トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第95回
新春特別企画“トラックのすべてを話します”2025
新春特別企画“トラックのすべてを話します”2025
トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第95回
新春特別企画“トラックのすべてを話します”2025
新春特別企画“トラックのすべてを話します”2025
「新春特別企画“トラックのすべてを話します”2025」
2024年は元旦の能登半島地震から始まり、4月より施行された「働き方改革関連法」が大きな影響を与えた年でした。折からのドライバー不足に拍車がかかり、ドライバーがいないための倒産も、そこかしこで聞かれました。そして迎えた2025年。円高とインフレもすっかり板につき、1月20日には剛腕で知られるトランプ政権が発足します。さて我々は、この難局をどう乗り越えればいいでしょうか? 「運賃見直し」に「ドライバー定着のためのカスタム」、さらには進む「トレーラー化」の実態など、ヒントはたくさんありました。今年もヨシノ自動車の精鋭たちが、“トラックのすべてを話します”。
編集・青木雄介
WEB・genre inc.
ヨシノ自動車・森川
ユーザー営業。昨年はスーパーGTをコンプリートしました。テストから全部行っていたので達成感がスゴいです。おかげ様でチーム関係者にも顔を覚えていただけました。
ヨシノ自動車・中西
ヨシノ自動車社長。ドイツ製スポーツサルーンを買いました。プラグインハイブリッドで727馬力の1000Nm。むろんエコに決まっています(きりっ)。
ヨシノ自動車・本多
業販営業。イタリア製SUVを買いました。ディーゼルエンジンにしたのは、トラック業界に毒されているからです(笑)。
ーーーさて昨年は「2024年問題の年」となりましたが実際のところ、トラック業界はどうだったのでしょうか。
本多:「思っていたより悪くなかった」というのが実感です。特別良いという訳ではないんですが、「本当に売れなくなっちゃうんじゃないか」と危機感を持っていた業者さんも多々あった中で、そんなに悪くはありませんでした。私自身、「全体の流通量は変わらないだろうな」と楽観してました。
ーーーなにかニーズが発生していたのでしょうか。
本多:ニーズが生まれたというか、それが減らなかったという印象です。どうしても悲観的な見方が先行してた割には「悪くなかった」という感じなんですよね。
ーーー了解しました。森川さんはどうでしょう。
森川:業種的にいうと一般貨物で、ドライ系は荷物によっては元気のあるところとないところがありましたね。一般貨物以外で言うと冷凍、食品系や建設関係は、比較的元気な印象がありました。「商談の量はどうなの?」と言ったら別に減っている訳じゃないし、お客さんを見てても「いっそ2024年問題で仕事を見直しましょう」と言う前向きなお客さんが多かったです。ただ販売価格が上がったり、リースを組んでみても、リース会社の調達金利が上がっているので、今までのようなリーズナブルな支払いは組めなくなっています。そこが後半は「影響してきたかな」という印象です。
本多:お客さんというより、新車の価格が上がってきたことの方がよっぽど影響していますよね。そこにみんなで合わせていけば、今後はごく当たり前の価格になっていくとは思うんですけど。
ーーーなるほど。実際、そんなに新車の価格は上がったのですね。
本多:上がりましたね。
ーーー値上がりはメーカーが値段を上げたのでしょうか、ボディメーカーが値段を上げたのでしょうか。
中西:両方で上がりましたよ。
本多:便乗している部分ももちろんありますね。
中西:本当のところ、我々としても値上げの理由はわからないんですよ。ただあるメーカーが単体で値段を上げているとかではなくて、全体的に国内もグローバルも値上がりしています。むしろ上がり幅としては海外メーカーの方がひどいんですよ。円安やそれぞれの国情によってインフレ感が違っている。それで値段が上がってるということもあるし、一方で国産が上がっているのは、表向きは技術改良によって値段が上がっているということなんですけど、もう一つの理由は受注残があるからなんです。どこも先行オーダーを1年分、2年分と取っていたわけですよ。
