株式会社ヨシノ自動車

トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第42回

トラック営業チーム

トラック営業チーム

「コロナ禍でどうなるトラック業界!? 第一線の営業が納得する“勝ち残る”運送会社とは」

ヨシノ自動車は今年で創業62年。高度経済成長期を経て90年代前半のバブル崩壊や、2000年代後半のリーマンショックといった不景気をたくましく生き抜いてきました。この会社を支えている営業たちは、未曾有の経済危機と呼ばれる、このコロナ禍をどう見ているのでしょうか? そして現在のトラック業界で、そもそもトラックは売れるのでしょうか? 彼らが口にしたのは、この不安定な情勢でも設備投資をし、守りながらも攻める経営者の姿。そこには共通する“ある”特徴があると言います。それは何でしょうか? 誰よりも現場を知る男たちの、リアルな言葉をお届けします。

写真・薄井一議
デザイン・大島宏之
編集・青木雄介

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栗原洋一
常務取締役。荒波を経て、営業の重鎮として第一線に立つ。得意分野はダンプ。

中島貴司
シニアセールス(通称・SS)。ミスター・トラック営業。得意分野は冷凍車、ウイングなど。

金野雄紀
チーフ。ボルボトラックを日々、頑張って販売している。得意分野はもちろんボルボトラック。

増田航基
若手のホープ。最近、仕入から営業へと転身したばかり。

それぞれのコロナの影響

____まずそれぞれの中古トラックの販売状況を教えていただけますか。可能であればその傾向も教えていただけると幸いです。

中島:私はそんなに変化がないんです。コロナが関係なくはないのですが、販売数的には変わらずに、という感じですね。 

____中島さんが得意とされている分野を教えてください。

中島:私は冷凍車や、ウイング系が多いですね。大型、中型で、2トンのドライバンなんかも販売します。逆に大型のバンやトラクターはあまり得意分野ではありません。主に食品関係が多いのですが、それほど影響は受けていませんね。

____なるほど。では金野さんはいかがですか?

金野:私はボルボがメインですが、特に打撃は受けてないですね。自粛期間中などは「ダメになるかな」と考えていたんですが、それも前よりは多少、「動きが鈍いかな」ぐらいの印象です。前々から「買うから」という話を先に打診されるのですが、それが「少なくなってきたかな」というぐらいの印象ですね。

____それは少し、様子見になっているという感じでしょうか。

金野:はい。そんな感じですね。お客さん達も買える状況ではあるんでしょうけれど、ちょっと様子を見ている印象があります。

____それは分かりやすいですね。

金野:後は、もともとトラクターを入れていた会社が突然、クレーンを入れられたようなケースもあります。

____あら。それは一体どういうことでしょう?

金野:僕もわかりません(笑)。新しい仕事が入ったんだと思いますね。 

募集をかけると人が集まる運送業界!?

____了解しました。コロナを機会に社業を拡げたのかも知れないですね。栗原常務はいかがですか?

栗原:私は中島とは逆で、ダンプがメインです。それと中型ウイングですね。今季に入っての売り上げだけでいえば、プラスになっています。台数も増えているし、これまでは「人が足りない」という話ばかりを聞いていたのですが、現状で募集をかけると人が集まって来るそうです。だから「台数を増やすよ」と。

____それはまた興味深いですね。募集をかけると運転手が集まるんですね。

栗原:そうです。今までどうやっても増えなかった人材が募集すれば来るし、非常に真面目な人材が来るそうです。良い意味で運送業界に染まっていない、教えればちゃんとものになる人材だそうです。ひとつの会社で10台ぐらいずつ、私の懇意にさせていただいているダンプ屋さんにはほとんど買っていただけました。

____それは関東圏の話ですか?

栗原:いえ。 関西もあったり東北、北関東なんかですね。

____トラックは中古ですか?

栗原:いえ。私は8割ぐらい未使用車です。結局のところ、未使用車の方が「お得感があるから」だと思います。 5年後ぐらいには「これぐらいの価値になるよ」という残価をお客さんに提示するんですが、「5年後にこの金額でヨシノ自動車が買ってくれるなら今、未使用で買おう」というお客さんが多いんですね。

