株式会社ヨシノ自動車

トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第54回

ムーンオブジャパン株式会社 石井 孝洋様 角 正和様

ムーンオブジャパン株式会社 石井 孝洋様 角 正和様

「ボルボトラックだって“ゴー!ウィズ・ムーン”。ムーンアイズとファストエレファントのコラボを徹底解剖します」

横浜にムーンアイズがオープンして35年以上が経ちます。カリフォルニアの伝説的ホットロッド・カービルダーであるディーン・ムーンの意志を継ぎ、現在よりさらに基地文化の色濃かった本牧でカーパーツやアクセサリーを販売し始めました。その後にカフェを併設、ピンストライプ工房も備え、アメリカンカーカルチャーの中心的存在として現在に至ります。そんなムーンアイズとファストエレファントがコラボ。1台のカスタムトラクタが誕生しました。今回は絵柄をデザインし、筆をふるっていただいた専属のスーパーピンストライパーである石井“Wildman”孝洋様と、コラボを進めていただいた広報の角“PAN”正和様にご登場いただきました。この格好いいカスタムトラクタはどうやって生まれたのでしょうか?

編集・青木雄介
WEB・genre inc.

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石井“Wildman”孝洋(いしい たかひろ)様
神奈川県横浜市出身。昭和61年、横浜元町にムーンアイズがオープンした初日より客として通い、そのまま勢いで1968年型のシェルビー・マスタングGT350をアメリカより輸入してもらう事により人生がGo! with MQQNとなってしまう。平成元年ムーンオブジャパン株式会社入社。Signs & Pinstriping Studioを立ち上げ、日本初のプロフェッショナルピンストライパーとして活動。

角“PAN”正和(すみ まさかず)様
千葉県富里市出身。平成18年、ムーンオブジャパン株式会社入社。広報部署である MOON Space Agency に配属。現在はGeneral Manager。

ムーンアイズとのコラボに色めきたつ

____ではムーンアイズさんとファストエレファントのコラボレーションのきっかけについて教えてください。

鈴(FE副店長):きっかけは私でした。私は横浜の本牧育ちで、小さい頃からムーンアイズさんの存在は知っていました。ファストエレファントで今後、雑貨の販売などもしていきたいと考えていたので、去年の夏休みにムーンアイズさんに来て「コラボしませんか」とお願いしました。

角:こういったお話は広報なので、よくいただきます。いつものように逐一、社長に報告して鈴さんに「これはできる、これはできないかも」という話をさせていただきました。最初にお会いした時もそういったところから始まったのですが、結果的に一台のトラックをカスタムするまでに至りました。それはひとえに鈴さんのパワーですね。僕はただ転がされていただけだと思います(笑)。

____やはり本牧育ちと言われると無碍にするわけにいかないですね(笑)。

角:最初にそれを聞いた時、「ムーンアイズ歴が長いな」と思わされましたね。

____では中西社長はいかがですか。僕らの世代でムーンアイズを知らない人はいませんよね。

中西:僕の地元ではないけれども本牧は友人や先輩が住んでいて、この辺は自転車や車でよく通っていたんです。だから僕にとってもムーンアイズさんは本牧のシンボルマーク的な存在でした。

____鈴さんからムーンアイズと「コラボをしたい」と聞いた時はいかがでしたか。

中西:びっくりしましたね。たまたま家族でムーンカフェ(ムーンアイズに併設するカフェ)に行って「コラボしませんか」と名刺を置いてきましたと言うんです。計画的に見えて、全く計画的じゃないんですよ。片方でパワープレイをしたわりには、本人が後々ことの重大さに気づいたという(笑)。

鈴:よくよく考えると相手が大きすぎるんですよね。

アルフレッドの本牧物語

____なるほど。その辺を優しく受け止められるアルフレッドさんはいかがでしょうか?

アルフレッド:僕は高校の頃からずっと本牧に憧れていたんです。マイカル本牧で映画を見て、ムーンカフェでご飯を食べてデートが終了。昔はそんな流れだったんですよね(笑)。そして自分でも住むことになり子供を散歩させながら、今回のムーンアイズ号のモチーフになったサンドバギーを観たことが印象に残っているんですよね。

____確かにイメージが重なりますね。

アルフレッド:このコラボの立役者は鈴さんですけど、やると決まった時は自分ごとのように嬉しかったんです。本牧のドライバーにファストエレファントをアピールするという意味でも、「よくやってくれた」と思いました。