ーーーなるほど。
中西:弊社もそうですが例えば「2年間で100台発注します」というオーダーに対して本当は同じ金額で100台発注したかったんですが、さすがに後半ともなってくると先行オーダー分にさえ「価格改定してください」と言われちゃうわけです。でも最初の60~70台は2年前の価格改定前の金額で契約してますよね。だから時間が経つ間に、70台分の内の30台分ぐらいは作るだけでマイナスになっていたりするんです。それをある程度、取り戻すというわけではないのだけれど、差額を埋めに来るようなところはあります。それによって値段の上がり幅が、よりきつくなっていく傾向はあると思います。
ーーー大口の契約で長期にわたると価格に齟齬が出てきちゃうんですね。
中西:部材調達はだいたい年に1回です。それにも関わらず年に2回、3回と価格改定があるのはそういう背景があるとしか思えないですよね。それはメーカーのみならず、ボディメーカーさんも一緒ですよね。燃料費も含めて鉄やアルミなど、原料費がものすごく上がっちゃっていて、特にインフレが直撃していますから。鉄は特にそうですね。
ーーーボルボの値段が上がっていて、新型スーパーグレートもめちゃくちゃ上がっていますよね。ざっくり言うと200万円で間違いないでしょうか。
森川:そうですね。200万円ぐらいです。
中西:基本的にはそれぐらいで均してしまえるかな。
ーーーどこも軒なみ上がっている割には「安くてお買い得みたいなメーカー」はなかったでしょうか。
中西:ないですね。
本多:あっても結局、前のオーダー分だったみたいなオチです(笑)。
ーーーそんな価格高騰のあおりを受けて需要はキープされるんでしょうか。それとも買い控えみたいなことが起こってしまうんでしょうか。
中西:その辺が難しいですね。2024年の僕の個人的な振り返りで考えると、本多、森川が言っている通り、流通量が特に落ち込むことはありませんでした。価格の乱高下はあるんですよ。あるにせよ、トラックを使う需要としては変わらないんですよ。そこに対して専業者である我々が先行して商材を注文しようとするので、その市場ニーズが当たれば売れるし、外れれば下がります。その勝率が、ヨシノ自動車で考えると「あまり良くなかった」という感じですね。
ーーーそうなんですね。
中西:中古市場で考えてみても乱高下はあるにせよ、安定した需要と供給はありました。新車も一緒で2024年の働き方改革が始まったにしろ、ある程度の運送会社さんはそこを見越した対策ができていました。完璧ではないにしても、それぞれができることをやっていたという印象です。ですから2024年問題のあおりを食らったような問題はあまり表沙汰にはなっていないんです。この改革は平たく言ってしまえば単純な労働規制ですから、弊害が出てくるのは来年以降だと思っています。
ーーー会社単位の弊害ですね。
中西:今までより200時間の労働時間が減らされているわけです。今までと同じ感覚だと1人当たり200時間分だけ、売上が落ちるわけです。その改善のために輸送単価を上げるとか、輸送効率を上げるとかをやっていくにしろ、その200時間分を取り戻せている会社がどれだけあるかと言ったら、かなり少数だと思うんです。あくまでも推測ですけどね。ジリ貧に経費がかかり、売り上げだけが減っていってる状態なので、いきなりドンと影響が表面化するわけではないんですよ。今のところ、それぞれの会社の内部留保分が削られていっている状態だと思います。運送会社は中小零細企業が多い中で、潤沢な資金体力がないとなると、いよいよ2025年にはきつくなってくるということですね。キャッシュフローがマイナスになるとか、営業利益がマイナスになるような現象が出てきて、目に見えた資金繰りの悪化だったり倒産だったりが、このままだと出てくる可能性がありますね。