____なるほど。興味深いですね。まず現状、募集すれば運転手が集まってくることでトラックの需要が喚起されているんですね。

栗原:そのようですね。

コロナで職を失った人たちが運送業界に集まっている

____他の業種からも流れてくるんでしょうか。

中島:どうにも、コロナで職を失った人が多いんですよ。

____なるほど。

栗原:ニュースで見たんですが、介護職も万年、人不足で悩んでいたようですが、現在は募集をすると倍以上の人が応募して来るそうです。その差は大きいのではないでしょうか。

____なるほど。業種によって違う。さらには会社によっても大きく違いそうですね。

栗原:確かにダンプも、コロナが話題になった頃は1台キャンセルになったりはしました。どうやら仕事の受注先が、公共工事を見送られたりしたようです。

____了解しました。マイナスの影響もなくはないんですね。では増田さんお願いします。増田さんは業販から営業へ転身されたばかりですので、お客さんの動向などは掴みにくいかも知れませんが、社会人として初めて迎える不景気です。不安を感じられたりしませんでしたか。

増田:不安はありました。やはり解雇だったり、仕事がなくなってしまったり、そういうニュースは事欠きませんから「トラック業界は大丈夫だろうか」と考えました。しかしながらコロナが影響を与え始めてから数ヶ月、仕事をしていますが、他の業種業態に比べて「トラック業界は強い」と改めて感じています。

____どんな点が強いと感じられましたか。

増田:やはり物流業界は「人の生活に欠かせないインフラ事業なんだ」と感じています。だからこそ、この仕事はなくならない、それで不安を感じることがなくなりました。

____トラック業界に来て「良かったな」と。

増田:そうですね。この業界を選んで「良かったな」と感じています。

コロナ禍と社会のインフラに根ざしたトラック業界

____了解しました。では中西社長、貴社の営業の皆さんの話を聞いてどのように感じられましたか。

中西:そもそも今日、ここに集まった営業メンバーは実績と実力のあるメンバーばかりなんです。 だから「ちゃんと販売できているんだな」と感じますが、会社全体でみるとやはり2割ほど売り上げがダウンしています。先ほど増田が言ったように、他の業態に比べれば生活のインフラに根ざしているところで助かっている面はあると思います。例えば航空業界は95%ダウンと言われていますよね。それは運送業界では考えられないですよ。どこも耐えられないと思います。

____確かにそうですね。

中西:それも我々がお取引させていただいているお客さん達が食品関係、土木建築、建設関係、海上コンテナ関係と多岐にわたって、ちゃんとお仕事を切らさないでいるということ。結果こんなコロナ禍でもトラックを売買することが出来ている。ただ良いお客さんばかりではなくて、他方で稼働率が一気に落ちてしまった運送会社さんもあります。これは昨日、今日の取引の結果ではなくて、ヨシノ自動車として長年お付き合いさせていただいた結果なのだと思います。ヨシノ自動車としては「運が良かった」というのがひとつありますね。

____分かります。

中西:ただし2割落ちているということは、実際は大きな痛手を被っています。もちろん「これが底である」という実感はありません。世の中の実勢を見る限り、もっと景気は悪くなるような傾向が見えています。そうなると現状、持ちこたえている企業さんもどんどん経営状態が悪化していく可能性があります。前回も少しお話ししましたが、今までやってきたやり方だけでは「今後は生き抜けない」と感じているんです。かといって、営業の量を増やすことで賄えるほど「簡単でもないだろうな」という実感はありますね。 

第2波の影響は読めない

____実際、不景気というのは90年代前半のバブル崩壊や、2000年代後半のリーマンショックなど何度か体験してきたところではあります。その時、トラック業界というのは実際、どんな様子だったのでしょうか。

栗原:私が新入社員に毛が生えたぐらいの若手だった頃に、バブルが崩壊しました。今でこそ全国的にネット販売ができていますが、あの頃はインターネットなどありませんでしたからね。たまたま私は地方を担当していました。関東圏で売上げが下がり始めると、なぜか九州で需要が高まりました。ですから自分の売り上げは確保出来ていました。リーマンショックの時は、原因は分析できていないのですが、社長から「会社が大変ですよ」と言われながらも個人的な売り上げ自体は、それほど変わりませんでした。けれども倒産してしまうお客さんはいらっしゃいました。ヨシノ自動車の強みは、そのトラックを買い取って必要なところにまた販売できる点にあります。リーマンショックの時の販売方法としては「それが大きかった」と思います。

