トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第17回

山田車体工業株式会社 代表取締役社長 
山田和典様

山田車体工業株式会社 代表取締役社長 
山田和典様

「ヤマダボデーを語ろう!いまこそ“造りボディ”が運送業界に貢献する時代」

蝶番や観音ステー、ステップや燃料タンクにもきっちりステンレス。ピカピカの造りボディはより高級感にあふれ、品質や耐久性にも優れます。一目見てそれとわかる造りボディは正にトラック運転手の華ですね。第17回となる今回は山田車体工業こと“ヤマダボデー”さんにお邪魔し、社長の山田和典様と対談してきました。このメーカー完成車隆盛の時代に、「もっと特殊な車型を作りたい」と意気込むヤマダボデーさんの狙いはどこにあるのでしょうか? ヤマダボデーさんの作るオーダーメイドボディや造りボディの良さ、愛される理由を探ってきました。

写真・薄井一議
デザイン・大島宏之
編集・青木雄介

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ヤマダボデーでなければならない理由とは?

____そもそもヨシノ自動車さんはヤマダボデーさんとはどのような関係なんでしょうか?

中西:弊社はシャーシを日野さんやふそうさんから購入して、1点もののボディを制作する時にヤマダボデーさんにお願いしています。最近ですと、大型のアルミブロックの平台とセルフクレーンを発注させていただいています。

____そこにはヤマダボデーさんでなければならない理由がありそうですね。

中西:はい。そもそもヤマダボデーさんは関東において知名度がありますし、製品の品質は間違いありません。片方でここ十年は各メーカーさんの完成車が販売の主力になっていて、それはそれで値段は安く手に入るのですが、造りボディには耐久性や品質という意味で魅力がありますよね。弊社としても、お客様に極力安い製品を提供したいというより、品質の高いものを提供したいという狙いがあります。 それと造りボディにはいろんなスタイルがありますが、ひとえにセンスが良いか悪いかも非常に重要だと思うんですよね。その意味では、ヤマダホデーさんは格好良く作っていただけるんですよね。

____なるほど。格好いいか悪いかは大きなポイントですね!

中西:もちろん、これまでも他のメーカーさんに同様のトラックをお願いしているケースはあるのですが、やっぱり違う。そこなんですよ。そもそも色んなケースを架装しているから、ヤマダボデーさんは経験値が高いのだと思います。例えば我々は実際にそのトラックを使用するわけではないので、使用者に立ったものの見方というのはできないのですが、ヤマダボデーさんは使用する立場にたって積極的にご提案していただけるんです。

一点モノが製品化されるヤマダボデー

山田:ありがとうございます。 お客様のご要望でも、製品として成立しないものはこちらで修正してご提案さし上げる、という販売の仕方をしております。そこをお客様の要望をのんで無理やり作ってしまうと後々、トラブルになってしまうケースもあるからです。

中西:前に4軸の大型セルフローダーを製作しようと考えた時に、社外品の大型テールランプを付けたいという要望を出しました。セルフローダーは地面に あゆみをおろす時に接地面との関係で、耐久性が未知数だったことから要望した大型テールランプは避けなければいけなかったんですね。他のボデーメーカーさんはその辺、あまり気にせずにつけてしまったりするのですが、山田ボデーさんは耐久性も優れた、それと似たようなテールランプを提案してくれました。そういうところですよね。我々は見た目だけでしか判断できないから、それを使用者の目線で提案してくれるのが、ヤマダボデーさんの素晴らしいところのひとつだと思います。

____プロですね。そもそもヤマダボデーさんの販売している多様な車型というのは、お客様のニーズから生み出されたのでしょうか。

山田:はい。そうですね。きっかけはお客様のご要望です。何もないところから我々が生み出すということはありません。その分、完成車よりは高めになってしまいますけれど、お客様により満足していただける製品に仕上がります。お客様がたまにおっしゃるのは、 中古で販売しても弊社の造りボディの需要はあるみたいで、それなりの値段で販売していただけているということでした。

なぜ造りボディ専業となったのか?

