株式会社ヨシノ自動車

トラック業界”鍵人”訪問記 第33回

東京モーターショー2019特集

東京モーターショー2019特集

「辛口で斬る!トラックの東京モーターショー2019」

今年の東京モーターショーは従来の東京ビックサイトに加えて、ジャンルごとに会場を分け、お台場全体にわたる大がかりな規模感で実施されました。その様はさながらテーマパークのようであり、各フロアも余裕のある構成で見ごたえがありました。来場者数も前回の77万人を大幅に上回る130万9000人を記録し、目標だった100万人を突破しました。その反面、トラックの架装メーカーの出展はなし、さらに輸入自動車メーカーの出展が大幅に減り、普段見ることの出来ない技術や車に触れられる自動車ショーのもうひとつの魅力が減ったことは否めませんでした。さて、それはそれとして出展したトラックメーカーのトラックたちはどうだったのでしょうか? あえて今回は気になったトラックのみ取り上げました。電動化の未来が目についた前回のモーターショーでしたが、今回は少しばかり様子が違っていたようです。

写真・薄井一議
デザイン・大島宏之
編集・青木雄介

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【ISUZU】ハイルーフのフラッグシップ、改良された新型ギガ!

新しいハイルーフキャブが導入され、安全性能と快適装備が拡充されました。主な安全装備としては歩行者や自転車も検知するプリクラッシュブレーキ、右左折時の巻き込み事故を抑制するブラインドスポットモニターや可変配光型LEDヘッドランプなどです。さらには待望の全車速で先行車に追従する全車速ミリ波車間クルーズも導入し、国内ライバルを追撃するモデルの誕生と言えるでしょう。

イイねなポイント

・立って着替えもできる待望のハイルーフ
・国内ライバルに追いついた安全装備
・自動追従機能もついて快適運行

ムムムなポイント

・改良で国内ライバルを追い越せた点が見当たらない。

社長の目

「新しいハイルーフが出た」とは聞いていましたが、これなんですね。日野のプロフィアのハイルーフは天井が高いですよね。ボルボとスカニアに比較できるぐらい高い。それに追随してきたというところですが、他は特に何も変わってないですね。エンジンも6UZ1だから普通のエンジン。新しく導入された可変配光型ヘッドライトなども他社ではすでに実用化されている機能です。その辺がライバルに先行してモデルチェンジしたギガが、国内市場のトレンドに追いついたということでしょうね。あくまで中古トラックのディーラーとしての評価ですが、4メーカーで比較すると、外資傘下のふそうと UDが補機類も含めて故障が多いという評価が一般的です。その点、信頼性という意味でいうと国産の日野といすゞということになるんですが、日野は値段が高い。そしていすゞもここ何年かは中古市場でも値段が下がらず人気が高いんですよ。本来はプロフィア、スーパーグレートという2強があって、いすゞはその次でした。その意味で相対的に信頼できるブランドとして、いすゞのギガが台頭してきたんですよね。本当に値段が落ちないんですよ。ギガは信頼性があって故障しにくいというイメージがあって、それが中古市場の金額にも反映されてるということです。

確かにギガは静かになりました。燃費が良いという話もよく聞きます。特にストップ&ゴーの多い会社じゃなくて、定量荷で高速を走るような路線屋さんですね。ただオートマのスムーサー Gxにはあまり良い印象がありません。構造も時代遅れという感じはするんです。ふそうもUDも、ボルボは特にデュアルクラッチもあるからシフトショックもないし、開発コストが潤沢な外資系メーカーに較べてしまうと、やっぱり決定的に遅れていると思いますね。 その点が改良されたら、さらに人気になると思います。

【ISUZU】小型バンの本命になるか? エルフEV ウォークスルーバン

運転席と荷室を行ったり来たりできるウォークスルー構造をもった小型バン。これはEVならではの構造とのことです。運転席には回転シート、安全装備でも話題の電子ミラーシステム、車両を360度確認できる3Dサラウンドマルチビューを搭載しています。リチウムイオン電池のバッテリー容量は40kWh、80kWhの2タイプあります。満充電当たりの走行距離は50km以上、100km以上となり、最高速度は時速80km。CHAdeMOによる急速充電と普通充電に対応します。

イイねなポイント

・ウォークスルー構造を当たり前にした。トラックを降りずに荷物にリーチできる。
・EV専用のデザインが良い。街にも自然となじみ、かつ存在感がある。
・来年にでも実用化できそうなほど、現在の技術に忠実であり、早期の商品化を期待したい。

ムムムなポイント

・航続100キロでも実走行距離は半分ぐらいか。想定エリアが限定されすぎる。

社長の目

なるほど。「レンタカーでニーズがあるか?」と訊かれるとちょっとまだ分からないです。普通の2 トン車としてはアリですよね。形からいくと、キャンピングカーにもできますね。キャンピングカーだと距離の問題があるでしょうけど、宅配便にはいい形だと思います。ただ実走行距離が80 km だとして「まだまだ」ですね。これだと弊社の川崎本社から厚木に行って帰って来れないですから(笑)。やはり走行可能距離は、最低200キロはないと厳しいかな。

【UD】まるで攻殻機動隊!? クオン・コンセプト 202X

UDが未来のトラックとして出品したクオン・コンセプト202X。この名前が示す通り、近い将来の自動運転時代を予感させるコンセプトトラックです。このトラックが画期的だったのは、自動運転中のサインを他のドライバーに派手にアピールする点です。サイネージは攻殻機動隊などのアニメではあった発想ですが、トラックメーカーの着眼点としてはおそらく初めてなのではないでしょうか。見栄えもそうですが、会場でも非常に際立っていました。