____その点はヨシノ自動車の強みですよね。ある程度、全ての業態のトラックを扱っているので 、「こっちのトラックが売れなければこっちを売ればいい」という柔軟性があります。

栗原:そうですね。私はインターネットに馴じみがありませんが、おかげさまで地方販売も増えています。一番、いま怖いのは、明らかにコロナの第2波がきている中で、今後はどう動いていくのか予想がつかないことです。読めないんです。増えすぎてきて、福島の時のような移動制限があったら「どうしよう」とか、「東京のクルマは駄目ですよ」とか、読めないがゆえにあり得ない話ではない。だから心配の種もつきませんね。

____分かります。ナンバー差別のようなものですよね。交通キャンペーンなどで関東のナンバーが除外されたりするようなことがあれば、大変です。 

栗原:東日本大震災の時は、トラックも放射能の問題がありました。その時はフェリー会社が乗せてくれませんでしたね。もちろんコロナウイルスを心配する向きはないと思いますが、「遠くで買うより、近くで買ったほうがいい」などマインドの変化は考えられますよね。実際問題としてオークションが減ります。そういう流通経路がなくなっちゃうと、「影響は小さくないな」という印象ですね。

リーマンショックのときほどの悲鳴は聞こえていない

____中島さんはバブルが弾けたぐらいの入社だと思うのですが、これまで味わってきた不景気をどう感じてらっしゃいますか。

中島:正直、リーマンショックの時が一番きつかったですね。とにかくトラックが売れなかった。あの時は「時代が終わったような感覚」がありましたね。もはや「何も前に進まないんじゃないか」と感じていましたね。今回のコロナも3月、4月ぐらいの頃は「危ないかも」と感じていました。私は冷凍車が多いので、食品関係は生活と切っても切れないですよね。そこまでの危機感は感じていないですね。

____リーマンショックの時も人は生活していて、運送業界は切っても切れないはずでした。リーマンの時は何が終わっていたのでしょうか。

栗原:まず買い控えがありましたね。

中島:あの時は経済的に終わっていました。株価は下がり、業績どうこうより会社がどんどん倒産していきました。ただリーマンショック時代の自分と、このコロナを迎えた自分が一緒かというとまた違うんです。販売先も、お付き合いも含めて。 

____なるほど。そこは中島さん自身が変えてきたところがあるんでしょうか。リーマンショックの二の舞にはなりたくない、というような。

中島:あんまりないですね。ただあの頃より、お客さんもまた成長しているような気がします。もちろん新しいお客さんも増えているのですが、リーマンショックを乗り越えられたら、会社は少しずつ上向いていって結局、そういうお客さんが定着していただけているんですよね。

____リーマンショックを乗り越えられたからこそ、コロナ禍でも頑張れているということでしょうか。

中島:今のところ、コロナでリーマンショックほどの悲鳴は聞いていないんです。逆に先ほどの栗原常務の話と一緒ですけど、他の業界で職を失う人が多いからこそ、万年ドライバー不足だったところが解消されているんですよね。本当に、コロナ前は募集ばかりかけていて募集経費ばかりかかっていたようなところです。人材不足がたたって利益が圧縮されて、倒産してしまう会社もままありました。やはり現在は、募集をかければ人は来るそうですね。

栗原:コロナの前はドライバーが3人辞めたから「会社も辞めた」という話もありました。

中島:それに加えて人が足りないから、とりあえず採用せざるを得なくて採用した人材があまり良くなかった、とかですね。

運送会社が教育する環境にあることも人が集まる要因

____やはりコロナによって運送業界以外での業界で、壊滅的な打撃を受けている業界から人材が流れてきているということですよね。

中西:例えば少し前だったら運送業界から、タクシー業界へ行くと言う道筋はよくありましたよね。現在はそれが逆だと聞きます。もしくはタクシー業界から再び運送業界に戻られたドライバーも多いと聞きます。

栗原:それも非常に真面目な人が多いと聞きます。やはり家族を養わなければならない。例えば「これだけお金が増えるから残業をやりますか」と聞けば、誰もが「やる」と答えるそうです。

