株式会社ヨシノ自動車

トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第68回

第68回  ボルボ・トラック試乗会レポート

第68回  ボルボ・トラック試乗会レポート

「ボルボFH 2021年モデルを体験しよう! 試乗会レポート2022」

さる9月にボルボ・トラック・ジャパンによる、ボルボFH 2021年モデルの試乗会が栃木県小山市で行われました。試乗会が行われるのはコロナ禍を経て4年ぶり。進化したボルボ・ダイナミック・ステアリングやオプション機能であるデュアルクラッチの体験を通して、ボルボFHのポテンシャルを広く認知してもらうイベントとして企画されました。今回はその内容を紹介するとともに、主催者であるボルボ・トラックセールス・ジャパンの関原紀男様にご登場いただき昨今のボルボ・トラック事情について中西俊介と対談。さらに試乗会のゲストである株式会社阿部興業様のご担当者様のコメントも取材しました。ボルボFHの話題満載の内容となりました。

編集・青木雄介
WEB・genre inc.

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UDトラックス株式会社 ボルボ・トラックセールス
バイスプレジデント
関原 紀男 様

試乗会を通じて伝えたい魅力とは

____まずこの試乗会のねらいについて教えてください。

関原:こちらの試乗会で走らせているのは2021年モデルで昨年秋に発売開始したモデルです。もうすぐ生産が終わってしまうので最後の作りだめした車を完売するのが狙いです。 ※とは言いつつ試乗会の時点では残り30台ほどだった。

____本音ですね(笑)。

関原:本音です(笑)。ただ試乗会そのものの狙いとしてはボルボFHの走りをロングストレートのコースで、デュアルクラッチの素晴らしさを感じてほしい。今回は試乗車にデュアルクラッチ装備車を2台用意しました。大型トラックでデュアルクラッチを導入しているメーカーはボルボ以外にはないので、他メーカーにはない異次元の加速を体感して頂きたいです。

____なるほど。デュアルクラッチの評判はどうですか?

関原:マーケットに出してしばらく経ちますが、ユーザーさんの現場からも非常に好感を頂いています。シフトスピードは速いですし、そもそも燃費がまったく違います。トルク垂れしないので、坂道でより効果を発揮します。重量物を積めば積むほど燃費への効果が大きいです。この直線コースは時速90キロまで出るので十分体感できると思いますね。

____発表からもうすぐ1年経ちますが、ボルボFH 2021年モデルの評判はどうなんでしょうか。

関原:おかげさまでものすごく良いです。登録ベースで前年20%の増加、全体として大型トラックの販売が落ち込んでいるので、それを加味すると20%以上の増加と考えられます。

____マーケットの目標値を教えてください。

関原:戦略的目標としては8トン超クラスで1%というシェアなんですが、まず2%を目指します。トラクタが5%で現在7%から8%ぐらいまで来ているので、それを10%にしたいと思います。もうすぐこの次のモデルが出てきます(2023年型)。その期待値も含めて今後は「本国の生産枠確保と日本への安定供給を続けていきたい」と考えています。

もっと知って欲しいデュアルクラッチの魅力

____2023年型のボルボ・トラックの年次更新はどんな内容になりますか。

関原:まずエンジンがアップデートされます。トランスミッションもさらに改善されるので メーカー調べによると3から4%ぐらい燃費が改善される予定です。そのままその数値が出せるかどうかは別として、2023年モデルではさらに燃費は良くなる予定です。その次のアップグレードも計画されていて、よりリッターあたりの走れる距離を長くするような努力が積み重ねられています。それに加えて安全装備の拡充が予定されています 。