____私もそれを見たことがあります。十数年前のヤマダボデーさんの造りボディが、高年式のトラックシャーシに乗っている中古トラックでした。

中西:載せ替えたんですね。

山田:そうです。

中西:ヤマダボデーさんの蝶番や観音のステーをステンレスで組んでいるような、造りボディを査定するとなると値段は全然違ってきます。4トンでも50万円ぐらい違うんじゃないかな。5年落ちぐらいだと、まだエンジンやシャーシの値段が残っているので、その差があまり分からないかもしれませんが、10年落ちぐらいになるとはっきり違いが出てきます。

____面白いですね。ヤマダボデーさんのトラックボディは使いようによっては「一生モノ」と言えるかもしれませんね。 ちなみにこれまで特定のトラックメーカーさんとの協業などはなかったのでしょうか?

山田:昔は一時期、ふそうさんの平ボデーを作っていた時期がありました。ただ昭和50年代以降は撤退して、造りボディの専業になっています。

____その時、造りボディの専業となられたのには何か理由があったのでしょうか?

山田:既存のお客さんが完成車を手にしてしまうことと、工場の枠がどんどん完成車に取られていくことに危機感を感じたんです。そこで色々考えたんですね。やはり元々、ご愛顧いただいていたお客さんが多かったので、そちらをまず優先したかったんです。特にこの工場のある近隣は、長くから弊社をご愛顧いただいているお客様が多いですから。

必ずしも誰もが軽量化を迫られている訳ではない

____ヤマダボデーさんの特徴というのは、やはり平ボディということになるんでしょうか。

山田:そうですね。一言で言いますと「丈夫で長持ち」です。欠点としては若干、重たいということでしょうか。

____耐久性を担保にすると、致し方ないところですね。

中西:確かに世の中的には排ガス規制の影響もあり、シャーシ自体の自重も大きくなってきていますよね。その分、ボデーメーカーさんに軽量化のしわ寄せがきちゃってますよね。それが現状だとは思いますが、全ての物流が軽量化を強いられてるわけではないですよね。話がずれちゃうかもしれませんが、ドライバー1人にトラック1台と言う法則は今後も当分、変わりません。その点、トラック業界というのは人ありきの商売なんです。そんな時、みんながみんな同じ車なのか、他にはない造りボディなのか。どちらを喜ぶのかというのは、なかなか数字では表せないところではあります。その点、人材不足を解消するという意味でも、造りボディは近年、注目されているのではないかなと思うんですよね。

____私も造りボディが好きで見かけると、ついつい見入ってしまいます。ステンレスのパーツや 細かく切り貼りされた縞板やウロコステンはやはりかっこいいですよね。ヤマダボデーさんとしては、やはり大手のメーカー系のボデーメーカーさんがやらないことをやるというのが大事なんですね。

山田:そうです。メーカー系ボデーメーカーさんの路線から外れた特別なボディを作ることにこだわりがあるんです。今後も、より特殊な方向へ行きたいと思っています。

造りボディの受け皿はどんどん減少している!?

____より特殊な架装を可能にするために、工場に新しい機械を入れたり、技術の進化が後押ししてる側面というのはあるのでしょうか。

山田:特殊なボディをつくるには、まず図面をおこせるかが大事だったりするのですが、東京モーターショーで発表させていただいたフラップボディ(Zフラップ9:1)であったり、元々あった仕様のものを新しく改変するような仕様が得意と言えるかもしれないですね。そういったメーカー系の路線を外れたボデーを作れる会社がどんどんなくなってきているということもあり、その受け皿になりたいという信念は持っています。一般メーカーさんは 生産性を重視するので部品や仕様を共通化、統一化しようとします。例えばフレームの寸法がちょっと違うだけでも使用者が目をつぶるという方向になりつつあるのですが、我々が同じことでコストや生産性を求めても量では勝てません。ですから、そこから外れるものを受け入れたいのです。元々、一般メーカーさんの方でも特注ボディは製作されていたのですが、だんだん受けなくなりつつあります。

____例えばどんなボディでしょうか?

山田:いままだ実現はしていないのですが、ウイング仕様で2階建てのボディなどですね。フロアをエレベーターにして積めるとか、そういう特殊なボディをどんどんやってみたいですね。