ペイントは1週間で終わらせる

____では石井さんに伺います。最初にボルボにペインティングしたいと言われた時どう思われましたか。

石井:ここまで大きいのは初めてでした。普段、滅多にやることはない仕事なので「楽しそうだな」と思いました。「本当に進められるのだろうか」という不安はありましたけれど。まず最初に何点かデザイン案を出させていただいて、皆さんに見ていただいて、それらを組み合わせてイメージが出来上がりました。

____ちなみにボルボというのは北欧のブランドです。やりにくさのようなものはありましたか。

石井:特になかったです。これまでも日野のトラックにペインティングしたりすることは経験していました。ただボルボは、より大きいし威圧感もありますよね。そこにムーンアイズの世界観を上手に落とし込みたかったですね。最初にデザインが決まった時点で、スケジューリングもできますので、「絶対に1週間で終わらせる」と決めていました。

鈴:本当に早かったですね。

アルフレッド:想像していたよりはるかに早かった、という印象がありますね。1日目には1パターン描き上げているような感じだったので「すごいな」と。

____石井さんは他にもたくさん仕事を抱えてらっしゃるんですね。

石井:それもありますし、ペインティングは計算をして描いていった方がやりやすいんです。今日は必ずここまでやると決めたら、その通りにやっていくんです。

筆一本で億万長者にならないか?

____なるほど。石井さんは最初からムーンアイズのピンストライパーとしてキャリアを始められたんですか。

石井:いえ、今はほとんど見なくなった職業なのですが、もともとは普通の看板屋でした。トヨタ系の仕事をしていたので、トラックの荷台やヴァンになんとか商店とか屋号を書いたりしていました。若い頃はずっとそれをやっていました。それでムーンアイズができた時に社長に良くしていただいて、最初はアルバイトで描かせてもらっていたんです。そんなある日、突然に会社の方に電話があって、呼び出されて「ウチで働かない?」と言われました。その時の決め台詞が強烈だったんですけど、「筆一本で億万長者にならないか?」ということでした。それで「なりたいです」と答えました。それなら大好きなミニカーが「いっぱい買えるな」と思ったんですけどね(笑)。

____素敵ですね。夢がありますね。もともとアメリカンカー・カスタムの文化はお好きだったんですね。

石井:はい。

アルフレッド:文字屋というのはすごく大変なんですよ。左右対称で同じ形を書かなければいけないから、下手したらピンストライプよりも難しいかもしれないんです。

石井:難しいかもしれないですね。文字は本当に大変なんですよ。

アルフレッド:今はステッカーですよね。それを手書きで描いてますから。

石井:僕はその時代の最後の手書き職人なんです。本当に僕の世代で無くなってしまいました。

お互いの存在がお互いのマーケットに知れ渡る

____私も今日、実物を見て本当にびっくりしました。ステッカーだと思っていた柄が全部手書きで描かれていたものですから。ここで角さんにお伺いしたいのですが、こうやって他の企業やブランドとコラボレーションするというのはムーンアイズにとって、どんな意味があるのでしょうか。

角:以前は、他社ブランド様とのコラボレーションという企画は少なかったと思います。

石井:角くんの代になってからすごく増えてきたんですよ。

角:お互いのブランドが交わって、楽しいことができれば、それはとても良いことです。さらにお互いの存在が、お互いのマーケットで知れ渡ればこれ以上の結果はありません。だからこそボルボがヨーロッパだからとか、トラックだからとかそういう垣根は全く感じませんでしたね。出来るんだったら、楽しいことをしたいからデモ車を造りたい。私は何もできませんが「石井さんがいますよ」と(笑)。その意味で言えば、僕はガヤでいいんですよね。

____盛り上げ役ですね。

角:お互いの存在がお互いのマーケットに知れ渡る。そんな企画ができれば一番楽しいと思うんですよね。もちろん今までずっとムーンアイズのことが好きなお客様は、大事なお客様です。でも「なんかマークは見たことあるな?」ぐらいの人達に「こういうこともするんだ!」と知ってもらうのも新鮮ですよね。それが「きっかけになってくれれば」と思うんですね。いきなりめちゃくちゃコアなところから入る人はいませんよね。例えばいきなり「あのサンドバギーが欲しい」というような人は絶対にいないと思うんですよ。(ムーンアイズは)やっと手に入れた車で、ステッカー1枚を貼ることで楽しさを覚えていくような世界です。だからきっかけはジャンルを問わず、どんな車だろうと何でもいいんです。