____世知辛い話ではありますが、そういうことですよね。家族を養うために「何でもやる」と言う人が増えているということですよね。

中西:ドライバーという職種自体が、実直というかルーティーンに沿って真面目に取り組む人に向いているんでしょう。本人にも「仕事がやりやすい」と感じられるだろうし、経営者としても人事として、人を動かす立場としてやりやすいんでしょう。

____分かります。事故もしない、延着もしない。トラックドライバーは実直が何より大事ですからね。

中島:昔はドライバーを使い捨てのように扱う会社も多かったですよね。現在の運送会社は、ドライバーを教育して育てる会社が多い。「一人前に育てる」という意味ですね。昔だと使う側は伝票1枚で「行って来い」、ドライバーは「無理です」。それでそのまま辞めてしまうなんてケースがままありました。現在は使用者側が、ちゃんと懇切丁寧に教育する。教育をするという環境自体が、運送会社さん自体にできていることも「人が集まる要因なのかな」と思います。そこに真面目な人が来れば、しっくりきますよね。この時代にはそういう変化があるように感じられます。 

なぜ運送会社は教育環境が必要なのか?

____昔の運転手は勝手に育っていくような風潮がありましたよね。ほとんど教育されることもなく、タフな環境でやり抜くことだけを求められる風潮がありました。それが運送会社自体が、ドライバー不足を経てドライバーを大事にする風潮が出てきたということですね。

栗原:それも運送業界未経験の染まってない人が来ます。だからこそ、やりやすいんじゃないんでしょうかね。 

____確かに、改めて未経験の人ばかりを取る運送会社さんが増えているのも、その実態を反映しているような気がしますね。変に業界を知っている経験者より、未経験者を一から教育したい、というような。

中島:これはお客さんともよく話すことなんですが、勝ち組の運送会社さんと負け組の運送会社さんって色がハッキリと分かれているんですよ。勝ち組の運送会社さんが何をもって勝ち組と言えるのかといえば、教育環境なんです。なぜ、そこまで教育環境をしっかりしようとするかというと、荷主さんへのマナーやコンプライアンスを守るという意味で非常に大事なんですね。運送会社さんというのは、どこもドライバーさんが看板を背負っているようなものですよね。挨拶ひとつとっても ちゃんとしたコミュニケーションをとることが求められます。

栗原:そうですよね。昔はドライバーが現場で喧嘩したから、倒産したという話もありました。 それだけドライバーとは会社の顔なんですよね。

中島:「あそこのドライバーさん、良いよね」という評判になれば、増便になった分は「あそこに頼もう」という流れになります。教育によって、会社自体が良い方向にいくという流れも確実にあるでしょう。

人材が流入することでトラック需要が生まれている

____世の中自体がドライバーをちゃんと教育して、運送サービスとして捉え、品質を高めるという方向に来ているんでしょうね。国交省が規定する430(4時間運行30分休憩)なんかもあって、コンプライアンスは厳しい。そういった流れの一つですよね。

栗原:私が思うに、人が一番変わったんではないでしょうか。今まで絶対に解雇されないと考えていた人たちが、業種によっては容赦なく解雇されてしまう。そんな時に受け皿になりたくて介護サービス業だったり、運送業だったりが毎回、手を上げているんだけれど人が来ない。 仕事がきついから行かない。でも、もうそんな風には言ってられない事態になっているんでしょう。それで最も求められていた業種に、人材が流入している。それが我々のお客さんたちの後押しになっていると感じます。本当に今まで人材不足で悩んでいるのを、我々は傍で見てきましたから。現時点では、それによってトラックの需要は伸びていると考えます。架装屋さんにしても、まだまだ納期がかかる状態が続いていますからね。

____車型としてはどんな種類が人気なんでしょう。常務が担当されているダンプは人気ですよね?

栗原:そうですね。ダンプも架装するのに時間がかかるから、あれば未使用の完成車が欲しいということになります。中島のウイングにしろ、冷凍車にしろ、同じ理由で売れていると思いますね。

____公共事業系の仕事が増えているということはありますか。

栗原:いや。逆に公共事業系は減っていると思います。現在だと、やはり感染対策などに不安があって仕事それ自体が控えられてしまっているような状態だと思うんですね。ある程度、感染が収束すれば増えてくるとは思いますよ。ただ力のある会社は、どんどん他の仕事を手掛けるようになっていますからね。これで公共事業が増えるとなれば、「また台数を増やす」という話になるでしょう。

