株式会社ヨシノ自動車

トラック業界"鍵人"訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第113回

新型ボルボFHメーカー篇

新型ボルボFHメーカー篇

「ボルボからミラーが消えた日。日本初CMSで新型ボルボFHは何を変えるのか?」

長年、大型トラックの“あたりまえ”だったサイドミラーが、その姿を消すかもしれません。ボルボが日本の商用車として初めて搭載したカメラモニターシステム(CMS)。物理ミラーをカメラとモニターに置き換えるこの技術は、どれだけの実力があるのでしょうか? ボルボ・トラックが出展していたジャパントラックショー2026の会場で、日本導入の最前線に立つバイスプレジデント関原紀男様と、ディーラーであるヨシノ自動車社長・中西俊介に、それぞれ本音を語ってもらいました。

編集・青木雄介
WEB・genre inc.

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日本初CMS、ヨーロッパでは受注の75%

―――報道発表されたカメラモニターシステム(CMS)について、日本国内初ということですが、現在の評判はいかがですか?

関原:まだ車の納車が始まっていないので確実なことは言えませんが、社内の試乗会で社員に乗っていただいた際は大好評でした。後ろにトレーラーを引いて、そのトレーラーの後端がモニターの中心に来るような設定ができます。ただ単にカメラで映像を映しているものではなく、実際の運用に耐えうる車だということです。

―――国産でCMSはまだないのですが、ヨーロッパの競合他社の状況はどうでしょうか?

関原:ヨーロッパ勢の多くはオプションで提供しています。ボルボの場合、現在ヨーロッパで受注している車両の75%がCMSだということです。

体を傾けずに死角を見る

―――75%ですか。すでに大きな支持を受けていますね。

関原:今まで確認しにくい場所はドライバーが体を傾けてミラーを見ていましたが、それが体を動かさないで、カメラが「見たい場所」を撮って映してくれるので、「見たい場所」が常にそこにあるという強みがあります。

―――なるほど。

関原:左カーブでもカメラがトレーラーの動きを追従するので、通常は見えなくなる範囲も含めて、常に確認したい場所をモニターに映し出します。それに加えて、パッセンジャーコーナーカメラという、ドライバーから死角になりやすい助手席側(左側)の直前・側方の安全確認をサポートする、広角セーフティカメラが助手席側カメラアームに付いているので、こちらでも死角をカバーできます。

―――物理的なミラーがなくなることによる視界の変化はありますか?

関原:物理的なミラーがなくなることで、今までミラーの影で見えなかったものが見えるようになります。加えて、そのミラーを押さえているアームなどもないので、運転席に座ると今までより視界が広くなり、視認性が上がります。

追記:【試乗メモ|2026年モデル試乗会より】ミラーのない世界の実力

・モニター下部のボタンでガイドライン(基準線)の長短を調整でき、セミ~フルトレーラーの長さや「ここから危険域」という停止位置の目安を自分でカスタマイズできる。
・昼は高精細表示、トンネルや夜間は自動で暗所対応へ切替。拡張夜間モード(赤外線)への手動切替もでき、夜間でも昼と同じ感覚で後方を確認できる。
・オートパンは前進時にハンドル操作へ追従して視点が自動で動き、トレーラーの折れ角と後端の位置関係を直感的に把握できる。
・左バック問題の解消。ベッドスペースに窓がなく難所だった左バックが、トレーラー後端の動きを確認できるので、ミラーでの右バックとほぼ同じ感覚で行える。
・ミラー廃止で風切り音が低減し、空気抵抗の減少で燃費が約1%改善(3km/L級で約3.03km/L相当)する。

全車標準装備へ。気になる価格と納期

―――今後の販売戦略について、どのような展開を考えていますか?

関原:日本では標準装備です。オプションの設定はありません。

―――懸念点として、曇りや故障などの問題はありませんか?

関原:ヒーターを標準装備しているため、雨天時や寒冷時でも曇りにくく、安定した視界を確保できます。また、よくいただくご質問として、「電子システムなので故障した場合はどうなるのか」というご懸念があります。しかし、従来の鏡面ミラーも、接触などで破損すれば交換が必要になる点は同じです。カメラモニターシステムについても、万が一の物理的な損傷や故障に備え、必要な交換部品やシステムを適切に在庫し、迅速に交換・修理できる体制を整えています。安心して長くお使いいただけるアフターサポートを提供することも、私たちの重要な責任だと考えています。

―――確かにそうですね。カメラの出っ張りは従来のミラーと比べてどうですか?

関原:ほぼ一緒です。電動で畳むこともできます。

―――実際の販売開始時期はいつ頃になりますか?

関原:ディーラー様へお届けするのは5月後半か6月頃からとなります。モデルとお客様の仕様によっては、夏前には納車できるのではないでしょうか。

―――引き合いはどうでしょうか?