中西:ああ、レーシングカーを積む時なんかに使用する特殊な車体でありますよね。

山田:そうです、そうです。重ねられないものを運ぶ時に使うものですね。例えばバスタブとか。 運送屋さんの方でも、こういう特殊な車両を持っているとそういう仕事が来るという多用途性に特化した会社さんも多いですし、それが売りだったりします。我々のようなそれが出来る会社がなくなってしまうと、そのニーズに応えられなくなってしまうんですね。だからこそ我々はできる限り、特殊なボデーに対応していきたいなと考えているんです。

完成を待たずに売れる、人気の“造りボディ”とは

____失礼な質問で申し訳ないのですが、ここ最近の売り上げはいかがなものでしょうか。

山田:工場の生産台数はこれ以上、増やせないのですが1台当たりの単価はどんどん上がってきています。それは輸送形態がより複雑になってきているからなんですね。仕様がより複雑、多岐にわたっています。でもそれも「この辺が限界かな」というところまできてしまっていますね。

____現在、ヤマダボデーさんにお願いするとどれぐらい待たなければいけないのでしょうか?

山田:ほぼ1年待ちぐらいにはなってしまいますね。

中西:ヨシノ自動車でも何とかお願いしてやっていただいてるんですよ(笑)。後はもう、全部1年後以降になってしまいますね。

山田:現在は完成車と造りボディというのは、完全に市場が分かれていて、完成車でご対応頂けるようなお客様というのは弊社にはいらっしゃらないんですよね。最近は完成車と造りボディを両方で活用するお客様もいらっしゃいます。元々のボディは完成車だけど、細い仕様を二次架装するのに弊社に入れ直すとか。使い分けられているので、同じ土俵とは言えませんよね。そんな風に棲み分けが出来てきているのが、現在の新車ボディだと思いますね。

____ヨシノ自動車さんでも最近のそういった傾向は感じられますか?

中西:弊社はボルボに関してはディーラーですが、もともと中古車を母体としていますから販売する車は完成車に近いんですね。我々がヤマダさんに発注するときは、我々がもっともお客さんにアピールするだろう車型で発注させていただきます。毎年、年に数台ではありますが、、ヤマダボデー製のトラックはほとんど完成を待たすに販売できていますね。

____お客さんとしては、憧れの造りボディがすぐ手に入るということですね。

中西:完成する前に写真を撮らせていただいて、商談やSNSでアピールするんです。やはり写真で充分伝わる、それだけの魅力があるんですよね。

平ボディの安定した人気ぶりの秘密とは

____先ほど中西社長が発注するのはアルミブロックの平ボディとおっしゃっていましたが、まだまだ平ボディもニーズがあるんですね。

山田:はい。元々トラックは平ボディだけだったのが、シートがけが大変ということでウィングが登場して、平ボディの数は少なくなりました。ただウイングだけだと運送会社さんとしては運べる荷物が限定されてしまうので、例えば10台に1台は平ボディというようにニーズは残っています。弊社の工場に発注される割合で行くと、増えもしないし減りもしないのが実態です。

____なるほど。国道を走っていても、かつてほど平台を見なくなったのでオーダーも減っているかと思いました。

中西:今は確かに運送業界で平台は少ないかもしれないですね。鋼材なんかもトレーラーを使用するようになってますよね。ただ重量物や精密機械ではまだまだ平台の需要はありますよ。ここ最近、建設業界が元気なので、建設資材の運搬用に平台という傾向は顕著になってきてますよね。弊社で平台を発注しているのも、ここ最近の話ですから。オリンピックが決まって建設業界は元気になるだろうと、そういった時代の流れもありますよね。

____了解しました。ヤマダさんはトレーラーは制作されないんですか?

山田:若干ありますよ。台車を支給して頂いて、弊社でやるとしたらウイングトレーラーでしょうか。 ただ台数は少ないですね。

運送品質のハードルが上がることに勝機がある

____いまヤマダさんで取り扱っている人気の車型はどんなものでしょうか?

山田:6割以上はウイングですね。 最近、変わったところで増えてきているのが20°くらいで精密機械を運ぶためのボディですね。機械を作る工場が20°で、運ぶ温度も20°、倉庫も20°そんな厳密な温度管理が必要な運送形態ですね。

____それって運送品質の要求ハードルが相当に上がってきているということですよね。

中西:はい。相当に上がってきてますよね。トラックの冷凍機と加温機が両方ついているのが、当たり前の時代になってますから。 コンビニなんかも冷凍冷蔵ものと普通の常温保存のものを、1台で両方運ぶような時代になってきたからでしょうね。