荷主とともにコスト削減を考えるような会社が生き残る

____強い会社はやはり強いですね。冷凍車、ウイング関係はどうでしょうか。

中島:ある会社は別会社を作られて、そこで新車を入れて元の会社と一緒に増車と、景気の良いところは良いと言えるでしょうね。この会社を見ていると、社長さんが昔ながらの考え方の社長さんではないんですね。荷主と一緒にコスト削減を考えます。その中でちゃんと利益を上げる。弊社の社長がよくいう提案型の営業をされているんですよね。

____物流のプロとして より良いシステムを提案してるんですね。素晴らしいですね。

中島:そうです。一方で行き当たりばったりで「こんな仕事あるけどやっておくか」 という会社だってあります。良くも悪くも、どんぶり勘定で仕事を受けているように見えます。仕事もあるし、何となく売上が上がっているようにも見える。増車もしてみるけど、収支をみるとマイナスになってしまっている。そもそもコスト管理がしっかりしていないんですね。

____なるほど。すごくわかりやすいですね。提案型の営業ができるというのは社長の力量だと思うんですが。

中島:そうですね。 そこは倉庫も扱っていて、もちろん自社で倉庫をやっていれば良いんですが、倉庫をレンタルしつつ運送会社なのに在庫管理もしている。 最近、興味深いお客さんだと荷主さんを何社か集めて、共同配送システムを作っています。そうすれば合積みができるので荷主さんもコスト削減になりますよね。荷主さんもこれまで自社便を出していたのを、共同配送にしているわけですから。荷主さんに「ここに任せておけば問題ないな」という流れさえ構築できれば、自社で新しい物流の流れを作れるわけです。それは「大したものだな」と感心させられていますね。

3PLを提案できる運送会社とは?

____なるほど。こういう話を聞くと、このコロナ禍によって強い会社は生き残るべくして生き残っている感がありますね。政府による無利息の貸付なども強い追い風になっている気がします。

中西:やはりうまくいっていない会社は、そういう公的支援も固定経費の消費で終わってしまうんですよね。片方でこのコロナ禍においても、新しいビジネスモデルだったり、収益源を見つけることが出来れば、その資金はまるまる投資に回せるわけです。それがいつしかリターンとして大きく還ってくるはずですから、借りるお金は同じであるにしろ、使い方によって大きく未来は変わりますよね。でも、そもそもその使える手段を持っていないと、借りても意味がないんです。運送業界というのはどうしても構造上、荷主が強いのでそこで言いなりになってしまう。片方で荷物の量は減っているから荷物の奪い合いになって結果、ダンピングの仕合いになってしまう。この傾向は大きいにしろ、小さいながらも3PL(サードパーティロジスティクス:荷主に対して第三者(運送会社)が全面的に物流を受託すること)を構築できる運送会社が、荷主さんに対して積極的に提案できるんですよね。

____大手のやっている小口の路線便を、自前で安く提供するようなことですね。

中西:倉庫や全てを自前で揃えなくても、システムの提案が出来れば良いんです。弊社もそうですけど、そこで単発の取引だけだったら、どんどん売り上げは落ちていくんです。ボルボは特に大事ですが、アフターサービスがあります。ここ5年ぐらいは当たり前のような売り方をしていますが、10年前はそんな売り方はしていませんでした。ただはっきり言えるのは10年前のやり方をしていれば、「現在の我々はない」ということです。それはただ単にトラックを購入してもらうというだけではなくて、それに付随する価値も提供しているからなんだと思います。 このコロナ禍においても、新しい価値を提供していくという意志さえあれば、瞬間的に売り上げが落ちたとしても、長い目で見ればまた成長していくことができると思います。

コロナ禍にあってもボルボが選ばれる

____ボルボトラックというのはまさに付加価値のトラックでして、同じ仕事をするのであれば中古のヘッドでも十分なわけです。ボルボの営業である金野さんは付加価値をどのように考えて、どのように提案営業されているんでしょうか。

金野:ボルボトラックというのは、まずドライバーさんが先に「欲しい」と思ってくれるから、私はそこにくっついて販売を伸ばしているわけです。ただ実感として、良い運転手さんに「ボルボが選ばれる」という実態にはなっている気がします。大体はボルボを見ても「良いな。乗りたいな」で終わっているところが、選ぶお客さんは「乗らなきゃ」 と主体的に選択している傾向があると思います。それも我々が、いかにボルボの良さをアピールしているかというより、そんな良いドライバー同士で口コミとして広がっていって結果、おかげさまで販売につながっている。そんな印象なんです。

