トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第94回
株式会社 オートサービスヤマグチ 代表取締役 山口幸将様
株式会社 オートサービスヤマグチ 代表取締役 山口幸将様
トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第94回
株式会社 オートサービスヤマグチ 代表取締役 山口幸将様
株式会社 オートサービスヤマグチ 代表取締役 山口幸将様
「その名も“山口モーターシステム”!? 電動ダンプトレーラーを人口6000人の町から届けたい」
今月の鍵人訪問記は、北海道の広尾郡広尾町でボルボサービスディーラーを営まれている株式会社オートサービスヤマグチの代表・山口幸将様にご登場いただきました。先日のトラックショーで出展されていた、電動ダンプトレーラーの紹介とともに今後の販売戦略の意気込みなどを伺っていきます。また北海道は欧州製トラックのホットスポットです。「北海道から本州へ」とユーロトラックカルチャーを還流させるべく、山口さんの夢は広がります。6000人の北海道の町から、全国に広がるムーブメントを起こせるでしょうか?ぜひご覧ください。
編集・青木雄介
WEB・genre inc.
山口幸将(やまぐち こうすけ)様
株式会社オートサービスヤマグチ 代表取締役社長。1982年 北海道帯広市生まれ。2001年 東北海道日野自動車株式会社に入社。2012年 株式会社オートサービスヤマグチ入社。2019年
株式会社オートサービスヤマグチ専務取締役に就任。2022年 株式会社オートサービスヤマグチ代表取締役社長に就任。現在に至る。
ーーー 電動ダンプのトレーラーを考案されたきっかけは何だったんでしょうか。
山口:ダンプは油圧が主流ですがPTOが必要です。そこでドライバーが不足する2024年問題もあり、誰でも引っ張れるトレーラーを造りたいと考えました。それが最初のコンセプトでした。たまたま名古屋に行った時に砂利をホッパーで降ろされていました。運転手さんがモニターを見ながら降ろしていて「電動にしてリモコンで動かして、見ながら降ろせたらいいよね」と思ったんです。そこから電動のダンプトレーラーに行き着きました。PTO がなくてモーターでダンプアップするのが斬新だし、海外製トレーラーも電動化が進んでいる中で「面白いかな」と思いました。
ーーー PTO がなくても使えるダンプシャーシが欲しかったということですね。
山口:本当にただそれが造りたかっただけなんですよ(笑)。
ーーーやはりトラクタにPTO を追加架装すると高いのでしょうか。
中西:高いですね。トラクタ側にPTOがついてないとダンプトレーラーは引っ張れません。トラクタとトレーラーの架装はセットになっているので、替えが効きません。山口社長の話もそうですが、現在さかんに議論されている通り、輸送効率を上げるのが課題になっていますよね。2024年問題もあって労働時間を短縮しなければいけない。そうなってくると、同じトラクタでもいろんなトレーラーを引っ張れるようなトラクタがいいですよね。PTO がついていると他のトレーラーを引っ張れなかったりもします。それであればトレーラー側を電動化することによって、どんなトラクタでも牽けるようにする方が合理的ですよね。
ーーー 分かりました。ありがとうございます。これって北海道特有の事情もあったりするのでしょうか。
山口:北海道はこういうテレスコ式(多段チューブ型シリンダー)のダンプというのは浸透率が低いんです。本州にお邪魔した時に「こっちの方がいいな」とは思っていたんです。 我々はケスボーラーを販売していた時代があったんですが、当時の北海道にはちょっと早かったんですよね。砂利の降ろし場なんかも10トンダンプ仕様になっているので、トレーラーだと回せないんですよ。
ーーー なるほど。現場でトレーラーが入ってくることが想定されていないんですね。
山口:そうなんです。でも本州ではダンプトレーラーが普通になりつつありますよね。それであれば本州で販売するために「ダンプトレーラーを造りたいな」と思ったんですよね。
ーーー なるほど。
山口:電気で動くというのも「美しいかな」と思ったんです。非常に今どきというか。
中西:そうですね。
ーーーそこでヨシノ自動車が入ってくるわけですね。
アルフレッド:そう。そんなダンプトレーラーを本州でも販売したい。もともとオートサービスヤマグチさんは「ファストエレファントの商品を扱いたい」ということで繋がりました。
ーーー社長はもともと山口さんのことは知っていたんですよね?