ーーー2024年はドライバー不足による運送会社の倒産が多かったですね。その傾向はやはり高くなっていくのでしょうか。
中西:高くなっていくと思います。ある経済誌に業種別の倒産しやすさランキングのような格付けがあったのですが、運送会社だったり、製造メーカーだったりが上位に来てるのは確かですし、法律上、時間は制限され、人件費は上げろ、実務の中の商品単価が上がっていない、粗利も増えていない、となると簡単に経営を圧迫しているだけの環境になっているわけです。
ーーーたしかにそうですね。
中西:やはり現状、言われているのは、とにかく給料を上げなければいけない、職場環境も変えなければいけないとなっているので、運送業界で言えば「新しいトラックを入れてドライバーの定着率を上げます。新規のドライバーを募集します」とやりますが、これだけだとコスト高になってしまいがちです。ほとんどの中小零細企業がやるべきことは、新しい仕事を取り、現状の運賃を改善するということをしなければいけないんだけれど、とにかくドライバー獲得と定着率に注力している傾向も感じます。入れたはいいけど、採算の取れない仕事ばかりという会社もあると思います。もちろんドライバーの定着率を上げるために新しいトラックを買う必要はあるのですが、これ経営者は全部を並行してやらなければいけないことなんです。その両方ができている会社が、少ないんですよ。
ーーーまず「稼ぐ」が企業の基本ですからね。その辺の現場の感覚は、お二方はどうでしょうか。
森川:どこ行っても「ドライバーが足りない」という状況ですし、求人を出したところで電話すら鳴らないと、そういう話もザラですね。ただこれは僕の肌感覚なんですが、大型やトレーラーを動かしている会社は比較的、人気が高い気がします。なんだかんだとドライバーが集まりやすいのかもしれません。
ーーートレーラーの会社にドライバーが集まっているということでしょうか。
森川:はい。ドライバーが「トレーラーを運転したい」ということなんでしょうね。もともと単車に乗っていて「トレーラーに乗りたいから」とトレーラー免許を取って、仕事を探すという流れです。免許を取りたてで「バックもよく分からない」というような初心者ドライバーを取って、何ヶ月か一緒に乗って独り立ちまで見守る手間をちゃんとかける。もともとトレーラーの会社は経験者のみを採用するイメージが強かったんですが、最近は初心者OKの会社が増えているような気がしますね。
ーーーなるほど。かつてはトレーラードライバーといえば経験者のみがほとんどでしたからね。まず経験を積むのに苦労しました。初心者にもその門戸が開いているんですね。
森川:今は人柄だったり真面目さだったり、やる気があれば入社してもらって教えてあげて育てる、という感じなんでしょうね。
ーーーちなみにトラクタ(ヘッド)の販売状況はどうでしょうか。
森川:トレーラーウイングだったり、産業廃棄物系のダンプトレーラーは入庫するとすぐ売れますね。
ーーーダンプトレーラーが売れるんですね。
森川:能登の復興需要がここ最近で、ようやく出てきた感じですね。
本多:仕入れるのが大変ですよ(笑)。
ーーーそうなんですか。
本多:当方は仕入れの話ですが、とにかく買えないですね。そもそも出てこないんですよ。
森川:結局、現在のトラックというのは制御系が全部コンピューターですよね。それだとPTOが後付けできないんですよ。具体的に言っちゃうとUDクオンは後付けできるんだけど、ふそうや日野はできない。マニュアルなら出来るんですよ。でもオートマは無理。それでいつも本多に「どこかにPTO付きの車ない?」と訊いてるんです。ダンプトレーラーの場合は、やっぱりPTOがついていないと話にならないんです。トレーラーそれ自体は妥協すればなんとか見つかるんですね。でもヘッドがとにかく無いです。
ーーーそうですか。確かに PTO付きを探すのは厳しいかも知れないですね。
森川:それを謳い文句に中古のボルボは売れているんですよ。後付けが可能ですから(笑)。
ーーーええ!? そんなにボルボは簡単にPTOがつけられるんですか。