____主体的だからこそボルボを選ぶ。それはやはり先が見えない現状でも、不景気でも欲しいとなるんでしょうね。

金野:そこは減らないですね。僕も今回ばかりは「難しいだろうな」と考えていたのですが、そうではなかった。ボルボは国産より明らかに高いわけです。こんなご時世に、と考えたんですが、その勢いは止まらずに増車いただいてるような状況ですね。こちらも恐縮しながら「大丈夫ですか?」などと様子をうかがいながらです(笑)。よく話を聞いてみると、世の中でいうほどの直撃を受けていないということ。それは僕もホッとしましたね。完全に駄目だと思っていましたから。

____ニュースを聞いていると、このご時世なら「買い控えるかも」って思っちゃいますよね。

金野:トラックが必要だとしても、ボルボは国産より数百万高いわけですからね。月々の支払いも高くなります。「払えるのだろうか」と僕自身が心配になるぐらいなんです。でもそこは「良かったな」と。ここ最近も納車が続いていますが、買われる方は経営が安定していますね。

営業として人間性のコアが試される

____増田さん、営業の先輩たちがこのように話していますが、話を聞かれてどのように感じられましたか。

増田:やはり人の繋がりが大事なんだなと考えさせられましたね。目先の売り上げだけを追いかけるのではいけないんだな、と。そうすれば、こんな不景気な時でもちゃんとお客さんが切れずに繋がっていく。 それが「大事なんだな」って。

____買ってくれる経営者の器量というところも大事ですよね。

中西:どんな経営者でも、「会社を大きくしたい」と初志を持って始めるでしょう。でも現実として起業して成功することは個人次第であり、どんなに頑張っていても、うまくいく人といかない人がいるわけです。だから経営者として常に学んでいなければいけないし、成長しなければいけない。そんな経営者たちが、どんな人たちとつながりを持つかが大事なんですよね。そこを見極めることが我々、トラックを売る立場の営業の見る目でもある。私は「そこに時代の変化はない」と思います。栗原常務の時代も、現在も環境は色々変わるでしょうけど、常に相手に利益をもたらせないと、営業として関係性は保てないんですね。

____そこは増田さんがおっしゃっていたことと、重なりますね。

中西:それは私たちが取引しているサプライヤーさんだって、どこに発注先が一番多いかというと、もちろん商品やメーカーの特性はあるにしろ、本当のところ大事なのはその担当者の人なんです。実はそこがどうにも大きいんです。この業界に関していうと。

____いやいや。それはどの業界も共通していると思います。

中西:我々はゼロから何かを作り上げている会社ではありません。あらかじめ、ある商品に対して付加価値を付けて販売しているわけです。だからなおさら人のコアな部分というのは、大事なんですね。

経営者は孤独な存在だから

____なるほど。

中島:これは会長によく言われていたことなんですが、「経営者というのは寂しがり屋だ」と。自分の会社の愚痴をこぼす場所がない、と。弊社の中西だって、僕らに愚痴をこぼせないんですよ(笑)。でもお付き合いができていると、そういう愚痴もこぼしてくれるようになるんです。その悩みというのは、提案のチャンスも含んでいるわけです。「資金が足りないなら、稼働していないトラックは一旦現金化しますか」とか、そういう提案ができるんですよ。そこの口利きができれば、ワンステップ上の関係性とビジネスが出来ることになると思います。

____本当にそうですね。経営者は、常にそういう存在を探していると思います。結果、「あそこに任せておけば大丈夫」という信頼も勝ち得られるわけですから。さて最後の質問です。コロナ禍で世の中が「変わる変わる」と盛んに言われていますが、皆さんの営業の活動の中で変化を感じられていますでしょうか。

