ボルボ新型FH

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ボルボ新型FH 最速試乗レポート!

ボルボ新型FH 最速試乗レポート!

このコーナーではヨシノ自動車が今後販売する、気になる商用トラックのニューモデルを試乗し、最速リポートします。第5回では、新型になって初めてのマイナーチェンンジを果たしたボルボの新型FHです。新型はマイナーチェンジとはいえ、中身はまるで違うトラックに生まれ変わっています。馬力は460馬力と540馬力と、それぞれ従来より20馬力アップ。さらに衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報などの安全快適装備をはじめ、ハンドル操作を支援するボルボ・ダイナミック・ステアリング、エンジンをかけずに冷房が使用できるIパーク・クールを標準搭載(リーフサスペンション車を除く)しました。さらに540馬力にオプション設定される、シフトスピードを格段にあげるデュアルクラッチ、超低速走行が可能なクローラーギアを設定するという攻めの姿勢です。さて、その乗り味はどうだったのでしょうか?

文:青木雄介
写真:青木雄介、大島宏之

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キャビン周りの外観・内観はまったく変更なし

ボルボ新型FH

キャビンのエクステリア周りで特に変更された箇所はありません。乗り込んでみても現行のFHと変わったところは感じられません。入念にインストゥルメンタルパネルをチェックすると、ありました! 衝突被害軽減ブレーキに車線逸脱警報、ふらつき警報、レーンチェンジサポートのスイッチです。国産ユーザーからすると今さらではありますが、欧州ではとうの昔に実用化されていた運転支援機能ばかりです。なぜ日本にこれまで導入できなかったかについては鍵人訪問記(https://www.yoshino-motor.co.jp/keyman/21/)に詳しいので是非ご一読を。さっそくエンジンをかけてみましょう。

静音性が高められたエンジン

ボルボ新型FH

まず新型はエンジン音が抑えられているのに驚きます。ディーゼルノイズのガラガラとした耳につく高音域を抑えることで不快な印象が取り払われています。静音性では、国産の中で頭ひとつ抜けだしている新型ギガと同等か、もしくは上をいっている印象さえあります。13リッター越えのエンジンであることを考え合わせると、驚異的に静かだいえるでしょう。

より“速く”、“スムーズ”になったI-シフト

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さらに走りだすと驚くのがそのスムーズさです。今回の試乗車はI-シフトのシングルクラッチですが、従来よりシフトスピードが速くなり、変速ショックも軽減されています。最初、「これがデュアルクラッチか」と勘違いさせられたほどの速さを体感できます。シングルクラッチでさえ大幅な進化を見せているのです。理由はミッションに内蔵されているカウンターシャフト・ブレーキの枚数を増やして、より細かな制御が可能になっていること。さらにデュアルクラッチが導入されたことで、シングルクラッチでもAIの演算速度が高速化されたことがあげられます。

国内では無敵の自動変速I-シフト

ボルボ新型FH

速度があがると、その感覚はほぼ乗用車と変わりません。このI-シフトがみせた、更なる大幅進化に国内で追随できるメーカーは今のところないと思われます。そもそもボルボではI-シフトの手動操作を推奨していません。I-シフトは走行後20分間でドライバーの癖や特徴を学習し、結果を適切なシフトタイミングに反映します。「お任せしてくれれば故障のリスクを減らし、寿命を伸ばすことも出来る」という訳です。

常識を変えるボルボ・ダイナミック・ステアリングとは

ボルボ新型FH

この新型FHの乗用車感覚はハンドリングの軽快さにもあります。まずとにかく軽くなっているのですが、これがこのマイナーチェンジの目玉となっているボルボ・ダイナミック・ステアリングの効果です。ボルボ・ダイナミック・ステアリングは通常の油圧式ステアリングギアにセットされた電気モーターによるアシスト機能です。ドライバーの意図とオンボードセンサーで進行方向を読み取り、毎秒2000回もの制御をおこなうボルボの特許技術です。

トレーラー後退を圧倒的にしやすくする機能

ボルボ新型FH

メリットはハンドル操作が軽くなったことに加えて、轍があるような路面状況でもハンドルがとられるような影響を与えません。この感覚は非常に不思議な感覚です。例えば通常は直進するにしても、細かな修正舵を無意識に入れるものですが、まるで停車しているかのようにハンドルを動かすことがありません。カーブでも意図を先読みするように正確な軌道をトレースします。これは試せなかったのですが、ボルボ・ダイナミック・ステアリングの真価は後退時にあります。トレーラーシャーシを牽引している際の後退時でも、ほとんど逆カウンターを当てずに真っすぐ後退できるとのこと。もっとも経験が問われるトレーラーの後退とヤードづけを、サポートしてくれるのは間違いないでしょう。