____楽しみですね。ちなみにデュアルクラッチは通常のシングルクラッチに対して、現状でどれぐらいのシェアになっているのでしょうか。

関原:デュアルクラッチのシェアは「まだ低いな」と感じています。数字で言うと50台程度です。

____そもそもデュアルクラッチは値段としてはどれくらい高いんでしょうか。

関原:シングルクラッチに対して30万から40万円ほど高いぐらいですね。

____なるほど。中西社長、販売店としてもデュアルクラッチはもっと販売したいですね。ボルボにしかない機能で快適で、確実に燃費に効く機能ですからね。

中西:結局は乗らないと分からない、比べないと分からない機能なので、こういう試乗会の価値は大きいんですよね。ボルボはもともと「輸入車だから手に入らない」とか、「高い」というイメージがありますよね。どうしてもマイナスイメージが先行してしまうので、それを払拭するためには、何はともあれ「観て乗ってもらう」のが一番なんですよね。

関原:イベントはここ最近、コロナ禍でなかなかできなかったですからね。だいぶおさまってきたタイミングですし、我々としては出来るだけ早く試乗会を開催したいと思っていました。このイベントもモデルチェンジ後、初めての試乗会ですから。

中西:前回の試乗会が4年前ですからね。

待望されるリジットはどうなる?

____今回はボルボを買っていただいたお客さんだけではなく、ボルボを初めて運転されるお客さんを中心に招待したということなのですが、その意図を教えてください。

中西:もともとボルボ・トラック・ジャパンがそういう意図を持って試乗会をやっています。このコロナ禍で活動が停滞している中で、新車がデビューしました。日本のマーケットを考えても新規顧客をどう獲得していくかが課題だったし、我々としても目的は同じです。口コミによる既存のお客さんの横展開は好調なのですが、それは東京・有明だったり湾岸地区の海コンのお客さんというように、マーケットそれ自体は決まっているんですよね。だからこそ新しいマーケットも狙いに行きたい。そこを開拓してかないと中長期的に見ればボルボ・トラックの販売は難しくなっていくでしょう。

____ヨシノ自動車で招待しているお客さんはトラクタのお客さんでしょうか、一方でリジットを目当てに来るお客さんはいないのでしょうか。

中西:メインはトラクタですが、一部ではリジットのお客さんもいらっしゃいます。

____ちなみにリジットの評判はどうでしょうか。

関原:現状で発注されているのが2~30台です。ただやっとボディ架装が始まった状況で、登録されたのも数台程度です。

____ボディメーカーは決まったんですか?

関原:基本的にどのボディメーカーさんでも大丈夫です。

____完成車を作る予定はあるでしょうか。

関原:今のところありませんが、基本的な仕様を統一することで完成車のように販売できるガイドラインはできています。

____なるほど。

関原:今回のデモンストレーション車両は日本トレクスさんにお願いしました。

中西:10年以上前にリジットを販売していた時も、日本トレクスさんだったんですよ。

ライバルは国産メーカー。その牙城を崩したい

____なるほど。今後のリジットはどう販売されるのでしょうか。

関原:今回リジットは8年ぶりに復活しましたが、ボルボはキャブが重くてサイズが大きい。容積を気にされるお客さんには、どうしても刺さらないでしょう。とはいえ、トラクタでもそうであったように物流業界も変わってきていて、昔のように容積をめいっぱい積んでトンあたりいくらで運ぶという、積載量勝負の運送会社さんはほんと一握りです。そこに我々の商機があるのではないか、と思っています。実は前回、リジットを止めた時に、後から「欲しかった」という声が多くのディーラーさんから出ました。それもあってか、想定以上にご注文を頂いている状態です。

____スカニアのリジットも日本でよく見るようになりました。やはり競合してくるのでしょうか。

関原:リジットもそうですが、トラクタも私自身は国産メーカーのマスマーケットを追わねばならない立場と考えています。

____なるほど。まずは国産メーカーの牙城を崩さなければいけないということですね。

関原:たとえば我々はこの5年ぐらいは、日野さんとの相見積もりがとにかく多かったようです。彼らは国産4社の中で、トラックのキャラクターも欧州トラックを意識されていた印象です。商品性の訴求が刺さったのか競合するシーンでは日野さんでした。5年ぐらい前は、そこにいすゞさんやふそうさんも入っていたんですが。