森川:作業の時間もかからないですよ。
ーーーちなみに「PTOはつけると200万円ぐらいかかる」と聞いてるんですが、ボルボは作業的にもっと安いということでしょうか。
森川:PTOをつけること自体は7~80万で国産と一緒です。そこにポンプまでつけると200万ぐらいですね。
ーーーそうですね。油圧ポンプをつけなきゃいけないですもんね。「ボルボはつけやすいぞ」ということなんですね。
森川:今のところ、納期優先か、価格優先かとなった場合は、だいたい納期優先なんですよ。仕事あります。ドライバーも見つかりました。一番難しいのは、このドライバーを見つけるのが大変ですよね。当然、見つかったから「すぐ増車したい」となります。見つけたはいいけど、車が来るのが半年後とかだと、そのドライバーは絶対にどこか他に行っちゃうんですよ(笑)。
ーーーうわー。分かりやすい。昔なら車来るまで「単車に乗っておいて」が通用しましたが、仕事はいくらでもある。それは確かに納期優先になりますね。
森川:ただ今は架装屋さんもいっぱいいっぱいなので、そこのやりくりは大変です。「お願いします」と各方面にスケジュールの隙間を縫って、依頼しているような状態ですね。
本多:そんな状況なので、中古車ですぐダンプトレーラーを牽けるPTO付きのヘッドだったりを探してこなければいけない、という状況が続いているんですよ。
森川:昨年の10月、11月、12月とPTO付きのヘッドは何でも売れるような状況ですね。
本多:PTOさえついてればポンプの架装は後からいくらでも、どうとでもなりますから。
ーーーなるほど。そもそもエンジンから動力を取り出すことが大変なんですね。
森川:例えばPTOをつけることによってポンプの能力で、アイドリングをどこまで上げるのかとかも設定しなければいけないんです。それをちゃんとやってあげないと、ポンプを作動させてもアイドルUPしないんですよ。
ーーー油圧の圧力を、牽くトレーラーに合わせて決めてあげなきゃいけないんですね。
森川:スライドデッキだったら、そんなにアイドリングを上げなくても1時間ぐらいかけて動かせばおろせるんですけどね。
ーーーシブい情報を有難うございます(笑)。ちなみにそんなPTO需要の最たるところで言えば能登の復興需要というのは、2024年の1年間まるまる続いていたということでしょうか。
本多:そうではなくて、初動は予算がついてなくて、あまり動きがなかったんですよ。それを見越して、先行して深ダンプとかを買い漁ってる業者さんもいたんですけどね。肌感覚では1回落ち着いて、最近また復活って感じかな。
森川:どうやら1回、需要がリセットしたっぽいんですよ。やると決まっていたプロジェクトが振り出しに戻って、業者から何からリセットになったのだけれども、この間の衆議院選で「能登の復興をやる」と宣言したので、そこから一気に動いているみたいですよ。いったんリセットされてた話も、「またやらなきゃ」みたいな感じで動き出したみたいです。10月まで深ダンプなんてまったく商談がなかったのに、いきなり商談が波のように押し寄せてきました(笑)。
ーーーリアルですね(笑)。非常に興味深い話を有難うございます。他にも2024年で車種ごとに人気の傾向などはありましたでしょうか。
森川:どうでしょうかね。私はダンプが顕著に売れていましたね。社長が仕込んできたハイルーフの見た目のいいダンプが結構、売れました。
ーーー中西社長が仕込んだというのは、ふそうですか。
中西:ふそうもあるし、UDもあります。
ーーーボディメーカーは極東開発ですか?
中西:新明和です。ベースはだいたい新明和が多いんですよ。
森川:極東開発にお願いする時は積載量重視なんです。
ーーーなるほど。ハードックスで軽量堅牢ですか。
森川:そう。ハードックスの積載取れているタイプは、積載量重視の方とかにしてみるとめちゃくちゃ良いらしいです。あれ7.7Lのエンジンで、僕も乗る前は「下(低速)がスカスカでしょう?」なんて思っていたんですけど、乗ったら全然平気なんですよ。
ーーー本当ですか!?
