザインを造ってきましたが、三晃さんはもともと架装業者さんとして、実用性を得意としているところなので、そこが上手く融合してコラボになった1台です。特に後ろのスペースに注目して欲しいですね。通常では扉なんかも、アルミやステンレスで作っちゃうところをレッカーでよく使っているシャッタータイプに変えているのが面白い。それと総輪エアサスで限界まで車高を下げることができるのも良いですね。
アルフレッド推薦の1台はこちらのプロフィアカスタム。北海道の大三運輸さんのプロフィアです。フォグとバーをきっちり配置し、全体的に塊感を感じさせるコーディネート。国産なのに欧州トラックにしか見えない、驚きの完成度でした。
アルフレッド:地元・北海道のトラックですね。国産のユーロスタイルという点を評価したくて選びました。そもそもプロフィアのデザイン性がすごく良いのもありますが、「ここまでよく仕上げたな」と感心しました。顔だけで言ったらボルボやスカニアに負けない迫力がありますよね。欧州車と較べちゃうと、やっぱりベッドが小さい分、「物足りないかな」となってしまうものの、グリルのところのメッキをうまく生かしていたり、フォグランプをつける場所や、バイザーの付け方もセンスが良いです。本当にユーロらしさを醸し出していると思います。ミラーもユーロミラーにしていますね。これは日野の海外オプションのミラーなんですよね。そうそう。ここに注目してください。このダートリフレクターはボルボのパーツを使っています。パイプ 1つとってもポン付けじゃないんですよ。ボルボやスカニアにはそのまま使えるようになってるけど、国産につける場合は ブラケットから作り直しているんです。その手間も評価したいと思います。
大三運輸株式会社
http://daisanunyu.co.jp/
中西が推したい2台目はスカニアです。中京の株式会社大伸さんの1台。真っ赤なイメージカラーに手堅いユーロカスタムが印象的なトラックです。
中西:この車は新しい車ということになるのかな。大伸さんは前回も出展してましたが、 完全にユーロそのままです。本当にご当地のスタイルを忠実に再現していて、現地車両と見分けがつきませんね。ほら、このマフラーも本物です。真っ黒になっていますよ。飾りじゃないですね。大伸さんは重機の回送とかもやっているし、基本的にCARZさんが造っていたのかな。ド・ユーロで紹介するならこの1台ですね
株式会社大伸
https://daishin.me/
アルフレッドおすすめの2台目は岡山県の内海商運さんのスカニアです。圧巻は内装で、アルカンターラやカーボンパーツを散りばめ、欧州の高級スポーツカーの方向性で仕上げています。
アルフレッド:ここもセオリーに忠実に作っています。このクルマは内装を全部やっているんです。その完成度がやばいんですよ。内装はヨーロッパの高級車路線で、AMGやアウディのRSとかの方向性を、あえてトラックっぽくなくやっています。いかにもトラック的な内装ではなくて、あらゆる場所にステッチを入れていたりしていて、こだわりが素晴らしいです。向こうのトラックショーに出ていても、おかしくないレベルだと思いますね
ドライバーの井上さん:若いやつとか車好きが見て「これかっこいいな」と思ってくれるようなトラックを作りたいと思っています。この車は乗っていて最高なので他には乗りたくないですね。以前はボルボにも乗っていたんですが、やっぱりスカニアが好きです。理由としては重量物を牽いていても加速がとてもスムーズなんです。スカニアはキャブサスの制御が良かったりするのだと思うんですが、 本当にカクンとならないんですよ
有限会社 内海商運
https://utsumi-syoun.com/
まだまだ紹介したいというアルフレッドのお代わり、いきましょう!まずは北海道のカムイ・トランスストレージさんのスカニアです。
アルフレッド:サイドバンパーがぼってりしすぎているかなという気もするけど、統一感が素晴らしいですよ。走っていたら目立ちますよね。トランスさんの車はいつもロゴとか入れているんだけど、この車は一切入れてなくて、全部ワンオフで造り込んでいますね。個人的にこのクリームっぽい色が大好きなんです。配色も「センスがいいな」と思っていて、足元のオレンジ色のブラックウルフも良いと思うし、ライトフィックスも良いですね。やっぱりカムイさんの車はどれも好きかな
やはり最後は自社車両(笑)。出展車両の前に来ると熱い思いがほとばしってきました。
アルフレッド:正直なところ、ウチ(FE)の車を絶賛したいところではあるんだけど フェアじゃないですよね (笑)。そう言いながらも紹介しちゃおうか(笑)。この蕪島さんの500番台が大好きなんですよ。600番台は派手なんだけど、 500番台は落ち着いてるでしょ!? 色合いも合わせてきているし、極太の煙突マフラーも“太ければ太いほど良い”という感覚で造りました。やっぱりこうやってフェスティバルで見ると「良いトラックを造ったな」と思いますね
今回のトラックフェスでは株式会社KWDの宇山さんもブースに立たれていました。パーツの草の根展開に頭が下がりますね。ここでライトを見つけたお客さんがショップにオーダーというパターンも多いそうです。