関原:思っていた以上に受注は入ってきています。実際に運用していく中で「これはいい」という製品の実用性が広がることを期待します。

人も検知して止まる、進化した安全装備

―――他の安全システムとの連携についてはいかがですか?

関原:今回のモデルからショートレンジアラートが搭載され、自車の前方や左側に歩行者や自転車を検知すると、強制的に停止させる機能があります。万が一見ていなくて、助手席側ドアの下に歩行者が歩いていることに気付かず、左折しようとしても、ブレーキをかけてくれます。一世代前のモデルは金属にしか反応しませんでしたが、今は人も検知できるように進化しています。

また、「側方警報装置」の機能もさらに進化しました。車両左側にいる歩行者や自転車、オートバイを検知し、衝突の危険があると判断した場合には、自動でブレーキを作動させます。例えば、ドライバーの死角となるドア下付近に歩行者がいることに気づかず左折しようとした場合でも、システムが危険を検知し、事故の回避を支援します。

追記:【試乗メモ|試乗会より】「大切なものを守る」進化した安全装備

・衝突被害軽減ブレーキ(人検知機能付き)やフロントショートレンジアシスト(低速走行時前方衝突警報装置)は継続搭載。
・2026年モデルの目玉は側方衝突警報の進化版。左折の際、他の交通を巻き込む恐れが高まった際に自動的にブレーキをかける機能。助手席側の方向指示器作動時に有効な緊急ブレーキで、車速20km/h以下で作動する。国内で法規制化される予定はないが、安全性向上のため採用した。


中西俊介インタビュー「2026年モデルは絶対売れます」

どれだけ優れた技術も、現場で売れなければ意味がない。20年にわたりボルボを扱ってきたヨシノ自動車の中西俊介は、新型ボルボFHを「絶対に売れる」と言い切ります。その一方で、最大の壁は価格であることも理解しています。顧客層が移り変わるなか、ディーラーの目に新型ボルボFHはどう映るのでしょうか。価格のリアル、販売戦略、CMSの設定対応まで、現場目線で踏み込みました。

最注目はCMS。それでも“問題は価格”

―――2026年モデルについてどのような評価をお持ちですか?

中西:最も注目すべき機能はCMS(カメラモニタリングシステム)です。これは日本の大型トラックでは初めての導入となり、実際に乗車すれば視認性の向上、特に夜間の視認性が大幅に改善されることが実感できます。ボルボが重視する安全性という観点から見て、非常に優れた機能だと評価しています。

―――売れ行きの見通しはいかがですか?

中西:製品自体の品質を考慮すれば絶対に売れると確信しています。しかし、問題は価格にあります。

新型ボルボFH、そのリアルな価格

―――価格面での変化について詳しく教えてください。

中西:円安効果や海外の物価高の影響により、2025年モデルと比較して相応の価格上昇が見込まれます。具体的には、470馬力のスタンダードモデルで車両本体価格が約2,300万円。通常の仕様(サイドバンパー、エアロディフューザー含む)では約2,500万円、さらにボルボブルーなどのオプションを加えると約2,800万円になります。※価格は2026年6月時点でのヨシノ自動車の価格です。

―――国産車との価格比較はどのような状況ですか?

中西:「断トツで高い」ですね(笑)。過去には国産車が1,000万円未満だった時代にボルボが1,200万円から1,300万円で、400万円から500万円の価格差でした。現在は国産車でも同等仕様であれば1,800万円から1,900万円程度となり、ボルボとの価格差は400万円から500万円程度に留まっているものの、価格としてはボルボが最も高い水準にあります。

顧客層が変わった

―――需要の見込みについてはいかがですか?

中西:ヨシノ自動車は海沿いに本社をもつ立地から、これまで海コン関連やフェリー系のお客さんが多かったのですが、昨年から中長距離トレーラー運送を行う中堅・大手企業(100台以上保有)をターゲットに、新規開拓を進めています。現在数件の案件が受注段階にあって、これらの企業にとって価格は高いものの、まったく手が出ないほどではないとの感触を得ています。

―――試乗会に招待されているお客さんの構成について教えてください。

中西:参加者の約半分が既存顧客(5年から10年の長期取引先)で、残りの半分から3分の2程度が新規顧客です。これは過去1年間にわたって継続的に行ってきた、新規営業活動の成果が反映されています。

―――たしかに変わってきましたね。ターゲット顧客層の変化について詳しく聞かせてください。

中西:ヨシノ自動車が20年間ボルボディーラーとして事業を行う中で、従来はファストエレファントを中心とした個人事業主や純粋にトラックが好きな顧客層をターゲットにしてきました。しかし、現在は中堅・大手の運送事業者にしっかりとハマる商品とサービスを提供できるようになり、その層が増加してきました。2026年モデルの登場により、従来の様々なトラックや商品を扱う中の一部としてのボルボから、ボルボ販売が主軸となる可能性を見据えることが出来ます。

設定・整備、アフター対応はどうなる?