社長の目

電動化した大型のコンセプトトラックは、どこも似たようなデザインになりますね。あらためて思うのは、日本の25トン規制の厳しさです。こんな規制は日本だけですからね。欧州は日本より重量規制は厳しくないし、大きさも狭かったら広くできる。重量の25トン規制が外れれば、もっとデザインも多様化されるはずですね。自動運転の話はまず5Gの通信環境が当たり前になってから、検討したいと思います。ただこのクオン・コンセプト202Xの電子パネルは格好いいですよね。将来の隊列走行や自動運転のイメージをわかせてくれるトラックです。実用性のあるトラックというのが一目見て分かるので良いですね。 

【日野】外側だけ乗せ換えられる。モビリティコンセプト「フラットフォーマー」

上物の仕様を変えれば無人のトラックにもなるし、図書館にもなるし、雑貨屋にもなるプラットフォームです。モーターとバッテリーを最底部にもってくれば自由な発想で上物を変えられる電気自動車ならではの考え方です。電動のスポーツカーですでに構想されている考え方ですが、路面入力を相殺する足回りが見当たらないので、どこまで実用的かは未知数です。

社長の目

この考え方がきっかけでブラッシュアップされることによって、5年か10年後ぐらいに実用化されその原型になるイメージなんでしょうね。将来的にある画期的な商品が出てきた時に、元々のイメージは「コレだったんだよね」と追想されるのでしょう。 モーターショーらしいコンセプトですね。

【日野】もうサブエンジンはいらない!? プロフィア・ハイブリッド

市販されたばかりの新型プロフィア・ハイブリッド。GPSによる先読み勾配を搭載し、モーター電源による低燃費効果を見込みます。ほぼ冷凍車専用機種で、通常走行の回生電力で得られた電力をリチウム電池に蓄電し、走行にも使用し、冷蔵冷凍の保冷電源としても使用します。通常走行でも回生電力を使用したハイブリッド走行を行うのがミソ。詳しくは近々、弊社・新車試乗コンテンツ「ハロー!ニュートラック」でお伝えする予定です。

社長の目

このハイブリッドは冷凍車前提ですよね。劇的に燃費が変わるわけではないから、汎用的にハイブリッドが使えるわけではない。そもそも直結を2基搭載した大型の冷凍車も10年前ぐらいからあって、冷凍車の冷えや燃費においては多くの選択肢があります。先代のハイブリッドは大手での導入は聞いていましたが、中古市場になるとどうしてもサブエンジン式の方が安定してよく冷えるイメージがあって、市場ニーズは低かったんですよね。せっかくのハイブリッドも実用的な価値がなくなってしまって、市場に受け入れられるという意味では難しい印象がありました。今回の改良されたハイブリッドがどの程度、直結式やサブエンジン式に較べてメリットがあるのか、気になりますね。

総括!トラックにおける東京モーターショー2019

イイねなポイント

・EV一辺倒な前回より、実用的な提案が多く、未来をイメージしやすかった。
・余裕のある会場レイアウト
・キッザニアと会場が一緒になることで、子どもへのアピールが効果的だった。

ムムムなポイント

・残念ながら未知の未来は見当たらず。
・どうしたの?トラック架装メーカーの出展がない!

社長の目

夢より実をとる2019年

今回は2年前の未来だけを見ていた東京モーターショーより、現実を見た東京モーターショーということができると思います。2年前はふそうさんが電動トラックのビジョン1を出して、いよいよ「トラックにも電気の時代が来る」という雰囲気でしたよね。去年のドイツのハノーヴァーでもダイムラーが、フレームにリチウム電池を敷き詰めた電気トラックを出品していました。どちらにも「25トンクラスで300キロぐらい走りますよ」という、実用化できるかぎりぎりの線がセールスポイントでしたよね。あの実用化できるか悩ましいぎりぎりの未来から、ふそうさんに限らず、各社、今年の東京モーターショーでの進歩は見当たりませんでした。

2017年はふそうさんでしたが、今回はいすゞさんが目を惹きました。実用性のある連結バスの提案もそうですし、ギガのフラッグシップは「やっと追いついた」という面もあるでしょうけれど、EVトラックにしても問題は走行距離だけでした。他は商品化できそうなクオリティで地に足がついているし、その先をイメージしやすかったですね。「ああ、これなら2、3年後に実用化できそうだ」という、直近のイメージがわくような内容で好感が持てましたね。 

実際にボルボの無人トラック、ヴェラがすでに実用化されたりもしているので、もしかしたら自動運転化は完全に無人なところから始まるのかもしれませんね。路線バスは、割と近い将来に無人化自動化が始まりそうですね。今回、いすゞさんが出品していた連結バスみたいなイメージの延長線上に、レベル4の自動運転技術が来るのかもしれません。特にトラックの隊列走行を実現するためには、通信の5G環境が必要になってくるので、5G環境が広まりさえすれば環境は大きく変わるでしょうね。

5Gが当たり前の世の中になると、自分が移動しないでもエンターテイメントやマーケットが向こうからやってくるという時代が来るんだと思います。現在の東京の都市圏を考えると、移動しないで生活できるスタイルがどんどん当たり前になってきています。仕事もリモートワークが主流になりつつあるし、買い物だってネットでできるし、学生も勉強はオンラインでできるようになるでしょう。すでに外出するのが当たり前ではなくなってきていますよね。僕自身の仕事だってリアルな話をすれば、7割ぐらいはスマートフォンで済んでしまいます(笑)。これまでの人間が感覚で世の中のテクノロジーを扱いきれなくなる時代が来ます。もっというとテクノロジーに与えられた体験を納得できない、というか。移動はそういう人たちがあえてする、贅沢みたいなものになるかも知れないですね。

詳細は
東京モーターショー
https://www.tokyo-motorshow.com/

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