____一連の不正の件で困難な経営状況におちいってる日野ですから、勝機に捉えてるということでしょうか。

関原:いや、ボルボは逆にライバルがいないと戦いにくいものなのです。2005年にダイムラーが撤廃した時に私がずっと言っていたのは「ライバルがいないと戦いにくくなる」ということでした。実際に同価格帯で比べてもらえるライバルがいないと、下手すれば購入の俎上にも上がってきません。ですからまったく勝機とは思っておらず、初心に戻って、世界基準のトラックを訴求していきます。

設備としての信頼性を高めるために

____ディーラーの立場としてはどうですか?

中西:結局のところ、弊社としてもドライバーが好きで社長も好きで物流の設備として「ボルボがベスト」というよりは、そもそも「ボルボが好き」というお客さんの割合が高かかった。だからこそ弊社が販売したボルボの新車は9割近くが、何らかのカスタムをしているわけです。それも弊社は狙ってきていたわけです。基本的に値段で「買う買わない」という話にならないようなビジネスモデルを心がけてきました。その意味では、これからは設備として真剣にボルボを考えてもらえるような、「新規開拓をしなければならない」ということになるでしょう。

____なるほど。

中西:日野さんの問題があって、瞬発的に「この会社がボルボを検討するの?」という今までには考えられないような会社さんとも接点が出来つつあるのは確かです。とはいってもそれは一時的なものなので、導入して使っていただいて本当の良さを分かっていただかないと、次にはつながらないですよね。現在はドライバーさんの意見というよりは、会社の意見として「ボルボを導入していこう」という潮目に変わりつつあります。ですからその認知は「もっと広げていきたいな」と思っていますね。

<試乗されたご感想>

試乗会で新型ボルボFHを体験されたお客様のコメントをいただきました。ご参加いただいたのは横浜で貨物運送から倉庫・包装加工、物流加工業務と企業への物流コンサルタント、輸入の通関手続き、産業廃棄物の運搬まで幅広い業種を抱える総合物流会社の阿部興業様から、高橋様と鈴木様にご参加いただきました。横浜の物流会社さんの目にボルボ・トラックはどう映ったのでしょうか?

向かって右手:
株式会社阿部興業
取締役 運輸事業本部長 兼 事業本部統括副部長
高橋純一 様

向かって左手:
運輸事業部 運行課 課長
鈴木祐司 様

まるで乗用車。デュアルクラッチは変速のタイミングが分からないCVTのようだった

____お二方ともボルボに試乗されたのは初めてだったのでしょうか。

鈴木:自分は初めてです。

高橋:私はヨシノ自動車さんのデモで一度運転しています。

____実際に試乗会に参加されていかがだったでしょうか。

高橋:公道でのデモンストレーションはトラクタだったので、後ろを繋いでいるイメージはありませんでした。それでも現在、使用している弊社のトラックとは「だいぶ違うな」と思っていました。今日乗ってみて、やっぱり最高でしたね。乗り心地が違いますよね。静かだし、言い方が適切か分かりませんが、トラクタに乗っているという感覚がまったくなかったんです。乗用車感覚だったんですね。でもよく考えたら「中は広いよな」というような(笑)。そんな感覚なんです。

____本日はデュアルクラッチ仕様のトラックもあったのですが、いかがだったでしょうか。

高橋:驚きましたね。もうどこで変速しているのかが分からないぐらいでした。まったく変速のタイミングが感じられなかった。乗用車でいうとCVT(無段変速機)のようでした。

____ボルボ・ダイナミック・ステアリングの使用感はいかがだったでしょうか。

高橋:最初に乗った2デフの方はハンドルを軽く持っていたのですが、「指一本にしてください」と言われて指一本にしてみたのですがまったく問題なく真っ直ぐ走りました。手を離すと「多少左右に動きますよ」と言われたのですが、動いている感じはしなかったですね。

