トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第96回
丸毛自動車工業株式会社 代表取締役社長 丸毛康司様
丸毛自動車工業株式会社 代表取締役社長 丸毛康司様
トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第96回
丸毛自動車工業株式会社 代表取締役社長 丸毛康司様
丸毛自動車工業株式会社 代表取締役社長 丸毛康司様
「いかにこの技術を継承していくか!? 大阪で大型整備の明日を考えました」
今月の鍵人訪問記は、大阪のボルボ・トラック正規ディーラーである丸毛自動車工業株式会社の丸毛康司様が登場です。創業72年の老舗であり、トラック整備を中心に正規ディーラー、中古車販売などその業態はヨシノ自動車と共通しています。今回は大阪におけるボルボ・トラックの動向とともに、トラック整備について意見を交わしました。ドライバーと同様に抜本的な人材不足を補うために何が必要なのか。いまいちど整備士のキャリアをどのように形成していくか、について考えました。ぜひご覧ください。
写真・関根虎洸
編集・青木雄介
WEB・genre inc.
丸毛康司(まるも こうじ)様
丸毛自動車工業株式会社 代表取締役社長。1974年 大阪府箕面市生まれ。1999年神戸大学経営学部卒業。1999年 ニチメン株式会社(現双日株式会社)に入社。2004年
丸毛自動車工業株式会社入社。2021年 丸毛自動車工業株式会社代表取締役社長に就任。現在に至る。
ーーーーー丸毛自動車工業さんは会社の歴史を見るとかなりヨシノ自動車さんに業態が似てるんですね。
丸毛:弊社は鈑金整備からスタートしていて、ヨシノ自動車さんは販売が強いですから強みが違うんです。
中西:創業者や先代がどこを目指したか、によって違ってきているんです。弊社ももともと 整備からスタートしていますが、当時は川崎の日本鋼管(現JFE)のお膝元ですから、高度経済成長期でトラックが引きも切らず売れた時代だったんです。仕事が増えるから「車が欲しい」ということでどんどん販売が伸びていきました。丸毛自動車工業さんとは社歴もほぼ一緒なんじゃないかな。
ーーーーーそうですよね。丸毛自動車工業さんは創業何年目でしょうか。
丸毛: 弊社は72年目ですね。
中西: そうすると丸毛さんの方が長いですね。弊社は法人で66期目なので。
丸毛: 弊社はもともと乗用車の板金がスタートなんです。祖父が兵庫の北の方(現在の温泉町)から出てきて、尼崎で創業しました。現在の本社は寝屋川ですが、もともとの本社は大阪駅の横の福島(現在の北区大淀南)でした。福島の方では乗用車の販売をしていて、寝屋川では大型車の整備をして、事業所が多かった時は5つか 6つぐらいありました。現在は大阪の南部に堺工場がありまして、そこではほぼボルボの整備をしています。こちらももともとは乗用車の車検をする工場でした。寝屋川工場と比べたら手狭ですけれども。
ーーーーーでは現在は、完全にトラックにシフトされているということですね。なぜ乗用車から大型整備へシフトして行ったのでしょうか。
丸毛:色々な経緯があるのですが、もともと福島区では 500坪ぐらいの敷地で事業を行っていました。ただ 年々と福島区の開発が進み 坪単価が上がり、あまり事業としては旨味がなくなっていきました。それとトラックに比べて乗用車は単価が低くて、かつ個人のお客様が多いですよね。その採算面がトラック専業に決めた理由として「一番大きかった」と聞いています。
ーーーーーそれで「トラックに絞っていこう」と決めたんですね。
丸毛: そうです。ちょうどバブルの終わりかけで土地が上がっているタイミングで、敷地に「賃貸マンションを建てる」という事業の画を描いたと聞いています。現在は本社創業の地は賃貸マンションになっているんですよ。
ーーーーーなるほど。この寝屋川市の本社も幹線道路(府道15号・八尾茨木線)沿いの好立地ですよね。
丸毛:寝屋川工場が出来たのは昭和38年ぐらいだったでしょうか。それからこの地で操業しているんですが、これは完全に「祖父の先見の明があった」と現在の会長が言っています。買った当時はレンコン畑だったらしいですよ(笑)。すぐそこに淀川があるんです。
ーーーーーまたこう言っては難ですが、整備工場には名だたる大手物流会社のトラックが入っていましたね。一朝一夕で獲れる仕事ではないなと思いました。
丸毛:幸いにして、長く事業を継続できていることでの信用の賜物だと考えています。当然にお客様も入れ替わっていきますが、長くお付き合いいただいているお客様は非常に多いです。それは先代から引き継がれてきた信用的なところだと思いますね。
ーーーーーまさに 丸毛自動車工業さんは整備事業を事業の根幹とされてきた、ということが分かりますね。それでボルボの販売会社もされてらっしゃるわけですが、どういった経緯で始められ たのでしょうか。
丸毛:今年でボルボのディーラーを始めてから29年目になりました.