森川:スカスカだと思っちゃうでしょ!? でもちゃんとターボも2つ付いてますからね。よく回るんだけど7.7リッターだから燃費は良いって聞くんですよね。
本多:そこにはやっぱり昔ながらの差別意識があるんですよ(笑)。
ーーーその差別意識を教えてください(笑)。
本多:大型にこんな小さなエンジン積んでさ、みたいな感じですよ(笑)。その低排気量エンジンも最初の頃は全然売れなくて、弊社でも処分になったりもしたんですよ。あれは悲惨でした(笑)。
中西:そもそも営業の認識がそうですからね(笑)。
本多:確かに差別していたかもしれないです。本当に乗ってみるまでは。
森川:うん。そう思っていました(笑)。「すみません」って思いますよ。
ーーーかくいう自分もそうですから。「10リッター切った大型エンジンなんて」と思っていましたから。
中西:エンドユーザーさんの認識も大きいです。ダンプのお客さんは特にV8だったり、大きいエンジンを乗ってきた経験が多かったりしますからね。だから営業のマインドもそれに影響されちゃう、という。僕は市場のニーズはともかく「新しいものは何でも入れてみよう」と思うので、市場に出てきた以上、「悪くはないはずだ」と思っています。今までの商品より悪いところを改良して世の中に出てくるわけですから、良いところは絶対あるはずなんです。浸透するのに「どうしても時間がかかるな」というのはありますけどね。
ーーーこれは業界的な特徴ですよね。
中西:ボルボなんかその最たるものだし、浸透した実感があるのは2018年から20年ぐらいです。現行モデルでさえ初動の4、5年は売れなかった印象があります。まぁ仕方ないですね。
ーーーーダウンサイズエンジンも、それがダンプであっても売れるようになってきたということですね。
森川:そうですね。見た目重視なところと運賃重視なところがあって、後者はコストを抑えて売上を伸ばしたいとなりますよね。トレーラーダンプをやっているのはおそらく後者の方だと思うので、ハードックスなんかが人気になってくる。燃費が良くて積載がとれて、というような仕様が今後は増えていく気がしています。
ーーー「単車は」ってことですか。
森川:トレーラーもそうですよ。普通の積載量は25トンですが、積載取れる仕様だと27トンぐらいまでいけるんです。欧州製のトレーラーだと29トンとかもありますよ。
ーーーそれだけ積載がとれていたら大きいですね。
森川:1回に運ぶ量が1トンから2トン違うと、当然金額も変わってきますからね。
ーーーやっぱりダンプトレーラーがそれだけ浸透してきたということですね。
森川:個人の人が買うぐらいですからね。
ーーーなるほど。それは確かに大きいですね。
森川:会社じゃないと、ダンプトレーラーなんて高コストで導入できないのに、最近は個人事業主で2台、3台とダンプトレーラーを入れているという世界なんですよ。
本多:今年の変化で一番大きいのは、そこじゃないかな。単車のダンプからトレーラーへ、という動きが最も大きい年でしたね。
ーーーなるほど。だとすれば、それに合わせてカスタム需要も盛り上がったという感じでしょうか。
森川:する人もいれば、しない人もいますよね。日本のデコトラはステンレスを大量に使いますよね。今は過去1、ステンレスが高いんですよ。
ーーーそうなんですか……。
森川:下手すると4~5年前の倍ですね。だから僕は「ステンレスやめた方がいいですよ」って言っちゃうぐらいなんですよ。ステンレスをやるにしても、出来合いのメーカーのパイプをつけるぐらいがちょうど良くて、角型にしたりとか、本当に高すぎるから「やめた方がいいですよ」と言ってます。大型ウイングでサイドバンパーをステンレスで造ると、ちょっと前なら70万円、80万円だったんですよ。現在は150万円ですからね。ここ最近は積載もうるさいし、それでも見た目を良くしたかったら、ヨーロッパの自主メーカーのパーツとかイイですよ。
ーーーそうなんですね。だからこそ、ユーロスタイルが熱い的な感じでしょうか。