____ありがとうございます。今回初めて試乗されたという鈴木さんにもお伺いしたいと思います。いかがだったでしょうか。

鈴木:自分はもともとドライバーで日野ばかり乗っていました。その時は「日野が最高だ」と思っていたのですが、今日改めてボルボに乗ったら「ボルボ最高」と変わってしまいました。もう運転手に戻りたいですね(笑)。あんなトラックに乗れるのだったら本当に戻りたいです。長距離に行ってみたいし、ボルボに乗っていると周りの目も違うでしょう。「阿部さん、ボルボに乗ってる」みたいな注目を浴びますよね(笑)。仕事したくなりますよ。

初めて運転した気がしないボルボ。長距離に行ってみたい。

____どんなところが気に入られたんでしょうか。

鈴木:僕の感覚としては初めて乗った気がしませんでした。初めて乗るとどうやってもクセを感じてしまったり違和感が出てくるのですが、昨日も今日もずっと乗っていた感覚で運転ができました。それと初めて乗るトラックというのは緊張するのですが、動き出したら そんな不安もまったく消え去ってしまって、その場で自分の名前を書き込みたくなってしまうぐらいでした(笑)。本当に乗りやすくて、装備もドライバーさんに優しい気がするし、早く「弊社にも来てくれないかな」と思いました。

____ボルボは乗ると、長距離だと「大分違うだろうな」って思いますよね。

鈴木:そうですね。私も長距離をずっとしていて北海道から九州まで走っていましたが、ボルボだったら「もっと旅気分で行けただろうな」と思いましたね。それはともかく、こんなに「最高」という言葉が似合うトラックはないと思います。これはお世辞じゃなくて、本当にそう思ったんです。

____今日乗っていただいたのは540馬力ですし、日本で買える最高のトラックかも知れませんね。

鈴木:他のトラックをすべて乗っている訳ではないので分からないですが、自分が乗った中では一番ですね。それもお気に入りの日野をかなり抑え込んでの1位です。最近の日野プロフィアもすごく良かったですよね? いすゞもUDもひと通り乗りましたが、それでも僕の中で日野プロフィアが一番だったんです。でもその日野を抑えてボルボが一番になりました。ですから会社に帰ったら「ドライバーに戻してくれ」と言いたいですね(笑)。

高橋:それはダメですね(笑)。

ボルボの導入は秘密にし、ドライバーへのサプライズに

____やはりダメなんですね(笑)。この試乗会は今後、御社でボルボの購入を計画される参考などにはなったでしょうか。

高橋:はい。普段からヨシノさんとはお付き合いさせて頂いているので、継続的にボルボは考えていくことになると思います。今回、導入するボルボにはドライバーから何らかのアクションがあると思いますので楽しみですね。

____これは失礼いたしました。今回すでにご購入されているんですね。

中西:そうなんです。すでに阿部興業様にはオーダーを頂いていてこれから納車なんです。

高橋:実はボルボの購入は社内でも極秘プロジェクトなんです。ドライバーも誰に載せるかは決めているのですが、まだ公表はしていません。

____それは素敵なサプライズですね。

中西:阿部興業さんはトラクタとリジットもご購入頂きました。

____リジットもなんですね。本日は有難うございました。

<新分野の開発に挑戦する>株式会社阿部興業様のHPはこちらです。

試乗会の様子

スタートは凹凸道を低速で走行します。ハンドルに力を入れなくともまっすぐ直進できるボルボ・ダイナミック・ステアリングの効果が実感できます。また設定を変えることにより自分好みのステアリング感覚も体験もできます。

コース外周は発進と加速性能を体感します。特に変速ショックの大きい中低速域でデュアルクラッチのトランスミッション性能が体感できます。ノーマルのI-シフトよりも速く、スムーズな加速はトレーラを牽いているとより実感できます。

トラクタヘッドでのスラローム走行体験。ボルボ・ダイナミック・ステアリングの正確で軽快な操作感があれば、狭い道もそれほどストレスに感じることはありません。またパッセンジャーコーナーカメラを起動させて正確な幅寄せ感や死角のない安心感を体験することも出来ます。

新型ボルボFH(2021年モデル)試乗レポート

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