中西:弊社よりも長いですね。それこそボルボが日本に入ってきたぐらいのタイミングですし、茨城の鹿島旭さんと丸毛自動車工業さんは同じぐらいのタイミングでスタートしていたと思います。
丸毛:そうですね。弊社のお客様に大手飲料メーカーの物流を担当している運送部門があるのですが、そこのお客さんでスウェーデン大使館が入っていたり、 全大協(全国大型自動車整備工場経営協議会)で北欧視察の際にスウェーデンのボルボ工場を訪ねた事をきっかけにディーラー契約を結ぶ事となったと聞いています。
ーーーーーなるほど。その後、ボルボ・ジャパンが声かけをして、全国にディーラーのネットワークができていったということでしょうか。
丸毛:弊社に関しては自分で手を上げたんだと思います。
ーーーーーやはり導入された頃はご苦労されたんでしょうか(笑)。
丸毛:その苦労話は本当に聞かされています。最初の一航海目で止まった車が何台もあったそうです。当時の社員は謝りに行くのが仕事だったと聞いていますよ (笑)。特に大阪の南部の運送業者さんなんかは大変だったはずです。
ーーーー最近の関西地区におけるボルボの人気はいかがでしょうか。
丸毛:明らかに品質が良くなっているので、お客様が新たなお客様を紹介していただけるような販売が多くなりました。それこそ昔はトラック協会の名簿を使って、片っ端から当たるようなことをやっていました。ボルボの場合は特にそうですね。車の品質も明らかに上がっていますし、サービス網もしっかり整備されてきています。
ーーーーーそれに伴って、販売台数も上がってきているのでしょうか。
丸毛:そうですね。現在、年間 30台を目標にしつつ「今後もどんどん増やしていきたいな」と考えています。
ーーーーーちなみにボルボを購入されるお客さんは、どういった業種が多いですか。
丸毛:弊社のお客様は様々ですね。南港から岸和田のお客様で海コンのお客様が多いですかね。
ーーーーーちなみにお客さんはカスタムされるのでしょうか。
丸毛:弊社はあまりカスタムのご用命はないですね。むしろ架装しない傾向が強くなってきている気がしますね。
ーーーーなるほど。関西はカスタムといえばスカニアの方が多いのでしょうか。
中西:なんとなく、それはありますよね。カスタムするならスカニアみたいな傾向は。関東と関西で明らかに好みも違いますよね。ファッションや東と西の文化も含めて僕から見てもスタイリッシュなボルボと、押し出しの強いスカニアで、関西の人が選ぶのであれば「やっぱり押し出しかな」と思うんです(笑)。
アルフレッド:実際にスカニアの方が飾りやすいんですよ。
ーーーー分かりました。中西社長から見て、丸毛自動車工業さんの印象を教えてください。
中西:もともと親同士の仲が良かったということもありますが、同じボルボディーラーというところで20年以上にわたって取引がありました。そのつながりで仲良くさせていただいていて、イメージとしてはやっぱり整備業です。社長のお父様がロータス・トラックネット(整備組合)の重鎮だったんですよ。もう1人が北海道の滝川さんです。初代は金田さんという方だったんですが、金田さん丸毛さんというお二人が大型トラック整備の重鎮だったんですよ。
ーーーーー2トップ なんですね。
中西: そうですね(笑)。
ーーーーー丸毛自動車工業さんには、整備事業のモットーのようなものはありますでしょうか。
丸毛: 工場をご覧いただけるとわかるんですが、整備をやって板金をやって架装もやるということで、弊社にトラックを入れていただければ、一通りのことはお任せいただくことができます。トラックをトータルに診ることができるというのがまず1つです。それと長年、整備をやっているのでディーラーさんがやっているような、年間の整備契約だったり「10台以上であれば車検、点検、一般整備を包括的に見ますよ」という定額サービスのようなメンテナンスパックを独自で作ってもいます。そういうノウハウがあるということでしょうかね。
ーーーーーでは法人契約で、メンテナンスパックを契約されているお客さんも多いということですね。
丸毛:多いですね。お客様からすれば月次でデコボコする整備費用をトータルで均せば、2割ぐらい安くできます。そういう提案をさせていただいています。
ーーーーートータルで診ることによって保有車両の車歴を把握できて、メンテナンスを簡易化していたりもするんですよね.