____ちなみに角さんはどういったきっかけで ムーンアイズに入社されたんですか。

角:僕は30歳手前までは全く違う仕事をしていました。建設業だったり新橋でサラリーマンをやっていたり、横浜で焼き鳥を焼いたりしていました。30歳手前でふと「自分のやりたい事をやってみたいな」と感じたんですね。デザインとかもできるんじゃないかなと思ってムーンアイズを受けてみたんです。たまたまムーンアイズのデザインと広報という職が募集されていましたから。そこで履歴書を送ることなく、手持ちで持ってきました。「何でもやります」と。

横浜本牧愛と、夢を売る仕事

____面白いですね。角さんにしろ、石井さんにしろそもそものバックグラウンドがすごく多様なんですね。

角:企画屋としてヨシノ自動車さんと話を進めていけたら「両方で楽しいことができるんじゃないか」というのはあったんです。これが上手くいけば、次はこっちをやっていきましょうというような。今回もそもそも最初に鈴さんからいただいた企画書とは違う方向に行きました。路線は少しずれましたが、でももっとインパクトのあるコラボになったし、トラックができたから「とても良かったな」と思いますね。

____ムーンアイズといえば本牧のイメージが強いし、横浜自体がアメリカ車のイメージが強いですよね。

角:そのイメージはありますよね。石井さんもそうだし、弊社の社長も横浜なのですごく横浜愛の強さを感じます。僕は千葉なので逆に「横浜の人ってすごく横浜を愛しているな」と思うんですよね。すごいプライドを感じますね。

鈴:私もできれば横浜を出たくありませんでした(笑)。

____中西社長も横浜出身ですもんね。

中西:菊名の方ですね。

____そんな横浜本牧でムーンアイズは今後、どういうビジネスを展開されていくのでしょうか。例えば「世界進出をしたい」とか。

角:ムーンアイズの商品というのは店舗の2階に上がってもらうと分かるんですが、いろんな車用のパーツが販売されています。でもほぼほぼ車種専用パーツというのはないんですよ。汎用パーツばかりなんです。車種を問わず楽しめる商品が多いんです。だから基本的に車好きな方が増えてくれることが、社長が喜ぶことだと思います。社長がよく言う言葉で「物を売るんじゃないんだよ。夢を売りなさい」と言うんです。

どんなドライバーがハンドルを握るのか

____素晴らしいですね。

角:売れなければ売れないで怒られるんですけどね(笑)。ちなみにムーンアイズは日本でスタートして35年経ちますが、一番売れない商品を作ったのは僕なんです(笑)。

____その商品は何だったんでしょう。

角:ヘルメットです。本当に一個も売れなかったんです。イベント限定で作ったんですが本当に一個も売れませんでした。社長と副社長に呼ばれて、ついに解雇の日が来てしまったと思いましたね。その時に言われた言葉が「お前これでビビったら終わりだからな」でしたね。あの言葉は大きかった。2012年だから9年前ですね。

石井:その後はいろんなコラボ商品を成功させていますからね。VANS(スニーカーブランド)さんとか。

____素晴らしいですね。ちなみにこのムーンアイズ号はどんなトラッカーに乗って欲しいですか。石井さんにお聞きしたいです。

石井:もちろんアメリカのカルチャーやデザインが好きな人に乗って頂けたら楽しいでしょうね。大分派手ですけど。改めて店先で観ましたが、恰好いいですね。塗装している工場の中とは違って見えました。

____店頭に置かれているとハマり具合がすごかったですね。

角:たぶん今まででスタッフ受けも一番良いと思います。大体はムーンアイズの新しい車が出来上がって、ガレージ前に置かれると何人かが見に来るんですが、全員が見に来るということはないんです。今日は女性スタッフから、男性スタッフまで外に見に来てました。「ちょっとすごいな」と感動しましたね。

石井:通りがかりのママチャリのおばさんも携帯で写真を撮っていました。

角:あれで実際にトレーラーを引っ張っている姿を見たいですよね。後ろのトレーラーも含めてデザインしてたらすごい恰好いいですよね。

鈴:実際にコンテナとかはデザインできるかもしれませんね。

アルフレッド:実際にそういうお客様も多いんです。ファストエレファントのカスタムトラクタを納品した後に、後ろのトレーラーも架装してほしいと要望されます。でもコストの規模感が違ってくるし、ペイントできる場所や時間を考えると諦める方も多いですけどね。