宇山:結構、出展していますよ。僕らのメインは OEM なのでいすゞさんや、日野さん、建機メーカーとか、そちらに量産品を納品しています。 一方でこういった飾り系のパーツもあるのでアピールをしたい。エンドユーザーさんが集まるところで「うちはこういうこともやっていますよ」と提案することで広がる世界もあるんです。ここで直接に販売することはなくともヨシノさんやセノプロさんから「買えますよ」と。新製品を皆様に、「早く見て欲しい」いというところでちょうどいい。あとは簡単に取り付けられるAIカメラやスライド カプラーなんかも展示しています。ごく一部ですけれどね。
https://www.yoshino-motor.co.jp/keyman/84/
最後はカスタムトラックのイベントとはいえ、やっぱり気になる新型車。ということで、中西は新しいスーパーグレートを推しました。確かにカスタムするとかなり新しいスタイルが誕生しそうな顔ですね。
中西:中とかはそんなに変わってないんですが、顔はよりベンツっぽくなりましたよね。 実は個人的に好きな顔なんです。片方で、この顔を「安っぽい」という人もいると思うんです。今後は外装パーツも色々出てくるので、ベースとして考えると悪くないんじゃないかな。でも本当に何で顔を変えちゃったんでしょうね。今回のモデルチェンジは安全装置を法規に乗っ取ってつけているという印象ですね
2024年問題の年として、4月に働き方改革法案が施行されて半年が過ぎました。その実態はあまり報道されていませんが、運送業界にとって厳しい環境になっているのは間違いなさそうです。
中西:足元の統計としては 2024年の1月から6月で運送を事業者さんの倒産件数はリーマンショック以降 2番目に多い件数になっています。それに付随しているのかは分からないのですが、整備事業者も倒産件数が2番目に多くなっているんです。どちらもリーマンショックが一番大きかったにしろ、大きな衝撃が広がっているということです。まず整備事業者は我々も同業なので事情は分かります。人材不足ですよね。乗用車整備もふくめて整備業界全体で自主廃業みたいなところが多いですね。
―――――運送会社はどうでしょうか?
中西:運送事業者さんも半分はそうです。ドライバーさんが集まらないから自主廃業のような運送会社さんもあるし、昨今の燃料高騰だったり車両代の高騰だったりで、経費を圧迫されることによって採算が合わなくなってしまう。だからドライバーがやめちゃうと全体の売上も下がってしまって、にっちもさっちも行かなくなって倒産してしまう。そういう悪循環があるのも確かですね。このご時世、これからも燃料代が安くなることは考えにくいので、企業の体力勝負というか我慢のときですね。
―――そもそも、この1年 2年を 踏ん張れば「どうにかなる」という話なのでしょうか?
中西:資本力のない会社がどんどん撤退していっても、その仕事自体がなくなっているわけではないので、仕事それ自体はいつもオーバーフローしている状態なんです。そこである程度、仕事を受けられるところが価格をコントロールするようになっていきます。今までデフレで値段が下がっていたものが、値付けにおいて運送事業者さんに優位性があるわけです。
――――なるほど。
中西:同じ現象がヨシノ自動車にもあって、川崎の周辺はメーカーのディーラー工場以外で、大型トラックが入れられるのは弊社とあと数社ぐらいしかないんです。基本的にどこもキャパオーバーです。弊社もサービス向上の一環も含めて、11月1日より値段を上げることにしました。去年に引き続き2度目の値上げなのですが、それでも売り上げが落ちるわけではなく、入庫台数も減りません。弊社としては単価が上がった分だけ、売上が上がるということになります。それによって雇用維持もできるし、今後の設備投資もできるわけです。その分、お客様へより高い サービスを提供することができます。
―――なるほど。この苦境をしのげば先が広がるんですね。
中西:そうですね。周りが淘汰されていく分だけ、我々としては強みが出せていると言えるかもしれませんね。さらに市場経済が全体的に上がってくればいいのですが、いまのところ日本の経済は円安という、外的要因に左右されていますよね。日本だけが頑張ればいいというものでもない。そこはどうしようもないところなので。
―――そうですね。まずはこの物価高に対して賃金が追いついて、追い越せればいいんですけどね。それにしても倒産件数がリーマンショック以来の数というのはかなりショックでした。
中西:運送会社さんと話をしてると「仕事はあるんだよね」という話をよく聞きます。本当に「仕事がある」ということは、トラックを導入してドライバーを雇用して、そこから収益が生み出せる運賃をもらってこそ「仕事がある」ということだと思うんです。ただ大半はそうじゃなくて、紐解いてみると採算の合わない仕事がほとんどだったりするんですよ。
―――それですね。1990年代の規制緩和から始まった、「ある仕事は何でも取れ」っていう一番悪いデフレマインドですよね。
中西:そうですね。ごく一部だけど、まだそのマインドが残ってしまっているというのが残念なんですよね。
―――結局のところ、そのマインドだとドライバーを含め、社員は幸せになれないんですよね。勇気をだして賃金交渉というか(笑)。このイベントもそうですけど、良いドライバーを確保するということは、社長が社員に幸せをしっかりと感じさせ続けていかなければいけない、ということなんですよね。
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