丸毛:そうです。弊社に委託していただけるのであれば、修理の履歴を残すことができます。でもやはり、一番喜んでいただける点は「毎月定額の支出で済む」という点でしょうか。
ーーーーーなるほど。当然に入ってくる車というのはボルボだけではないんですよね。
丸毛:そうですね。国産ももちろん入ってきます。そんなお客様がいらっしゃって、新車でディーラーのメンテナンスパックに入っているお客様は、メンテナンスパックが切れてから弊社に持ってくるとか、そこはお客様によりけりですね。
ーーーーーディーラーのパックが切れても、また定額サービスに入れるのはメリットが高いですね。当然、新車から3年、5年と過ぎてくればメンテナンスパックの定額料金も上がってくるんですよね。
丸毛: そうですね。 それはこれまでのデータと照合して、この年数でこの車種だとだいたいこの金額で契約させていただく、というような基準があります。それに当てはめての計算になりますね。
ーーーーーなるほど。なかなか都会的というか、スタイリッシュなビジネスモデルですね。
中西:そうですね。サブスクリプションで定額のメンテナンスパックというのは現在、主流になりつつありますよね。本当にこのプログラムを、独自でやっている工場さんってあんまりないんですよね。
丸毛:ただどんどんトラックも高度化しているので、一発大きな穴があると途端に採算が悪くなる傾向はあります。
ーーーーー確かに。修理に異常にハマる トラックもありますからね。
丸毛:そういう意味では前もって除外項目を策定することもノウハウになります。 現在は 部品代も上がってきているので、これまで通りの料金設定というのは難しくなってきていますね。
中西:中古車をやっていて思いますが、これまでは車齢に比例してメカニカルトラブルは発生するし、経年劣化で不具合が出てきていました。でも現在のトラックはそういう傾向が当てはまらなかったりするので、1年目でも2年目でも壊れる車は壊れてしまうんですよ。どうしても当たりとハズレがあって、ハズレの車は故障が続いて出たりしてしまいます。
丸毛:その意味で本当にリスクの管理が難しくなってきていますね。故障は「去年起こったから今年は起こらないだろう」なんて思いがちなんですが、そうはいかないところが難しいです。
ーーーーーーなるほど。話題を変えて、整備業界には切っても切り離せない話ですが、 人手不足の問題がありますよね。
丸毛:ここ数年で本当に難しくなりましたね。
ーーーーーやはり普通に募集しても、応募してくれなくなってきているのでしょうか。
丸毛: 応募してくれないですね。7、8年前ぐらいまでは大阪にも整備の専門学校がいくつかあって、先方にお願いすれば紹介していただけていました。その意味では、まだ選べる立場だったんです。現在は自動車整備の専門学校に日本人はほとんどいなくて、留学生を通わせて、経営を成り立たせているような状態なんですよね。
ーーーーーそうなんですね。
丸毛:弊社でも8年前に留学生を15人ぐらい採用したのですが、残ったのは5人です。 もちろん我々にも課題はあるのですが、彼らはあくまでも日本に稼ぎに来ているので「もっと稼げるところがあります」といえば、そっちに行ってしまうんですよ。弊社で採用した人材が、近くの外国車ディーラーにかなり流れていきましたね(笑)。それも全然悪気がなくて、ニコニコしながら辞めちゃうんです。ボーナスを渡したら3日後ぐらいまでが勝負です(笑)。
アルフレッド:それは僕も一緒ですから(笑)。
ーーーーーアルさんは日本国籍あるでしょう(笑)。留学生問題についてはどう思いますか。
アルフレッド:制度には良いところもあるし、悪いところもありますよね。僕は5歳で日本に来たんですが、お父さんお母さんの世代からは「何かあればすぐ仕事を辞めてすぐ次の仕事に就く」のが一般的だと聞いていました。ただ僕は日本で育ち、それも世代も昭和 なので、そういう風には思わなかったんだけれど、いざ外国人留学生が入ってくる時代になると、当然入れ替わりもあるわけです。その時に「外国人あるある出た!」という場面は多く目にしてきたんですよ。
ーーーーーせっかくなのでアルフレッドさんに訊きたいんですが、なぜこんなに 整備業界は「人手不足」なんだと思いますか。やっぱり給料でしょうか。