中西:そうなんです。山口さんはボルボのサービスディーラーですから。だからこそ面白いのですが、山口さんはもともとエンジニアなんですよ。開発としてももともと経験があるんです。お客さんから「こういう仕様を造って欲しい」とかリクエストがあった時に対応されていたんです。母体は整備工場からスタートして、特殊な架装もやるし、営業力もあるから車も販売できる。
アルフレッド:それで「ファストエレファントの商品を販売したい」ということになって、話をしたらお互い整備士同士で気があったんですよね。実はこういうの造っているんだよ、と。そういえば「去年のトラックフェスに滑り込みで出店されていましたよね?」という話になりました。それが電動ダンプでした。うちのお客さんの浅井建材さんの方で第1号車をご購入いただきました。その評判がすごく良くて、この時代に合う電気ダンプトレーラーですよ、と。これを本州で売るためのつながりと、アフターサービスができるところを紹介しつつ、ヨシノ自動車でも販売させてもらうことになりました。それもファストエレファントから販売することで、どこで架装するとかを我々でコーディネートしていく予定です。
ーーーその1号機になるのでしょうか。仕上がりはどうでしょうか。
アルフレッド:毎度おなじみ岡山熔接所さんで組んでもらったんですが、やはりレベルが高いのですぐ出来ちゃいましたね(笑)。見栄えもいいし後付けのシステムの割には、最初からそういう製品であるかのような完成度になりましたね。さらにファストエレファント的におしゃれなボックスを用意したりもしたいんですが、その辺は今後、請うご期待という感じかな。
ーーー 関東をはじめとした 本州ではヨシノ自動車が販売するということですね。
中西:そうですね。
ーーー 期待できますね。いま一度製品の詳細ですけれど、これは PTOと電動と両方使えるタイプですよね。
アルフレッド:そうです。
中西:売りはもちろん電気なんですけど、設備財として実用性がないと意味がないので万が一、壊れた場合にモーターが壊れた、ポンプが壊れたといった時でも、油圧の配管はそのまま残してあるのでどちらかで対応できるようになっています。
アルフレッド:ベースが PTO付きのシャーシを使っています。配管を増やして切替レバーを付けて、PTO で行く時はそのレバーを使って切り替えます。PTOを使わない時は電動で上がるようになっています。当分は電動化1本で行く予定はありません。あくまでもどんなトラックでも牽けるようにしておいて、まず普通にPTO付きのトレーラーを持っている会社さんに入れて欲しいなとおもいます。
ーーーベースはどこの製品ですか。
アルフレッド:極東開発さんです。
山口:後ろにもちゃんと極東開発さんのステッカーも貼ってありますよ。
ーーー そうですね。万が一、どちらかが使えないとしても他の手段があるというのはいいですね。
アルフレッド:付け加えるとするならば、極東開発は日本の会社なのでいろんなことに対応できるんですよ。例えばアフターサービスでも極東開発の取り扱い店であれば扱ってもらえるんです。
ーーー なるほど。もしかしてですが、これまで使っていた油圧式のダンプトレーラーに後付けで「電動モーターをつけて欲しい」というリクエストも実現可能なんでしょうか。
山口:可能ですね。
アルフレッド:このトレーラーの旨みというのは、2台目や3台目を買った時に電源を引けるようにするだけでそのまま使えるんです。
ーーー それはどういう意味でしょうか?