____個人的には本牧のドライバーさんに乗って欲しいんですけどね。

中西:それが一番美しいですよね。それとムーンさんにレースに参加してもらって、後ろのトレーラーも造るのも良いですね。ムーンアイズのトランポ(トランスポーター。レース車両を輸送する車両)があったら、すごく恰好いいですよね。

____それすごく良いですね。ムーンアイズさんがレースに参戦されるといいんですけど。

アルフレッド:我々の中でも「トラックのレースをやってみたい」という話があって、その時はぜひムーンアイズさんのトレーラーで持っていきたい。あのトラクターで色々なトレーラーを引っ張れたら面白そうですよね。

中西:アメリカやヨーロッパではトラックのレースが盛んなんです。あれを日本でもやってみたいんですよね。

このプロジェクト、そして今後について

____わかりました。では最後に出来上がったトラックへの言葉を一人ずつ頂けますでしょうか。

石井: 今回はデザインからやらせて頂いて非常に満足しています。

____では鈴さん、お願いします。

鈴:ムーンアイズさんに名刺を置いてきたのが1年前ですが、まさか車ができるとは思いませんでした。角さんがオープンに「面白いことができればいい」という方だから出来た企画なのではないかと思います。車の仕上がりについては感無量です。

____では中西社長、お願いします。

中西:本当に私としてもきっかけからしてすごく嬉しいんです。車関係の仕事は大好きなので自分から動いてしまう傾向があります。これまでは僕自身が言いだしっぺになるケースが多かったんです。コロナ禍ということもあり、イベントなど環境的にも楽しいことがやりたくてもなかなか実現できなかったり、積極的に行けない状況でこういうきっかけを作ってもらえて本当に良かったです。会社としてというより、僕自身の気分も非常にあがりましたね。

____ではアルフレッドさん。

アルフレッド:仕上がってやっぱり嬉しいですね。100点以上と言うか、点数はつけられないですね。ファストエレファントのコンセプトもそうなんですが、楽しいことや恰好いいことをしたい。だからこれに懲りず、また何か是非やらせていただきたいなと思いますね。

____最後に角さん、お願いいたします。

角:本当に、ここまでうまく話が進んで楽しくお仕事ができたので、個人的にめちゃくちゃ嬉しいです。ただここで車ができたのがゴールじゃなくて、コロナが落ち着いたタイミングでイベントだったり、あの車を持っていけるイベントの会場でムーンアイズとヨシノ自動車さんで何かをするとか、ここから先のことが個人的には楽しみなんですよね。新しい企画があの車きっかけで生まれるような気がするんです。あの車の T シャツを作るでもいいですし、イベントで新しい仕掛けを作りましょうとか、あの車がイベント会場に入ってくるだけでもお客様の気分が上がるし、とても喜ばれると思います。そういう企画をぜひ今後も考えていきたいなと思いますね。

____あのトラックきっかけでトラッカーでもムーンアイズを知ったり、アメリカのカーカルチャーに興味を持ったりというケースはあるでしょうね。

アルフレッド:それと客層が変わって新しいお客様も増える気がします。コラボで作ったマットも大阪の客さんが「待ってました」とばかりに、一式購入していただいたりしてますからね。

鈴: ムーンアイズファンは全国各地にいるので、北海道のお客様も「大好きだけどお金が貯まったら買います」っていう方がいらっしゃいました。本当に全国から問い合わせが多いんですよ。

角:嬉しいですね。これがきっかけでもっと面白いことができると確信しました。

石井“Wildman”孝洋(いしい たかひろ)様
神奈川県横浜市出身。昭和61年、横浜元町にムーンアイズがオープンした初日より客として通い、そのまま勢いで1968年型のシェルビー・マスタングGT350をアメリカより輸入してもらう事により人生がGo! with MQQNとなってしまう。平成元年ムーンオブジャパン株式会社入社。Signs & Pinstriping Studioを立ち上げ、日本初のプロフェッショナルピンストライパーとして活動。

角“PAN”正和(すみ まさかず)様
千葉県富里市出身。平成18年、ムーンオブジャパン株式会社入社。広報部署である MOON Space Agency に配属。現在はGeneral Manager。

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