アルフレッド:整備業界というのは、みんな自動車整備の免許を取って入ってますよね。僕は身体が大きいからトラックだなと、なんとなくトラック整備を志しましたが、 仕事はお医者さんと一緒だと思っているんですよ。事故があったら最悪のケースで死者が出ます。だから車もトラックも整備は人命に関わるすごく重要な仕事なんですよ。みんな国家資格を取っている立派な技術者なんですよ。それなのに他の国家資格を取った職業と比べれば「割に合わない」という点があるんですよね。
ーーーーー確かに。
アルフレッド:仕方がない部分があるのは分かるんです。もともとのレバレートが決まっていて作業単価は決まっていますよね。でもより高度とされる航空技術士はもっと給料が良かったりします。どちらも人命を預かる大事な仕事なんですよ。それなのに「割が合わないな」ってときどき思うんです。僕も30代後半からは、そう思う機会が増えるようになりましたね。 決まっちゃっているんです。この先にどうなるかがわかっちゃうんです。
ーーーーーなるほどな。
アルフレッド:整備士もライフワークとして、好きなこととして取り組んでいる人は続くんです。単純にお給料をもらえる仕事として取り組んでいる人にとっては、他の仕事だったら「もっと楽でお金ももらえるだろうな」という気持ちが強くなって、離職率が高くなってしまうんだと思うんです。それと情報化社会でネットが煽ってきます。インスタグラムなんか見てても「この工場ならいくら稼げるぞ」とか出てきちゃうんですよ。転職サイトのせいなのかもしれませんけどね。 そんな技能を持っているのに「整備士ってもったいないですよね」みたいな(笑)。 SNSの時代ということもあって、その傾向が強くなってきてしまっているのかな、と。
ーーーーーそうですか。給料をあげることと、他に何が必要なんだろう。
中西:問題のひとつにはやはり 5年、10年と続けた時にステップアップできる、 それに合わせて給料もステップアップしていく、というような成長過程を表現しにくいというのもありますよね。
ーーーーー成長が見えにくいってことですかね。
中西: そう、見えにくいんです。
ーーーーー誰もが経営者になれる訳ではないですもんね。
中西:うーん。それが世代によって考え方は違います。30~40代になってくると、今をちゃんと仕事して稼いで生活をしていても、結婚すれば子供にお金がかかることとかが分かってきたり、世代によって成長の思い描き方が違っていたりもします。今のところ、ヨシノ自動車は現場のスタッフが若い世代に変わってきました。その世代が30代、40代になった時に整備の仕事をしているにしろ、どういうポジションでどういう仕事をしているのか、というのは想像できづらいと思うんです。
ーーーーー確かにそうですね。
中西:そこはヨシノ自動車としても考えなければいけないところなんです。まず現場をやって、現場のリーダーになって、検査員だったりフロントになるというのが、通常考えられるステップアップですよね。その先はもう完全に事業管理者の領域です。ヨシノ自動車で言えば、 部長や工場長ということになってきます。でも多くの整備士は本当にそこまで望んでいるのかどうかとか、経営者としては考えるんですよ。
アルフレッド:これは昭和的な考え方になるかもしれませんけど、最近の現場を見ていて一人前にもなってないのに、すぐ次のステップを口にする若手が増えている気がします。
中西:それは整備に限らず、全般的に言えることかもしれませんね。昔はそこまで情報がないから目先のことを一生懸命やることで、その先が見えてくるはずだったのに、新人1年目だとしても入ってくる情報が多いから色々見えてきちゃうじゃないですか。
ーーーーーまぁ、見えた気になってる場合がほとんどですよね。
中西:そうなんです。そこで自分の見たものと認知の誤差が出てしまって、やった気やできた気になってしまう。でもそれは仕方がないとも思います。排除の仕様がないですね。 昔もそういう人材はいたし、今は情報が多岐にわたっているからどうしようもないですね。
ーーーーー整備士の成長過程を、丸毛自動車さんはどのように考えられていますか。
丸毛:皆さん、おっしゃられた通りだと思います。営業は比較的、成長過程が見えやすいですよね。主任になって、それに伴って数字が求められていく。片方で整備士は「何を評価基準にしていくのか?」というところもあるし、弊社においては現場のマネージャーはほとんどいないので、途中から検査員になったり、フロントになったりとなるんですけど、 一定数は「ずっと現場をやっていたい」という整備士がいますよね。このタイプも結構、多いんですよ。
ーーーーーなるほど。「ずっと現場にいたい」というのも、整備士としての才能なのかもしれませんね.