―――なるほど。アフターマーケットへの対応はどうでしょう?CMSシステムの設定や調整はヨシノ自動車で対応されるのですか?

中西:カメラのミキシングや校正などの作業はすべてヨシノ自動車で対応します。その点からいうと、新しい木更津拠点での親和性は高いです。

―――専用工具などは必要になりますか?

中西:ボルボの純正スキャンツールにアップデートが追加され、それを使用することになります。残念ながら旧型車両への後付けはできないようです。とはいえ、ヨシノ自動車では別途、社外品のミラーレスシステムを2020年頃から提供しており、実際にデモ車にも装着していました。

―――初耳です。その社外品システムの評判はいかがでしたか?

中西:評判は悪くなかったものの、現在と比較すると解像度が全く異なります。わずか5年間でカメラ技術が大幅に進歩していることを実感しています。

―――従来の社外品オプションは今後も継続販売されますか?

中西:新しいCMSシステムが導入されれば、従来の社外品オプションの販売は終了する可能性が高いです。


新型ボルボFH(2026年モデル)の良いところ・悪いところ・ホントのところ

メーカーとディーラー、立場の異なる二人の証言を突き合わせると、新型FHの輪郭がくっきりと浮かび上がりました。視界と安全性で大きく前進する一方、価格上昇とレトロフィット不可という現実的な課題も残っています。両氏の話から、新型FHの「良いところ」と「悪いところ」をそれぞれ一覧にしました。購入を検討するうえでの、率直なチェックリストとして読んでみてください。

◎ 良いところ

  • 日本初のCMS(カメラモニターシステム)を搭載。視認性が大幅に向上し、特に夜間の視認性が改善される。
  • 前進時、モニター中心に追従表示。カーブ時もカメラが自動で動いて追従する。
  • パッセンジャーコーナーカメラにより、左側の死角を大幅にカバー。
  • 物理ミラーの撤去で、ミラーの奥やアームの陰が見えるようになり、運転席からの視界(ビジビリティ)が向上。
  • ドライバーが体を傾ける必要がなく、運転姿勢を保ったまま視認できる。
  • ヒーター搭載で曇りが発生しない。
  • 出っ張り・車幅感は従来ミラーと同等で、電動格納にも対応。
  • フロントショートレンジアラートを搭載。車両の停止時、および時速10km以下の低速走行時に作動し、前方・左側の歩行者や自転車を検知してドライバーに光と音で警告。
  • ヨーロッパでは受注の約75%がCMS仕様で、実用性が証明済み。
  • CMSの校正・設定(ミキシング・構成)はヨシノ自動車(木更津拠点)で対応可能。専用工具はボルボ純正スキャンツールのアップデートで実装。
  • 製品力は非常に高く、想定以上の受注・引き合いが既に入っている。
  • 日本市場では標準装備としてボルボFH全車に展開。

試乗で見えた、CMS以外の進化

  • VDS(ボルボ・ダイナミックステアリング)が進化。深い轍でもキックバックを大幅に低減し、悪路やスラロームでも「思った通りに動く」操縦安定性。バースト時もハンドルを取られにくく直進へ戻す制御は競合他社に非搭載。
  • 三段サスペンション(アクスル/キャブ/シート)の熟成により、砂利道や轍の衝撃吸収が体感で別次元になり、静粛性も向上。
  • I-シフト+13リッターエンジン。551PS・2デフ仕様で約20トン牽引でも初速からスムーズで、シングルクラッチでも段付きがなく排気ブレーキもよく効く。
  • パイロットアシスト(時速8km/h〜)+レーンキープアシスト(時速55km/h〜)。ハンドル非操作が続くとハザードを点灯して停止する設計で、ドライバーの体調急変にも備える。
  • プッシュスタート方式を新採用。リモコンで遠隔の空調オンや施錠・解錠ができ、電池切れ時はステアリングコラム下の目印にかざして始動、緊急用の物理キーも内蔵する。
  • ボルボ・コネクト(テレマティクス)が標準搭載となり新車登録後5年間は無償。ジオフェンスや燃費・CO2のレポート分析など車両管理を支援する。

△ 悪いところ・課題

  • 価格上昇。470馬力スタンダードで車両本体約2,300万円、通常仕様で約2,500万円、フル装備で約2,800万円。※価格は2026年6月時点でのヨシノ自動車の価格です。
  • 国産車との価格差。価格差は400万〜500万円程度、絶対価格はボルボが最高水準で、価格感度の高い顧客には採用障壁となる。
  • 既存車両への後付け(レトロフィット)は不可のため、旧型車両のユーザーは純正CMSを享受できない。代替の社外ミラーレスシステムは画質・解像度で純正に大きく劣る。

☆新型FH試乗記事はコチラのハローニュートラックでどうぞ。

新型ボルボFH(2026年モデル)試乗レポート

< 対談一覧に戻る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加