____なるほど。かつてのコンビニ配送は冷蔵は冷蔵だし、冷凍は冷凍で車両は分けて運んでいましたよね。それで今はアイスもお弁当も一緒に運ぶということですよね。

中西:そこには人材確保の問題もあるんでしょうね。

こだわりの造りボディにリペアプログラム

____確かに。他に人気がある車型を教えてください。

山田:やはり、しっかりステンレスで飾る造りボディですね。皆様、結構飾りますね(笑)。ヤマダボデーは、アートトラックの分野でも名前が知られるようになりました。そもそもお客さんにこだわりがあって、「この形でどうしても作りたい」となれば我々も頑張るしかないですからね。

____実際、飾りたいと考える人ほどトラックを大事に乗るものですよね。ちなみにヤマダボデーさんでは、ヤマダボデー製のトラックのリペアプログラムのようなものはありませんか?

山田:それに近いことを依頼されて行ったことがありますが、積極的に営業したことはありませんね。でも、それを積極的に進めていくのは、とても良いアイデアだと思います。

中西:ヤマダボデーさんの、神奈川の愛川にある工場では、アフターメンテナンスを手掛けているんですよね。そこは弊社でも何回かお世話になっていて、10年落ちぐらいの鋼材を運んでいたヤマダボデー製の大型トラックを買ってきて、ボロボロになった床板をはがして、それを全部直してもらったり、アオリの歪みも外して直してもらったりしました。

____そうやって長く製品を使ってもらうのは素敵なことですよね。あと工場見学をさせて頂いてる時に、ヤマダボデーさんは極力、自分たちで内製化できるところは内製化していきたいとおっしゃっていましたね。それがすごく印象的でした。

山田:我々の考えとしてはボディメーカーである以上、ここまでは自分たちの範疇でやりたいという領域があるわけです。例えば本体を構成するものに関しては、全て自分達の手で行いたいですね。付随する部品などは、あえて我々ができるものでも協力メーカーさんにお願いする場合もあります。やはりメーカーである以上は、総て自分達の手を下してやりたいという気持ちがありつつも、生産性を考えると総てが総てとはいかないですから。

内製化への意志が社風を作る

____それはヤマダボデーさんの社風なのでしょうか。

山田:はい。私も思っていますし、(先代の社長である)親父もそう思ってると思います。昔から弊社で働いてくれている社員たちもそう思っています。そういう意味では弊社のやりがいはそういうところにあるかもしれないですね。パーツを組み立てるだけではなく、パーツのデッサンから始める。設計者もそういう現場が身近にあれば、設計の段階からもっとコアな考え方になりますから。

____貴社の技術継承的な所というのは、どのようにシステム化されているのでしょうか。

山田:技術的な継承でいうと、溶接技術などになると思います。いわゆるローテーションで、異なる工程間の後方支援的なことをするんですが、ちょっと手薄な部署に応援を出しあったり、職長同志でかなり頻繁にそういった交流を行っています。当然、他部署に応援に行くには、そこの部署の仕事を覚えなければいけないので、結果的にいろんな部署の仕事を次第に覚えていってくれるんですね。塗装だけは特殊なので別ですが。組み立てや溶接は多岐にわたって、できる人を増やしていきますね。弊社では定期的な研修は少ないのですが、仕事のある日常の中で積極的に新しい仕事を覚えて行ってもらいたいと考えています。

____将来的な展望をお聞かせいただきたいのですが、今後はより特殊性に特化した方向性を強化していくということでしょうか。

山田:はい。新車の方はどんどん特殊なボディを手がけたいのと、アフターの方ももっと拠点を増やしていきたいですね。改造や修理、二次架装というのはそれを専門に生業としている会社さんは多いのですが、我々のような新車を作るメーカーがそこまでやるというのはなかなかないので、今後は積極的にやっていきたいなと思っていますね。

山田和典(やまだ かずのり)
1973年生まれ、1995年 帝京大学理工学部卒、1995年 株式会社カネヒロ入社、1997年山田車体工業株式会社 入社、2001年 常務取締役 就任、2003年 代表取締役社長 就任、現在に至る。

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