丸毛:いろんな人がいますよ。あまり人と関わりたくない、職人気質の性格で検査員やフロントの仕事を断る人もいます。
ーーーーーなるほど。
中西:だから弊社の人事評価制度では、整備は特に等級は部長級でも、部下を一人も持たないというポジションを作るということも過去にはやっていました。それは営業職でもありましたね。社員等級は部長だけど、基本的に自分の部署や部下は持ちません。とはいえ 先輩や後輩という当たり前の関係はありましたけどね。その代わり、育成や管理マネージメントはしない。ひたすらプレイヤーという役割です。
ーーーーー面白いですね。それでも結果、会社は回るわけですよね。
中西: そうです。個性に応じた必要な枠だと思うし、会社もそれで構わないですよ。ただ 全員がそれを目指されちゃうと困るんですよ(笑)。どの職業でもあると思うんですが、整備士はその人の性格がキャリアにすごく出やすいんですよね。
ーーーーー方でトラックドライバーもそうですが、整備も好きであれば、長く働ける環境があれば「悪くないな」と思うんですよ。
丸毛:さきほど撮影していただいた方は阿部さんという方なのですが、もう80歳です。弊社も60歳定年でその後も1年契約で延長していくのですが、大体が本人は続ける気満々なんですよ。途中で家族に「周りの皆さんに迷惑をかけるでしょう」なんてたしなめられて引退するんですが、また戻ってきたりします(笑)。彼らもただ家にいるのは嫌なんですよね。
中西: それはいいですよね。
丸毛: こちらとしては健康と安全面だけ考えていただければ、何歳でも働いていただいて大丈夫なんですよ。
中西:そうですね。そういう意味で言うと、重いものは別としてそれ以外は作業できますからね。
ーーーーードライバーもそうで、高齢化と言われ周りがやんやと言いますが、だいたい本人はやる気なんですよ(笑)。
中西:今は 適正検査があってちゃんと客観的な指針があるから、それをクリアしていれば問題ないですよね。
丸毛:我々としては、後輩たちへの指導や管理といったところについて欲しいんですが、本人たちは現場を離れる気がないというパターンがとても多い(笑)。こちらとしても 戦力に、数えられればいいとなってきちゃうんですよね。それと教え方というのも、なかなか今の現代的には「見て覚えろ」というのは難しかったりします。
アルフレッド: 職人の教え方は何と言っても下手なんです(笑)。「見て覚えろ」なんてあんまりですよ。
中西: 一方で「見て覚えろ」は究極の教え方だとも思っています。見て技量を習得できる意欲や才能がなければ、整備士や板金としてお金をもらえる能力にはつながらないと思うんですよ。見て学べない人はその職業に向いてないから、そもそも合っていないというのが本質的にはあると思うんですよね。
丸毛:板金とかは特にそうですよね。どうしてもアーティストの面がありますからね。
ーーーーー確かに板金・塗装はアーティストですよね。とても職人的で属人的な仕事だなと思います。それでは今後、丸毛自動車工業さんは寝屋川工場、 堺工場においてどういった 展開をしていこうと考えているのか教えてください。
丸毛:今年で会社は72年目に当たります。会社の目標としては100年を目指そうとみんなで話しています。そのためには常に「しっかり稼ぐ」というか、毎年の目標をしっかり積み重ねて行って土台作りをしていきたいですね。我々は「販売がまだ弱い」と思っているんです。販売が順調であれば必ず整備もついてくるので、今後100周年を見据えた計画として注力していきたい方向ですね。そのためには、まず人材を募集する。それ以外の部分で問題なのは現場の高齢化です。技術の継承を行いつつ、若返りを図っていきたい。
ーーーーーなるほど。
丸毛:架装は特に今後は継承が必要なんです。技術の継承なくしては出来なくなっていってしまうんですよ。特に我々の強みとして、他社にはできない架装もあるので、そこは「守っていかなければいけないな」と思っています。それぞれの部門ごとに長期の目標と月次の目標を明確にして、話し合いもしています。とにかく、そこで出てきた課題を潰していくということです。画は描けてもそれを実行する人がいなければ意味がないので、全体的な大きな課題としては「どう人材を獲得していくか」という点に注力していきたいですね。