安全快適機能も万全の構え

ボルボ新型FH

衝突被害軽減ブレーキ、アダプティブ・クルーズコントロールを使用することはありませんでしたが、車線のはみ出しやふらつきへの警報、レーンチェンジの警報などは特筆すべきものではなく、その仕様も国産と変わったところはありませんでした。また一部の国産トラックにも搭載されていて、FHには以前から搭載されているものですが、ブルートゥースで手持ちのスマートフォンやタブレットから音楽が聴けるのは重宝します。ラグジュアリーのグレードを選ぶと、ウーハースピーカーが追加されるので音も非常に良くなります。

夏場を快適な環境にするI-パーク・クール

ボルボ新型FH

天井に採光口があって、広々とした室内空間に音楽が拡がる感覚も、一種のボルボならではのぜいたくな感覚です。快適性という意味で今回、エンジンを切った状態で8時間程度、冷房が使用できるI-パーク・クールが標準搭載されています。これまでは社外品の冷房装置をキャビンの改造をして取り付けなければなかったので、標準装備でこの快適機能がついてくるメリットは大きいのではないでしょうか。

踊り場下のレイアウトは……

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さて良いことずくめの新型FHですが、がっかりさせられる点もあります。今回、シャーシ周りのレイアウトが見直されました。スペアタイアは外され、尿素タンクは燃料タンク横からキャビン後方に隣接して設置されることになりました。尿素タンクのあったスペースにはバッテリーが車両後部から移動してきました。結果的に隙間なく、踊り場下に収まっていたはずのパーツが外に出てきて、スペースが目立つバランスの悪さを露呈しています。しかしこの改変は致し方ないところです。以前のカプラー下にバッテリーが設置される構造だと、エアサスの調節を失念したドライバーがトレーラーシャーシのキングピンでバッテリーを直撃する危険性があり、スペアタイアを搭載しているとちょうど排気マフラーの吹き出し口からの熱を浴び続けることで、タイヤゴムを痛めて寿命を早めてしまっていました。この改変は致し方ないので、スペアタイアがあった場所を有効活用するアイデアとパーツが待たれるところです。

ボルボ新型FH 試乗のまとめ

ボルボ新型FH

今回の新型FHのマイナーチェンジはモデルチェンジ以上の衝撃です。馬力も性能も快適性能も全方向的にグレードアップしました。特にボルボ・ダイナミック・ステアリングの技術力の高さと、デュアルクラッチ化にともなうI-シフトの高速化と最適化は衝撃的です。シングルクラッチでもこの変速スピードにして最適なギア選択は、乗用車のオートマチックと同様にドライバーの意志をまったく必要としていません。4x2の540馬力でデュアルクラッチは“最強のボルボ”と言えますね。今回試乗してはいませんが、連結総重量ベースで100トンを牽ける超低速ギアのクローラーギアも導入され、超重量物輸送でも存在感を高めてきました。720馬力を有するスカニアに対して、あくまでも実働想定域で勝負するボルボ・トラックの姿勢が、表れていると言えるかも知れませんね。

ボルボ新型FH

またボルボの特許であるボルボ・ダイナミック・ステアリングですが、左バックの際にミラーのみの視認になるので、ベテラン運転手でないと運転するのは難しいと言われてきました。例えばボルボ・ダイナミック・ステアリングのCMのような繊細な直進バックが安定してドライブ出来るなら、左バックをミラーのみの視認で行うのも容易になると想像できます。ボルボ・ダイナミック・ステアリングによってボルボは、ベテラン運転手にとって快適な運転を保証し、初心者や高齢者にとっては最も運転のしやすいトラックに生まれ変わったと言えるでしょう。一方で踊り場下のレイアウト変更は見た目だけではなく、燃料を入れる際に一緒に尿素も補給できていた以前に較べると、反対側に移らなければならない手間がかかります。けれども、外観に新型をあらわすデザイン変更が無い中で、外出しの尿素タンクは新型FHの象徴的なアイコンになるのかも知れません。

ボルボ新型FHバッテリーケースが移動したカプラー後方のレイアウト

ボルボ新型FHアリといえばアリ。エアロで隠すのもアリか。

ボルボ新型FHbluetooth接続画面。あらためてデザイン性が高いですね。

ボルボ新型FHボルボ・ダイナミック・ステアリング搭載でスピンナーは不要に!?

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