森川:ユーロはノーマルではないし、積載取れるし、安いんですよ。見た目は全然悪くないですよ。この間もセーフティーローダーにつけました。
ーーーそうなんですね。「ステンレスが高い」と言っても、皆いろんな方法を考えつくんですね。
森川:なかなか良かったですよ。ファストエレファントで買って、リアフェンダーもユーロメーカーのパーツを使いました。びっくりしたのは全然、軽いんですよ。
ーーー軽いんですか。
森川:ダンプなんかも、セノプロさんがふそうでやるバイザーをつけたりしていますね。まだまだ少ないんですけど、目立つんですよね。こないだ愛知のお客さんにハイルーフのダンプで「バイザーが欲しい」と言うから付けました。それが目立って「これいいな」と噂になっているらしいですよ。そもそもユーロパーツは機能性がしっかりしているんですよ。霜が降りないし、フロントガラスも凍らないらしいです。
ーーーそうですか。ちゃんと役目を果たしているんですね。
森川:ああいう感じのカスタムが増えてくると、ダンプもデコトラよりは積載が取れるユーロスタイルみたいな感じになってくるのかもしれないですね。
本多:まぁ、昔ながらのデコトラが減っちゃうのは寂しいですけどね。
ーーー本当に寂しい限りですね。逆にステンレスが高騰しているから、中古のデコトラが高くなるって事はありませんか。
本多:うーん。結局、走れないですからね。オークションでも1回で1000台ぐらい出るうち、1、2台はデコトラが出ていたんですよ。我々としてもそれを見るのが楽しみで、目の保養にしていたのですが、もうほぼほぼ見かけなくなりましたね。
ーーー冷凍屋さんはどうですか。
森川:冷凍屋さんは荷主によるかな。基本的に厳しいところは、マーカーの色が違うだけでNGを出しますからね。冷凍系は、ほとんどが大手なんですよ。特に上の上ってなってくるとその辺はどうしても厳しい感じがするので、飾れてメッキぐらいという感じですよね。
ーーー森川さんの特別カスタムである「森川スペシャル」とかもあまり出てない感じですかね。
森川:そんなことはないです。いま手掛けているのがステンレスもふんだんに使って、架装価格が800万です。
ーーーそれはすごいですね。
森川:そのお客さんも今までは真っ白のノーマルだったんです。それではドライバーがなかなか集まらないから、カスタムすることにしたようです。ドライバーの1人がまだ25歳ぐらいの若い子なんだそうです。トラックがすごく好きで毎日洗車しているらしいんですけれど、じゃあその子に看板車を作らせて「宣伝してもらおう」と考えたらしくて、ヨシノの通常仕様にステンレスを多めに巻いてみた感じです。
ーーー やはりドライバー確保のために、少しでもカッコいいトラックで来てもらいたいという気持ちは強いということですね。ヨシノ自動車からみて2024年のトレンドだった販売方法などはありますか。
中西:基本的にインターネットに在庫を掲載して、そこからお問い合わせをいただくのが主流ですが、絶対在庫数が前年度に比べて減っているんです。それは単純に市場に良質な販売材料がないということなんですよ。
ーーー「弾(タマ)がない」ということですか。
中西:そうです。弾がないんです。ですから先行新車のような供給のバランスが崩れてくると、どうしても絶対数が少なくなり、分母に比例してネットでの販売実績なんかは前年度に比べると落ちてるんです。
ーーーなるほど。
中西:ただ、それは在庫のバランスが戻ればまた戻ります。直近は割と販売台数はいっているので、やはり在庫の中身が大事ですね。販売の仕方で言うと通常リースが5年なんですが、新車の価格帯が上がっているのでボルボも6年リースとか、期間を延長して月々の支払いをこれまでと同等ぐらいにするという売り方が増えてきました。その傾向は2024年からスタートです。レンタルと整備は、顕著に業績が良いです。