アルフレッド:つまり「もうPTOは必要ない」ということです。PTOは200万ぐらいしますよね。でもPTO のついたトラックを買う必要がなくなっちゃうんですね。
ーーー そうですね。
アルフレッド:30万円程度の電源ケーブルを引けばいいんです。それで節約できますよね。1台目のダンプトレーラーは設備投資で高くなっちゃうけど、その後は「安いよ」ということです。
ーーー これまでトレーラー専門でやってきた会社が「ダンプもやりたいんだよね」となった時にすごく有効的ですよね。あとダンプアップする力がモーターだから強いとか、そういうこともあったりするのでしょうか。
アルフレッド:力は油圧と同じぐらいだと思います。モーターだと近未来的ではありますよ。
山口:例えばヨーロッパは電気自動車を始め、トラックも電動化されつつありますよね。トラクターヘッドの電力が大きければ大きいほど、後ろもそれに伴って電動化する価値はあると思うんです。この先を見せているのであれば絶対に良い買い物になると思うんです。
アルフレッド:現在は24Vの2つのバッテリーから電力を取っています。これが電気トラックであれば容量は大きいし供給できる電力も大きいので、力も大きくなりますよね。
山口:これからもさらにモーターを大きくして力を強くしたり、将来的に進化していく余地は大きいと思っています。
アルフレッド:今のところダンプアップの速さは日本が特別早いんですよ。海外はテレスコシリンダーなんでもっとゆっくり上がっていくんですよ。
ーーー そうなんですね。山口社長はもともとエンジニアですよね。
山口:もともと整備業界出身ですね。18歳から13、4年やっていましたよ。
ーーー こういった販売だったりを、始めたきっかけは何だったんでしょうか。
山口:きっかけはもともと前職でスカニアをいじらせてもらっていて、UDのトラックがボルボになった時に「15年後はもうベンツか、ボルボしかないんじゃないか」と思ったんですよ。ふそうもダイムラー資本ですしね。当時、僕が34歳ぐらいだったんですよ。現場のスタッフが20代半ばぐらいでした。
ーーー なるほど、なるほど。
山口:その時にいま若い整備士たちに取り組ませるべきなのか、後からでも良いのかと考え、「今から取り組んだ方がいいだろう」と思ったんですよね。その結果、こうやってヨシノさんともお仕事をさせてもらえるようになりました。僕らの母体は北海道の小さな町で人口も6000人ぐらいしかいません。こういう電動ダンプのようなものを本州に広めることはできないんですよ。需要のない土地で造っても仕事にはなりません。ヨシノ自動車さんはボルボ販売においては最先端を走る企業なので、ご一緒させてもらうことによって、この製品がいろんな人に知ってもらえるのであれば、すごく光栄なことです。
ーーー 前から思っていたのですが、ボルボやスカニアに強い北海道のトレーラー文化がどんどん本州の方にも流れていけばいいのに、と思っているんですよね。
山口:そうなると面白いですね。その役割を「我々ができたらいいな」と思っています。
ーーー楽しみですね。
山口:この電動ダンプもそうですけど、思いついて考えるのと、それを世に出すことにはものすごく差があって難しいことですよね。ほんと別次元なんで。これを造って1年ぐらい経って、口コミで話が広がりましたが、我々としては良いところも分かり、デメリットも分かっています。そのデメリットを埋めていく作業がすごく難しくて、本当に「途中でやめようかな」とも思ったんですよ。
ーーーそうなんですね。
山口:結局のところ、こうやって力を貸してくれるヨシノさんだったり、自分が思いもつかないところで色々、考えていただいたりしています。それによってより良いものができて、今年の5月ぐらいにようやく「これならお客さんに出しても大丈夫だな」というところまで来ました。これからさらに認知が広がって「導入してくれるお客さんが増えればいいな」と思っています。それが当たり前になってくれれば、僕らが一生懸命にやったことにも意味があるし、「そういう時代が来ればいいな」と思っています。
ーーー素晴らしいですね。この電動トレーラーを皮切りに益々のご活躍を期待しています。ちなみにこのトレーラーに名前はついていないんですか。
アルフレッド:山口モーターシステムかな。
山口:それだと普通すぎませんか(笑)。
< 対談一覧に戻る