中島:よく一般企業は在宅で仕事がこなせるなんて言いますが、我々は在宅というわけにはいかないんです。

栗原:そうだよね。会社には来なくなっても得意先には行っているから。こんなコロナ禍だけど「来るな」というお客さんはいないんです。今のところ、私のところではね。逆に暇になって「よく来るね」と言われるぐらいなんです(笑)。だから個人的な実感としては、じっくりとコミュニケーションが取れているからこそ、仕事にもつながっている。それといま思ったのが、融資を頼んだら銀行で簡単におりますよね。 だからこそリースしているお客さんがトラックを現金化したり、資金面でアドバイスすることも多いんです。融資が出やすくなっている実情は我々のトラック販売にも影響があるんだな、と感じていますね。それが僕は一番感じたことかな。だってこれまでは、どこでもトラックを入れるとなるとリース会社を探していたわけです。それが銀行のローンに変わった。これは大きいですね。

中島:それはありますね。すぐに「見積もり頂戴」って言われちゃいますね。「これだったら現金で買うよ」という感じですね。

栗原:実際、それが一番金利もかからないし安いんですよ。最悪、来年に景気が悪くなったら売ることだって出来るんだから。

リースによって提案の機会損失が増えた!?

中島:現金で買って、資金に詰まったら我々でリースバックすることもできますからね。そこって1台納めたから「はい。さよなら」じゃなくて、付き合いが深くなっているからこそ出来る話なんです。関係性が深いからこそ、踏み込んだ話ができるわけです。やっぱりいまだに「1台買ってもらったら、10年のお付き合い」というのはあるんですよね。現場のサイクルは実際、10年かどうかは分からないけれどね。

栗原:変わらないよ。僕たちの若かった時代もその時の所長に、同じように「一台買ったら10年のお付き合い」と言われてきたから。「1台買ったら、10年買わないんだから」ってね。

中島:最近はちょっと違っていて、「1台売ったら5年」と考えています(笑)。5年後には買い替えてもらう方が、お客さんにもメリットがあるから。ただ昔は手形が多かったから、毎月毎月、顔を出すんですよね。リースは納車を終えちゃうと、後はリース屋さんの管理になっちゃうから、顔を出すきっかけが失われちゃっているんですよね。

中西:そこは悩みでもありますよね。リース屋さんが入ることで実務的リスクは軽減したけど、お客さんとの物理的な接点が希薄になっていってしまう。トラックそれ自体も進化しているので大きなトラブルもないですし、排ガス規制以降を通しても新車の取り扱いが多くなってきたから、そうするとなおさらですよね。営業も車両の売買という接点がない限りは、弊社では整備もしくはリース屋さんということになってしまう。

____営業さんの機会損失ですね。

中西:国産だったらディーラーがその役割を果たすでしょう。どんどん離れていってしまう環境があるから、ヨシノ自動車全体として考えてみると、どんどんマーケットから遠ざかってしまっている面がありますよね。楽になったし、リスクも減った分、顧客との接点を失っている危機感はあります。我々が自社でリースを始めよう、と思ったきっかけもそうですし、保険は元々やっていたけどリースインを始めたのも同じ理由です。その機会を、「どうやって使っていくか」というのが大事ですね。トラックというのは「100万安ければ買うよ」という世界ではなくて、機会が無ければ買わないし、それを見計らって動くだけでは営業も効率が悪い訳です。

トラックを金融資産と捉えるなら

____さて昨今ではトラックを金融資産として考える風潮もあります。そうなると運送会社に販売するだけではなく、一般投資家と言われる人達に販売することもあり得るわけです。そういった風潮を皆さんはどう感じられていますか。

中島:それは感じますよね。あとは自分の中の気持ちの割り切りだと思うんですが、営業マンとしてノルマがあるわけです。それを達成するためであれば、その販売方法もアリだと思います。僕なんかはユーザー売りメインだからお客さんの話になっちゃうんですけど、「1台10年」と言ったのを「1台5年ではないか」と言ったのも、そこで提案があるからなんです。5年の残価設定で弊社の買い取り価格はこれです。「残価精算すればこれだけの資金ができますよね。」という話がしたい。大体、トラックって車両のリース料が支払い終わると、それ以降は車両のリース料が利益になると考えがちですが、実はそこから修理代がかさむんですよね。修理代って計算できないですよね。そこを説明していくと「いま現金になるんだったら現金にしちゃおうか」という話になるんですね。

栗原:そう。だから一番、最初に言ったような「新車が一番割安」というのはそういうことなんです。リースもできるし金融的な付加価値も高い。車両を使わなくなればリースバックすればいいわけです。未使用車はどんな風にも転べる、一番資産価値の高い金融資産なんですね。

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