ーーー了解しました。ではこの2025年ですが、アメリカではトランプ政権が始まることによって日本経済にも大きな影響が出そうです。トラック業界には何か影響はあるんでしょうか。
中西:どうなんでしょうね……。過去でいうと、17年前のリーマンショックがアメリカのことで、日本のトラック業界にはまったく関係なかったはずなのに、トラックは売れなくなり運送会社が潰れました。金融というのはどんな会社であれ、根幹にあるものです。これが流れなくなると、血液が流れないのと一緒です。商い自体が成立しなくなるので、その不安はありますよね。具体的な予測は難しいですけど、よく言われているのはトランプさんになれば円安の環境を是正すると言っているので、円高になる可能性があります。円高になったとしてもプラスマイナス両方ありますよね。
ーーー確かにそうですね。
中西:弊社としても円高になれば仕入れ単価が安くなるので、日本での販売戦略は有利になります。今は円安でドーンと値段が上げられちゃっていますから。そもそも日本の実体経済とは大手は好調だけれど、あくまでも8割の海外需要に支えられているわけです。それが円安の恩恵を受けているわけです。いったん円高になってしまうと、稼ぎ頭である大手さんが大変になってしまいますね。日本経済はそもそも大きな市場ではないですから。そうなると日本の実体経済も悪くなる可能性があります。2025年は何らかの変化はあるんでしょうけど、どうなるかは本当に全然、分からないです。
ーーー分かりました。ではお二方はどうでしょう。
森川:来年もこれまで通り、お客さんとの接点を持って情報共有をすることが「一番大事かな」と思っています。あとは、もうこれ以上、燃料が上がらないで欲しいです。これはどこ行っても言われますね。これ以上、値段が上がられると「もう厳しい」と。
ーーー国の補助が段階的に無くなっちゃっていますしね。
森川:そうなんですよ。これで選挙があればまた「補助金を出します」となって、上がったり下がったりしますよね。だから安定しないんですよ。そこはみんな気にしていますね。あとはドライバーを確保することを、いかに我々が手助けできるか。例えばこの鍵人訪問記だって、お客さんの広報活動のお役に立てるんです。若い経営者ほどSNSは得意で、繋がりでドライバーを集めてくることもできるかもしれませんが、そういうのが苦手な方というのはインターネットを使ったドライバー集めも苦手だったりするんですよね。
ーーーたしかに。
森川:そこで弊社も何かお手伝いができれば、と思っているんです。多分、お客さんとも車の売り買い以外の部分でのお付き合いを濃くしていかないとダメで、そこが濃くなっていけば必然的に売り買いも強くなっていくんですよね。「そこかな」と思いますね。
ーーー了解しました。本多さんはどうでしょう。
本多:本当にトラックも値上がりで、燃料も値上がりで、上げる時は勢いよく値段を上げるけど、これが1ドル120円になったって一気にその水準まで値段を下げてくれる訳じゃないじゃないですか(笑)。僕はそこの差だけが心配ですね。仕入れの線で言えば、その時その時の状況に合わせて、売り買いのベースを変えていけばいいので、現在の相場下に合った動き方をすればいいんです。値段は上げられたものの下がらずに、「その金額で買える人はもういないよ」となるのが怖い。ただトラック業界は、世の中がピンチな時ほど強い業界なので、「そこに活路を見出していきたいな」というところですね。
ヨシノ自動車・森川
ユーザー営業。昨年はスーパーGTをコンプリートしました。テストから全部行っていたので達成感がスゴいです。おかげ様でチーム関係者にも顔を覚えていただけました。
ヨシノ自動車・中西
ヨシノ自動車社長。ドイツ製スポーツサルーンを買いました。プラグインハイブリッドで727馬力の1000Nm。むろんエコに決まっています(きりっ)。
ヨシノ自動車・本多
業販営業。イタリア製SUVを買いました。ディーゼルエンジンにしたのは、トラック業界に毒されているからです(笑)。